a Day in Our Life
2002年05月30日(木) |
赤西さんと深川くんの話。 |
「かめ!」
なにをそんなにってくらい大声で呼ばれた。最初背中にかけられたその大声は、返事のない俺を不審がってかすぐに正面に回ってきた。後ろからぐるりと回り込んできたその大声の主は、派手な金髪をしていた。 「かめって…!あっ、違う」 勢いづいて叫んだ声が尻すぼみになった。おまけにやや突き出された顔がその勢いのせいでぶつからんばかりに接近してきて、俺は足を止めて衝突を回避する羽目になった。男は俺の目の前に陣取ったまま、まだしげしげと俺の顔を覗き込んでいる。 あんたがそこにいると俺、進めないじゃん。 むっとして男を睨みつける為に、少し顔を上げなければならなかった。中学3年生としては一般的な俺よりも、随分と高い位置にあるその顔は、よくよく見ると髪の色以上に派手なつくりをしていた。その顔が、目線が絡んだ瞬間に破顔して笑う。 「ごめんごめん」 笑うと右目の端にある大きめのほくろが揺れた。 「俺のトモダチにあんまり似てたから間違えちゃった」 びっくりしたろ、それからもう一度ごめんと言った。 「別に…」 いいけどどいてくんない。 言おうとした言葉がつかえる。俺よりひとまわり以上デカい目の前の男に圧倒されているのかも知れない。顔の甘さのわりに威圧感があった。ごめんという言葉をよそに、そいつは俺の前から退こうとしない。 「カメナシカズヤっていうんだけど」 そいつ。もーマジ瓜ふたつってゆーくらい似てるんだよ。かめはもう少し細眉だけど。むしろ昔のかめに似てる。聞いたわけでもないのにべらべらとしゃべられる話に、また若干むっとする。眉毛太くて悪かったな。もろに顔に出たであろう俺の表情に気付いた男が、また少し笑った。 「あ、怒った?そんな風に顔に出るところまでソックリ」 「…あっそ」 だんだんムカついてきた。だったらどうなんだ。あいにく俺はカメナシとかゆー名前じゃないし、あんたの知り合いでもない。間違いが分かったんならもうこれ以上の用もないだろう。俺はまだ買い物が残ってるんだ。男が退く気配がないので、仕方なく俺は肩幅分横に移動して歩みを再開した。正確にはしようとした。その俺の動きを阻止するかのように、背中に声が被さる。 「あっ、ねえ待ってよ!」 やっぱり大声で呼ばれて、俺はいやいやながら振り返る。 「まだなんか用?」 「俺、赤西仁ってゆんだけど」 「…は?」 「いや、俺の名前。アカニシジンってゆうの」 「だから?」 「きみの名前は?」 「聞いてどうすんの」 「どうもしないけど知りたいなーって。ほら、人の名前を聞く時は自分から名乗れってゆうでしょ」 「……言うけど…」 それ、理由になってなくない? 「だから、きみの名前も教えてよ」 まるで当然というように、もう一度聞かれた。俺の名前聞いてどうするつもりだよ、こいつ。思ったけどまあ別に減るもんじゃないし。思い直す。 「…深川明彦」 「ふーんアキヒコかー」 「なんでいきなり呼び捨てなんだよ…」 最後のは呟きに近くて、アカニシとかゆうやつには届かなかったらしい。まあ、どう見積もっても俺より年上であろうこいつにフカガワさんとか呼ばれるのもおかしいとは思うんだけど。高校生くらいかな。大学生ってことは…なさそうだった。頭悪そうだし。そこまで考えてふと我にかえる。どうだっていいや、そんなこと。なんとなく疲れて、押し黙った。俺の沈黙をものともせずに、アカニシジンは俺の顔をじろじろと見回した。ほんっと信じられないくらいに似てる。感心したようにぽつりと言った。 「…そんなに似てるの」 別に興味が沸いたとか、そんなんでもなかったけど。なんとなく呟いた。カメナシとかゆうやつに、俺はそんなに似てるのか。 「似てるなんてもんじゃないよ!」 瓜二つだよ!ウリフタツ! そのやや舌ったらずな口調は、カタカナを連想させた。興奮したぶんそれが余計に強調される。 「アキヒコにも会わせてやりたいよーつーか、ふたり並べて見てみたい」 宙を見る格好で、その情景を想像しているであろう目の前のアカニシは、うっとりという表現がぴったりな表情をしていた。なんかこいつ、ちょっとアヤシイ。もしかしてやばいやつに引っかかったのかな、俺。東京ってやっぱりこわい。 俺、深川明彦は高校進学も決まり、おぼろげながら見えてきた自分の夢や進路に向けて、とりあえず野球用品を買いに都心まで足を伸ばしていた。地元でもよかったんだけど、それを口実にちょっとぶらついてみるのもいいかななんて軽い気持ちで。地元をぶらぶらしてると必ず誰か知ってるやつに出くわすし、そんなんじゃ落ち着いて買い物だって出来やしない。都心の方が絶対品揃えはいいんだし。だったら。 それがろくな買い物もしないうちにこんなアヤシゲなやつに捕まってさ。ついてない。 「同じ顔が並んでたって気持ち悪いだけじゃん…」 ぽつりと洩れた呟きは、今度は聞こえたらしい。えーっ!そんなことないよ!好きな顔並んでたら嬉しいじゃん!宙に浮いてた目線を瞬時に戻して、真顔で迫られる。 「好きな…?」 「そ。俺ね、かめの顔好きなの。だからアキヒコの顔も好き」 本人には言ってないんだけどね!言ったら調子乗られるし!なにが楽しいんだか、嬉しそうに笑う。かめの顔なら一日中見てても飽きないんだけどなあー。なのに折角のオフ、たまにはゆっくりしたいとか言い出してさ。俺と一緒だとゆっくり出来ないのかっつー話だよ。 「確かにゆっくりは出来ないだろうなあ…」 「え?