名も無き小さな画伯の作品をみつけたのである。
雨上がりのひんやりとした路地の空気に誘われ、一本裏の軒下を選んでみたのであるが、なんとも素晴らしい出会いである。
激しく夜の屋根を叩いていた雨に閉じ込められ、うずうずとうずいていたに違いない。
キャンバスが車の通れるような広いものでは、なかなか、このような活動的な構図で描けない。
玄関を開けたら思わず踏みつけてしまうような、この加減がよいのである。
名も無き、さすらいの評論家を見かけたので、感想をたずねてみたところ、
「吾輩は猫である。崇高なる思索のさなかを不用意に邪魔だてするのは感心できん」
目を縦に細くしてにらまれてしまったのである。
ふむ。 昼のその時刻を指すとは、なかなか正確な時計を兼ねているとみえる。
「にゃんだとう」
いやいや、先生。 午睡のお時間ですか、欠伸をされるとは。
かまってなぞいられぬ、と伏せて目を閉じてしまった。
ネコが、寝込む。
舌好調のようである。
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