「何の仕事をしてたの?」
と聞かれて「似たような工場です」と答えた。 過去の仕事の話はしたくない。 そんな私の気持ちなんて知る由もなく、相手は話を続ける。
「今までどれくらい長く働いたの?」 「1年くらいかな」
「どれくらい仕事を変えたの?」 「えっと」 言いよどむ私になお相手は話を進める。
「5つぐらい?」 「ええ。まぁ。そんなもんです」
「え??○○さんいくつだったっけ?」
「私と一緒だよ」 隣にいた同い年の子が答える。
「え?それで、その数で長くて1年?」
ああ。いい加減、この話をしたくない。 私の顔が曇っていることに相手は気が付きもしない。
「オレさ。中学の時から仕事は長く続けるものだって思ってたよ」
もう、答える気もない。 ああ。良かったね。思ったとおり、長く勤める事が出来て。 出来れば、私だってそうしたかったさ。 でも、思い通りにならないのが人生だ。
昔、同級生にも言われたよ。 「○○さんは普通にずっと同じ仕事をしてそうな感じだった」 その時、私は無職だった。 ハローワークに通う途中でばったり同級生に会ったのだ。
昔の仕事の話は古傷をえぐるようで痛い。 自傷行為が表面化した事もある。 仕事をする度に、痛みがぶり返す。 「何か仕事がありますか?」 そう言って、クビになった事もある。 今だって、そう聞くことが怖い。 今の仕事に支障をきたしているのはわかってる。 周りはなぜ、仕事が終わったのに次の仕事を聞かないのかと思ってるだろう。 声が凍てつく。 一度の失敗を今も引きずる。 愚かしい。
|