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2002年12月15日(日) Jユース杯 決勝トーナメント 愛媛FC戦

02年12月15日13:00開始 清水エスパルス三保グラウンド
 第10回Jユースカップ2002・Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント1回戦
 対 愛媛フットボールクラブユース

▼布陣
−−−−−仁科−−阿部−−−−−

−真司−−−−−−−−−−上埜−

−−−−−大瀧−−枝村−−−−−

−森安−−高山−−渡邊−−天野−

−−−−−−−海人−−−−−−−

控え:風間、高柳、村越、雄也、篠田、岡村、拓也
交代:後半21分:上埜→拓也(そのまま右MFへ)
   後半40分;高山→高柳(そのままCBへ)
   後半42分:真司→岡村(そのまま左MFへ)

愛媛フットボールクラブユース:

−−−−−尾花−−久富−−−−−

−−−好光−−西川−−木山−−−

−−−−−−−玉井−−−−−−−

−吉長−−深水−−徳倉−久保田−

−−−−−−−木下−−−−−−−

交代:後半34分:久富→西山、後半37分:玉井→池内、尾花→前田、後半44分:木山→寺田


▼試合展開

 だから、何故に天皇杯とJユース杯を同じ時間にぶつけるかね。少し時間をずらせば、ハシゴしようとする人間もいると思うのだが、私みたいに。
 しかし、静岡は暖かい。日も優しく、東京から来た人間には天国のようだ。まもなくシーズンもオフということで、三保グラウンドは荒れ気味。何より困るのは、今日はグランドの中央にフィールドが敷かれてしまい、どちらのサイドからも今一見にくいということだ。
 会場はやはり観客は少なく、30名ほど。しかし、愛媛からは選手も含めてバスが2台出たようで、20人近い親御さんたちと、10数名の控え選手が必死に応援を送った。そう、これは最早アウェイである。ユースの選手は、こうした声援に慣れておらずに萎縮する傾向があり、最近だと仙台育英高戦でそうした姿があった。心配なところ。

[前半]
 さて、試合は開始2分、いきなり愛媛FCが右クロスからシュートを放つ。清水も3分、真司が左サイドの突破から切り返し、角度のない位置から意表を突いてシュート。GKがCKに逃れると、ニアを狙った枝村のキックは、DFが跳ね返す。これを拾った真司がクロス、逆サイドに流れたボールを上埜が追い付いて折り返すと、タッチラインギリギリで枝村が右足を合わせたが、GKこれをキャッチ。互いにサイドで攻撃の姿勢を打ち出した、激しい立ち上がりとなる。その後も清水は、人数を掛けずに左の真司を軸に個人突破で攻撃する。対する愛媛FCは、前回の対戦同様、多数が連動して惜しむことなく前線から動き回る。
 11分には、愛媛FC、中央から西川が突破を仕掛けると、反転、右に流す。45度の位置から木山がアウトに強烈な回転を掛けたボールは、海人の指先を抜けて曲げてきたが、阻んだのはファーポスト。ポストやバーに助けられるのは、前回の対戦に続いて2回目。幸運に助けられただけとは黙ってはいられないとばかりに、清水は15分、右に開いた阿部がクイックネスでマークを外し、センタリング。中央の大瀧が軽く左足を合わせて落とすと、右横で真司が左足一閃。その強烈なシュートを阻んだのは、またもファーポスト。リバウンドには着実に阿部が詰めていたが、シュートは着実性なく枠の上へ。やはり、勝利の女神は両者に平等である、甚だ無念だが。

 だが、前回の試合と異なり、愛媛FCの運動量は落ちない。前線は目まぐるしくポジションチェンジを繰り返し、同時に選手が入れ替わってもFW・トップ下・サイドMFでトライアングルを作る戦術が徹底されており、サイドで起点を作る。22分には、愛媛FCのスルーパスに天野の対応が遅れ、好光がクロスを入れると、ニアの渡邊の裏でFW2人がフリー。だがクロスに精度なく、海人が飛び出して抑えた。
 清水としては、相手1ボランチ攻めたいところだが、大瀧・枝村がトライアングルの対応に精一杯で、中央から仕掛けられない。それ故にアウトサイドMFが高い位置を保ち、打ち合いを挑む。32分、森安が右足でサイドチェンジ。やや精度なく上埜が後ろに下がって胸で落としたが、そのボールを唐突に枝村がミドル。低い弾道の後、揺れたのはニアサイドネット。残念ながら、ニアのサイドネットが揺れるのは、外れたことを意味する。

