2003年10月05日(日) |
高円宮杯 東福岡高校戦 |
03年10月05日14:15開始 さいたま市浦和駒場スタジアム 高円宮杯 第14回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会 対 東福岡高校 ※45分ハーフ
▼布陣 −−−−−真司−−阿部−−−−−
−大瀧−−−−−−−−−−柴田−
−−−−−真希−−枝村−−−−−
−篠田−−高柳−−村越−−森安−
−−−−−−−海人−−−−−−−
控え:前田、石垣、高野、上埜、岡村、谷野、獅子内 交代:後半20分:柴田→獅子内(そのまま右MFに) 後半39分:篠田→高野 (そのまま左SBに)
東福岡高校:
−−−−−−− 角 −−−−−−−
−菰田−−野内−−新内−−香川−
−−−−−−− 堤 −−−−−−−
−清水−−近藤−− 原 −−砂田−
−−−−−−−坂本−−−−−−−
交代:後半11分:野内→花田、後半41分:堤→葛城
▼試合展開 筆者にとっては、藤枝までは片道3時間掛かるが、駒場までは片道1時間、楽なものである。…と思ってたら、埼京線と京浜東北の乗換を怠って、中浦和から歩くことになったが。しかし、清水の選手にとっては逆に、片道3時間掛けて駒場に向かわねばならない(前泊はしなかったそうだ)。国見との激戦の翌日に、この移動は楽ではない。そんなことを思いながら、今大会3つ目の高円宮杯ストラップを入口で頂戴する。観客席は、昨日の藤枝の盛り上がりと比べると、やや寂しい入り。一応、発表によると1534人とのことだが、広島−国見戦後に帰った観客も多かったので、清水の試合ではそれほどいなかったと思う。
清水は、遂にスタメンを弄った。谷野→柴田だけだが(笑)。今大会、好調が光っていた谷野だが、国見戦では相手の超高校生級の圧力を受けて、後半は完全にグロッキーになっていただけに、仕方あるまい。とはいえ、グロッキーになっていたのは何も谷野だけではない。築館監督としては、連携面や経験値も考えて、あまり手を加えない選択をしたのだろうが(何しろ、大きくスタメンを変化したクラセン浦和戦では大敗を喫している)、選手交代が一つ、鍵を握りそうだ。 一方の東福岡は、緒戦の星稜戦に大苦戦(3−2)、二戦目の広島ユースには0−5の完敗と調子に乗れないでいたが、引き分けでは勝ち進めない帝京戦で4−0と爆発。今や勢いがある。本山の時代に三冠を達成した全国有数の実力高だが、一時代を築いた4−1−4−1システムは、志波前監督が謹慎した今年も健在。1トップと1ボランチの間に配置された4人のMFは、伝統的にキレで勝負するドリブラーが多く、得点力も高い。4−4−2を採用する清水としては、4バックと2ボランチが守備に終われるような展開だけは避けたいところ。枝村・真希の攻守における切替の速さが、勝敗を分けると見たが、果たして。
(試合開始前。集合写真は後列が左から海人、枝村、高柳、阿部、真希、森安。前列が村越、篠田、柴田、真司、大瀧)
[前半] 試合は前日の大勝の勢いそのままに、圧倒的な東福岡ペースで始まる。いきなり2分、サイドに開いた篠田への海人のパスがずれてトラップが乱れたのを見逃さず、香川がカット。香川はボールと篠田の間に体を張って譲らず、縦に抜けて右クロスを送る。これは高柳が弾き、だが運悪く軌跡を変えたボールは2列目からフリーで入った野内の下へ。ダイレクトで押し込んだが、海人が国見戦から続く超反応を示し、片手一本でシュートを弾き出した。 その後は清水が持ち直し、8分、相手にクリアさせたボールを狡猾に拾った真司がチェンジサイド、森安→枝村→真希→柴田→真希と渡る清水らしい展開に、最後真希のドリブルは跳ね返されるが、森安が拾って枝村を経由し、大瀧がミドル。一度ブロックされたボールを再度ダイレクトで狙ったが、枠の上に外れる。12分、今度は東福岡。村越のクリアを角が遮り、左クロスを菰田がPA手前でフリーで合わせたが、枠上におつきあい。13分、またも狡猾にクリアを拾った真司からスルーパス、大瀧がダイレクトで左クロスを送ると、165cm柴田のヘッドはファーに外す。続いて14分、真司が粘ってキープすると、真希が大瀧とのワンツーから抜け出す。最後のシュートはDFに当たったが、そこに柴田が飛び込むも、僅かに合わず。
