「隙 間」

2010年06月28日(月) 再会と、肉と中華と打てない携帯

今日は午前中、現場の見学会であった。

わたしがここにいるそもそものきっかけとなった物件である。

当時のプロジェクトチームの、共同体であったので余所の甘木大手工務店の設計部の方々と、およそ二年ぶりの再会である。

「竹ちゃぁん、よっ、お久しぶりぶり」

ガハガハ、というのが相応しいセキさんは、相変わらずの様子である。

当時わたしは、セキさんとマンツーマンで、やっていたのである。

似たような経験を持つセキさんには、不調のこともぶちまけていたので、かなり、朝や休みの融通をつけさしてもらっていた間柄である。

そうか、それはよかった!

子会社ながら、現在のわたしのことを、そういってくれたのである。

セキさんは島根の方で、吹奏楽でも全国大会常連校出身である。

チューバだったかほるんだったか、それらを吹いていたらしい。

つまり、そのような大柄な方なのである。

「竹ちゃん、は、飲めなかったんだよね。じゃあ」

肉でも食いたくなったら連絡くれよ。

わたしのツボを、ようく心得ていらっしゃる。

前回、セキさんとはふたりきりで中華食べ放題に連れてってもらったことがある。

あれは、つらかった。

たのむ皿のほとんどが、似たような味付けばかりになってしまうのである。

ガハハ、遠慮しないで、どんどん頼みなさいな。
気持ちではなく、口や舌が、遠慮がちになってるんです。

セキさんは自分の酒とついでに、わたしの皿を注文する。

う、ううう。
ガハハハハ。

肉ならば、こうはなるまい。
よしいつか、棒茄子が出た頃にセキさんにお世話になるとしよう。

というところで。

とんでもないハップニングに、みまわれたのである。

携帯のボタンが、壊れたのである。

「1」を押したら「あい」となり、「クリア」を押したら、入力モードが漢、カナ、英、数、と切り替わってゆく。

すわ、一大事。

何ひとつ、まともに入力できないのである。

電池を抜いたり、つけなおしたりしても、なおらない。

昼休みは会社に帰りがてら、のんびりたっぷりくつろごうとの目論見を返上である。

品川のドコモに駆け込み、離れられぬ待ち時間で一時間を費やす。

データのバックアップはとってありますか?

そんなもの、ない。
とってください、と頼むと、暗証番号が入力できないことに気がつく。

そう。
入力しようとすると、勝手に違うのを入力してくれてしまうのである。

結局、ドコモの店側で暗証番号を初期の状態にリセットしてみて、データを抜くことができたらそうしてみます、と。

こちらは三年くらい前の型なので、電池関係以外まるごと交換になりますが。

いい加減、最近の機種に交換する時期なのかもしれない。
しかし、はいそうですか、とホイホイ替えられるような値段ではないのである。

しかも、今はいったいどれを選べばよいのかまったくわからないくらい、いろいろの機種が店先に並んでいる。

秋葉のヨドバシで、一度、「それではいかん」とそれらの前に立ってみたことが、ある。

さあて寄ってらっしゃい見てらっしゃい……。
切り傷すり傷なんでもござれ……。
ガマはガマでも。

あやうく、アブラをたらしてしまうところであった。

腕組みしたまま立ち尽くし、険しい顔にみるみる変わってゆく。

いったい、どれがいいのでしょう。
ではまた今度の機会に。

そんなわたしである。

買い替えの不安を抱えたまま店に預けて、会社に戻る。

閉店間際に取りにゆき、どうでしたか、と尋ねてみる。

「イクスペリアに買い替えですね、竹さん」

円部くんに、そう肩を叩かれてやってきたのである。

「暗証番号のリセットをかけてみたらですね」

店員が、預けていたわたしの携帯を開いて差し出す。
ほうほうと平静を装って顔を近づける。装ってしまうところが、なんともいえないところである。

「どうやら、普通に入力できるようになりまして」

なんと。
たしかに、「1」も「クリア」も「変換」もできる。

バックアップも、全部とれましたので、と受け取る。

ふっと、胸を撫で下ろす。メモであったり未送信メールだったりにためてある中身を、そろそろ一度、別のところに整理しなくてはいけない。

それより、買い替えを視野にいれるほうがよいか。

考えるところである。


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