なんか言った?」 「別に…」 俺、いつになったら開放されるんだろう。どんどん疲れてくる。 「顔っていうかね、俺、かめが好きなの」 これも本人には言えてないんだけどねー。近くにいすぎるとかえって言えないもんだよね。アキヒコには言えるのにね。 「ふーん」 聞いてもいないのにアレコレ勝手に告られて、俺もいつしかやつのペースに乗せられていたのかも知れない。男なのに男が好きなんだ。とは、思ったけど口には出なかった。それだけ目の前のアカニシがごくごく自然にトモダチであるカメナシを好きなんだと言ったから。まるで親友に、同じクラスの女の子が好きなんだとこっそり告白するみたいに。 「告ったりしないの」 そんなに好きなら告ればいいじゃん。言うとアカニシはそれが出来れば苦労しねーんだって、とちょっとだけ困った顔をした。ふーん。よくわかんないけど。 「あんた結構いい男だし、言ってみなきゃわかんないじゃん」 思ったことをそのまま言うと、随分と嬉しそうに笑った。 「あーなんか、アキヒコにそう言われると自信出るー」 「意外と気が小さいんだな」 「恋する男はみんな小心者なんだよ」 「ふーん」 そこまで話して、ふと自分たちが歩道のど真ん中で向かい合って立ち話をしていたことに気がついた。狭くもない道だったけど、通行人が若干邪魔そうに俺たちを避けて通っていく。そういえば買い物の途中だった。忘れるところだった。 「まあいいや。頑張んなよ。俺、もう行くね」 今度こそすぐ近くのスポーツ用品店に行って、買うものを買って、見るものを見て。ちょっと喉が渇いたからそのへんのカフェで軽くお茶をしたらさっさと帰ろう。頭の中で今後の予定を修正して、既に野球用品に向かっていた俺の心をみたび呼び戻される。 「待ってよ、アキヒコ」 「なんだよ。俺、暇じゃないんだよ」 「俺は暇なの」 「そんなの知らないよ。俺は忙しいんだから」 「うん。だからさ」 アキヒコの用事に付き合うからさ。だから。 「俺とデートしようよ」
もう何度目か分からない、笑うと揺れる右目のほくろが、またゆるやかに揺れた。
2002年05月15日(水) |
天使と枕と目覚し時計。(ユズりんさんに頂きました赤亀SS) |
「仁のバカ!!」
バタン、と勢い良くドアを閉めて・・というか叩きつけて亀が走って 出て行ってしまった。俺は部屋の中で、亀が破いた枕から舞い飛んで いる羽根にまみれていた。今のドアの勢いで、更に羽根が飛んだみた いだった。
今夜は、とうとう怒らしてしまった、本気で。いつものケンカの時の 亀とは、違う。いつものケンカは…そう、今回のに比べたら子供の ケンカみたいなもの。自分の言いたい事を言って、叩いたり(叩くと いってもお互いそんなに本気で叩いてはないし)、ムカツイタだの お前なんかサイテーだの、罵声とばしあって、それでおしまい。 言いたい事を言ったらすっきりしてる。それがいつものケンカ。
でも… 今回は…。
呆然としている俺。 あんな亀、初めて見たから。 原因は完全に俺だった。 まぁ・・悪いのは俺だ、よな。 昔付きあってた彼女がくれた目覚し時計。 未練とかそんなんじゃなく、俺はただのデザインが好きだから使って いるだけなんだけど、亀はその時計を酷く嫌がってた。 亀のその反応はあたりまえだと思う。 何度も、「捨てろ」って亀に言われた。俺んちに来る度にいわれた。 逆の立場でも同じ態度を取っていたと思う。 だけど、俺はなかなか 捨てないでいた。理由はない、ただ、なんとなく。
亀がキレるまでほっておいてしまった事を今更のように反省した。 今にも泣きそうな顔をしてた。 違う、今までもそんな顔してた。 でも、それを見てみない振りしてた。時計一つぐらいどうでもいいじゃ ないかって、簡単に思ってたから。 …だめだな、結局いい訳じゃん。 あんな、顔、させるつもりじゃなかった。
部屋の中は、相変わらず枕の羽根がふわふわと浮いていた。 俺の、愛用の枕。真中からぱっくりと破れている。 もちろん、これは亀がやったんだけど(正直あの暴れっぷりには ビックリした)、怒る、という気にはなれなかった。
それよりも。
亀はどこにいったのだろう?今まで軽いパニックに入っていた頭が ようやく働き始めた。段々と、亀の様子を思い出してきた。
泣きそうな亀の顔。 舞い上がる枕の羽根が、髪にシャツに、いっぱいついていた。 (枕を持って振り回していたんだから、当たり前か) そして…そして。
時計! 時計だ!!
俺は部屋を見渡した。 やっぱりだ時計がない。
俺は瞬間的に想像した。 飛び出した亀の手の中で、チクタクと時を刻む時計。 まるで、時限爆弾だ。 亀が、今まで俺に溜めてた気持ちの、爆弾。 そう思った瞬間、俺はもう部屋を飛び出していた。いてもたっても いられなかった。今になってようやく、事の重大さに気がついた。 ごめん、亀。本当にごめん。
亀が行く場所はもう検討がついていた。良く語ったり、キャッチ ボールしたりする空き地。 きっと、あそこだ。 今すぐ追いかけなきゃ。
その空き地への道。ただひたすらに走った。後悔の気持ちと、それと 謝りたいという気持ちで俺の頭はいっぱいだった。 道路には見覚えのある白い羽根が、行く方向に一杯落ちていた。 これは、きっと亀についていた、枕の羽根。 まるで、『こっちにきて』って言ってる見たいだった。 間違ってなかった、やっぱり、亀はあの空き地に向かってる! 走れ、俺! 亀に、会わなきゃ!!
