そろそろ人工透析を始めましょうと医師から言われた日、わたし は息子を預かってもらっていたお宅から息子を引き取り、その足 で保育園に行った。 一時保育について聞こうと思って行ったのだが、そこでベテラン の一時保育担当の保育士さんに、「こわいんです。」と言って、 号泣してしまった。 今にして思えば、何が怖かったのだろうかと思う。 しかし、就学前の子どもがいて、週に3回必ず病院に通い、その 場から4〜5時間は離れることができない状態になると思うと、 子どもに何かあった時、どれだけ夫に負担がかかるのだろうとか、 そういうことを心配していたような気もする。
わたしは、親からの遺伝で腎臓が働かなくなったわけだが、わた しの大きくなったお腹を見ると、たいていの人は糖尿病で腎臓を 悪くしたのだと思うらしい。 そして、たいていの人は、糖尿病以外に人工透析の原因になって いる病気がたくさんあることをあまり知らない。 腎臓病を患った人、事故で臓器損傷した人、ガンで腎臓を取って しまった人、膠原病などで薬により腎臓の機能が低下した人等々。 自分自身が、糖尿病で腎臓を悪くしたと思われることを嫌だなと 思っていることを自覚している。 自己管理ができていない人だと思われるのが嫌だということでも あろう。
多発性嚢胞腎臓。 嚢胞は、いろんな臓器にできるので、腎臓だけではなく肝臓にも 膵臓にもある。 膵臓だって嚢胞が増えてくればきちんと機能しなくなる可能性も あるし、事実、ちょっと甘いものを食べ過ぎただけでも血糖値は 上がることがある。 わたしはこれまた遺伝的に糖尿病になりやすいらしいので、妊娠 する前の年に血糖値を下げるために食事療法を行って下げた。 今だって、上がってしまった血糖値を下げるため、甘いものは控え、 炭水化物の量を減らしている。 貧血があるのであまり運動はできないので、主に食事に注意する。 そうやって、インシュリン投与の危機を乗り切った。
透析患者ですら、糖尿病で腎臓を悪くしたと思われたくないなど と考えてしまうくらいだから、健康な人が、自己管理できる人が 批判的に見てしまうのはわかる気もする。 何十年か前は、実際に透析は実費だったし、金の切れ目が命の切 れ目と言われていた時代があったのだ。 お金持ちしか透析は受けられなかったのだ。 透析のために山を売ったり田畑を売ったりしたらしい。 その頃に比べれば、本当に有り難い時代だと思う。
なんの落ち度もないのに人工透析になったり、難病になったりす ることもある。 でも、自己管理ができていなくて透析になる人は、結局は透析を していたって長生きはできないのだ。 透析患者の死亡原因は、脳疾患と心臓疾患である。 透析して長生きしておられるのは、しっかりと自己管理できてい る人だけと言っても過言ではない。 そして、高齢化するからこその透析患者の増加なのである。 同じ腎センターで透析を受けている患者の半数以上が高齢者にな ってからの患者であり、車椅子の方もたくさんいる。 もう自分では歩けない人や、認知症があって、手足に手袋をされ て透析を受ける人もいる。 勝手に管を抜いてしまったら死んでしまうからである。
だからこそ、予防医学が必要であり、健康寿命を伸ばそうという 時代になってきたのである。 健康寿命を伸ばしてみんな元気で年取ってほしい。
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