皆様も(*´Д`)ハァハァできたらイイナ!
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2008年01月26日(土)

あなたの全てを愛してる。



バタン。
珍しく荒々しく扉を閉めて部屋に入ってきた彼を獄寺と山本は見る。
沢田綱吉。22歳。
先日大学を卒業してイタリアに渡ってきた日本人の男性。
世界最大規模のマフィア・ボンゴレファミリーの10代目ボス。
ここまで言われれば強面の屈強な男を想像してしまいそうだが、沢田綱吉ことツナは「東洋人特有だから」では済まされない童顔の持ち主でいまだに10台半ばに見えてしまう。
そして今はその童顔を思いっきり不機嫌にさせていた。

「どうかされたのですか?10代目。」

どかっとまたもや乱暴に執務椅子に座って締めていたネクタイを緩めるツナに獄寺はいつものように気遣う。
山本も両手を頭の後ろにあてて(これは彼のお決まりのポーズなのか)ツナに近寄る。

「どうもこうもないよ!せっかく覚悟を決めてボスになったのに早速『子作りしろ』ってお小言もらっちゃったよ!」

ぶすっとした顔を頬杖で支えて駆け寄った二人を見上げる。
そのツナの発言に二人とも驚いたが特に獄寺は驚きのほかの感情も表情も混じっていた。

「ったりめーだ。ダメツナ。10代目を襲名したからには今までよりも暗殺される可能性がたけーんだぞ。世襲制をしいているボンゴレファミリーにしたら1分1秒でも早く跡継ぎは欲しいにきまってるじゃねーか。」

そう言ってツナの執務室に入ってくるのはツナの家庭教師を務めていた10歳の幼いヒットマン。
いつ命を失うかもしれない世界。力が全ての世界。ボンゴレファミリーが世界最大を名乗れるのも、そのボンゴレに伝わる血のあらゆる力あってこそ。

「そうは言っても俺、まだ22歳だぞ?それに俺、ボスになる代わりに条件出したの憶えてるよな?」



ボンゴレのボスになる、と決意したのは1年ほど前。
本当は高校卒業と同時に答えを求められたがその当時はまだ「マフィアなんかになりたくない」と豪語していたツナは「大学に進んで見聞を広めたい」とリボーンに申し出てなんとかその期限を延ばした。
「いまどきのマフィアも頭が良くないとやっていけない」と主張するリボーンだったので、その申し出は「しょーがねぇな」という快諾をもらえることに成功した。
そして大学3年生のときに決意した。・・・ボンゴレのボスになること。そして・・・。

「恋愛ごとには無理強いしないでね。って言ったのに・・・。」

ぶすっとした顔を支えていた頬杖をはずして執務机に顔を突っ伏すツナの頭をなでたのは獄寺。
ツナがボンゴレボスになることを決意したのは獄寺が理由と言ってもいいものであった。
中学校1年生のときに出会って、奇しくもツナに命を助けられた獄寺はツナという存在にほれ込んで「10代目」と呼んで慕っていた。

「この方こそボンゴレ10代目になるために生まれてきた人だ。俺は一生この人についていく!」

忠誠。獄寺がツナに抱くものは最初はその一言だった。しかし時間が経つ毎に、ツナを知る毎に、ともに戦う毎に沢山の感情が湧いていた。
守りたい、喜ばせたい、大事にしたい、幸せにしたい、・・・愛したい。
獄寺はツナに恋をしたのだった。
しかしツナは次期ボンゴレボス。獄寺はその感情を胸の奥に閉じ込めてただ傍にいて忠誠を貫くつもりでいた。
でも、それは叶わなかった。ツナ自身も獄寺にいつのまにか恋をしていたからだ。
出会ったときなどは印象最悪で、忠誠を誓われた後も獄寺の滅茶苦茶な行動(ダイナマイトぶっぱなしたり、すぐ喧嘩腰になったり)に巻き込まれてとんでもない目に遭わされていた。
はっきり言ってトラブルメイカーではた迷惑でしかなかった。けれど、ツナは理解はしていたのだ。
滅茶苦茶なことでも、それは彼の『真心』からくる行動で。どうすれば解らなくて不器用なだけなのだ。ちゃんと自分が教えていけばいい。
実際、もともと頭の回転の速い獄寺の成長は目覚しかった。キレやすかった性格も今では微塵も見せない。
子供嫌いかと思いきやランボのお見舞いに行ったときなんかは彼の大好物と積み木を買って行って差し入れしていたのを見たときには「案外いいお父さんにさるかも」なんて思ったくらいだ。
ツナが獄寺に対する気持ちに気づいたのは彼が自分を庇って倒れたとき。
大丈夫だと凄腕の医者(兼ヒットマン)に言われても自分の心は穏やかではなかった。けれど。

