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2004年04月10日(土) プリンス東海 展望

清水エスパルスユース

静岡県代表(前回優勝)[静岡県] 監督・築館範男


 昨年度・初代プリンスリーグ東海王者。この優勝を始めに、クラブ選手権4強・高円宮杯8強・Jユースカップ4強と、昨年のクラブ勢で、広島ユースに次ぐ安定した成績を収めることができた。最後の試合となった市原戦の先発が、3年生5人・2年生2人・1年生4人と、下級生が半数以上を占めており、今年も継続して活躍を期待したいところだが、そう甘くはない。その市原戦の先発が示す通り、最上級生となった昨年2年生の選手層が薄いのだ。
 一方で、今大会のライバルとなるジュビロ磐田・名古屋グランパスエイト・藤枝東高などは、充実した世代が最終学年を迎える。四日市中央工業高も、全国でもトップクラスの2年生を組み込みながら、優勝争いに加わるだろう。高円宮杯出場枠の争いはこれらに、どんな年でも必ず戦えるレベルまで仕上げてくる静岡学園高と、守備の良い浜名高が絡む形か。高円宮杯の参加チームが24に増えたことで、東海の出場枠も3に拡大されたが、挑戦者の気持ちで勝負してもらいたい。

 強豪チームとの対戦が後半戦に回ったのは、清水にとって僥倖だ。今年は昨年以上に若いチームであり、組織としても固まっていないため、前半戦での対戦は避けたかったからである。Jrユースから大量13人が昇格した1年生は、杉山浩太世代以来の黄金世代。しかも、菊地や吉川のように外に流れることもなかった。彼らは受験疲れ・試合勘の遅れ・連携面の未熟、そういった要素に苦しめられながら、早くも結果を出しつつあり、激しいポジション争いが始まりそうな気配が漂う。その競争の中で定位置を掴みつつあるのが、FW篠田悠 (2) とDF村越 (3) 。篠田悠は、ここまでの練習試合で、17.2分に1本のシュート、51.6分に1ゴール、シュート得点率33.3%、枠内率58.3%と凄まじい数字を並べており、爆発の予感が漂う。村越はプレー以上に、声を出せるDFリーダーとして欠かせない存在だ。
 だが、チームはこの男が戻らない限り、完成の日を見ない。主将・枝村匠馬 (3)。中盤の底で溜めを作り、サイドに展開し、自ら強引に突破を仕掛け、ゴールを決める。組織の歯車を回転させる動力部でありながら、組織から外れて単独で試合を決めることもできる能力は、チームで彼だけのものだ。日刊スポーツ静岡版の記事によると、リーグ開幕に間に合わせるべく調整中のようだが、底知れぬ潜在能力を持つ枝村が責任感を持ち、常に全力でプレーできるようになれば、連覇も難しいことではない。一方、昨年から枝村と中盤の2枚看板として活躍し、今年はチーム全体の2枚看板にと期待される山本真 (2)。漸く怪我から復帰したと思ったら、すぐさま1世代上のU-19代表候補合宿に呼ばれ、無理が祟ったか怪我を再発。偉大なる労働者である彼の不在は、チームを不安定にするかもしれない。
 下級生が多く、2枚看板は不完全な状態。昨年秋から新チームへの移行を進めてきた他のクラブ勢とも、既に真剣勝負の新人戦を戦ってきた高校勢と比べても、チームの組織力はかなり未熟。3位以内に向け、浜名戦から東邦戦までの前半4試合で、最低でも勝点6、できれば8を奪いたい。後半戦に強豪との対戦を残すとはいえ、その頃にはライバルに負けない戦力を整えることも、さほど難しくはないだろう。ちなみに優勝した昨年は、初めの4試合を勝点7で折り返した後、残り5試合5連勝でフィニッシュしている。


■選手名簿
 別記参照方。


■基本フォーメーション(名前の横は学年)
−−−−−−−−−−篠田悠輔2−−− 長沢駿1 −−−−−−−−−−
                  (町田朋弥1)
− 岡村総一郎3 −−−−−−−−−−−−−−−−−−小泉慶治1−−
  (鈴木真司3)                   (高野一也2)
−−−−−−−−−−山本真希2−−−枝村匠馬3−−−−−−−−−−
          (谷野由紘2)  (上埜健太3)
−−桑原卓哉1−−−村越大三3−−− 岩本大1 −−−高野美臣2−−
                  (石垣勝矢2)
−−−−−−−−−−−−−−前田陽平2−−−−−−−−−−−−−−

