Leonna's Anahori Journal
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熱が三十七度を超えた。とにかく出勤して、さしあたりの仕事を片付ける。マスクの内側の息が熱い。仕事をしているうちに左手の指の関節が痛くなってきて、そうこうしているうちに右の指も痛くなった。午前中で早退。
家の最寄り駅の向こう側(ふだんほとんど行ったことがない方角)の内科医にかかる。午後の診療は二時からだというので、三十分ほどまえに行って待合室のソファでじーっと待つ。 静かだ。風邪をひいたお陰で日常を逸脱することができた。私の、今日の仕事はもう終わったのだ。それで、まだ日の高いうちからひとりでいつもと違う場所にいる。奇妙な開放感。
初老の女医さんの見立てでは、インフルエンザではなく、ましてやニワトリなどとも関係なく、薬の処方箋をもらって三十分ほどで病院を出た。朝方の雨は上がった。いまは、よく晴れた暖かい日だ。日射しのせいか、町がいつもと違ってみえる。忙しい人たちは出払ってしまって、のほほんとした気分の町。少し眠たそうな、午後の町。
初めて行った薬局で風邪薬とうがい薬をもらって表へ出たら、病院に傘を忘れてきたことに気が付いた。のほほんとした町の中をゆっくりと歩いてとりに行く。ほんの少し日が傾いて光線が変わった。のほほんとした町が、少しうらぶれたような、寂しげな顔になった。早く帰って横になりたい。そう思いながら、ゆっくりと大股で歩く。
家へ着いたらちょうど三時。炎症をおさえて熱を下げるという薬を飲んで横になると、身体中から揮発性の疲れがしみ出してきたようで、あーと溜息をつく間もなく眠りに落ちた。
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