ここまでは一進一退。だが、ここから一方的に押し込まれる。清水は肉体的に消耗戦後の疲労、精神的には激戦を終えた達成感に加え、戦術面でも東福岡の4−1−4−1に無策であった。アウトサイドMFを共にライン際に張らせる特徴的な相手戦術に対し、両SBは普段と変わらず中に絞りがち。無策の理由は不明だが、フィールドの中の選手達が自ら対応することを望んでのことだろうか? チェンジサイドの度に、左右MFがフリーになっている場面が目立った。 まずは16分、菰田の左突破から香川の左CK。これを原が合わせるが、目の前にいたGK海人が咄嗟に弾く。こぼれ球を菰田が角度のない位置から詰めたが、一直線にファーへと抜けた。18分、またも菰田の突破、森安を交わして上げた左クロスにファーで角が完璧に合わせたが、シュートは完璧ではなく、コースを外す。 19分、今度は右から。スローインを砂田が投げ入れると、角は高柳を背負いながらPA内で体を張り、ボールを浮かせながら強引に反転して切れ込もうとする。高柳も体を張って角の突破を許さないが、動けない二人の隙に、2列目から野内が突っ込み、至近距離からシュートを放つ。だが、コースを予め埋めていた海人が、何事でもないように正面で「キャッチ」した。25分にも右から。香川のクロスを新内が後ろ向きで胸トラップ、落としてヒールで裏に流すが、篠田がリターンを受けに来た香川の前に入り、CKに逃げる。菰田の右CK、ファーで堤が折り返し、角がヘッドで狙うが、これも枠上。元来、セットプレーに脆さがある清水だが、昨日の集中力とは及びもつかない。 その後、33分に奪った枝村がそのまま、50Mロングシュート。枠外に外すが、13分から20分ぶりのシュートと考えれば、これも「あり」だろう。34分、今度は森安がパスミス、拾った左SB・清水がロングフィードを送ると、角が村越を背負いながら巧く頭で左に流し、そこにまたも菰田。だが、ミスをした森安が自らカバーした。36分、久々に前でボールを受けた枝村から、スルーパスで篠田が攻め上がり、大瀧のボレー…はDFブロック、こぼれて更に阿部のボレー…もDFブロック、なおも真司がバイシクルで狙うが、GK坂本が機敏に前に出てこれをキャッチした。
この時間帯になって東福岡、前の5人によるフォアプレスが緩み出し、引きこもっていた清水も前に出てくる。だが、試合というのは、圧倒的な攻勢(守勢)よりも、こういう時にこそ動くのはサッカーの道理。事実、40分には3対4の大ピンチを迎えるが、菰田の左クロスに新内のヘッドは当たり損ねて、難を逃れた。すると41分、柴田のスルーパスに右へ流れた阿部が2人に囲まれながら粘ると、戻して柴田の右クロスに枝村がフリーで頭が合わせたが、ファー。続けざまに42分、枝村のダイアゴナルフィードが大きく開いた大瀧へと綺麗に渡ると、PA内左端まで持ち上がってグラウンダーでマイナスのクロス。ファーで待つエースの阿部が、左足ボレーで合わせる動作、しかし、咄嗟の判断で左足アウトサイドで、ちょこんとしたパスに切り替える。東福岡DFは完全に振られ、左60度で待つ真司がフリーで15Mシュート! だが、枠の上に外してしまう。 決めるべき時に決めないと、相手に決められるというのも、サッカーの道理。43分、香川が奪われたボールを砂田がフォロー、ハーフライン付近から一気にPA右角まで攻め上がり、強引に突破を仕掛けるが、粘る清水DFに引っ掛かり、ボールだけが前に転がる。しかし、ワントップの角が受けて突破を続行、10Mもない至近距離、だが角度は殆ど無かったが、ならばと上に角度を付けたシュート。それは海人のニアを抜けて豪快にゴールの「天井」に突き刺さり、東福岡が先制する。0−1。 清水も44分、大瀧が相手の懐に体を入れて奪うと、相手を背負った状態からヒールスルーパス。シンクロ率100%の阿部が受けて返すと、再び大瀧。だが、当たり損ねて枠を捉えられない。 ロスタイムは殆どなく、前半終了。このチーム状態では、1点差も重い。
(前半30分頃、スローインから清水の攻撃。1トップを残して全員が戻っている東福岡に対し、速攻でもないのに清水の攻め手は僅か4人。これでは勝負にならない)
東福岡 清水エスパルス 12(6) シュート 7(2) ×大瀧、○真希、×枝村、○真司、×枝村、×真司、×大瀧 5(2) 右クロス 2(1) ×柴田、○柴田 8(3) 左クロス 3(2) ×大瀧、○篠田、○大瀧 1(1) 右側CK 2(0) ×大瀧、×大瀧 1(1) 左側CK 0(0) 0(−) 犯OS 1(−) 真司 3(−) ファウル 9(−) 阿部、??、柴田、??、阿部、村越、阿部、阿部、森安