 序盤、欠場が予想される枝村・山本真の代わりは、上埜・谷野・池田が候補になる。築館監督はCHの役割を、司令塔 (レジスタ) と潰し役 (インコントリスタ) に分けたがる傾向があり、枝村・上埜が司令塔候補。山本真・谷野・池田は、潰し役として考えられてるようだが、彼らには試合を創る能力もあり、どう組み合わせていくか見所だ。特に谷野は、パスセンス・競り合い・運動量と、山本真を彷彿させるハイパフォーマンスを示している。
 FWでは、町田が73分に1ゴールという結果を出しているが、スーパーサブ適性を出している彼をベンチに残し、先発では長沢のポストを使うのが有効か。CBも激戦区。ここにきて、1年生ながら、岩本のクレバーな判断の希少価値が上がっている。昨年、先発の定まらなかった右SHと左SBにも、1年生の小泉・桑原卓がポジションを奪いそうな勢いだ。左SHでは、怪我の多かった鈴木真より、岡村の方が良い動きを見せている。
 気がかりなのが、GKの前田・山崎晃が現在、怪我で別メニュー調整中の点。代わりを務める風間はU-14NTC歴もあるGKだが、やはり久々の再コンバートとあって、相当苦労している。シュート失点率は、前田が14.3%、山崎晃が11.1%なのに対し、風間は22.6%だ (昨年の山本海は9.6%)。今のサッカーはGKの果たす役割が日増しに増大しているが、特にユース年代では、良いGKとストライカーがいるかどうかで、勝敗が大きく左右されてくる。前田の早期復帰を祈りたい。


■出身現役Jリーガー
 平松康平、市川大祐、池田昇平、太田圭輔、村松潤、鈴木隼人、高木純平、鶴田達也、杉山浩太、阿部文一朗、山本海人(いずれも清水)、野澤洋輔(新潟)、谷川烈(水戸)


■チームプロフィール
 概要は、
昨年のものを参照方。
 監督は、一昨年の9月に就任した築館範男氏 (44歳) が、引き続き務める。戦術的にはオーソドックスな監督で、流動的なポジションチェンジで人とボールを左右中央にバランスよく動かすのが基本。MFがオーバーラップした最終ラインを埋める動きを徹底するなど、サイド攻撃の際に片方へ人が偏重気味だった従来の清水とは、一線を画する。大胆な選手起用やコンバートを厭わず、下級生に積極的に経験を積ませるなど、育成の監督として、その勇気と熱意は高く評価できる。が、交代の遅れ、試合状況の変化に対する柔軟性の無さ、修正術の粗雑さなど、勝たせる監督としては、やきもきさせられることも多い。
 コーチは昨年就任した、小池良平氏 (23歳)。試合の時には、アップを担当している。選手と歳が近いせいもあるだろう、柔和な表情で和んでいるところを、よく見かける。そして、今年から新たにユースのコーチングスタッフ入りしたのが、GKコーチの2人、高祖和弘氏 (45歳) と梅村芳生氏 (22歳)。年長でS級ラインセンス所持、J1・J2での実績も十分な高祖氏は、試合中に大きな声で与える自信に満ちたコーチングが印象的。ユースのOBでもある梅村氏だが、4月1日から (株) エスパルスに就職となる流れなのか、まだ私は氏の姿を見かけていない。


■試合日程と展望
◆浜名高校 (初顔合わせ)
04月17日(土) 14:15 清水総合運動場陸上競技場
 忠実なプレッシングと高い戦術理解を基盤に、1−0 (ウノ・ゼロ) の勝利を得意とする、静岡高校新人戦王者の評判は高い。怪我人が続出している清水としては、緒戦では当たりたくなかった相手だ。主将のMF松本征也と、MF/DF倉橋秀幸の両名は、今年の県選抜にも選ばれている。

◆暁高校 (初顔合わせ)
04月24日(土) 12:00 日本平スタジアム

◆藤枝東高校 (03年:○4−1)
04月29日(木) 14:15 草薙総合運動場球技場

−−−−−−河津−−中村−−−−−−
−−閨谷−−−−柴田−−− 鈴木崇 −
−−−−−−増田−−赤星−−−−−−
−−−−井上−−小関−−村松−−−−
−−−−−−−−碓井−−−−−−−−

