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2005年05月31日(火) ■ |
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『五月の夜 終了』 |
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「夜分失礼します。わたくし隣に引っ越して参りました者です。色々と御迷惑をおかけするかもしれませんがこれからよろしくお願いします」
と、言われた。 玄関の前に立っているのは女性。 おそらく社会人だと思う。雰囲気が学生らしくない。
私の今住んでいるアパートは学生専門ではなく一般の人も何世帯かある。とは言ってもやはり農学部キャンパスから近いこともあって学生もいるのだから、少しもおかしくは無い。
いつの間に引っ越してきたのかわからなかったが、私は授業が終わるとすぐに電車に乗って隣町の高知大学へ行くので朝から夜中まで家を空けている。その間に荷物の積み込みをしていてもおかしくは無い。
今の御時瀬にお隣に挨拶なんて行くだろうか? いや私だって洗剤持って訪ねたしここら辺は田舎だからそういう習慣も残っているのだろう。おかしくは無い。
そう、すべて普通のことだ。
なのに、私はどうしても彼女に違和感を持っている。 私の隣に、普通な人間が住めるのか? 何故だろう。たまに、私はおかしな予感に駆られる。特に日記の題名に『』が付く日は……
……そうか、思い出した。 今目の前にいる彼女が住もうとしている部屋には、リルリルがいるはずなのだ。
「あの、お名前聞いてもよろしいでしょうか?」
彼女は微笑む。
「ヘルレイザー・鎌足と申します」
それなら隣に住んでいても、おかしくは無い。
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