Leonna's Anahori Journal
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2002年10月04日(金) ヤモリを追いかけ回す

きのう。

外出先から帰って部屋のあかりを点けたら、壁の上をサッと上から下へ動くものがあった。カーテンの陰に隠れたのでそっとめくってみると、ヤモリ。
体長7〜8センチくらい。ベージュがかった薄い砂色のやつだった。

東南アジアを旅行していると、特に暗くなってからよくヤモリを見かける。たいていは、ホテルの外廊下や建物の壁に張り付いてじっとしている。目は真っ黒いビーズにそっくりで、「リリ、」とか「チ、チ」とか、か細い声で鳴く。

ヤモリは人間に対しては悪いことはしないし、小さな虫を食べてくれるよい生き物だと聞いた。だから、ヤモリは“家守”と書くのだとも。(そういえばアニエスbのトレードマークもヤモリだ。)

写真を撮ろうと、急いでデジカメを持ってくる。白いクロス貼りの壁の上をヤモリはペタペタとカサカサの中間みたいな音をたてて逃げる。足指の先が丸い吸盤状になっているからだろう。ゴの字(黒い虫)のたてる音とはあきらかに違う“足音”。

逃げ回るヤモリはときどき動きを止めて、黒いかなしそうな目でじっと一点を見つめていた。私がなんとはなしに良心の呵責を感じていると、そのうちに窓の上に取り付けたエアコンと壁の隙間へスルスルと入り込んで、それきり出てこなくなってしまった。

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きょう。

朝、台所へ行ったら、素早い動きで壁際からガスレンジの陰へ隠れたヤツがいる。例の足音で昨日のヤモリだとわかる。よかった、生きていたのか。それにしても台所まで移動しているとは思わなかった。

ヤモリはガスレンジの下に入って動かない。火を点けても若干暖かくなるくらいでヤモリを傷つける心配はなさそうだったので、お湯を沸かして紅茶を淹れた。そうして、朝食後そのまま仕事に出かけた。

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帰ってきてすぐガスレンジの下を覗いてみる。すると、なんとヤモリはまだそこにいた。一日中ここで何をしていたのだろうか。ずっとそこにいてもらうわけにもいかないので、なんとか捕まえて、外へ放してやろうと思った。

細長く折った紙を差し込んで広い場所へ出そうと思うが、なかなか思うようにいかない。怖がってもの凄く速く動く(まさに瞬間移動。飛ぶように動く)ので、そういうときはこちらも怖くなってしまう。

結局一度は床へ降りたのだけれど、パニックになってうまく歩けないヤモリがかわいそうでどうしようかオロオロしているうちに、台所の壁とキッチンユニットの隙間に入り込んで、それきり姿を見せなくなってしまった。

もしかしたら、あのヤモリは今年の春先、ベランダの植木鉢を動かしたら下から出てきた体長2センチくらいの奴が大きくなったのではないかと思う。いじめるつもりはさらさらなかったのだが、昨日のあの悲しそうな目を思い出すと、なんだかこちらまで悲しくなってしまうな。

とはいえ、生き物の動きは人間には予測できないところがあるから、今頃はもう、もっと居心地のよい場所を求めて移動中かもしれない。もう追い回したりしないから、お互いそれぞれの場所で静かに暮らそうではありませんか。ねえヤモリくん。
  
  


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