鶴は千年、生活下手

2002年10月29日(火) 子供

結婚して今年の暮れで丸5年になるが、うちには子供がいない。
出来なかったんだよね。

夫は長男だが、特に家業が有る訳でもない。
というのも、夫の両親はすでに亡くなっており、実家に残って
いるのは、祖母と妹なのだ。
だが、彼の父親の兄弟たちが家と墓を守る人として夫を実家に
戻そうとしていた。
帰ってこい、だが一人でだ。
そう言われた彼は、帰るなら二人で帰ると言った。
跡取りが残せないような嫁は要らないと言われた。
(結婚前だったけどね。)
もう、35歳を過ぎた女は要らないのだそうだ。

客観的に見れば、確かに身内からしたら何が悲しくて11歳も
年上の嫁を貰わなければならないんだ、おまえが、という気が
するのだろう。
もっと年相応の女性と見合いでもして結婚してくれということ
だった。

夫は、こんなやり取りの中で、彼の親族が彼本人に帰ってこい
と言っているのではなく、跡取りに帰ってきて欲しいと言って
いることに反発し始めた。
それに、わざわざわたし達に会いに来た叔父さんの言うことを
一方的に信じてしまった祖母や叔母にも失望したらしかった。
自分に直接話しも聞かないでだ。
妹に婿でも貰って、家でも墓でも守ってもらえばいいと言うよ
うになった。
わたしとのことは、自分達で決めて自分達で歩いていけばいい
ことだから、決心を変えるつもりはなかったのだという。
だが、二人でいずれは実家に戻ろうと思っていた彼は、親族の
対応に反発を感じてから、絶対帰らないといい始めた。

実際に入籍してから、もう何も言ってこなくなった。
財産なんか要らないから、妹に全部やると言ったからだろうか。
財産が有るから、守ることを考える。それは当然だろう。
だが、その為に嫌な奴になるのなら無い方がましなのだ。

そんなこんなで、結婚後、子供を作ることにはプレッシャーが
あった。
畑が古いから、子供が出来ないのだと言われるものね。
種が良くないのかもしれないのにね。
3年くらいは、神経質になっていたかもしれない。
短歌を作っていても、子供の歌が作れる人が妬ましかった。

だけど、不妊の検査はなぜかやりたくなかった。
だって、どちらが原因で出来ないってはっきりしてしまうから。
たぶん、恐いのだと思う。
お互いに自分のせいかもしれないと思っているから、子供の話
をするときにはいたわりが生まれる。
40歳で不妊治療を始めたって、いつ出来るかわからないし。
決して子供を軽く見ているのではないが、不妊治療に全生活を
ささげてまで欲しいと思う年齢ではなくなってしまっている。

夫に、子供が欲しかったら外で作ってもいいよといったことが
有る。
夫は笑った。
「ちーちゃんの子供だから欲しいと思うんだよ。
 自分だけの子供が欲しい訳じゃない。」
わたしは、自分の子供がめちゃくちゃ欲しい訳じゃない。
おそらく、夫の子供ならば欲しいと思うのだろう。

でも、子供を作らないと決めたのでもない。
自然に任せてできたなら、それはとても幸せなことだろうね。

うん、可能性がある限り、望みは捨てませんよぉっ。(笑)
ただ、ずっとそればかりにこだわって生きていくのではないと
いうこと。強がりではなくそう言えるようになった。

ずっと若い頃思った。
「この人の子供が欲しいって思える人と結婚したい。」と。

30歳を過ぎてから、こう思うようになった。
「この人となら子供がいなくてもずっと一緒に暮らして行ける、
 そう思える人と結婚したい。」と。

今、子供がいなくてもずっと一緒に暮らしていける人と暮らし
ている。

 トントンと突然我が家に訪れる予定はないかコウノトリさん(市屋千鶴)

 子を持たぬ身であればこそそれぞれの気持ちほのかに透かし見るなり
                             (市屋千鶴)


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