亀と付き合って、一年以上になるから、忘れてた。 一緒にいられるだけで嬉しかった最初の気持ち。
最近じゃキスしたって、抱きしめたって、挨拶みたいに思って しまっていた。
あの、ドキドキ、忘れてた。 ごめん、本当にごめん!! 心の中で謝ってばかりの俺。 今謝ったってどうしようもない、 ちゃんと亀に言わなきゃ、だろ。 どうして、こうなんだろう、俺。 いつも、後から気がつく。後から悔しがるとかいて「後悔」とは 昔の人は良く考えたもんだ。あぁ、全く、俺ってヤツは! だからへタレって言われんだよ! そんな事はどうでもいい、 兎に角、走れ!
久々に全速力で走ったから、息が切れて苦しかった。 それでも、目的の空き地まで走りぬいた。今はそれしか出来なかったし。 そうして、…亀を見つけたんだ。 やっぱり、ここにきてたんだね。二人でよく来る、この空き地に。
亀は、やっぱりあの時計を持っていた。 そして、俺の方にゆっくりと視線を向け、ペコリと一つ御辞儀をした。 まるで他人にするみたいに。
「仁。」
急に名前を呼ばれて、息がまだ整っていない俺はちゃんとした返事が 出来なかった。代わりに、亀の目を見つめ返した。 「仁、愛を勘違い、しないでくださいっ」 そういって、亀は持っていた目覚まし時計を両手で力いっぱい空に 向かって投げた。時計が、空に吸い上げられていく。 その時計を、亀は何かを見送るような目で見送っていた。 俺は、そんな亀の顔に見惚れていた、あぁ、亀って綺麗だなって。 亀の髪やシャツに揺れる羽根が似合ってった。 似合っていると言ったらおかしいかもしれなけれども、儚くて、 すごく切なそうで…。 天使、見たいだった。
ガシャン。
空に吸い込まれていた目覚まし時計が、地球に戻ってきた音。 亀に見惚れていた瞬間に、もう時計は落下していた。 ただし、クッションも受け取る人もいない、地面に。 「うわ、マジかよ・・」 目覚まし時計はすでに時計の形をしていなかった。 思わずため息が出そうになるのを堪える。 全力疾走して、限界寸前の足を引きずりながら、俺は亀に近づいた。 亀は、落下してバラバラになった時計を見てとても小さな声で、 「ごめんね」と呟いていた。
チクリ、と胸が痛んだ。 バラバラに壊れた目覚ましよりも痛かったんだね、亀の心は。 「亀、ごめん」 もっと、他にもいう事はあるはずなのに。 それ以上言葉が口からでてこない。
「仁。」 「本当に、ごめん。ごめんなさい。」 「仁、もういいよ、俺もごめん。」 「亀は悪く無い」 「だって、俺、仁が大切にしてた時計も枕も破壊しちゃったんだし」 「そんなの、良いよ。又買えば。」 「でも、ごめん。仁、ごめん。」
本当に、俺ってヘタレだ。自分が情けなくて、亀の顔が見れなかった。 亀が謝る必要なんてないのに。俺が悪いんだから。
「俺のこと、嫌いなった?」 「なるわけないじゃん」
逆に、嫌われる程のことをしたのは俺だよ。
「亀は?俺のこと嫌いになった?」 「…そんなの…なるわけないじゃん」
その言葉に、思わず涙が出そうになった。嬉しくて、すごく、申し訳 なくて。そんな俺を、亀は優しく頭を撫でてくれた。いつもは逆の立場 なのに…。 でも、悪い気はしなかった。 すごく、心地よかった。
「俺が仁の事嫌いになるわけないじゃん。」
ほら、そういう事いったら、涙でそうになるじゃん。やめてよ。 俺も、亀のこときらいになるわけないじゃんと、泣きそうになるのを こらえて返事をした。それでいっぱいいっぱいだった。 …これじゃ、小学生みたいだ。 だけど、亀は…にっこり笑った。 いつものあの笑顔。 「ありがと」 そういって、キス、してくれた。 脈拍がガー――とあがった。 やばい、マジで泣く。 泣く顔なんて見られたくないから、背を向けた。 だって、堪える自信がもう、なかったし。 実際、泣いてたし。 ふいに、背中にぬくもりを感じた。 亀が、後ろからそっと抱きしめてくれていた。俺の、首元にこつんと おでこをあてて、頭をまたよしよしってしてくれた。 もし、泣いてなかったらギューって抱きしめかえしてあげてたのに。 ありがとう、亀。やっぱり、俺、亀が大好きだよ。
「亀。帰ったら部屋の掃除、俺が全部やるから。」
俺の部屋。羽根が飛び散る、あの部屋に。
「一緒に帰ろう。」
今日、一番勇気を振り絞った言葉だった。まだ、亀の顔、見れなかっ たし、俺は涙出てたし、見られたくなかったけど…。また、あの部屋 で亀と一緒の時間を過ごしたいと思ったんだ。そして、ちゃんと謝り たいと思ったんだ。
亀からの返事は、すぐ返ってきた。 「俺も、掃除手伝うよ。それと、時計、今度一緒に買いに行こう。」 背中からトクトクトク、と亀の鼓動が伝わる。 嬉しかった。なんだか告白した時みたいにすごく、ドキドキした。 亀の鼓動と、俺のドキドキが重なって、お互いの体に響いているような 気がした。もう、涙は出てこなくなっていた。 涙の跡を、両手でごしごし拭いた。あぁ、もう・・・俺ってば。 「仁、もう泣かないで。」 首に、チュ、とキスをされてしまった。 …なんか今回に至っては、俺、すっごくオコサマじゃね? 亀がすごく大人に。
「もう泣いてなんかねぇよ」 「ほんと、じゃ、こっち向いてよ」
