白日の独白
索引|←|→
僕が喋るのを怖いと最初に感じたのは13歳の頃。 当時もそれ以前もそして現在も、内向的で排他的な子供であった。 そして内弁慶な子供が概ねそうであるように、仲間内では道化であった。
僕が喋れば喋る程に友達は笑う。時には腹を抱え、時に涙を流して。 人を言葉によって笑わす能力(とても限定的な。僕は万人向けではないのだ)を自覚していたし、 それを使いこなしているとも想っていた。 それは割と心地好い体験であったと想う。
何が切欠だったのかはもう憶えていない。 兎に角或る日、僕の喋るスピードは考えるスピードを追い越した。 僕の頭は真っ白にも関わらず、僕の口は物凄い量の言葉を排出していた。 僕の口は僕の意思を超えていつの間にか自走し始めたのだった。
相変わらず友達は笑っていた。 僕の口からは僕自身が次々と零れ出して、僕の身体がバラバラになっていくのが眼に見えて、戦慄した。 だけどどうにもならなかったしどうしようもなかった。 誰にも助けを求められないし、誰も助けてはくれなかった。
僕は無力な言葉しか持っていなかった。 多分今も。
|