 33分にも、海人のスローから真司が疾走、中央の枝村に戻すと縦にミドルパス。阿部がDFを背負いながらポジションを譲らず、右サイドに流す。フリーで受けた上埜が阿部を狙うが、一歩早くDFがカット。真司は、そのファンタジーで攻撃の主力となり、34分にも大瀧から渡ったボールをドリブルと見せて、相手の股の間を抜くリターンパス。大瀧が追い越して受けようとするが、これはDFクリア。38分には、枝村がボールを持つ真司の外から追い越し、パスをもらったがDFこれを潰す。だが、ルーズボールに反応した真司が、今度はヒールで前に送り出す。これを枝村が受けてクロスを上げたが、DFがCKに逃れた。
 愛媛FCも、流れが前後するが37分、左クロスを上げるが、高山がクリア。愛媛FCはボールを拾うと、すぐさまスルーパスを狙うが、これも高山がボールだけを狙った深いタックルでクリア。その読み切った動きで、貫禄を見せつける。
 結局前半は、ロングフィードから阿部がPA内で抜け出したかに見えたところで笛。

愛媛FC      清水エスパルス
4(1) シュート 6(2) ○真司、○枝村、×真司、×阿部、×枝村、×上埜
4(2) 右クロス 6(2) ○上埜、×仁科、○阿部、×上埜、×上埜、×天野
4(0) 左クロス 5(0) ×真司、×森安、×真司、×枝村、×真司
1(1) 左右CK 4(0) ×枝村、×枝村、×枝村、×大瀧


[後半]
 後半に入ると、愛媛FCの運動量も落ち、相手の戦術にも慣れた清水が優位に試合を進める。5分、天野の突破を止めたDFがハンドの判定。微妙な判定に揺れる中、右45度の位置から大瀧がクイックリスタート、ゴールに向かって曲がるボールを仁科が頭で合わせたが、狙いすぎてGK正面。天野は8分にも、上埜に預けて駆け上がる。これを読んだ愛媛FCが上埜を潰すが、弾んだボールを枝村がダイレクトで前に流す。天野が完全に抜け出してセンタリングを入れたが、飛び込む阿部に僅かに合わず、ファーに流れてしまう。だが、この後半序盤の攻勢は、愛媛FCの戦術変更が徹底されるまでのモラトリアムに過ぎなかった。
 12分、愛媛FC、西川が左サイドで持つと天野を突破、前方を塞ぐ渡邊を引きずるように中央に流れると、戻したボールを好光がシュート。しかし、海人が正面で抑えた。このプレーで最終ラインが微妙に下がったのが端緒となった。最終ラインをFWがドリブルで脅威を与えながら、本当の狙いは2列目の3人の飛び出し。FWの突破に押し込まれて慌てた最終ラインの不用意なパスを、この3人が狙い打ちにする。
 まず16分、PA手前の混戦からの中途半端なクリアを拾って、FWが抜け出す。決定的な場面だったが、機敏に抜け出した海人が巨躯でシュートコースを覆い、シュートをブロック。しかし、23分には、その海人がバックパスのクリアをダブる。フリーで拾ったFWがシュートを放つが、幸運にも当たり損ね。必死に戻る海人が、追い付いてスライディングでタッチラインにクリアする。

 28分、またも愛媛FCのFWが抜け出すが、これも海人がコースを遮断、しかし清水の右サイドに弾かれた先には、愛媛の選手。ダイレクトでシュートを放ったが、その先にも既に海人はポジションを修正していた。横っ飛びで両手キャッチ、攻撃を抑止する。
 なおも愛媛FCは裏への飛び出しを狙うが、32分には森安がスライディングで相手ごとボールを刈り取る。このこぼれ球を拾った愛媛FCは、さらにスルーパスを送り込むが、譲らない森安が体ごと相手を潰す。このボールをミドルシュートで狙ったが、ゴール上へ海人が余裕を持って見送った。
 清水は、この時間帯、ボランチの2人が最終ライン近くに吸収され、サイドMFの単独突破に頼っていた。だが、愛媛FC2列目の攻め疲れから攻撃が鈍化すると、枝村が徐々に前に出るようになる。33分、中盤の底から枝村が大きく左に展開。真司が開いて受けるが、簡単に横の仁科に渡した。そしてPAの左角、仁科の突破開始。まず最初のドラッグターンでマークする相手を背中で外側に追い出すと、次のドラッグターンで置き去りにする。フリーで抜け出した仁科の次の選択は横パス、そこには阿部。その左足の爆発に対し、GKの存在は無意味。ボールはゴールネットの天井へ突き刺さった。1−0

 この先制点の後、愛媛FCは次々に交代選手を投入。戦術も変更し、ロングフィードでパワープレーに出るが、これは清水にとって手慣れたものであった。40分、裏へのボールの対応で高山が足を攣り、高柳が投入されたが、彼は常に相手より頭一つ高く、森安と共に完全に制空権を確保。大きく空いた中盤のスペースに、枝村が君臨する。
 43分、ハーフライン付近で奪った枝村が、予想外の45Mロングシュート。だが、これは次に来る瞬間への前菜。ロスタイム、森安が頭で競り勝ったボールを、大瀧が拾って枝村に戻す。ゴールまで距離35M。その1秒後の世界には、ネットに収まって転々とするボールと、右手を突き上げる枝村の姿があった。ロングシュートはGKの反応すら許さず、2−0。試合は決した。ちなみに、その1秒後の世界にも右手を突き上げる枝村の姿が、さらに1秒後の世界にも右手を突き上げる枝村の姿が、さらに…。いいから、お前、突き上げすぎ!(笑)。

