白虎草紙
『遙か』の白虎組についての四方山話、SSなどです。

2002年10月06日(日) 「色は匂えど」(白虎4人(?)ミニSS)

『色は匂えど』


「ねえ、鷹通。11月の連休に紅葉狩りに行かないかい?」

10月も中旬に入ったある日の夜。
食後のエスプレッソを楽しみながら、
雑誌の宿特集を見ていた友雅が言った。

「紅葉狩りですか?そういえば去年はばたばたしていて
ゆっくり見る機会がありませんでしたね。
どこへ行きましょう?」
「日光などはどうだろう。
都心から近いし、朝早く出ればそれほど渋滞もひどくないと思う」
「日光…ああ、いろは坂ですね?
山の紅葉が美しいと人に聞いたことがあります」
「あそこはあまり子どもが来ないからね。
のんびりできると思うんだ」
「じゃあ、早速計画を立てましょう。
日帰りですか?それともどこかに…」
「うん。良さそうな温泉宿を見つけたのだけど、
せっかくだから一泊しない?
ピークの時期からは外れるから、空きはあると思うんだ」
「ええ、ぜひ。泊まりがけは久し振りですね」
「そうだね」

毎日寝起きは一緒だけれど、泊まりがけとなるとまた
気分が違うもの。
鷹通に退屈な思いをさせているとは思わないけれど、
いつもの日常に少し彩りを加えてみるのは、
恋の鮮度を保つ大切な秘訣だ。

なにせこの恋は、人生の終わりまで持っていくつもりなのだから。

「…じゃあ、宿はこのあたりでいいかな?
明日にでも予約しておくよ」
「ありがとうございます。…あ。
せっかくですから翡翠さんたちもお誘いしてはどうでしょう」
「……は?」
「前に、幸鷹さんも、最近忙しくて遠出していないんだと
おっしゃっていたんです。
でも、もう今はひと段落していらっしゃるかも知れませんし、
皆で出かけられたらきっと楽しいと思うのですが…」


…私はちっとも楽しくないよ鷹通…


そう思ったが、遠慮がちに自分を見つめる鷹通に、
とてもノーとは言えない友雅であった。

「……友雅さん?」
「あ?――いや。なんでもないよ。
それはいい思いつきだね。
じゃあ、彼らへの連絡は君が取ってくれるかな?
その結果を見て私は宿の手配をするよ」
「はい。すぐに電話してみますね」

嬉々として電話に向かう鷹通の後姿を、ため息交じりに見送る友雅であった。



数分後。
「友雅さん、幸鷹さんの携帯に繋がりました。
お二人ともOKだそうです」
「…そう。それはよかった」

笑顔が引きつらないようにするのも楽ではない。

何せあの二人。
ことあるごとに鷹通を構い、私の反応を見て楽しんでいるあの二人。
一緒に旅行でもしようものならそれこそ四六時中、
よってたかって私達の邪魔をしてくるに違いない!


……ああ。秋の休日。
鷹通と二人、秋風を感じ、紅葉を愛でながら、
温泉でしっぽりと肌を寄せ合うはずだった秋の休日……


リビングのテーブルに置かれた雑誌をぱらぱらとめくり、
楽しげに旅の算段をする鷹通とは裏腹に、
今や潰えかけている男の夢を、遠い眼差しで浮かべる友雅がいた――






はい、長文お疲れさまでございます〜。

夕方、出かけたときに本屋で「サ○イ」の紅葉特集を読んでいたら、
上の二人のやりとりがぽわぽわと浮かんでまいりました。

白虎さん4人勢ぞろい、いつか書いてみたかったのですね。
…って、名前しか出ておりませんね。今気付きました…。

なお、続きも書いてみたいところなのですが、
白虎さんの温泉ネタは既にとても素敵なものを幾つも(←……)
拝読したことがありますため、この先を続ける勇気が持てず……
こんな中途半端なところで止めてしまって申し訳ございません。

続いていたなら、多分こんな感じでしょうか。

<ドライブ中の4人。
運転手は友雅、助手席に鷹通、後部座席に翡翠と幸鷹がいる>

翡翠「鷹通、さっきから無口だね。ひょっとして酔ったのかい?」
鷹通「いえ…大丈夫です。ご心配おかけして申し訳ありません…」
翡翠「地図を見ていて酔ったのだろう。ナビは幸鷹がやってくれるから、
   君は後部座席で少し横になってはどうだい?
   ほら、私の膝なら空いているし」
友雅&幸鷹「翡翠っ!!」


ではでは、長くなってしまいましたが今夜はこのへんで…。
いつも本当にありがとうございます。
明日からもみなさまお元気で!!


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