Leonna's Anahori Journal
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2006年02月20日(月) 薔薇の花

  
すみだトリフォニーホールにて、矢野顕子ライヴ。仕事帰り、イ・ズーと待ち合わせて出かける。

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トリフォニーホールは、一昨年の暮れ、ジョバンニ・ミラバッシ・トリオを聴いたホールだ。とても立派なクラシックホール。今日は三階席の中央だったが、最初は遠くに小さく見えていた舞台上のピアノと演者が、段々近づいてきて、最後には二回りほども大きくなったような気がした。

今日もアッコちゃんは、くるりの「薔薇の花」を演った。彼女が演ると、毎回まるで違った曲になる。あの薔薇の花は、まぼろしの花なのだ。たしかに見たし、触りさえしたはずなのに、忽然とどこかへ消えてしまう。塗りつぶしたような青空。

コンサートの間中、一ヶ月もの間、ずっと書けずにいる手紙のことを考えていた。このままずっと書けないのではないか、むしろその方が良いのではないかとも思う。そう思いながら、何遍も何遍も、下書きをする。歩きながら。料理しながら。電車に揺られながら。それが、私の日常になってしまった。

めまいのするような青空の下で、私も、たしかに見たのだ。あの薔薇の花を。そのときは、そういう花だとは知らずに、ただ笑っていたのだ。消えたものを消えたと認識できるのは、その残像ゆえだろう。ぼう然としながら、そんなとき出来ることといったら、やはりジンジャーエール、買って飲むことくらい、なのだろうか。

降り出した雨の中、傘をさして帰るとき、あの薔薇の残像が夜の闇のなかに揺れて、部屋の電気をつけるまで、ずっと付き纏っていた。
 
 
 




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