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2003年07月23日(水) おねしょの薬・デスモプレシン・スプレーがついに発売された!!

 やっと、デスモプレシン(抗利尿ホルモン)のスプレーが発売され、尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症に対する適応となった。
 具体的には夜尿の見られた翌朝起床時の尿浸透圧が800mOsm/L以下、あるいは、尿比重が1.022以下の夜尿症に適応とされている。

 使用法は眠前に1プッシュ点鼻(10マイクログラム)で2プッシュまで増量可とのことだ。

 改善率は53.6%とのこと。

 副作用として、頭痛(1.3%)、食欲不振(1.3%)、嘔気(1.0%)、顔面浮腫(1.0%)を認めた。また日本では報告がないが、抗利尿ホルモンの化学合成誘導体であるため、体内にNa(水)を蓄積させる水中毒の危険性もある。

 ちょっと困るのが遺尿症の治療薬として用いているトフラニール(塩酸イミプラミン)と相互作用があり、低Na血症性のけいれん発作の報告があるとのこと。
 どうしてそうなるのかというと、トフラニールにも抗利尿ホルモンを分泌する作用があるとのことで(知りませんでした)、デスモプレシンの作用を増強するのだそうだ。
 併用は有用と考えているが、慎重に使わなければならないのだろう。

 とにかく、セカンドラインの治療として、今後は、こういった治療薬の説明も初回受診時にしておく必要があるのだろう。

 http://www.kyowa.co.jp/onesho 夜尿症(おねしょ)ナビというサイトを発売元が制作されているので、興味のある方はのぞいてみるといいと思う。


2003年07月08日(火) 透析患者さんの鉄剤の投与法

-「愛媛の人工透析を考える会」第9回(at松山日赤栄養室2003.6.28)-

慢性腎不全で透析を受けておられる方の約8割がエリスロポエチン製剤を使用している。そして造血には鉄が必要不可欠だ。
鉄をいかに補充するかで、エポ製剤の投与量を減らし、効率的に利用することが出来る。

(効率的・・・これからはそういった経済的な側面も考えてバランスのとれた医療を提供しなければならないし、患者さん側のニーズにも積極的に許す範囲で答えていかなければならないのだろう。でもそのためには患者さん側の参加も必要だと痛感するのだけど・・)
そういったテーマの元で、島松内科の島松先生の講演がある。

先生は開業当初から、週一回ブルタール40mgの投与のトライアルをされ、その投与法のほうが、欧米などで推奨されている、一回に大量の鉄を補充する方法より優れているという結果をまとめられた。
先生のところの実際の投与は、ほとんどが月2回・一回40mgのブルタールを静脈側チャンバーから1分以上かけゆっくりに静注する方法との事。
平均使用量67mgで、Ht30程度をキープできている。

十分なHtはどう設定するのか?
鉄過剰の状態は何で見分けるのか?(先生の目安はフェリチンで500だが、もう少し少なめでもいいかとの事)
C方肝炎の方に鉄材使用すると肝機能悪化の可能性もあり注意のこと、
保存期腎不全でも積極的に鉄材を使用したほうがいいとか、
臨床にただちに生かせるようなお話で、非常に論理的で感銘した。

又、日赤の満生先生の『慢性血液透析患者の鉄欠乏は何で判断するか』も、動的鉄動態の指標としてのCHr(網赤血球ヘモグロビン含有量)というものが炎症の影響も受けずに(フェリチンはCRP陽性だと上昇する)非常にこれから期待できると述べられていた。
ちなみに日赤でのデータでの指標は32とのこと。
あれだけ忙しいのにさらにこんな臨床的トライアルをする。やっぱりただ者じゃない!
ただしこの機械が高く1台2500万(!!)だって。

で、当院での投与法である。
自分はやはり週1回の鉄投与法を行っている。
TSAT(トランスフェリン飽和率)とフェリチンを指標に鉄剤の投与を変更しているが、この方法がある程度現在のスタンダードであることを確認できて、ほっとした。
TATA20%以下で鉄の増量を、フェリチンの上限値は現在は500くらいで設定していたのだが、400くらいに控えめにしようかな、と思った。

くしくも島松先生が言われていた。

開業してやっていると、裸の王様になったようで、自分のやり方が本当に正しいのかどうか不安になるので、自分の方法を世に問うために学会発表をしていると。
謙虚な言われ方で頭が下がるが、趣旨は同感だ。

こうやってシステマティックに日常臨床の場で考えながら、処方を変更してゆくというやり方が、本当に自分の中で確立しており、それをエビデンスとして還元できているのか、おまえは?と、また追い込まれてしまった雨の土曜日だった。


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