「ほら。」 「ホントだ。じゃ、キスして」
「え」 「嫌?」
今日の亀は、かなり攻撃的だよ。ちょっと、オイオイ。 …悪く無いけど。亀の肩に両手をまわして、そっと頭を抱きしめて 亀の望むように、キスをした。 まだ、心臓はドキドキしてる。 一秒が、何十秒にも何百秒にも感じる、そんな瞬間だった。 このまま、時が止まれば、ってありきたりな言葉が頭をよぎった。 ずっと、亀とこうしていられたら・・・。 欲張りだな、俺。
キスをし終わって、俺は「好きだよ」と、ようやくいえた。 亀も、「俺も仁の事、すっげー好き」って言ってくれた。 すっげー、か。ちょっとした言葉を付け加えただけで、こんなにも 嬉しく思ってしまう自分。やっぱり、ガキだよなぁ。 でも、やっぱり嬉しいものは嬉しいんだよ、亀。 今度は俺がギュッと亀を抱きしめた。
俺って、もしかしてチョー幸せモノ? もう、ずっと前から。 気がつくの、遅いよなぁ、俺。 何度も言うけど本当に、ごめんね、亀。 俺って、独占欲は強いくせにどっか、鈍感みたい。
俺がそう言うと、亀は「今ごろ気がついたの?」とさらりと言った。 そして、にっこり笑って「もう少し、敏感になってよね〜」なんて 言われてしまった。参ったね、どうやら亀には敵わないらしい。 このまま、ずっと敵わない人でいて欲しい。
ずっと、俺の側で、笑っていてね。 天使みたいに。
■■■君はきっとどうしようもない僕に降りてきた天使。
とゆーわけで元歌にピンときた方も多かったかと思われます、マキハラな赤亀を頂きましたー*** ちょっと意外だったんですけど、ナカナカしっくり来るのですね…カメが天使というよりはどうしようもないアカニシさんがあたし的にはまり役だったりして(笑)。どうなんですかね、赤亀は、出来ればベクトルは同じ方向同じ力加減だったらいいなと思うんですけど、果たしていかがなものか。カメには敵わないと思ってるアカニシさんってのが思いのほかツボでした。敵わなければいいのにと思う。それほどにカメがアカニシさんを好きなんだと思うので。お互い様ではあるんですけど(笑)。
2002年05月14日(火) |
バナナと飛行機と携帯電話。(しょぼくれサクツカ) |
久し振りに高史と電話をした。
ドラマが終わって、当たり前だけど会える日が少なくなって。少ないっていうか、ほとんど会えなくなった。高史はすぐに別の仕事で海外に飛んでしまったし、俺は俺で嵐の仕事があったし。タイミングが合わなくて、電話もままならなくなった。顔も見てない、声すら聞いてない。その分高史のことを考える時間が増えた。遠距離恋愛は続かないってウソだ。会えないなら会えないだけ、高史のことを考える。どんどんハマっていく気がする。そのうち俺の中、高史でいっぱいになっちゃうんじゃないかって。そんな時、携帯が鳴った。 着信音だけで分かるそれに、慌てて電話に飛びついた。周りにいたメンバーが怪訝な顔をしたけど、そんなの気にしていられない。
「もしもし?」
一瞬の空白の後に、一番聞きたかった声がした。 『あ、翔?俺おれ』 男にしては少し高い声色が、耳に届く。 「うん。元気?」 どうしたの、なんて聞かない。そんなの声が聞きたかったからで、そんなこと言わなくても分かる。今日エクアドルから帰国だっていうのは知ってて、だから時間を見計らってメールしようかな、なんて思ってた。 『元気元気。翔も元気そうだね。よかった』 元気そうでよかったなんて。言おうとした言葉をそのまま先に言われる。高史は知らない、小さなシンクロ。 「いま、空港?」 『うん、やっと帰って来たから、翔の声が聞きたくなって』 そんな言葉がどれだけ俺を喜ばすとか、きっと高史は分かってないんだろうなあ。嬉しいけど、ちょっと呆然とする。 それからしばらくの間、土産話を聞いた。農園の仕事は予想以上にキツかっただとか、でも周りの人たちはみんな優しくて、別れるのが少しつらかったとか。本場のバナナは本当に美味しかったとか。翔にも食べさせてあげたかったよ、と言われて、俺も食べたかった、と答えた。 たった一週間の旅の間に、それだけの出来事があって。それは高史の周りにも、俺の周りにも。 ぼんやりと思う。 高史が高史としてバナナと格闘してる間に、俺は『櫻井翔』と『中込フトシ』の間でもがいてたんだ。ドラマが終ってだいぶん経つのに、いまだ俺の中からバンビが消えない。いつまでも俺の中に居座って、まるで櫻井翔に戻るのを拒んでるみたいに。こんなにも俺の中からバンビが抜けないのは、きっと高史のせいだ。こんなにもあのドラマをいとおしむ気持ちは。 なんとなく、黙ってしまった。いつの間にこんなに好きになってしまったんだろう。まるで始末に終えない。ドラマが終わったらすぐに変えようと思ってた髪型も、いまいち変えるタイミングを失って。そんなのも全部、全部。 『翔?』 高史の声がする。耳に直接届くその声が、好きだと思った。 俺さ、ほんとダメみたいだよ、高史。 「高史」
どうしようもなく、あなたが好きなんです。
