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2007年07月14日(土) プリンス東海 岐阜工業高校戦

07年07月14日 (土) 13:45開始 岐阜メモリアルセンター 長良川球技メドウ
 JFA プリンスリーグ U-18 東海 2007
 対 県立 岐阜工業高等学校 ※45分ハーフ
 天候: 雨

[前半]
清水エスパルスユース
 控え:柴田、山崎、小澤、望月恭、曽根、青木、柴原、鍋田亜、池上
−−−−−−−−長島−−−−−−−−
− 望月卓 −滝戸− 鍋田圭 −江守−−
−−−−− 佐野諒 −深澤−−−−−−
− 佐野孝 −−−−−−−−−杉山−−
−−−−−−藤牧−−前田−−−−−−

−−−−−−−−田中−−−−−−−−
−−尾藤−−山本−−久野−−杉山−−
−−−−−−−−益山−−−−−−−−
−−古田−−栗田−−松井−−北野−−
−−−−−−−−吉村−−−−−−−−
県立 岐阜工業高等学校

 36分、岐阜、FW前田のPA内突破を防ぎ、ゴールキックでリスタート。中盤が開いた状態で素早く蹴り出し、ボールは一気に清水陣内右に開いたRH杉山の元へ。杉山は中央に短く繋ぎ、パスを受けたOH久野がドリブルを仕掛けると、ぬかるみに足を取られたか、CB鍋田圭は距離を詰められない。その隙に鍋田圭の裏、PA中央を割る緩いスルーパスを送り、FW田中が飛び出す。が、マークしていたCB滝戸が泥で体勢を崩す。1対1になった田中が左足ダイレクトで綺麗にコントロール、ゴール左へ流し込んだ。0−1
 44分、岐阜、DH益山が左サイドに散らしたパスをLH尾藤が足下で受け、左外から追い越したLB吉田に繋ぐ。吉田の左クロスにファーの田中がスライディングで跳び込むが、GK長島が至近距離でコースを切り、右CKへ。尾藤のキックは清水DFが跳ね返すが弱く、PA中央手前で田中が拾う。ドリブルで仕掛ける田中は縦を切った佐野諒を嫌い、PA内左へ流れるが、カバーに入った鍋田圭が背中から体を入れてボールを奪う。倒れる田中、判定はPK。正当なタックルに見えたが、或いは抜かれた佐野諒のレイトタックルとの判断か? PKは益山が速いシュートをゴール右上に決め、、0−2

岐阜工業      清水エスパルスユース
4(3) シュート 4(0) ×圭吾、×前田、×孝洋、×佐諒
3(0) 右クロス 2(0) ×藤牧、×藤牧
5(1) 左クロス 2(1) ○前田、×杉山
1(0) 右側CK 0(0)
2(1) 左側CK 1(0) ×杉山
0(−)  犯OS  0(−)
8(2) ファウル 7(1) ・深澤、・佐諒、・江守、・深澤、・孝洋、・藤牧、×圭吾

[後半]
清水エスパルスユース
−−−−−−−−長島−−−−−−−−
− 望月卓 −滝戸− 鍋田圭 −江守−−
−−−−−−−−杉山−−−−−−−−
− 佐野孝 −−−前田−−柴原−−−−
−−−−−−藤牧−−池上−−−−−−

−−−−−−−− 森 −−−−−−−−
−−尾藤−−山本−−久野−−杉山−−
−−−−−−−−益山−−−−−−−−
−−古田−−栗田−−松井−−北野−−
−−−−−−−−吉村−−−−−−−−
県立 岐阜工業高等学校 (75〜87分)

 45分、清水、交代: 深澤→池上、佐野諒→柴原 (4-1-3-2、池上FW、前田OH、柴原LH、杉山DH)
 50分、岐阜、FW池上のファウルで岐阜陣内、60Mほどは距離のある位置からFK。松井がPA内へ大きく蹴り込むが、鍋田圭がヘディングクリア。が、ボールは前に弾けずに頭上にあがってしまい、滝戸が頭で何とかPA外へ掻き出す。そこへ走り寄る久野が、落ちるボールを勢いのままにトーキック気味のダイレクト10Mシュート。横っ飛びのGK長島届かず、鮮やかにゴール右隅に突き刺さる。0−3
 54分、岐阜、杉山のドリブルがLB江守にファウルで止められ、FKとなる。47分にも同様の江守のファウルがあり、その時は尾藤がPA内ニアへ合わせたボールのこぼれ球を拾い、田中がシュートを放っている。キッカーは同じく尾藤、しかし、今度はファーを直接狙う。ニアに飛び出しすぎていたGK長島は完全に想定外、緩いボールがゴール左へと吸い込まれた。0−4
 57分、清水、警告: 佐野孝