「あんなのカスリ傷っすよ!・・・ッ」

明らかにハッタリなのが見え見えなくらいだったが一時は死んでしまうかと思ったくらい心配だったので元気な姿を見て安堵する気持ちが溢れてきていた。
あぁ、俺はこの人が好きなんだと気づいてしまってからは坂を転がり落ちていく石ころのように。

お互いがお互いを必要で、なくしたくはない。いくら自分がマフィアになりたくないと豪語しても自分にボンゴレの血が流れている限り命は狙われる。そして獄寺は身を挺してツナを守るだろう。
自分は強くならないといけない。無くしたくないものを守るために。理解はしていた。でも、決断をしてしまうとすぐにでも血なまぐさい世界に身を投じられる。
だから悪あがきだとは気づいていても少しでも平穏な時間の中で一緒にいるために大学に進学して少しでも決断の時間を延ばした。
そして決断したときに、ボンゴレボスになることに条件を提示した。

「恋愛や結婚に関しては無理強いはしないでください。」

それは政略結婚などに対する牽制でもあったが、何より「自分は獄寺と一緒にいたいからボンゴレボスになるんだぞ。」という明らかな意思表示であった。
ボンゴレ9代目もなんとか承諾させることもできた。・・・しかし。

「早速約束を反古にされたのなー・・・。」

可哀想にと困った笑顔を向けながら山本は言った。雨の守護者であり、ツナと獄寺、二人の大親友である山本はもちろん二人の関係をしっている。
それだけじゃない。お互いがどれだけお互いを大切に思っているかも一番近くで見守ってきたのだ。

「何も9代目は結婚しろとは言ってねーだろ。跡継ぎを作ってくれって言っただけじゃねーか。ボンゴレ10代目に抱かれたい女なんざ星の数ほどいるぜ。」

長年家庭教師をやってきたリボーンは10歳とは思えない発言をする。山本は苦笑いをハハハという声に変えて発散した。
ツナは机に突っ伏した顔を上げてちらりと獄寺の顔を見やる。獄寺はまだツナの頭を優しく撫でていただその表情は実に『複雑』の二文字を表現していた。
中学生のときのようにやたらに嫉妬したり、独占欲にまみれたり激情にかられたりはしなくなった獄寺。自分をコントロールできるという点で大人になったことだ。
いいことではあるのだが、少し寂しいというのは我侭か。でも、まだその表情にしっかりと見える複雑そうな表情を見て安心した。
世界で一番大好き。学生の頃に何度も何度も打ち明けた想い。若さゆえの過ちかとも思っていたけどもうすぐ10年になるがいまだに冷める気配がないのを見るときっとこれは一生モノ。
たとえもう進む道だと決意して今では大切に思っているボンゴレファミリーのためだとしても獄寺以外の他の人物と寝るという行為はどうしてもできない。
理解っている。これは個人的かつ、子供じみていて、マフィアのボスには似つかわしくない感情。
ただ、今は放っておいて欲しい。人の気持ちはいずれ変わっていくもの。獄寺を嫌いになるということは到底思いつかないが、今よりは感情に変化があって跡継ぎくらいは作れるだろう。
まだ、自分は若い。獄寺がこんなにもこんなにも好きだ。言葉にしても、単位にしても自分以外の誰にも伝わらないだろう。獄寺にだって、伝わらない。
自分は絶対に獄寺以外と触れたくない。獄寺もそうして欲しくないといったのは学生の頃、苦しげな表情で。「けれど・・・」と後につむいだ言葉の先は無かった。

「まぁ、よく考えてみろ。その少ない脳みそ練りに練って。愛があっても子供は作れないし、愛が無くても子供は作れるぜ。」

「だからお前10歳らしい発言しろよ!」と出来の悪い教え子に叫ばれながらリボーンはその執務室を後にする。
愛があっても子供が作れないというのは、まさにツナと獄寺のことを意味する。

「はぁぁぁぁ・・・子供、欲しいよ・・・俺だって。」

ツナは愛されて育ったので自分もそういう家庭を作りたいと思わないこともない。でも、『大好きな人と』というのが大前提の話だ。
その大好きな人というのが獄寺で、男で、しかも情事のときはツナがいわゆる女役。だが、ご存知のとおりツナも男だ。
どちらも男同士で子供が出来たなどというケースは世界のどこをひっくり返しても聞いたことがない。