電話の向こうの高史は、きっと彼がよくするみたいに弾けるようにして笑った。 『俺も』 澄んだ声が、はっきりとそう言った。 俺だって金髪の自分を見るたびにアニを思い出してバンビを思い出してぶっさんをマスターをうっちーをみんなを思い出して。随分振り回されてるなあと思うんだよ。だからさ。
『今度一緒にさ、髪を切りに行こうよ』
高史のその妙案に、俺はふたつ返事でうなづいた。
■■■金髪ふたり。
エー。薫さんのお誕生日をお祝いして送ったポエムを多少書き直してみました。 アップするつもりはなかったんだけど、あながち妄想でもないんじゃ…みたいな展開になってきたので(笑)。髪を切るウンヌンはまあ、捏造120%なんですが、それでもちょっと色を変えた(でも髪型はほとんど変えてないのね)翔くんと、こちらも若干変えた(ような気がする)タカシの髪の色が、あたしの欲目だとは思うんだけど同じ色な気がしてですね(笑)。一緒に美容院行ってたらどうしよう!と先走った結果なのでございます。や、いいともに出てた翔くんと、今月のWUのツカモトを見比べてみたんだけど、同じような感じに…見えるのよね…あたしの目、すっかりフィルターかぶってしまってるので、そう見たいみたいです。しょうがないね。(ため息)
2002年05月06日(月) |
ユズりんさんに頂きました超大作・山斗。 |
仕事が終わって家に帰ってする事。メールチェック。
毎日きまって、ヤツからのメールがきて、それに返信するのが毎日の事で。最初はめんどくさいと思う事もあったけれども、今ではそれが当たり前の、習慣の一つとなっている。内容は、その日の仕事の事とか誰と何をしたとか、仁がムカついたとか(笑)…そんな他愛のない事ばかりだ。でも毎日読むのが楽しかった。そんな事を逐一報告してくるようなタイプのヤツじゃないし、ついさっきまで会ってただろ?って時だって変わらずメールは送ってくるわで、俺にとっては当たり前の、結構大切な習慣の一つになっていた。どうせ、メールで何度か返信しあうなら携帯にかければいいのに、と何度か思ったけれども、その度に山下が自分から携帯かけてくるって事はあんましないなぁ、と思い直してまた、携帯の小さなボタンを連打しながら文章をつくる。そんな事の繰り返しが続いていた。 今日もいつものように携帯をポケットから取り出してメールをチェックをする。…。珍しい。今日はメールが届いてない。いつもは俺が家に帰ったのを見計らったようにメールが届いてくるというのに。 ソファーに寝そべってしばらく、携帯とにらめっこをする。携帯を顔の近づけて、しばらくそのまま石のように固まってそのまま5分10分、待ち続けていた。でも、携帯は無音・無反応・全くなんにも無し。 「…なんだよ、今日はナシかよ」 自分の口から出た言葉が、思った以上に寂しさが混じってて焦った。 そんな日もあるさ〜と、鼻歌まじりに笑い飛ばそうとしたけど、実際寂しがってソファーでクッションにうずもれる俺がいるわけで。カッコワリィな、俺。未練たらしくまだ携帯をイジる。ピコピコとボタン操作の音が部屋に響く。 バイブ設定にしたり、サイレントにしたり解除したり、画面変えたり、着メロ変えたり。あーだこうだとしてるうちに一時間経ってしまってた。…なにやってるんだろ、俺。はぁ、と自分が溜め息をついているのに気がついて苦笑いが出る。 マズい、へこんでる? それにしたって、山下ってば何してんのさ。メール、来ないぞ。なにかあった?送れない状況にでもいるのかな?…それとも、なにかしたか、俺。今日一日を振り返ってみたけど、何もなかったハズ…だよな。少しだけど仕事の合間に山下と合って話をしたぐらい、だよな。何を話したっけ?あ、オフにドライブ連れていってもらった事か(笑)。山下に話したのはそれくらいだよな…お互い別の仕事が入ってたから、少ししか会えなかったし。あ、もしかして仕事が忙しくて疲れて眠っちゃってるとか。だとしたらメールがこなくったって仕方ないよな。 頭のなかでグルグル一人事を呟く。相変わらず携帯は片手に持ったままで。 こんなにもどかしいままでいるくらいなら自分から連絡をとれば早いのに、と頭の中では分かっていても、いつもは山下から送られてくるという意識があって、なんか送れない。変に意地になってる感じ。 「あーもー…めんどー…」 仰向けになって抱いていたクッションを投げる。俺ってたまに頑固になるんだよな、ほんと(苦笑)。気を紛らわすためにリモコンを手にとり、テレビをつける。この時間の番組ってろくなのないんだよな、とかぼやきつつ特に見たいわけでもないチャンネルをぐるぐるまわしていた。 ふと、それとなく目に止まったニュース。車と人との接触事故。アナウンサーは事務的に事故内容を話ている。淡々と、他人事のように。ふいに、脈拍が上がったような気がした。気がしたというより、上がっている。 まさか…まさか、山下、考えたくはないんだけど…事故、なんて事… 自分の血が頭からサーっと引いていくのが分かった。携帯をもつ手が、微かに震えているのに気がつく。そんな事、あるかよ。あるわけないじゃん。そう思いながらも、指は携帯の、押し慣れた山下の番号をコールしていた。 コール音が聞こえた。心臓が大きな音で、体中を支配している。気持ち悪い、頭が真っ白になる。早く、山下出て! 『プッ』 携帯が通じた!
