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■ 峠のメッセンジャーと呼んでくれ その6
なんとなく4時くらいに目が覚める。特に意識したつもりはなかった、はずなんだが。空模様が気になって起きてカーテンを開け、窓を開ける。オリオン座が目に飛び込んでくる。その周りにも見たことがないくらいの星たちが。普段かけないメガネをかけてゆっくり見ようという気持ちはやっぱり起こらなかった。とにかく、しばらく我を忘れて空を見上げた。
再び起きたのは6時45分。外はこれまでの数日が嘘のように雲ひとつないくらい真っ青な秋の空。これなら今日はガンガン走れる。7時くらいに朝食。だいたい普段は適当に食っているのだが、これまでしばらく朝飯が食えなかったしチャリで爆走する予定なのでひたすらパンを焼いて食べる。そのあと部屋に戻り、買ったばかりのバッグの中身を走り用に入れ替え。9時くらいに自転車の調整をする。とはいっても、ブレーキなんかのガタが起こってないかくらいでたいしたことではないが。空気圧も特に問題はない。これが低いとどうしようもないなぁ。同宿人にいろいろ折りたたみ車について聞かれて答えたりして9時45分くらいに出発。服装はチャリ屋のTシャツにした。
最初はとにかく上り。いきなりしんどい。まぁ、準備体操にはいいのかもしれないけど。結局1.5kmほど上りバス停へ。地元ではこれほどの上り坂は、っていうか上り坂自体がほとんどないので疲れやすいはずなんだけどいつもと違う空気が疲れを感じさせない。これに限らず遠くへ出かけるとそういうもんだ。
さて、バスに乗車。と、整理券が出てこない。運転手に突っ込もうかとも思ったがなんだかいつの間にか出発。客は自分含めて3人しかいないしどうにかなるか。とにかく上る上る。途中スキー場の隣にあるホテルなどに寄り道をしつつ、昆布温泉というところで少し下り。しかし、その後もずっと上り続け、下車する神仙沼の直前でようやく下り。3,40分乗って下りは10分もない。ってことは多少登れば後は下りで爆走できる。750円、結構高い。
やたらとライダーが多い。しかも、ほとんどリッターバイク。年齢はいい年したおじさんがほとんどで、若者女性はほとんどいない。とりあえず、ライダーたちが休んでいるところで自転車組み立て。そしてトイレへ。何気に水洗だった。「水は運んできてますので節水にご協力を」と書いてあったが、この水の流れようを見ると大きいほうだとちゃんと流れるのだろうか?、と変な心配をしてしまった。
さて、だいたい11時になる。このまま下ろうかとも思ったが、せっかく神仙沼があるので歩いていってみようかなとも思う。鍵がないのが唯一の心配。どうも見る限り道は木道なので、いっそチャリを押していこうかとも考えたのだが北海道新聞あたりに「自然散策路に自転車を持ち込んでいる若者がいる」と投書されても困るので、それはやめにする。ちょっと考えて、こんな山の中でチャリをパクってもどうしようもないだろうということで、折りたたんでハンドルぐらぐらにしておいて出発。あれなら仮に乗っていこうとしても乗れないし。
ってなわけで、神仙沼までだいたい1km。10分歩いて10分見て10分歩けば30分で帰ってこられるだろうと考え歩き出す。天気はよく多少汗ばむくらいになっており、タイミングがよかったなあと思いながら。最初はゆるい上りが続くので早足だと少し大変。山を歩くときのお約束ですれ違う人たちに「こんにちわ」連発。結局、1人で来ていた人は絵を描いてた老人と自分くらいしかいなかったのでさぞかし頭の逝ったヤツに見えただろう。まぁ、もうそんなことは気にならないくらい出かけているけど。返答率はほぼ100%近くてほっとしました。っていうか、返ってきそうな人たちにしか言わなかったというからくりなのだが。
10分くらい歩くと日光戦場ヶ原みたいな湿原が出現。高山植物や低いマツの木がある。その先へ行くと神仙沼があった。水は冷たい。魚はいない。生物はカモ一羽しかいず。水深は最高でも2mくらいだということで結構低いな。終止木道を歩き、だいたい30分くらいで戻る。ジャスコにでも行くような幹事で4,5人同年代の人間がいたのだが、彼らはなんだか異様な空気だった。
駐車場に戻ると売店の係員らしき3人が自転車を取り囲んでいた。「どうしたんですか?」と聞くと「いや〜、小さくなっているからすげぇなぁ」とか言う。「岩内のほうから上ってきてすごいなぁ」とも。バス停は岩内方面だからバス停でチャリを組み立てて押してきた自分はそう見えたのだろうか。んなこたぁないと説明。で、「組み立てるとこ見せて」と言われたのでささっと組み立てると歓声が。「いやぁ、すごい」とか「目の保養になった」とか自転車組み立てただけなのに相当喜ばれる。きっとこの自転車は女の子なのだ。