「なんだか複雑な話なのな・・・。ごめんな、ツナ。力になれそうもないわ。」

そう申し訳なさそうにツナに言って山本は部屋を出る。去る間際に獄寺の肩をポンと叩いて。

「・・・10代目、あの・・・。」
「・・・獄寺君。」

何かを言おうとする獄寺をツナは名前を呼んで制止する。そして両手を広げてみせる。

「ぎゅってして。」

少し戸惑って、獄寺はツナを抱きしめる。優しく、しかし力強く。
獄寺が言おうとしていたことはツナは判っていた。言ってほしくなかった。
恋が芽生えるよりも前から抱いていた忠義の心。性欲なんかが絡まなくても獄寺はこのさきずっと自分の傍にいて仕えてくれるであろう。それはたった一つの信じられること。
悪いのは自分だ。自分が我侭を言っている。あれが嫌、コレが嫌。中学生になるまではそんな我侭など言わずに過ごしてきたけれど。
獄寺は自分に甘えることを教えた。最初はその事に大変戸惑ったものだけれど、今じゃ我侭女王様そのもので結構な無理難問を押し付けたりする。けれど獄寺は難なくそれをクリアする。
そして有能な右腕兼恋人は忠犬のようにそれを嬉々と報告しに来る。

「『俺はいいです。10代目のためなら。』・・・もう、聞き飽きた。少しは獄寺くんから我侭言ってよ。」

そう、言ってほしいのは獄寺からの我侭。自分をもっと欲して貰いたい。自分はこんなにも獄寺のことしか見えないのに。

「言ってしまったら・・・俺は貴方の右腕じゃなくて唯の男に成り下がってしまうじゃないですか・・・。」

苦しげに、言う。獄寺にとってツナの右腕とは恋人以上に守りたい地位だというのは昔聞いた話。

『俺は自慢できねーっスけど、愛されて育ったわけじゃありません。だから、愛だとか恋だとかを信じることは難しいです。でも10代目、貴方を「大切にしたい」という気持ちだけは変わらない。だからあなたの右腕でいさせてください!』

バカだね、それを『愛』って言うんだよって笑ったけど。ツナも解っていた。そんな曖昧な言葉に一括りにできるような軽い気持ちじゃないこと。
でも、この気持ちは確かに『夫婦』に生じるソレであって。悔やまれるのは自分達の性別だけ。ボンゴレ10代目として必要になる跡継ぎ・・・子供。大きな壁であった。
獄寺は腕の戒めを解いてすこし身を屈めてツナに深く永く口付けた。右の手のひらでツナの頬を優しく撫ぜた。左手は腰を抱いて深く口付け過ぎてツナが後ろに倒れないように支える。
ツナの息が苦しくなったところでようやく離れた獄寺の唇から言葉が紡がれた。

「10代目、俺はあなたの全てを愛しているのはご存知でしょう。」
「・・・知ってる。」

獄寺の胸にすがって呼吸を整えているツナが応える。

「それは、あなただけじゃないんです。あなたを産んで育ててくれたご両親、あなたを大切に思っている仲間、あなたを形成する全て。皆、俺の愛するものです・・・。」
「昔は山本が俺の肩抱き寄せただけで喚いてたのにね。」
「あはは、それは言いっこなしですよ。」

獄寺の言いたいことが少しずつ理解できるようになってきた。呼吸は大分落ち着いたけれど胸に縋ったままでおとなしく耳を傾ける。

「10代目が俺のことをすごく愛して好いてくれてることは解ってます。でも、俺一人じゃ10代目は幸せになれないんです。素敵なご両親やリボーンさん、野球バカ達とかもう大きくなったチビ達もいて初めて俺の大好きな10代目がいてくれるんだって、思うんです。」

全くもって、獄寺の言うとおりだった。確かに獄寺を想う気持ちがほとんどを占めるにしても他の皆だって外せない幸せの要因。獄寺は本当に頭がいいなとツナはこの時すごく感じた。

「俺、10代目バカなんス。もう、最近じゃ10代目が好きなものは俺も好きなんスよ。」

口付けを終わらせてからは視線をそらしていたけれど、頬に手を添えられて無理やり視線を合わせられる。そこにはニカっと、中学生のときに見せられたあの清清しい笑顔があった。

