数え歌

君はいつでも数えたがる
ひとつ ふたつ 

数えることこそが
生きている証のように


昨日の睡眠時間
上手に撮れた写真
車窓から見える並木
私と過ごした日々
眠れない夜
完成度の高い曲
灰皿の上の煙草


年が明ける毎に「今年は何歳になるんだ」と
少し照れたり少し哀しんだり

私が確か
生きている年数が増えれば増えるだけ
本当はそれだけで幸せなんだよと言ったら
人間は努力すれば殆どのことは全て叶えられるけれど
何をしてもどうしても取り戻せないのは
若さだけなんだよって返答したんだよね


君は後悔していないって言ったけれど
それは果たして本当だったのかな
私は数えることに意味なんてないと
今でも多分これからも思っているから
例えばそこに君が意味を見出すのなら
世間でよく言う「価値観の違い」ってやつだ

多分私も君も
大事なものは数なんかじゃないのを判っているけれど
それでも今日も明日も
きっと君は数えてしまうんだろう

ひとつ ふたつ 

生きている時間は短くなって


そこに見える幽かな幸せを確認していたい
いつのまにか本末転倒
数えることにこそ意義があるみたいに


そんな些細なマジックを
私だって君だって
まるで当たり前のように受け入れている





友達

私はあの人が優しいということを知っている
けれど
何故そう思っているのかよく判らない

皆に
あの人はとても冷たい人だ と言われて
私は自分でも驚くほど
必死に抵抗したんだ

けれど何故そんなにムキになったのか
よく判らない
そしてあの人が本当に優しいのかどうかも
実はよく判らない

私は何を根拠に
あの人を優しいと思っていたのだろう


いつものように友人達の会話を
ぼんやり聴いていた
誰かの悪口を言ったって
それが
知っているからこそならば とずっと思っていた
酷く不愉快で泣きたくなっても
ほんとうは大好きだからだと思っている

その頃になってやっと私は
友人達が私のことをどう思っていたのかを知った
そうだなあ
空気が読めない っていうのはかなり致命的


そういえばあの人は
口は凄く悪いけれど
誰かが傷つくようなことは言わなかった
頭が良いからなのだろうか

あの人にそう言ったら
所詮は受け止め方だから と笑われてしまった
あの人の
端々に見えたあの 気持ちは何だろう

私はそれを優しさと名付けた
それでもあの人は
私を憐れむような目で見たりはしなかった




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