ってわけで、11時半過ぎに駐車場出発。しばらく上り下りを繰り返す。上りはこれまたかなり続くのでしんどかったがこれを上れば一気に下れると頑張る。やっぱり追い抜いていく車やすれ違うオートバイには奇妙な顔をされる。覚悟していたことだけども。
5kmくらいそれをくりかえしたら最高地点へ。あとは、山道を20kmほど一気に下ればそこはニセコ市街地になる。さっき買った天然水を飲み、あとはペダルを思いっきりこいで加速、一気に下る。
一気に40Km/h突破。カーブも堂々と真ん中を走ってちょっとブレーキかけて30Km/h以上で抜ける。既にこの時点で未知の世界なのだが、思いのほか舗装がいいのと、交通量が少ないのと変なテンションも手伝って意外と恐怖心は感じず。更に加速しようとペダルをこぐと50Km/hも越え、最終的に55Km/hまで到達。もはや18インチ車では異次元だし、走る前はフレーム剛性の心配もあったりしたのだがいざ下ってみるとそういうことはあまりない。
何キロか下ったところで、五色温泉への道がわかれていた。このまま下ると時間が余りすぎるし、ちょっと下りも物足りないかな、そう思って、ずっと上りが続く五色温泉への道へ入る。標識には4kmってあるから20分もあればどうにかなるだろう。
とはいえ、シャレじゃなくずっと上り、上り、上り…である。確かに景色はよかったりするのだが、あとどれだけ上ればいいのやらと思う。途中でいろいろ写真撮ったりして3km少々いったあたりでトンネル。そこを抜けると温泉宿が何件か。その先はなんだかすごい上り坂があったので、その手前でやめておく。この山を越えれば倶知安だ。
さて、あとは取って置きの下りだ。ニセコ市街まで20km、たぶん40分もかからずに着くだろう。4kmを6分少々で下り合流地点へ。そこのカーブが結構きつくブレーキかけて減速するもかなりブレーキが消耗する。そりゃあ40Km/h以上から20Km/h近くまで減速するからなぁ。そのあとは、とにかく下り。限界に挑戦するため40Km/h切ったら加速を繰り返すという日常ではとてもじゃないが考えられない速度で下る。もはや何かの中毒状態である。結局昆布温泉で下り坂が平地になったところで全開走行終了。12kmを結局16分足らずで走った。最高速は56.5Km/hまで伸びたがこれ以上はなかなか大変だろう。
さて、正午も越えていたし昼飯だ。とはいえ、金がないので札幌で買った4個170円のミニメロンパンしかない。ちょうど甘露の水という湧き水があったのでそこで水を飲み、メロンパンを2個食べて休憩。その水はかなり有名らしく、多くの人が車で乗りつけ、何十本もペットボトルを持ってきてひたすら水を汲んでいた。異様な光景だ。自分は500mlを飲み、更に500mlを汲んで出発。ここからしばらくは上りが続くので10Km/h出るかどうかで上る。そこで、今回唯一の自転車とすれ違う。向こうはニヤニヤしていた。
上りきったところであとは下り。また、30〜40Km/hで爆走したが、カーブで少々段差をつけているのはいただけなかった。確かに、ドライバーに注意を促すにはそれがいいのだが、チャリでは危険である。まぁ、こんなとこチャリで走る人間はそう多くないけど。バス停を通り過ぎ、ニセコ駅のほうへ下る。坂は常時どれくらいだろう、7,8%以上の傾斜はあったと思うが、ついにこがなくても50Km/hを突破してしまった。ニセコ大橋でようやく平坦になり、歩いている小学生のびっくりした顔を見ながら追い越し、ニセコ駅まで一気に下る。
さて、これからどうしようか。まだ13時半くらいである。宿に戻るには早すぎる。とりあえず、倶知安方面に走り、また五色温泉通って帰ろうかなと特に深くも考えず走る。が、正直坂道を上るのがしんどくなってきた。思わず降りて押して歩く。永久に上りが続くわけでもなし、4Km/hで歩けば5時間あれば20Km進むと楽観的に考え歩く。坂が下りになると乗るの繰り返しで、国道5号線に出、そこもおなじような感じで走る。そうすると比羅夫駅への分かれ道に出る。どうもこのまま倶知安に行くのはつらいので比羅夫に寄り道することに。ここは駅が宿になっているのでその様子を見るのも面白いかなと思ったのだ。
脇道に入り、ややきつい坂を下り、更に行った一番低いところに駅があった。ちょうど24時間前に自分が乗っていた列車が到着したところで2,3人下車していた。その様子を見て今度はニセコ方面に帰ることに。もはやこれ以上はなれるのは危険だ。山の中を走ってると唐突に学童注意の標識が。どう見ても学校はおろか人家もないところなのに…数百メートル走ると謎は解けた。木造の小学校があったのだ。ここはちゃんと現役校舎だったが、今日は祝日、誰もいなかった。小ぶりな校庭でちょっと休み、またニセコ方面へ。相変わらず道はアップダウンなのでとにかくきつい。走行距離自体はまだ50Kmにもなってないし、そのうち30Kmくらいは下っているのだが、上りに対応できていない自分は体力の消費が激しいようだ。