愛媛FC      清水エスパルス
6(3) シュート 9(6) ○仁科、○大瀧、×枝村、◎阿部、×仁科、○仁科、×枝村、○仁科
               ◎枝村
0(0) 右クロス 6(2) ×天野、×上埜、×上埜、○拓也、×拓也、○大瀧
2(0) 左クロス 6(0) ×真司、×真司、×大瀧、×真司、×森安、×岡村
1(0) 左右CK 2(0) ×枝村、×大瀧


 この試合、筆者は押されていた印象しかないのだが、スタッツを見ると、最も押されていた後半10分〜30分ですら、シュートはないものの結構な数のクロスを上げている。そういう印象を受けたのは、勝って当然という驕りと、愛媛FC控え選手による声援の成果なのだろう。
 裏話として、実は彼らは鉄網のゴミ箱を横倒しにして上に乗っていたのだが、先制点の数分前に通りかかったお爺ちゃんが、それを見て雷を落とした場面があった。彼ら自身も「あれで流れが変わった」とボヤいていたが、実際その通りで、調子に乗りすぎて常識を外れた若者を大人が戒めるという、古き良き日本の風土が残っていた清水という地域の勝利だったのかもしれない。ここに陰のMVPを、流れを変えるプレーを見せた通りすがりのお爺ちゃんに贈ると共に、それができなかった自分に猛省を促すところである。いや、ホントに。

○試合後の談話(スポーツニッポン静岡版より)
阿部文一朗「いいボールが来ました。チームにはずっと迷惑をかけていて、点を取りたいと思っていたので良かった。もっとサイドから崩していけば楽になる。点を取って優勝したい」
築舘範男監督「(阿部について)もっと早く取れるだろうって思ったけど、90分の中で一つ取れればよしですよ」


▼試合結果
清水エスパルスユース 2−0 愛媛フットボールクラブユース
 得点:後半33分:清水・阿部文一朗(仁科克英:ショートパス)
    後半44分:清水・枝村匠馬 (なし)


▼選手寸評
山本海人  7.0 機敏な動きで相手にシュートコースを狙わせなかった。攻撃の起点にも。

天野数士  5.5 守備でスピードに振り回されて対応を誤り、取り残される場面が目立った。
渡邊優希  5.0 飛び出してくる2列目を掴まえきれず。クリアが弱く相手二次攻撃を許す。
高山純一  6.5 相手の攻撃を読み切った守備が光る。後半の物量攻撃には遅れることも。
森安洋文  6.5 高山が前半の鍵なら後半は森安。衰えぬ身体能力で高さにも速さにも対応。

上埜健太  5.0 小気味よいドリブルもあったが連携に難が。特に守備で天野を孤立させた。
枝村匠馬  7.0 潰しが遅れる場面もあったが、丹念な捌きと、最後は強烈な個の力を披露。
大瀧義史  5.0 当たりの弱さを狙われ、たまらず左右に捌いたボールを頻々狙われる。
鈴木真司  6.5 成功率は高くはないが再三突破を挑み、閉塞感漂う中で攻撃の旗手となる。

仁科克英  6.5 手詰まりの攻撃を中央で変化を付けようと苦心。最後は個人技で膠着打破。
阿部文一朗 6.0 サイドのドリブル攻撃主体のため、当てられて左右に流す役割に終始。

杉山拓也  6.0 ドリブルの脅威以上に天野を適切に補助。右サイドの守備の再建を果たす。
高柳亮太  6.5 最後の逆襲に対し制空権を譲らず、反撃のきっかけも与えずに逃げ切った。
岡村総一郎 --- 短い時間ながら精力的な動きで、勝利への意志を呼び込む。


▼Jユース杯・決勝トーナメント[途中結果]
[1回戦]
12/15 日 13:00 広島  4−0 横河  吉田
12/15 日 13:00 京都  2−2 東京V 東城陽G
        (PK戦 3−2)
12/15 日 13:00 横浜M 4−0 塩釜  戸塚G
12/15 日 13:00 浦和  4−0 札幌  東農大浦和G
12/15 日 16:30 G大阪 3−0 愛知  万博
12/15 日 13:00 大分  0−1 F東京 別府実相寺
12/15 日 13:00 清水  2−0 愛媛  三保G
12/15 日 11:00 鹿島  0−4 市原  鹿島G

○次回対戦 12/23 月 13:30 清水 vs 市原 川越運動公園陸上競技場


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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