この7月の最高気温を記録した日、奈良県明日香村に立ち寄った。 鮮やかな緑が目の前に360度広がる田園風景。土の匂い。道の端々にたたずむ素朴な石の神さま。低い山々が連なる遠目の所々に目に入る古いお寺。 まるで、時間が飛鳥時代から止まっているような錯覚に陥る。 場違いのスーツ姿で汗を拭き拭き、強烈な蝉時雨の中を歩いた。
御利益があると謂われる、のっぺりとしたユーモラスな姿態の道祖神に手を合わせていると、地元のおばあさんが気軽に声をかけてくる。 生活と自然と信仰が何の違和感もなく結びついている、そんな日常風景。何故かはわからないが、大変な安らぎを感じる。
ぼーっとしていると、「○○さん」と呼ぶ声で我に返って後ろを振り向く。 その時、そこに聖徳太子の姿を発見してギョッとする。 すぐに道案内をしてくれている友人のSさんの姿であることを確認したのだが・・・。 Sさんは50歳を超えているが、長髪を後ろに束ね、口ひげと顎鬚の両方を生やし、一見すると飛鳥時代の人であると言えないこともない。 でも、その時間違いなく聖徳太子であったような気がする。 ちょうど直前に聖徳太子の生誕の地と謂われる橘寺にお参りをしたせいであろうか。お金に対する邪な欲求が心を支配していたのであろうか・・・。
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