白日の独白
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全ての座席が調度埋る位の人数。 平日であれば帰宅客で一番込むであろう21時も休日は穏やかだ。
シルバーシートに3〜4歳位の男の子とその両親が座っていた。 男の子が脚をぶつけたのか「痛いよ」と火が点いたように泣き始めた。 両親が慰めても中々泣き止まず、ちょっと『嫌な』雰囲気が車内に漂っていた。 と、黒のダウンジャケットを着た男が突如その親子の前で立ち止まり、2秒程注視すると元居た座席に戻っていった。 その後の母の眼が忘れられない。
驚いたような 奇異なものを見たような 子供を守る為に相手を監視せねばというような 憤りを感じているような 敵対心を抱いているというような
数分前まで泣いていたなんて嘘のように、笑っている子供としりとりをしている父と恐ろしい眼をした母。 この違いは一体何だろう。
子供の泣き声と笑い声で騒然とした車内では、その後携帯電話の着信音が当たり前のように鳴り響いていた。
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