「山下!」
向こうからは返事が来ない。ただ、少し困惑してるというか、戸惑っている感じが伝わってくる。俺はというと一人まくし立てて大騒ぎしていた。 「なんだよ!無事なんじゃないかよ!なんでなんも連絡くれないんだよ。いっつもおまえから連絡をしてくるくせになんも、今日に限ってなんにも連絡ないから、なんかあったんじゃないかと思ったじゃないかよ!」 「なんだよ、これじゃ俺が一人ばかみたいにしゃべってるだけじゃん」 実際、そうなんだけど。 「なんか言えよ、山下…俺、一人空回りしてるみたいじゃん」 実際、空回りしてたけど(笑) 「ごめん」 ようやく山下の反応がかえってきた。なんだか、すごく久々に山下の声をきいたようなきがする。心がほっとする。 「ごめん。」ともう一度山下が小さな声で言った。 急に、俺の心に罪悪感が芽生えた。いや、こっちも急にまくしたててごめん、と俺も謝り返したけど、どちらかっていうとほとんど俺の早とちりの暴走状態だったし。頭が冷静になってくるにつれて、さっきまでの自分の言動が恥ずかしくなって、たまらなかった。 改めて、もう一度山下にごめん、と謝った。 「なんか、変な電話だよな。急に斗真が怒って、俺が怒られて、俺が謝って斗真が謝って。わけわかんねー」 「確かに。」 思わず吹き出してしまう。電話の向こうで山下も笑ってる。それだけで、さっきの怒りだとかむかつきだとかチャラなしてもいいっていうくらい暖かい気持ちになれる。
いや、まて。
そういえば、何について怒っててむかついてたんだ? あ、思い出した。 「山下さ。」 「ん、何?」 「今日はなんでメールくれなかったの?仕事忙しかったの?」 「そうでもない」 また、黙り込む。おいおい、また一からやり直しかい?(笑) 「じゃ、メールするのネタがなかったとか?」 「ううん」 さらに加速する山下の沈黙加減。こいつってば、他のジュニアの攻撃(笑)にはガンガン反撃してやりかえすのに、俺には最近そういうのがないんだよな。なんかちょっと寂しい。 「じゃぁ、俺がなんか気にさわる事した…?」 俺には全く記憶にはないんだけど。もしかしたら山下になにか不快な思いをさせてたのかもしれない。 「…そんなんじゃねぇよ」 ようやく、反応らしい反応が返ってきた。ちょっと、拗ねたかんじではあったけれど。 「そんなんじゃないってどういう事?」 一瞬、間があった。それから、少し溜め息みたいなものが携帯から伝わってきた。なんだよ、言えってんだよ言いたい事があるなら。 「何?俺に直してほしいところがあるんだったら言ってよ。山下らしくないじゃん、そういうの。」 「違う。違うんだって。」 投げやりに否定する。小さく、また溜め息が聞こえてかすかーに、鈍すぎ…という声が聞こえた。なんだと、このやろう。(笑) 反論をしようて思ったその時。 「俺が免許とったら、二人でどっかにいこうな」 あまりに話が見えない。山下の発言に思わず首をかしげる俺。つまりそれはどういう話の流れさ?考え込んで無反応な俺に気がついてか、山下がまた鈍い、と呟いた。今回のは聞こえるように言っただろう、お前は〜! 「っていうか、俺のが先に免許とったりして。」 とりあえず反撃。自分で言っておきながら意味のない反撃だった…。 「それでもいいから、俺がドライブ連れてってやるって。いい加減気がつけよ。」 ドライブ…もしかして昼間に話したオフの話をしているんだろうか。あの日は翼くんとドライブに行って楽しかったんだよなぁ。…しかし、山下はなんでそれについて噛み付いてくるのやら。 …もしかして。…もしかして、もしかしてなのか?俺と、二人で?さっきの発言をよくよく思い出して考えてみると、つまり、そういう事になる、よな。え、マジで? そりゃ、俺、鈍すぎだ。鈍感王だ。う うわぁ(汗) 今までのこいつの態度とか、今までの発言とか…そういえば思い当たる節がいくつか…。それに気がついてしまった。それっていうのは山下の気持ちで、今まで俺はすげー仲のイイダチだと思っていて。どうしよう、そんな事急にいわれてもわかんない。わかんないけど、嫌じゃない。 耳が熱くなっていくのがわかる。耳どころか、顔までも。 「俺、まだ車もってないから斗真をドライブに誘えないけど、免許とったら、まず最初に隣乗させるから」 乗させるって、あなた(笑) 「斗真がドライブ好きなのは知ってるんだけど、翼くんには悪いんだけど、斗真が他のヤツと楽しそうにしてるの想像したら…もうむかついて。」 「うわ、ヒド!だからメールくれなかってわけ?」 「だからごめんって。…それに、あんなに楽しそうに話してる斗真の話の中に、俺がいなかったのが嫌だったんだよ」 うわ…なんて自己中な(笑)そんな理由で俺は右往左往空回りをしてたわけか。…まぁ、別にいやじゃないんだけど…て思う自分がいるのにちょっと驚いた。俺ももしかして、もしかしてたのかな? 「ほんと、ごめん。そんなに心配してくれるとは思ってなかった」 気分むかついてたんだけど、そんなのどうでもよくなったし、と山下は嬉しそうにいう。ごめんなさいと言う割りに反省の色がみえないんですけど。確信犯か、もしかして。 「と、いうわけで免許取ったらドライブいこうな」 …いつもの山下テンションに戻ってる。全く、こいつは…(笑)さっきまでの元気のなさはどこへいったんだよ。 「でもまぁ、ドライブできるまでまだ相当時間かかりそうだけどね〜」 「んだよ、待ってろって(笑)」 「翼くんにまた誘って貰おうかな〜」 このぐらいイジメてもいいよな。