[後半] 後半は清水がキーを入れ直す。追う展開となって、体力の残量を考えずに第三の動きを徹底。第四、第五まである普段のサッカーからは物足りないが、それでも随分と持ち直す。また、守備面でサイドに張る左右サイドMFをキッチリと両SBが付き、「ヒガシらしい」攻撃を停滞させることに成功する。1トップの下のスペース(バイタルエリア)は両ボランチが見ることになる。 試合に目を移すと、開始直後、センターサークルから村越のFKを、低い弾道に合わせて阿部がバックヘッド。前に出ていたGK坂本がキャッチするが、機先を制す。すると1分、中盤中央で真司がスライディングタックルで奪取。一瞬、周囲がボールを見失う間があり、真司が両足の間に挟んでいたボールをポンと叩くと、横で枝村が受けてドリブル開始。虚を突いて一気に中央を持ち上がり、右に叩くと立ち上がって追い掛けていた真司へ。真司はPA手前、第三の動きの阿部にリターンを返すが、マークの付いていた阿部はこのパスをスルー気味にヒールで軌跡を変えて左に流す。そこに第二の動きの枝村が駆け込み、フリーでシュート。GK坂本、横っ飛びで反応したが、勢いを殺せずに後逸し、シュートはネットに吸い込まれた。1−1。 体力の残る間に逆転したい清水は、サイドの守備から解放された大瀧を軸に攻めた。11分、左で真司と篠田が絡んだ攻撃は跳ね返されるが、真希が奪い返してチェンジサイド。森安がフリーになり、一気に40M近くを攻め上がって、たまらずファウル。PA右角からのFK、大瀧の蹴ったボールは壁×5のニアを抜けて、ゴールの右下隅に突き進むが、GK坂本反応し、こぼしたボールはDFがクリアする。 なおも15分、真希が突破から篠田とのワンツーでPA内に侵入し、大瀧にラストパスを送るが、シュートに威力なくGK。続けて真司のポストから右に流し、柴田の右クロスはDFにクリアされるが、森安が拾って枝村のPA手前からのミドル、しかし枠上に外れる。どちらも決定的な場面で決まらないのは、足腰の疲労で踏ん張りが利かなかったからかもしれない。この間、東福岡の攻撃は新内や香川、角らの散発的な突破に抑えていたが、徐々に魔法の解ける時間は迫っていた。21分、村越のパスを受けた森安が裏に走らせるパスを出し、獅子内が受けて角度のない位置からシュートを放つも上。
27分、篠田が自らスローインを入れると、阿部のポストを経てPA内に切れ込み、左45度で待つ大瀧に「どうぞ」といった感じのパスを差し出すが、またも枠外。この時間まで、シュート数が8対3と圧倒していた清水だが、これを最後に辛い時間が始まる。続いて28分、東福岡・新内が菰田とのワンツーでサイドを抉り、左クロスに村越が食いつくもクリアしきれず、最後、角のボレーは上。すると、この久々の東福岡の攻撃を契機に、足を攣る選手が続出。枝村が担架で外に運ばれたのを皮切りに、大瀧、阿部、篠田が次々と痛み、清水にとっては切ない場面が続く。特に枝村は再入場した後も殆ど動けず(動かず)、大瀧は動いてはいるが信じられないトラップミスをしたりする。実質、9人対11人に近いものがあったが、清水ベンチに動きなし。辛い。 当然、流れは「人数の多い」東福岡に。35分、香川が奪って角にクサビ、叩いて花田が高柳を抜いて裏のスペース40Mを踏破、最後に右から折り返そうとするが、高柳がここで追いつき、右CKに変わる。すると、キッカー菰田の選択はショートコーナー。香川が受けて戻し、再び菰田が右クロスを送ると混戦に。そこから堤が抜け出てシュート、が、至近距離には滅法強いGK海人、それすらもキャッチする超反応を示す。 防戦一方の清水だったが、前日に帝京と決勝トーナメント進出を賭けた試合を行っている東福岡も、余力があるわけではない。スペースが空き始め、徐々に運動量で劣る清水も技術で繋げる場面が出てくる。39分、殆ど立っていただけの枝村からスルーパス。阿部が受けてサイドに流すと、獅子内が右サイドを抜け、送ったクロスを更にファーで大瀧が折り返して、混戦となる。阿部が強引に突っ込んで押し込んだが、DFがブロックし惜しくもCKへ。ここで遂に、遂に清水ベンチが動く。だが、交代は枝村でも大瀧でもなく、篠田(→高野)。