Leonna's Anahori Journal
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海外にすむ本好きの友人がこのあいだから薩摩治郎八に関する本を読んでいるという。
薩摩治郎八というのは明治時代に豪商の息子として生まれ英国へ留学。そののちパリへ渡り遊蕩の限りを尽くした人物。その財力を背景に社交界の寵児として君臨し、芸術家のパトロンとなって藤田嗣治ほか多くの芸術家を援助した。現在も使われているパリ国際大学都市内の日本館(学生会館)は治郎八が私財を投じて建築したもので、この功績によりレジオンドヌール勲章を授与されている。昭和に入ると世界恐慌のあおりをうけて無一文になり帰国するが、生涯に遣った金は600億円(現在のお金で)とも言われている。
“バロン(男爵)薩摩”と呼ばれたこの桁外れの人物については、かなり以前に雑誌BRUTUSで特集を組んだことがある。治郎八の靴、ネクタイ、クルマ(純銀製のロールスロイス)、美人の誉れ高い千代子夫人の顔などを写真でみた覚えがある。それで、そのBRUTUSを探し出し、バロンの特集頁をカラーコピーして友人のところへ送ろうと思ったのだが、お目当ての号はとうとうみつからなかった。雑誌も引っ越すたびに少しずつ処分してきたから、きっともう捨ててしまったのかもしれない…
雑誌は出てこなかったけれど、その特集に書かれていたことで今でもはっきりと覚えていることがひとつだけある。それは治郎八がつけていた香水の名前で、“ニュイ・ド・ノエル(クリスマスの夜)”というのだ。いかにもバロンに相応しい名前という気がして、何だかうれしくなってくる。
さっき調べてみたら1922年にキャロンが発表したものだそうだ。おそらくいまも売られているのではないか。いったいどんな香りなのか。一度でいいから嗅いでみたい。
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