(笑) 「いやだ、ダメ、いくな」 即答かよ。しかもマジ返しだし。でも、嬉しい。 「なにガキみたくムキになってんだよ。じゃ山下も今度一緒にいこうよ。楽しいぞー」 「それより、どっか二人でいかね?今度のオフが合った時に」 話変えられたし。そんなにダメですか、ドライブ…。…っていうか、…今のて… 「今のって何?デートのお誘い?」 半分笑って半分伺うように尋ねる。 「…その、つもりだけど。悪い?」 悪いって、山下さん(笑)悪くわないです。そしてそのつもり、なんですか山下さん! 「悪くないよ、俺も別に」 そのつもりでかまいません、と小声でつけたした。あぁ、頭がくらくらする真っ白になる心臓がドキドキしすぎて痛い。っていうか気がついたら俺、床で正座してるし!(笑) 携帯からは「ヤッタ!」といううれしげーな山下さんの声。むかつくなぁ、その幸せそうな声が。 「じゃ、次回デートはディズニーランドって事で決定」 おいおい、話し勝手にすすめんなよ!しかもディズニーって… 「まじで?マジでその話を進めてる?」 「大マジ。だって斗真、恋人できたらディズニーランド行きたいって言ってたじゃん」 「い、言ってたけど、そりゃ」 恋人って言葉を出されると…マジ照れる。照れないのか山下! 「いいよな、決定。」 しかも決定かよ!ほっんと自分に素直なヤツだよな。俺も心が広くなるってもんだよ… 「仕方無いなぁ、一緒にいてやるよ」 携帯からは嬉しそうに任しておけと言う、やけにヤル気の山下の声が聞こえる。こいつのこういうところ、憎めなくて好きだなぁ。
「斗真、今日は色々とごめん」 「いや、それは俺もだし」 「なんか…言うこと全部言ったらすっきりした」 そりゃそうだろうよ…俺もまさかこんな展開になるなんて思ってなかったし。(笑) 「でも、嬉しかった方が大きいかな。斗真の気持ち、分かったし…」 「う、うん」 恥ずかしいからその話題はやめてくれ…あー。 「じゃ、今日はこれで。明日も仕事頑張ろうな。」 プツ。 げ。切りやがった…自分の言いたい事を全部言って切りやがった…。まぁ…山下らしいといえば山下らしい、というか。
しばらく、俺は携帯と見つめ合ったままにやけていた。嬉しくてドキドキで、幸せな感じ。ニヘラ、と笑う俺。今は、ただ山下とのオフが重なる日が早くくるように祈るのみ。 神様、どうかその日が訪れますように。 また明日、山下に会ったら初めになんて声をかけようかな(笑)でもきっといつも通りの二人だろうな。ただ、俺らの中で変わっただけだから。
しあわせの、形がね(笑)
2002年05月01日(水) |
休日の過ごし方。(山斗) |
…ナニ。コレ。
3ヶ月ほぼかかりっきりだったドラマが終了して、やっとオフらしいオフを貰った。特に予定も入れずにゆっくりしようと思った、そんな休日。目覚ましをかけないで好きな時間に起きた。目を覚ました昼すぎ、なんとなく点けたTV画面にいきなり飛び込んできた、よく知った顔。
TVの中で、斗真が笑ってた。
日曜のお昼に一体誰が見るんだろう、なんて失礼なことを思ったバラエティ番組。そうか、俺みたいなやつが俺みたいな気軽さで見るのかな、なんて余計なことを考えようとしながらも、目だけは画面を捉えて離さない。
斗真はまだ笑ってる。
そりゃあね、TVだし、斗真だって笑うだろう。俺だって笑うもん。だけど、問題はそこじゃなくて。そこにいる斗真が。笑ってる斗真が。知らない人みたいに見えたんだ。四角いTVの画面の中で。俺の手の届かない場所で。知らない顔で、笑ってたんだ。 「…なに、どうゆうこと」 自然、呟きが洩れた。ここは俺の部屋だし、俺以外いないし。呟きは誰にも聞かれることなく空気に溶ける。 「斗真って、こんな顔で笑ったっけ…」 ロケ続きでしばらく会わない日が続いたからって、斗真の顔なんか忘れない。いつだって引き出しを開けて、取り出して見せられるくらいには、俺の中でそれは大きな位置を占めていて。 そう、ロケが煮詰まったり疲れが溜まったり、弱い自分が顔を覗かすとき、決まって思い浮かべるのは斗真の顔で。頭に浮かぶその姿だけで、少しでも癒されるような気になる、大好きな人。笑った顔が好きで、怒った声が好きで、喧嘩もするけど俺から言わせれば、それは好きの裏返しみたいなもので。だって好きじゃないやつなんか、構いもしない。興味もない。 好きだって、言ったのは俺が先だった。 いま思うに少し焦ってたのかも知れない。斗真は人気者で、みんなから好かれてて。そんな斗真が俺に優しいのを優越感みたいに感じながら、誰にも渡したくないって思ってた。だから宣言するみたいに斗真が好きだって言った。斗真は一瞬目を丸くして、それからうん、俺も、と笑った。それを見て俺は肩からすっかり力を抜いて、大きな、大きな息をついたのだった。嫌われてるとは思ってなかったけど、振られるとは思いもしてなかったけど、それでも心のどこかに不安があったんだ。体から力が抜けて、代わりに染み込むように広がる安堵と幸せ。幸せが形を持ってたら、きっととても柔らかな、淡い色をしているんだろうと思った。 俺は、自分で言うのもなんだけどわりとジコチュウで、仲のいいやつにほど素直になれない。仁となんかしょっちゅう喧嘩するし、口を開けば憎まれ口ばかり。それでも俺は仁が好きだし、いいやつだと思ってる、本人には絶対言わないけど。斗真と罵りあったりはしないけど、それでも好きだとかそうゆうことは、あれっきり言ってない気がする。 好きだなんていつも思ってるし、いつだって口に出したいんだけど、なんとなく言うのが憚られて。言えない自分がいる。その代わりに手を繋いで、斗真の近くに行こうとする。斗真はなにも言わないで、手を繋いでくれる。斗真は大人で、俺は子供だなって思う。それが悔しいときがある。俺はどこまで行っても斗真よりひとつ年下だし、その年の差は、俺がいくら埋めたいって思っても一生埋まらない。 気がつくと、TV画面はもう斗真から離れて、缶ビールのコマーシャルを映し出していた。チャンネルを変えようと持ち替えたリモコンを、そのまま机に置いた。 小さく息を吐く。 なにもない休日。考えるのはあなたのことばかり。 斗真のことを考える休日。それも悪くないな、と思った。 もう一度、さっきの斗真の笑い顔を思い浮かべた。