「俺も・・・獄寺君が好きなものは大好きだよ・・・。」

俺も獄寺君バカだね。と笑うと獄寺も釣られて笑う。

「だから、10代目。子供、作ってください。」
「ん?」

『だから』という接続詞がどういう意味なのかが少しだけ解っていたがちゃんと言葉にして理解させてほしかった。

「俺、10代目の子供なら見てみたいッス。その子も大切にしたいです。・・・んな簡単なことじゃないのは解ってますけど。立派に教育できるよう頑張ります!」

獄寺はすごい。どうしてこんな風に考えることができるのだろう。彼の言葉は魔法の言葉。いつでも難問にぶち当たったときには、彼の言葉でクリアできる。
大好きな気持ちは変わらない。大切にしたい気持ちも変わらない。ただ、その対象が増えるだけだということ。

「じゃぁ、生むのはむりだけど、二人で育てようね。獄寺くん、きっといいパパになると思うよ。」
「子供はあんまり得意ではないんですが・・・。10代目の子供ならいいパパになれるようにがんばりますよ。」
「大丈夫だよ、獄寺くん、意外に面倒見いいもん!」

リング争奪戦の時にランボが大怪我で入院したときに積み木のお見舞いをもっていってあげたことを言うと獄寺は少し赤くなって意味不明な弁解を始めた。
ソレを見てくすりと笑みをこぼしてツナは獄寺を抱きしめて極上の笑顔で顔を上げて言った。

「さぁ、これから忙しくなるよ!よろしくね、パパ♪」




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後書き。

すいません。色々すいません。
まずは偽者なゴクツナですいません。
次にムリくりな設定ですいません。
この小説を書き始めるにあたって、無知なあたしは色々ぐぐって調べました。
検索キーワードは「代理母」「同性結婚の認められている国」・・・嗚呼。
また一つ、人には見せられない履歴が・・・ごにょごにょごにょ。
しかし、何でまた、こんな小説書き始めたかといいますと、本当は未来の獄ツナは苦手なんですけどね、ふと、

「ツナとツナの子供に取り合いにされる獄寺とかよくね?」

とか血迷ってしまったんです。すいませんすいませんすいません・・・。
で、あたしゃもともとは漫画描きで同人やってますが、こんなアホっぽいもんをわざわざお金出してまで読んでもらおうなんざ切腹してもお詫びしたりないくらいなのでネットで小説という形で作らせていただきました。すいません。
そもそも、「獄ツナで子供」っていうところで、もっと夢見がちな展開にすればいいものを(ツナが妊娠するとか)お姉さんもう、今年で20代後半突入するもんで若い頃のようなノリと勢いと恥知らずがなくなってきたんでちゃんと保健体育にのっとって「男は妊娠なぞしません!」という展開にしてしまいました。すいません。
代理母についてはほんとにもう賛否両論。自分の甘い認識でしかニュースを見てなかったのでネットで検索かけて調べてみたらいやもう反対派の人の意見もすごい。
本当に正論すぎてびっくりですよ。なんとなく賛成派だったあたしも、それを見て「あぁ、なるほどなぁ・・・。こういう考え方があるのか。」と納得してしまい、このお話を書くのも戸惑いまくった。
10代目は贅沢です!(は?)代理母のお話やっべーくらい書きたくないんですけどzzz
ハルとか、笹川京子ちゃんでもいいんかもしんない・・・。でもなー。この二人でいうならどっちかっていうとハルが好きだけど、ハルには生んで欲しくない。
なぜなら「代理母=子供を生む道具」(特にこのお話では獄ツナなのでハルには友情はあれど愛情はない)としてとってしまう作者なのです。影響受けやすいあうあうあ。
でも、京子ちゃんはないな・・・。彼女もほんのりツナに好意は持っているんだろうけどハルのほうがすごそうw色々なサイト様にお邪魔してるときに、やっぱり10年後ネタでハルがムリにでもイタリアに付いてきて獄寺にツナをとられていてもまだ大好きでボンゴレファミリーに入って手伝ってるのとか見るの結構好きだから(笑)
だから代理母は全然まったく知らない人がいいんですよね。
それに、ハルと婚姻してしまったら、ツナ子供×獄寺×ツナの三つ巴じゃなくて+ハルの四つ巴になるからさらにややこしk・・・ゲフンゲフン。
あぁん、もうなんでこんなお話かいてしまったんだろうと早速後悔気味のからしでした。


      

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