 61分、清水、ピッチ中央、最も荒れた位置でキープするOH前田がヒールで縦パスを入れ、池上がボールを右サイドに振る。RH佐野孝が縦に仕掛けるとボールがタッチ際でぬかるみで止まり、もう一度縦に蹴ってスピードでマークを置き去りに。高速の右クロスにFW藤牧が跳び込むが僅かに合わず、しかしPA内ファーにLH柴原。3歩のドリブルでマークを外し、左クロスはGK吉村が飛びつく。が、ボールをPA内に落としてしまい、ニアの池上が蹴り込んだ。1−4
 71分、清水、望月卓が右スローインを投げ込み、中央から相手LBの裏へ流れた前田が受ける、や否や、外を向いた姿勢から腰を痛めそうな捻りを入れてのアーリークロス。PA内ファーへと巻いて落ちるボールに対し、飛び出した柴原が右足アウトフロントでダイレクトボレーを撃つ。正確にGKの左肩下を突き、ボールがゴール右下へと転がり込んだ。2−4
 75分、岐阜、交代: 田中→森
 87分、岐阜、交代: 松井→21

岐阜工業     清水エスパルスユース
8(5) シュート 8(4) ×藤牧、×前田、◎池上、◎柴原、○藤牧、○柴原、×前田、×柴原
2(1) 右クロス 8(1) ×孝洋、×孝洋、◎前田、×孝洋、×孝洋、×卓馬、×孝洋、×卓馬
6(2) 左クロス 6(1) ×柴原、×前田、○江守、×江守、×江守、×柴原
1(1) 右側CK 2(1) ○杉山、×杉山
0(0) 左側CK 1(0) ×柴原
0(−)  犯OS  1(−) ・池上
6(1) ファウル 11(4) ×江守、・池上、×江守、×孝洋、・孝洋、・池上、・藤牧、・池上、・江守、・孝洋
               ×江守


●個人的MVP 前田 陽平
●個人的MIP 柴原 誠
●相手方MIP 益山 司

 プリンスリーグ東海、第1回優勝、第2回準優勝、第3回5位、第4回4位。輝かしい成績を残してきたチームの降格が決まった。15分の前田の1対1が決まっていたら、36分に鍋田圭・滝戸が共にぬかるみに足を取られる不運がなければ、44分の微妙なPKがなかったら、45分の杉山の右CKからの藤牧のヘッドが決まっていれば、89分の杉山の右CKのこぼれ球を拾った柴原のPA外シュートがバーを直撃しなかったら、そもそも、まともなピッチで本来のショートパス主体のサッカーができていれば、タラレバは多く、口惜しさは尽きることがない。それでも、やはり総合的に考えると、降格という結果は妥当なものだったと思えるのである。

 02年夏、クラ戦無失点優勝を置き土産にトップのコーチに昇格した行徳監督は、3年後05年に再びユース監督に復帰すると、その冬にいきなりJユース杯に優勝してみせた。一見、ユースの状況は何ら変わりなく順調にも見えたが、05年当時から行徳監督は、「ボールをしっかり止めて蹴る」技術の衰えに警鐘を鳴らしている。果たしてその1年半後、最悪の形でそれが現実のものになった。
 育成を語るとき、小学生年代ではボール扱いを、中学生年代では技術を、高校生年代では戦術観とフィジカルを鍛えるべきと言われる。脳・神経系は8〜12歳頃 (ゴールデンエイジ) に大きく発達し、完成してしまうため、柔らかく自然なボール扱いは中学生以前に身につけるものだ。だが、それも中学生年代に筋・骨格系の成長期を迎えると、体のバランスが狂うため、自然なボール扱いができなくなる (クラムジー)。だから、中学生年代は徹底的に基礎を反復練習し、大人の体で強く速くボールを扱えるよう、技術として完成させなければならない。逆に大きくなる体、速くなる足にかまけて狂いを放置してしまうと、狂ったままで技術が固まってしまう。

