Deckard's Movie Diary
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2008年03月25日(火)  アメリカを売った男  ノーカントリー

『アメリカを売った男』
2001年に発覚したロバート・ハンセン事件を扱った『アメリカを売った男』。監督は『ニュースの天才』で輝きを放ったビリー・レイ。50人以上の同胞を死に追いやったと言われている史上最悪の裏切り者・ハンセンを演じるのはクリス・クーパー。ハンセン逮捕に執念を燃やすケイトを演じるのはローラ・リニー。そしてケイトに乞われてハンセンに鈴を付けに行く若き野心家エリックにはライアン・フィリップ。映画はハンセン逮捕までの最後の2ヶ月を描いています。誰に肩入れするわけでもなく、適度な緊張感と共にそれぞれの状況がスクリーンに映し出され、映画は淡々と流れていくのですが、観ているとだんだんと「こいつら、何をやってるんだ?何の因果でこんな辛い仕事してるんだ?」という思いに取り付かれてしまいました。
この映画の秀逸なところは(観る人によってはダメ出し部分かも?)、ハンセンが裏切った理由がはっきりと示されていない点です。だから怖い!その怖さは、人間の矛盾体質みたいなモノなのかもしれませんし、ちょっとしたボタンの掛け違いかもしれません。そんな底知れない人間の奥深さを表現しているクリス・クーパーは凄いなぁ・・・。


『ノーカントリー』
本年度アカデミー作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞を受賞したコーエン兄弟の『ノーカントリー』。まず特筆すべきは、バビエル・バルデム演じる殺し屋アントン・シガーがガソリンスタンドで店の親父と会話する場面です。単なる世間話が徐々にずれていく様は鳥肌モノで、映画史に残る傑作シーンになったのは間違いありません。この場面に出くわしたことで観客は底知れない恐怖に引きずりこまれ、その後、極度の緊張感の中で最後まで金縛りに会ったような気分になってしまいます。おそらく、このシーンは後で何度となく接しても、ついつい見入ってしまい、毎回そういう気分にさせられるのではないでしょうか?しかし、こんなシーンを観てしまった後では、挨拶代わりの天気の話しも出来なくなりそうです。

映画はアントン・シガー、逃げる男ルウェリン・モス、二人の行方を追う保安官エド・トム・ベルの3人を軸に進んでいきますが、住む世界も考え方も全くの違う3人のバランスが絶妙です。モスをタフに描くことに寄って、シガーのリアルな存在感が増す仕組みになっている点も上手いですし、それぞれのキャラにコミカル的要素を微妙に含ませている部分も、さすがはコーエン!と唸ってしまいました。恐怖も度が過ぎると笑ってしまう・・・みたいな感じでしょうか。そして、結局は二人に追いつくことが出来ないベル。追いつきたくない、と言ったほうが当たっているかもしれませんが・・・。122分という尺はこの手の映画では長い方だと思いますが、全く気にならないどころか、何度でも金縛りに遭いたくなる作品です(例えが悪すぎ!)。

アメリカではアントン・シガーという人物が今のアメリカ合衆国を具現化しているということで評価がより一層高かったようです(原作がそうなっているのかな?)。シガー=現在のアメリカ合衆国、モス=アメリカ合衆国に不利益を与えかねない全ての他国、ベル=昔のアメリカ合衆国というようなくくりでしょうか?

ただ、個人的には『ファーゴ』のが好きですが・・・・・・・・( ̄。 ̄ )ボソ…


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