 昨年度高校選手権での失態のせいか、過小評価されているきらいがあるが、プリンス東海高校勢で、最もタレントを揃えるチームが、藤枝東だろう。今年の3年生は、成岡・大井らが最上級生を迎えるにあたって、藤枝東が県内で一番人気だった年の新入生。富士の赤星から引佐の柴田まで、幅広く人材が集まっている。2年生にも、早生まれでU-16代表に選ばれる鈴木崇・岸佑ら、人材は多い。
 新人戦の情報を元に予想布陣を組んでみたが、超が付くほど攻撃的。スピードのあるサイドの2人は、前掛かりになりがちで、前線の5枚が全てドリブルで勝負するタイプ。ダブルボランチはパッサーの増田、ゴール前に出てくる赤星の違いはあるが、共に攻撃面に長がある。小関兄 (弟は清水JrユースのDFリーダー) を軸とする3バックすら、179cmの村松を除いて、読みとビルドアップで貢献しており、ボランチで起用されても違和感がない。
 清水としては、そのアンバランスを突きたい。真希を中心とした中盤のプレスで優位に立ち、SBが確実にWBの攻撃を抑えた上で、枝村の広角度フィードからWBの裏にSHを走らせる展開になれば、最高だ。02年の中日本リーグで3−0で完勝して以来、4連勝中と相性も良い。藤枝東にはJrユースから、3年の赤星・滝田哲、2年に中村が進学しており、それぞれ枝村・真司 (岡村)・石垣あたりとの同期対決を見てみたいものだが、どうなることか。


◆東邦高校 (03年:○6−3)
05月08日(土) 12:00 トヨタスポーツセンター

◆四日市中央工業高校 (03年:△1−1)
06月12日(土) 14:15 岐阜・長良川球技メドウ

−−−−−−南川−−坂井−−−−−−
−−−−−−−−高原−−−−−−−−
−−−−中林−−守屋−−高石−−−−
−−西井−−池田−−藤澤−−中川−−
−−−−−−−−水谷−−−−−−−−

 昨年度の高校選手権でインフルエンザで選手が離脱しながら、優勝した国見を最も苦しめたチームとして有名だが、今年の戦力も劣らない。恐らく、プリンス東海の高校勢で一番充実しているチームだろう。特に2年生の選手層は、清水と一、二を争う。上記は、これからの成長を目して2年生中心に組んだ布陣だが、更にFW若山、DF大塚など、漏れた好素材が数多く存在する。
 藤枝東と比べると、様々な特徴を持ったタレントをバランス良く揃えるのが特徴。さらに、戦術的にもバランスが良く、U-16代表の中川に象徴される綺麗なフラット4と、トレスボランチでゴール前のスペースを消す様は、東海のクラブ勢を上回るモダンさがある。現代サッカーでは、DFラインからチームを作ると言うが、この最終ラインが四中工の要石と言えよう。攻撃面でも、スピードのある南川を機先として縦方向に鋭く、かつ高原や中林のようなセンスフルなMFを配する。
 昨年の阿部ですら破れなかったこの守備システムを、個人の力で壊すのは難しい。長沢のようなポストプレーヤーに、中盤から枝村らが絡む展開を望みたいところ。守備ではカウンターには勿論、セットプレーに特に注意したい。中川・池田らに高さがあるだけでなく、修練された豊富なパターンを持っている。このあたりも、実にモダンなチームだ。


◆名古屋グランパスエイトユース (03年:●1−3)
06月26日(土) 16:00 岐阜・長良川球技メドウ

−−−−−−津田−−上村−−−−−−
−−永芳−−−−高橋−−−−遠藤−−
−−−−−−福島−−稲垣−−−−−−
−−−−青山−−吉田−−小寺−−−−
−−−−−−−− 森 −−−−−−−−

 名古屋は去年、一度も全国大会の決勝トーナメントに進めなかった。が、それは3年生が3人しかいなかったという、特殊なチーム事情のため。今年は、去年からスタメンを張っていた8人がそのまま残った。更に清水が2度も (残り1度は磐田が) 阻んだせいで、一度も全国に行けなかった昨年度Jrユースは、しかし逸材揃いとして知られ、順調に選手が昇格。U-16ナショナルトレセンに3人 (澤田・青山・根津) が選ばれた2年生も含め、タレントの数では全10チーム中トップだろう。本大会優勝の対抗。
 オランダ人監督ブラーツ氏が率いるチームは、戦術レベルも高いが、一方で「ボールを持ったら、行けるところまで行け!」と、久保嘉晴な部分を持つ。守備時に、ボールより前に出る選手に必ずマークが付いた上で、一人余るのだが、攻撃時には、ボールより後ろで残る相手FWのマーク+1人を残して、最終ラインの選手を含め、次々に攻撃参加するのだ。最後を仕上げるのがエースの津田。枠を外しがちなのが玉に瑕だが、裏に飛び出すセンスと積極性で、盛んにシュートを放ってくる。
 こうした攻撃的采配を可能とするのが、ボランチの稲垣。フィジカルと戦術眼に長けた、名古屋の脳であり、心臓である。彼を抑えられると、名古屋は脆い。また、攻撃時と守備時で、選手のポジションが大きく異なるのも特徴。故に、真希や更に前線の悠輔が率先するフォアチェックからの速攻や、低い位置から枝村、或いは後ろの村越・岩本の大きく縦に速い展開が有効だろう。守備では、高い位置でサイドに張る両ウィングにスペースを与えないように心掛けたい。


