夢見る汗牛充棟
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「散歩」
ちょっと
散歩の途中だから
あの角まで行ってみる
角を曲がってしまったら
その先の電信柱まで
もうほんの少しでいい
明らかな見晴らしの可能性や
うつくしかろう空のことや
摘みたい花のすがたを思う
満開の花を摘もうか
それなら走らなければ
遅すぎるのかもしれないが
のんびりゆけば
種が拾えるかもしれない
どちらも素敵じゃないかと
時間に耳打ちされて
迷いながら歩く
青い鳥は見えないし
目指してゆける銀の星は
わたしの天にはないけれど
迷子になって疲れたら
そこにへたりこめばいいだろうか
その時は多分
椅子を借りることもできるし
温かな飲み物もある
一息つけばそこにずっとあった
草花だって見るだろう
空の下は混じりあい
複雑ないろだけれど
清む空が唯一のきれいで
ないことだけは信じる
踏む足元には時々
仄かに光る小石を見つけたりする
嬉しくてポケットにしまうけれど
ふと重たくなって捨ててしまったりする
この道のどこかで
後ろに放った石や見られなかった花を
惜しむのもたのしい
散歩の途中だから
もう少し歩いてみる
走ってもいいのだけれど
どちらにでもいいけれど
くりかえしうたいながら
強いるように歩く
あの角は 尽きない
(2002.12.01)
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