確かに篠田も痛んではいたが…。 大瀧の左CKはニアで東福岡・清水が跳ね返し、2本目。41分、今度はGK坂本が掴むと、低弾道フィードが前に残る花田へとピタリ。対応するは真希と高野。途中投入で余力ある花田、だが対応した真希は、巧妙に縦を切って右(東福岡にとって左)に追い込んでいく。しかし花田は、そこで大きくサイドチェンジすると、一人残る高野の前に広大な右スペースがあった。引き出されるように菰田が駆け上がり、スピードの乗って1対1。高野も縦を切ったが、菰田は本来「左」MF、そう、利き足は左である。中に切れ込み、PA内シュートを遮るものはなく、鮮やかにゴールに突き刺さった。1−2。前半のサッカーの道理は、後半も通用した。そして、選手交代は完全に裏目に出た。
だが、清水にも意地がある。43分、真希のクサビを阿部がPA内から戻ってポスト、右の獅子内に戻す。獅子内は粘って横に叩くと、そこで茫と立っていた枝村が一瞬輝き、左にサイドチェンジ。動けなくても、パスは正確。スペースで待っていた真司が受け、中に切れ込みながら上げた左クロスに、ニアで飛び込んだのは真希。この最後の局面で、相手DFと交錯しながらも競り勝ったヘッドは、ループ気味にGK坂本の腕を抜けたが、ライン上で東福岡CB原が奇跡的なバイシクルクリア。だが、それで終わらない。真希と東福岡DFが起き上がれないPA内、興奮と失望と安堵感、それらが綯い交ぜになって刹那、生まれた虚を突いて、クリアボールを拾った森安が得意の右45度ミドル。しかし、立ち上がろうとしていたGK坂本が、反射的な横っ飛びでキャッチし、リードを死守した。 2度の超決定機を失った清水は、ロスタイムにも速攻を許し、右寄りで中央突破する香川が、中に切れ込みながらスルーパスを送る。清水最終ラインは裏をカバーしようにも、肉体的にも精神的にも限界。みすみす葛城に抜け出され、PA内1対1から放ったシュートは、GK海人の逆を突いて右隅に吸い込まれた。1−3。勝負は決した。 その後、枝村のスルーパスを強引に阿部が突っ込んでシュートまで行くが、コースも殆どない状態で飛び出したGKの逆を突くこともできず、枠外。表示されたロスタイム1分は既に過ぎており、これで試合終了。力尽きた。
東福岡 清水エスパルス 10(6) シュート 12(6) ○阿部、◎枝村、×大瀧、○大瀧、○大瀧、×枝村、×獅子 ×大瀧、×真司、○真希、○森安、×阿部 6(2) 右クロス 3(1) ×真司、×柴田、○獅子 4(0) 左クロス 4(1) ×枝村、×篠田、×大瀧、○真司 4(0) 右側CK 3(0) ×大瀧、×大瀧、×大瀧 1(0) 左側CK 0(0) 0(−) 犯OS 0(−) 3(−) ファウル 5(−) 阿部、村越、獅子、村越、森安
(戻ってくる選手一人一人に、握手して迎える築館監督)
(戦い敗れて…)
▼試合結果 清水エスパルスユース 1−3 東福岡高校 得点:前半43分:東福岡・角廣介 (砂田純希 ・スルーパス) 後半01分:清水 ・枝村匠馬(阿部文一郎・ポストプレー) 後半41分:東福岡・菰田恭己(花田卓也 ・サイドチェンジ) 後半44分:東福岡・葛城侑樹(香川毅志 ・スルーパス)
▼選手寸評 ●山本真希 90分出場:シュート2(枠内2)、 国見との消耗戦の翌日で、ここまで走り回れる1年生がいるだろうか? 後半、枝村のいなくなったバイタルエリアを一人でカバーした運動量と競り合いの強さは驚異的。枝村のようなクリエィティブなパス回しはないが、ドリブルの破壊力は終盤に掛けて威力は増した。
●山本海人 90分出場:被シュート22(被枠内12、失点3) 3失点はしたものの、海人がいなければ前半の時点で一方的な試合になっていただろう。読みの良さを示した滝二戦、競り合いに力強さを見せた国見戦に加え、この日は至近距離での超反応が冴え渡った。大会を通して、最も安定してパフォーマンスを見せた選手(札幌戦は出番なし)。
●鈴木真司 90分出場:シュート3(枠内1)、クロス2(成功1、右1左1) 「壊れた玩具」の尊称に加えて、某N氏より「愛すべき馬鹿野郎」の尊名を受けた(笑)。対する相手が強く、大きくなるにつれ、小柄な自分との関係でそれを利用し、巧みに騙す工夫が活きる、望月副本部長の好むタイプ。このまま「ズルい森島」として大成できるか?
個人的好印象選手:菰田恭己(3年)、花田卓也(3年)
|