最後、宿への道でようやく下りになるが、宿が坂の途中なのでまたブレーキがすごい音を立てる。15時半くらいにようやく到着。とにかく疲れてしまったのでそのまま眠りについた。走行距離だいたい54Km。楽しかった。
なんとなく目が覚めると同室人がいるようで荷物が置いてある。どうもライダーだな。そしてまた寝る。また起きると同室人がいて挨拶。どうも見る感じは同年代だ。なんとなくヤクルトスワローズの五十嵐投手に似てるなぁと感じた。今日でYH5泊目なのだがようやく「ユース」な人と一緒になれた感じ。デジカメの写真やどういうルートを通ったとか話しているともう1人同室人が来る。またこの人も同年代の感じだ。少し話をすると彼はすぐ温泉に出かけていった。
ライダーの彼は自分の隣県の人だったし、従兄弟が住んでる隣町の住民だったのでその辺の地元ネタでも盛り上がる。温泉に行った人は食事の直前に帰ってきた。
自分は2泊目のためいくら丼ではなくいかそうめんだった。でも、ちゃんと追加で一品つくのね。トンカツやロールキャベツがあって、1日爆走した自分にはちょうどよかった。そのときの会話でライダーの人は19、JRで回っている人は24であることが判明。だいたい同じ年代かなというのは合っていた。しかもその2人は社会人だ。食卓でまたいろいろ会話に花が咲く。やはり同年代だと会話も弾むものだ。どうやら今日の宿泊客はこの3人みたいだ。昨日は3人ばらばらだったので人が少ないと1人1部屋かなと思っていたが、同年代だと同じ部屋にしてくれるみたいだ。こういう気遣いはありがたい。
部屋に戻って3人で雑談。さっきまで温泉に行っていた人、バイクで来るつもりだったが免停になってしまい、車を使う仕事だったため仕事にならなくなって長期休暇もらってこっちにきて3週間経つとのこと。JRで回っているらしい。そしてびっくりなのが3週間経つのに旅費が減ってないという。どうやらパチスロで稼ぎまくっているようで、帰りはなんとトワイライトエクスプレス、しかもディナーつきときた。最初はスイート狙っていたというからなんだか金銭感覚が麻痺している感じが…まさに成金。そのあとも3人で盛り上がっていると21時くらいになり、アコーディオンの音色が聞こえてくる。ってなわけで、アコーディオンライブ。この人、北海道のアコーディオン協会の会長もやっている人でその道では有名らしい。そんな有名人の演奏が無料で聴けるとはうれしい限り。紅茶を飲みながら、アコーディオンが意思を持っているかのようなすばらしい演奏に耳を傾ける。贅沢な時間だ。
途中で、女性が1人入ってくる。またこの人も同じくらいの年代だろう。コンサートは45分くらいで終わり、後は質問タイム。アコーディオンはでかいハーモニカを2つ持っていることや、左手側にたくさんついている黒丸はそれぞれいろんな音色を奏でることができることなどいろいろためになった。結局女性はすぐに戻ってしまう。っと、そこで成金の人(自分はこのとき兄貴と呼んでたので以下そうする)が、「君たちももちろん飲むよね〜」と売っているビールを持ってくる。我々残りの2人は何も言う間もなく飲みに突入。「金は俺が出す」と強気だ。結局冷蔵庫に入ってた瓶ビール2本、缶ビール6,7本がすぐになくなる。ここで、時間も経つので談話室に移動し、自販機のビールを買いまた続き。最終的に更にビールは5本くらい追加された。
彼ら2人はすすきのでの遊びの話となり、あれよあれよという間に明日すすきので遊ぶぞという話に。石鹸だのキャバクラだのの話に花が咲く。なんなんだこのほとばしるエネルギーは!もちろん自分も誘われるわけだが、マジで金がないと言っても「金なら気にするな、5万くらいなら出す」だのとても正気では考えられない発言を成金兄貴は連発。正直、気持ちは相当傾いたのだが、そこまでしてもらうのは人としての良心がかなり痛む。それに、裏を抱えて働いている人がかなり多いため素直に騒げない、ただでさえ人見知りだし女性との会話が苦手という自分の変な欠点もある。多少は経験しとくといいみたいにいろんな人に言われてはいるけどもね。ここで、こっちに来る前に金策を怠ったことを後悔し、札幌でバッグを買ってしまったことを正しかったのかと少し考えた。ちゃんと金策をし(貸した金を返してもらうこと)、バッグを買わなければそこで遊ぶ金はなんとかなるくらいはあったのだ。
フリーな現在、そういう遊びをしてみるのも悪くないし、手馴れた人と行くのだから怖い目にあう心配も少ないけども…結局そういうところには行くなということなのだろう。以前1度連れて行かれたパブではコンパニオンのおねーちゃんと馴染めず同級生と2人でしゃべってた自分だからなぁ。ちょっと興味のあるところもあったけど、今は別に後悔はしてない。相当べろべろに酔っ払い、0時過ぎにぐっすりと就寝。吐く寸前まで飲んだから明日大丈夫かなぁ…
2004年09月23日(木)
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