「隙 間」

2010年01月03日(日) 新年の幸先

さて明日からはもう日常がはじまってしまう。

その前に、新年のご挨拶をしておかねばならない。

そして、運試しも、である。

歩いて五分の、まさにお膝元。

根津神社

にて、御祭神の素戔嗚尊(スサノオノミコト)に新年のご挨拶と、諸々の抱負を告げ、まあみとってつかあさい、と手を合わす。

こちらにはほかにも菅原道真公や大国主命もまつられているが、そちらはとりあえず会釈ていどにすましとく。

世をはかなむ飛び梅の……。

おっと道真公、貴公はあらためて湯島にて近い内にお伺いいたすので、雷雲を頭上に轟かせながら、いじけてすねてみせずにいてもらいたい。

そこの小槌をぶんぶん振って主張している大国さま。
あとで神田に伺うから、ちとそちらで待っていてもらいたい。

そうして、いざ、運試し。

念を込め、えい、と。

「末吉」

である。
ふむ、前哨戦としては、なかなかである。

しかし、手放しで喜べるものではない。
粛々と籤を納め、いざ鎌倉、ならぬ、神田、である。

おっと、忘れてはならない。
鳥居でぺこりと一礼し、根の津から、稲の原を焼き尽くさんが勢いの再戦の炎を灯し神田の地へ。
江戸総鎮守「神田神社」
である。

参拝の列に並び、わたしの少し前で、

じゃらじゃらじゃらぁん。

「おおぉっ」

どよめきと共に、大量のお賽銭が流し込まれた音が響き渡ったのである。

これでは、わたしのがかすんで、いや、なきにも等しく思えてしまうではないか。

「大事なのは、気持ちがこもっていることです」

有名な甘木江の原氏のことばを思い出す。

うむ。
勝ち負けではないではないか。

握り締めた汗でじっとり熱くなった小銭を、折り曲がらんくらい強く握り締めなおす。

ぱん。ぱん。

ええ、武士は食わねど高楊枝。今年も突っ張らかってゆきますよ。
だから今年も、かなえるのが簡単そうなほうだけ、とりあえずお力添えを。
いや、肝心なまさに最後は運だけが必要なときには、ちょいと風を吹かせてくださいな。

んむむ、と最後に一度だけ、意味もなく眉間に力を入れ、一礼す。

よし、鋭気は整った。
いざ、運試しの決戦へ。

おみくじの列に並ぶあいだ、精神を集中する。

わたしは何樫の谷中に住まう甘木と申します。
およそふた月と間を置かず、ご挨拶に伺ったりなぞしてる者でございますが、見覚えがございますようでしたら、どうぞ、新年のはじまりの運試しを、気持ちよいものとしてくださいませ。

なむなむ。

なんたる不甲斐なさ。

これしきのことで、もはやすでに、我が力を信ぜずあまつさえ、都合のよい神頼みにすがっているではないか。

これはいかん、と慌て首を振る。

振ったはいいが、振り落としきれぬうちに、「次の方、どうぞ」とわたしの番になってしまったのである。

えい、ままよ、と、シャラシャラかき混ぜ、はあっ、と籤を引き落とす。

おおっ。

「……番です」

なんとはじまりにふさわしい番号であろう。

「大吉」

である。
拳に力が入る。

浮かれたりはしゃいだりせぬよう、ようやく己を落ち着かせる。

しかし、気を抜くと、頬が勝手にゆるむ。

にまあ。

なんともめでたい、幸先のよい、年のはじまりである。

それはそれは、鳥居を出ての一礼にも、覇気がみなぎる、というものである。

六つ星の占いでは、今年はもっともよろしくない年らしいが、だからなんという。

平気の平佐、銭形平次である。

まことに自分勝手なものではあるが、こうして年男でもある新年がはじまったのである。

見事な月が、不忍池の向こうでわたしを笑っている。


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