Leonna's Anahori Journal
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2006年02月21日(火) 村木道彦


思い立って、ここ暫く松浦寿輝の小説を買い集めていたのである。
今日、そのなかの一冊、「もののたはむれ」という短編集を斜め読みしていて、村木道彦の短歌に遭遇してしまった。

実に大変なものに行き合ってしまった。タイヘンダ、タイヘンダと大声で叫びながら走り回りたいようでもあり、動悸を抑えつつ、がっくりと膝をついて泣き出したいようでもある。

ひとことで言うなら、官能的なのだ。それも、未だ汚れざるものだけがほんの一時纏うことのできる官能。ありふれた日常の中で、苦しく輝いて、あっという間に消えてしまうもの。


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村木道彦の歌は、「黄のはなの」という短編に登場する。というよりも、この「黄のはなの」というのが、一首の歌からの引用(初句)なのである。
その短編によれば、村木道彦というのは「二十代の初めに代表作のほとんどを書いてしまい、三十代の初めに『天唇』という題名のごく薄い歌集を一冊だけ出し、三十代半ばにはもう歌を詠むことをふっつりやめてしまった歌人」だそうだ。「たしか、静岡の県立高校の先生なのではなかったか」とも書かれている。


いずれにしても、松浦寿輝は恩人なのである。現在、村木道彦の歌を読もうと思ったら、国文社の現代歌人文庫24「村木道彦歌集」をもとめるより他に方法はない。この一冊に、彼の全短歌が収められているのだ。

いま私は、待ちきれない気持ちでいる。明日になったら、「タイヘンダ、タイヘンダ」と胸の中で叫びながら、丸善へ「村木道彦歌集」を買いに行くだろう。






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