奥田英朗著「家日和」
奥田英朗節全快、である。 クスクスと口元を隠しながら、いやほくそ笑みながら快調に読み進める作品である。
思いつきのまま会社を辞めては事業をはじめ、妻の不安をよそにあくまでも楽天的で、なぜかうまくいってはまた辞めての繰り返しの夫と、それを支えんと気を回し、振り回されるイラストレーターの妻。
別居を機に、「男の一人暮らし」な部屋づくりをはじめ、家庭を持つ同僚たちの「安らぐたまり場」と化してゆき、別居中の妻のことをすっかりほったらかしにしてしまっていた夫と、インテリア・デザイナーで、壁一面にCD・レコード・雑誌が並んだ部屋に変えられてしまった部屋に、こっそり訪れて見てしまった妻。
リストラの翌日から専業主婦だった妻が再就職し、自分は違和感なくすっかり専業主夫にはまり、料理屋や家事を覚え、上達してゆくことに充実感を覚えて味をシメてゆく夫と、周囲の慰めや同情をよそに、あくまでも自然に、そんな夫と自分を受け入れている妻。
中年になって小説家としてやっと有名になり、近所の夫婦の影響でロハスにすっかり洗脳された妻とそのロハス夫婦らのことを小説にしてしまいたくてたまらない夫と、育ち盛りの子どもたちの不満も、もちろん夫の不満げな、だけど口には出さずにいるのをよそに、玄米御飯に完全無農薬有機野菜やら、肉は鳥のささみ、ファスト・フードなんかもってのほか、ヨガでリフレッシュを常としはじめる妻。
そんな軽快で愉快で爽快で痛快な物語たちが、収められているのである。
さすが、押しも押されぬ直木賞作家、である。
ユーモアが、ある。
つまり、ただ面白いのではないのである。 軽妙さと、ちょっぴりの毒味加減が、絶妙なのである。
奥田英朗作品に、おそらくはずれなどないだろう。
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