◆ジュビロ磐田ユース (03年:○4−1)
07月03日(土) 18:00 ヤマハスタジアム

−−−−−−藤井−−岡本−−−−−−
−−−−−−−−中村−−−−−−−−
−−増田−−上田−−徳増−−宮本−−
−−−−萩原−−森下−−和田−−−−
−−−−−−−−八田−−−−−−−−

 間違いなく、今大会の「本命」だ。個人のタレント、組織の熟成度、経験値、全てがトップクラスである。特にタレント性では、センターラインのGK八田−DF森下−MF徳増・上田・中村−FW藤井・岡本、最終学年を迎えた彼らが全て、ナショナルチームの経験者。とりわけ八田・上田・藤井・岡本は、須藤U-16代表がアジア最終予選に臨んだ時のレギュラーメンバーであり、森下もメンバー入りしていた。
 だが、磐田の脅威は、そのタレントを戦術の「駒」として、機能させている点だ。前線の岡本・藤井がダイアゴナルランからクロスオーバーを繰り返し、マークがズレたスペースを中村が突く。彼らが豊富に動くため、3列目の上田・徳増からは勿論、最終ラインからのロングフィード一発で、試合を決めることも可能。その最終ラインは、森下を中心に綺麗なラインを作っており、容易にスペースを与えない。Jユースカップ以降、トップに昇格したMF船谷・GK松井以外の3年生が引退し、下級生中心で試合を重ねており、連携面にも不安がない。欠けているものがあるとすれば、勝者のメンタリティぐらいだろう。
 磐田と対戦する場合、最低限の戦術適応力がなければ、お話にならない。最終ラインと2列目は、スペースマークを意識しつつ、マンマークの受け渡しに細心の注意が必要だ。前田のコーチング、村越のリーダーシップ、岩本のカバー、高野美のポジショニング、中盤に池田を入れるのも良いだろう。攻撃では、セットプレーが狙い所。空中戦最強・石垣の、攻守にわたる使い方が、清水にとってポイントになりそうだ。


◆岐阜工業高校 (03年:○1−0)
07月10日(土) 18:15 大垣浅中公園球技場
 昨年のプリンス東海で3位だった岐阜工だが、今年は岐阜の人材が各務原高に集まった学年だそうで、シーズン前にも大野監督が「今年は残留が目標」と話していた。その大野氏が、転勤で監督を辞任。厳しい年を迎えている。

◆静岡学園高校 (03年:○2−1)
07月17日(土) 18:15 藤枝総合運動公園サッカー場

−−−−−−先崎−−伏見−−−−−−
−−−−能登−−−−−−狩野−−−−
−−−−−−清水−−青木−−−−−−
− 望月和 −前島−−木庭− 中村友 −
−−−−−−− 杉山力 −−−−−−−

 昨年プリンス東海2位、高円宮杯準優勝の静岡学園だが、今年は県高校新人戦の決勝トーナメント1回戦で、決して強豪とは言えない静岡西に0−3の完敗を喫するなど、苦しい戦いが続いている。飯塚・小林・松下、昨年の守備の三角形は、中盤から前線がいくら奔放でも、彼らだけで数的不利を覆すクレバーさと、1対1の強さがあった。今年は、それがない。確かに前線には「天才」狩野に、静学ドリブラーな能登、「大器」先崎と、タレントはいる。高円宮杯を沸かせた157cmDF・中村友のオーバーラップも魅力的だ。が、現状では標榜するブラジリアンサッカーも、格好のカウンターの餌食。とはいえ、井田監督は、相手の長所を巧みに消す、確かな戦術眼も持つ。油断は大敵だ。
 変な横綱相撲は、必要ない。挑戦者の気持ちで、クラブユースらしい伸び伸びとしたプレーを見せてほしい。それが結果として、井田氏の裏をかくことになるはずだ。枝村のロングドリブルシュート、真司のファンタジー、町田のゴール前の執着心、存分に見せてほしい。守備では、狩野のプレースキックに警戒が必要。村越や石垣、美臣らには、ファウルに気を付けた慎重な守備が求められる。また、前田・岡村・美臣・雄也・真希・上埜・望月・谷野らには、学校の友人に自らの存在をアピールするチャンス。一方、静学のMF青木、DF望月和はエスパルスサッカースクール静岡、予想布陣からは外れたが2年のMF村松は、Jrユースの出身である。


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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