知らない顔で笑う斗真は、見ていて居心地が悪かった。おかしな顔なんじゃなくて、むしろ逆で、そう、なんというか。きれいだったんだ。 俺の知らない顔で、俺の知らない間に笑う斗真は、なにを考えて、誰に笑っているんだろう。なんとなく思った。
無性に斗真に会いたくなった。
ベッドサイドに放りっぱなしの鞄を引き寄せて、携帯を取り出す。きちんと畳まれたそれをぱかんと開いて、ボタンひとつで出て来る斗真の名前。今日はなんか仕事入ってたかな。こんなにも天気のいい日曜日、もしかしたら誰かと遊んでるかも知れない。思いとは裏腹に手が勝手に動いて、通話ボタンを押した。電子的なコールが数回聞こえて、ふと空白が訪れる。一瞬の間を置いて、斗真の声が聞こえた。 『もしもし?』 少し低めの、大好きな声。 「斗真?」 『なに、どうしたの山下?』 今日は休みなの?と声が語りかけてくる。周りは静かで、少なくとも仕事中ではなさそうだった。 「うん、久々に休み貰った。さっきTVで斗真を見て、声が聞きたくなったの」 『アハハ。それ、俺も見てるよ、いま』 それで耳を澄ますと、遠くにTVの音。耳から聞こえるTV音と、携帯を通したTV音がシンクロする。なに、斗真も休みなの?聞くとうんそう、と返ってくる。いま、家?うん、そう。山下も?うん。お互いなに、休みなのに家に篭ってるの。本当だね。それでふたりして笑った。ここ少しは忙しくて、電話も出来なかったから、久し振りに声を聞いた。電波を通して笑う斗真は、俺の知ってる斗真で。 『…山下?』 どうかした、と優しい声がした。斗真は声のトーンがよく変わる。怒ってるとき、嬉しいとき、凹んでるとき、声を聞くだけですぐ分かる。それは俺が斗真を好きだからかも知れないけど。いまは…穏やかなトーンだった。満ち足りた声。 「あのね、斗真」 だからかな、つられて俺も、なんだかとても素直な気持ちになった。 『うん』 「さっきTVでさ、斗真笑ってたじゃん」 『そりゃあ笑うよ』 「うん(笑)。なんかさそれが、知らない人みたいだったんだよね」 『知らない人?』 「俺の知らない顔で笑ってた」 『そうなの…?』 「うん、そう。なんていうか…」 『いうか?』 「きれいだった、かな」 『・・・』 斗真が息を飲む、気配。どうしたの山下、いきなり?そんな答えを予想してたのに、返って来たのは 『それは、山下のことでも考えてたからじゃない?』 なんて。冗談交じりに言われて、今度は俺が息を飲んだ。 「そうなんだ」 『うん、そう』 それで一旦会話が途切れて。ただ静かに繋がる、俺と斗真の見えない空間。日曜の午後のゆったりとした空気の中で、ぼんやりと思った。斗真が好きだって。 それはやっぱり声に乗らなくて、内側に消えてしまう。染み入るように俺の中に広がって、斗真までは届かない。 言えばいいのに、って思う。好きなら好きって言わないと。何度でも言わないと。仁にいつも言われる。そんなの、言ってあげないとかわいそうだよ。そうかも知れないって思う。あんなに前に一度言ったっきりの言葉を、斗真はまだ覚えてるんだろうか。もう忘れちゃってるのかな。忘れないように、本当は。言い含めるみたいに言うべきなのかも知れない。 斗真がなにも言わないから。甘えてしまうんだ。たったひとつしか違わない年の差を誰よりも気にしてるのは俺なのに、気がつくとそれを免罪符にして甘えてる。斗真の優しさに甘えてる。 ひとつ深呼吸をした。大きく空気を吸って、ゆっくりと吐き出す。それから。 「好きだよ」 斗真のこと。こうゆうの、倒置法っていうんだっけ?誤魔化すみたいに順番を入れ替えて。斗真の気配を探る。電波の向こう側で、斗真が息を吐いたのが分かった。 『大丈夫、』 分かってるから。と、柔らかい声。 大丈夫だよ。言えない山下の性格も、山下の気持ちも、分かってる。
やっぱり甘やかされてる、と思った。そんな斗真がやっぱり好きで、誰よりも好きで。
好きな人をもっと好きになる、穏やかな休日。
■■■やまとま。
・・・・・・・・・・・誰だろう、これは・・・。(自問自答) 思っていたのとは全く違う話になってしまったヨー!もっとこう、ヤキモチ妬きで唯我独尊な山ピの話になる予定だったのに!むしろこれ、斗山みたいな…(アワワ)。どうも私の中の山ピーは、こんなイメージなようです。見当違いかも知れませんが、山斗は結構穏やかな組み合わせじゃないかと思うのですよ。斗真はとても包容力がありそうだと思います。そして山ピーは斗真が大好き(笑)。赦すと赦されるがバランスよく交差してる、そんな感じだったらいいのにと夢見てます。
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