独り言
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2006年05月01日(月) テリーデイズというBandについて・その10

1990年4月5日

やっと有力なドラマー候補が見つかり晴れやかな気持ちでスタジオを訪れたスージー・キューと新たな居場所をすぐそこに見出だしていたジョージ

それとは裏腹にジョージをドラマーとして迎えるという提案を聞いた時の亜龍の反応は余りかんばしいものでは無かった



亜龍は
「こんな小間使いのガキんちょに俺のロックが理解出来る訳?」
と言いジョージの方は一切見もせずまた独りでベースを弾き始めたという



「でもあの子負けなかったわ
言葉は理解出来なくても亜龍の表情で受け入れられてないってのはわかったはずなのに

あの子私の方見て『ニッ』って笑ってさ
ドラムセットに座って…物凄い勢いで叩き始めたのよ

ツェッペリンの『ロックンロール』って知ってるでしょ?
あのドラムから始まる曲
あれよ

亜龍も目玉飛び出してたわ

飛び切り上手いって訳じゃ無いけどとにかく勢いが凄かった

…その辺似てるのよねあの二人」



その後一歩出遅れたスージー・キューを待たずして亜龍とジョージは『ロックンロール』よりもロックンロールらしい『ロックンロール』を演奏しそれが終えたかと思うと亜龍はいつかの様にベースを放り投げ外へと飛び出して行ってしまった



「…本当救い様の無いバカ…でもそこが亜龍の最大の魅力に違いないんだけどさぁ

付き合わされる方の身にもなって欲しいわよね」



突然のこの事態をうまく飲み込めず不安な表情を浮かべるジョージの傍らでスージー・キューはあの時の事を思い出し小さく肩を震わせ笑っていたという


前回同様ほどなくして亜龍はスタジオに戻ってくるのだがその手に握られていたのはラジオペンチではなく彼がいつか被っていたあの『ツェッペリン風の帽子』であった

そして
「お前ガキんちょだから多分ブカブカで似合わないけどやるよコレ」
と言い乱暴にジョージの頭に被せてやったのだという


「ね?…バカでしょ?

亜龍は最後までジョージをガキ扱いしてたけど精神的には彼の方がずっと幼かったわ

…まぁ私からしたらどっちもガキにさえ届かないって感じだけどさ」



口にはしなかったもののお気に入りの帽子をジョージにあげる事により事実上亜龍も彼をドラマーとして受け入れた事となりこうして遂にこの日テリーデイズのオリジナルメンバーが揃った訳である



スージー・キューはこうも言っている
「あの子の選曲も良かったのよ
ジョージは知ってたのね
亜龍がツェッペリンを好きだって事を
そしてその曲をあの子は何故かマスターしてた

要はこういう事よ

あの子はいつも私と一緒に居たわけでしょ
んでその私はいつも亜龍と一緒
んでその亜龍は朝から晩までロックのお勉強

…でもお勉強してたのは亜龍だけじゃ無かったって事…わかる?


ジョージも亜龍と同じ様に同じ位の速度で成長してたって訳


…本当ガキの探求心には頭が下がるわ


『ただ好きだから』とか『ただ楽しいから』とかそんな理由だけで客観的に見たらとんでもなく面倒な事を軽々しくやってのけてしまえるんだから


そこに営利的な目的なんて一つも無いのよ
恐ろしい程純粋な探求心だけ

…でもそれが世界一力強い原動力なんでしょうね



金とか名誉なんかよりもずっと」



その後三人は約八時間にも渡るバンドとして初めてのスタジオセッションを行うのだがその内容は亜龍が指定したアーティストの曲を手当たり次第演奏するという小さな『ロック・コピー・パーティー』の様なものであった

亜龍は終始笑顔を浮かべ時には歌う事を忘れて大声で笑いだす事もありその姿はまさに子供の様であったという

そんな亜龍につられてスージー・キューとジョージも笑いスタジオはこれ以上無い程の感情と音で満たされていた



しかしそれとは裏腹にこの日に書かれた亜龍の日記はこれ以上無い程の混沌と混乱で埋め尽くされている


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