Leonna's Anahori Journal
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2004年04月08日(木) よみがえる愛聴盤(1)

音聴箱がやってきたことでお気に入りのアナログ盤が再び日の目をみることになった。それらのレコード達についての覚え書き。

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■コパカバーナ/サラ・ボーン

 このディスクについてはこれまでにもたくさん書いたので今回は割愛。でも、ひとつだけ。もしかしてこのLPは未だCD化されていないのかしらん?私が店頭で探した限りではみつからなかったのだけれど。もしそうだとしたら何故?こんなに素晴らしい歌がいま普通に入手できないのだとしたら、それはあまりにも勿体ないと思う。
 
 
 
■JAZZ at the PHILHARMONIC/ビリー・ホリディ

 ずっと昔、ビリー・ホリディというひとのことが知りたくて買った。A面がライブ録音、B面がスタジオ録音で全14曲。「ストレンジ・フルーツ」「ボディ・アンド・ソウル」「ザ・マン・アイ・ラブ」等々、彼女の代表曲、有名曲が目白押し。こりゃお得な一枚だわいと思って買ったのだったが、実はコレ、世間様ではいわゆる“名盤扱い”されていたらしい(ずっとあとになって知った)。とにかく二十代の初めから終わりまで、繰り返し聴きに聴いたディスク。邦題“ビリー・ホリディの魂”。

 冒頭、ジャズクラブの客の前に現れたビリー・ホリディが「ボディ・アンド・ソウル」の前奏中に二回咳払いをしてから歌い始めるところ。そして、その彼女をあたたかく迎える聴衆の拍手。「確かにこのとき彼女は熱烈に愛されていたのだ!」という思いがこみ上げてきて、何度聴いても胸に迫る一枚。
 
 
 
■モーツァルト ソナタ第2〜5番/内田光子

 やはりずっと昔、モーツァルトを一度きちんと聴いてみようと思い立って買った。とはいうもののお店には数えきれないくらいのモーツァルトのピアノソナタが売られており、誰のどの演奏が良いのだか悪いのだか、皆目見当がつかない。

 ではなぜそれらあまたのディスクの中からこの一枚を選んだのかというと、それは、えー“霊感”です(笑)。ジャケットに写った内田光子の顔をはじめて見た瞬間、「このオンナこんな顔して、これでもし演奏がアチャパーだったら詐欺で訴えるよ」と、ナゼか思ったのだ。購入店はたしか新宿紀伊国屋書店二階の帝都無線だった。

 果たして、家へ帰って聴いてみると、清潔で硬質で、でも核にやわらかい花のような愛らしさをチラチラと感じさせる演奏ぶり。「うんうん、これでいいのだ。はずしちゃいなかったぜ」と頷いたあの日以来、ずっとワタクシ、内田光子の味方なのです。(モーツァルトなら内田!)
 
 
 
■ショパン ピアノ協奏曲第2番、ポロネーズ第5番嬰ヘ短調/イーヴォ・ポゴレリチ

 モーツァルトが内田なら、ショパンはポゴレリチ!これチマリスの常識(笑)。1980年のショパンコンクールで落選、この決定をめぐって審査員の退場など抗議行動がおこり、一躍有名になった“天才児”ポゴレリチ。しかも彼の自由奔放、天衣無縫ぶりは演奏スタイルのみならず服装にも顕著だったようで、他の出場者が普通に黒のタキシードを着用する中、なんと革のズボンにヒラヒラブラウス、シフォンのスカーフといういでたちであらわれピアノを弾いたとか(イヤッホー!)。そういうブラボーな天才児の演奏っぷり、実際のところはどうなの?と興味津々で買った一枚。オーケストラはシカゴ交響楽団、指揮はクラウディオ・アッバード。

 で、ポゴレリチの演奏はというと、この人、ほんまもんの天才なのね。すごく先鋭だったり意表をついたりする演奏は人を驚かすためではなくて、自分でよくよく楽譜を読み込んだ結果なのだと思う。技巧的にもすごいものを持っていることは私のような素人の耳でもわかる位だけれど、でもテクニック至上主義が陥りがちな冷たさはなく、むしろ熱々という感じ。つまり、音楽そのものに対するなみなみならぬ愛情を感じさせる演奏だった訳です。こうなりゃもう、私のハートは彼のもの(笑)

 お気に入りをあげるなら、ショパンの作品のなかでも、特にポロネーズ。これは私、いまだにポゴレリチの演奏じゃないと満足できない。彼の演奏は非常に強くて、かつユニークだから、耳に聴き癖がついてしまったのだろう、きっと。

 なおこのディスクで棒を振ったアッバードは、この数年後にカラヤンの跡を継いでウィーンフィルとベルリンフィルの指揮者にダブルで就任、指揮者としてのキャリアを上り詰めたひと。地味な印象の人だとしか思っていなかったので、そのニュースを聞いたときはエッと思ったけれど、あの破天荒ともいえるポゴレリチとオーケストラの間をとりもって美しくまとめあげた手腕を思えばそれもむべなるかなと、後々深く納得したのでありました。

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しかし、こんなことをつらつら書いていると、仕事休んでレコード聴いて、けっこう楽しく暮らしていたみたいな、何だか自分でもそんな気になってくるから不思議なものです(笑)

あとまだ4、5枚、書いておきたいディスクがあるので、(2)に続きます。
  
 
 


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