 翻って、今年の3年生は行徳監督が離れていた02-04年に、Jrユースに所属していた学年だ。この時期、行徳監督が求める「ボールをしっかり止めて蹴る」技術の必要性が、ユースからJrユースに伝わらず、なおざりにされていたのではないか。Jrユースでは何とかなるズレも、ユースに上がり周囲のフィジカルや戦術水準が高まれば、許されない範囲になる。せめてJrユースの選手がユースで使われれば、自分で自分に足りない部分に気づくこともあろうが、99年菊地・杉山浩、00年阿部、01年枝村、02年山本真と続いた抜擢例が、03-04年にないことに気づく。05年西澤・前田、06年鍋田亜・長島、07年柴原・成田までそれを待たなければならない。
 全く行徳監督の離れていた2年半、エスパルスのクラブとしての怠慢は痛恨であった。そして問題は、より育成の効果が表れるJrユースで沈殿されていた。今年のユースの降格は、そのツケを支払っているに過ぎない。05年に行徳監督がユースに戻り、伊達氏が育成チームGMに就いて以来、だいぶ改善されてきているとは思うが、今回の降格という事実をしっかり受け止め、更なる改善に努めてもらえるよう期待するばかりだ。


 さて、いきなり悔恨というか、愚痴から始めてしまったが、この決戦にあたって行徳監督はかなり手を加えて臨んだ。4-5-1から4-4-2に戻し、常に前線に2枚残す攻撃重視に。LHは出場停止の成田に代えて、本来CHの杉山を。そのため、攻撃はロングボールを除き、突破力のある右の佐野孝に偏ることになった。また、CBは山崎・小澤から、滝戸・鍋田圭のコンビに。ぬかるんだピッチではスピードとテクニックの1年生コンビより、3年生の経験と人に対する粘りに期待したのだろう。3年生5人、2年生5人、1年生1人。最後の決戦は上級生に賭けた。
 対する岐阜工は、U-18代表益山をチームの重心に置く4-1-4-1。正確なロングキックを持つ益山がサイドに散らし、そこからは岐阜工の伝統、ワントップを追い越す2列目のドリブルで崩そうとする。しかし、この日は泥のピッチ。PA横のスペースを狙うパスが、ぬかるみで止まってラインを割らないというメリットがある一方、なかなか攻撃にスピードが生まれず、引いて守る清水を崩せずにいた。その清水は2列目の押し上げのない攻撃ながら、佐野孝の馬力に任せた突破、そして何より悪いピッチ状況を苦にせず一人でDFを切り裂く前田の存在が、十分に脅威になっていた。

 だが、それも先制を許すまでのこと。シュートを許さず、殆どピンチらしいピンチもなかったにも関わらず、結局は1本のゴールキックから失点を喫してしまった。その後、慌てて攻めに出た清水は、数的同数の状況で結局、1対1の守備の脆さという開幕当初からの課題を克服できていなかった。中央を簡単に割られた1失点以降も、相手のドリブルをファウルで止めた2・4失点目、単純なロングボールを跳ね返せなかった3失点目と失点を重ね、0−4と早々に勝負は決まってしまった。その後、前田や途中投入の柴原を中心に意地を見せて2点を返すも、開き直るのがあまりに遅かった。
 ただ、泥のピッチを言い訳にしたくないのは、悪コンディションで錆び付かないテクニックこそ「本物」だからだ。特に前田のドリブルは奇跡的で、プレーが止まりやすい状況だからこそ彼独特の間合いの外し方、瞬間的な速さが輝き、2、3人に囲まれたぐらいなら軽々と抜いていった。フィジカルの不利に負けず、ここぞの時に変わらぬ正確なキックを披露していた柴原も同じ。それでも勝敗が逆になったのは、平均すれば岐阜工のテクニックが上だったから。高体連の試合で、普段から土の (雨が降れば当然泥の) ピッチでプレーしている経験値の差もあったろうが、益山が守勢から的確なロングキックで攻撃に繋げていたのに対し、清水はDFラインから繋げず、タッチに蹴り出してプレーを切ることが多かった。その差の累計が、この結果に繋がったのだと思う。


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