白日の独白
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2006年05月16日(火) 無力な言葉

僕が喋るのを怖いと最初に感じたのは13歳の頃。
当時もそれ以前もそして現在も、内向的で排他的な子供であった。
そして内弁慶な子供が概ねそうであるように、仲間内では道化であった。

僕が喋れば喋る程に友達は笑う。時には腹を抱え、時に涙を流して。
人を言葉によって笑わす能力(とても限定的な。僕は万人向けではないのだ)を自覚していたし、
それを使いこなしているとも想っていた。
それは割と心地好い体験であったと想う。

何が切欠だったのかはもう憶えていない。
兎に角或る日、僕の喋るスピードは考えるスピードを追い越した。
僕の頭は真っ白にも関わらず、僕の口は物凄い量の言葉を排出していた。
僕の口は僕の意思を超えていつの間にか自走し始めたのだった。

相変わらず友達は笑っていた。
僕の口からは僕自身が次々と零れ出して、僕の身体がバラバラになっていくのが眼に見えて、戦慄した。
だけどどうにもならなかったしどうしようもなかった。
誰にも助けを求められないし、誰も助けてはくれなかった。

僕は無力な言葉しか持っていなかった。
多分今も。


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