Deckard's Movie Diary index|past|will
踊るシリーズで邦画のヒットメーカーとしての地位を確立した本広克行監督の最新作『サマータイムマシンブルース』。原作は劇団ヨーロッパ企画の出世作で、タイムパラドックスの辻褄合わせがテーマです。まぁ、コレが良く出来た脚本で、観ている者を退屈させません。パラドックスが始まるまではチョイとモタモタしますが、一旦タイムマシンが稼動しだすと、怒涛の如く走り出します。タイムパラドックスの扱いが上手なんで、それなりに面白いですし、詰まらない!ってコトは無いです。ただねぇ・・・本広監督というのは、頭が良いし上手い監督だとは思うんですけど、この人はユースケ・サンタマリアと似ていて(なんじゃ、そりゃ!)、ユースケ・サンタマリアという人はどんなに熱く語っても嘘にしか聞こえない!というキャラなんですが、本広監督の映画にもそれに似たような印象を受けるんですよ(かなり強引な喩え!)。なんて言うのかなぁ・・・その場を上手く取り繕うことしか考えてないような・・・そんな感じです。言い方を変えると、目指しているハードルが低いような気がして仕方ありません。まぁ、好みなんでしょうけどね。SEがガチャガチャと煩いのも個人的にはちょっと耳障りでした。また、主要登場人物のうち、瑛太、上野樹里、真木ようこ以外はヨーロッパ企画の劇団員が固めているのですが、これが演劇ノリの息の合ったテンションの高いパフォーマンスなんでコレがいいのかどうか?つまり、役者系と劇団系の演技が微妙にズレているような気がしました。まぁ、“田村”を演じる本多力は妙な存在感がありましたね。荒川良々とキャラは被っていますが(笑)それでも『踊る大捜査線THE MOVIE2/レインボーブリッジを封鎖せよ!』や『スペース・トラベラーズ』よりは十分観られます。というワケで、詰まらなくは無いけど、観て損も無いけど、小手先で作ったような映画ばかりが評価されていいのかなぁ・・・と、疑問を感じる今日この頃(今に始まったコトじゃないだろ!)・・・みたいな映画でした(苦笑)。
『ばかのハコ船』とか『リアリズムの宿』とか、リアル過ぎる描写が何処か薄汚れている印象を残す作品を撮ってきた山下敦弘(『くりいむレモン』なんてのもありますが(笑))の新作は、女子高生が主人公の『リンダリンダリンダ』です。今まではダメ男ばかりが主人公だったので、ヨゴれた印象もさもありなん!でしたが、さすがに女子高生は♪どぶねずみ〜っとなっても絵になりますなぁ(笑)。本作は全編に渡って意図的に曖昧な部分を多く描いています。ダラダラとした流れは、監督の山下敦弘の毎度の演出と言ってしまえばそれまでですが、今回は今まで一番効果を発揮しています。例えば・・・台詞のやりとり、発する言葉、受ける表情、時間経過等、その全てが曖昧に描かれていて、その曖昧な調子こそが、微熱に浮かされている思春期だったりするワケです(説得力ないなぁ・・・)。そして、その曖昧な臨場感は、平和に慣れ親しんだ今の日本の空気だったりするような気もしますし、ある意味『エレファント』の時間の流れにも似ているような印象を持ちました。そこへ韓国からの留学生ソンさんの登場です。彼女は茫洋としながらも、カラオケ店でも、友人との会話でもストレートに自分の意見を発します。それは今現在の日本と韓国のお国柄の違いなんでしょう。そして、そのソンさんがラスト近く、アクシデントに上手く対処出来ずに(っつーか、煮え切らない!っつーか、直ぐにあきらめちゃう・・・みたいな、今どきの日本人)右往左往しているメンバーを一気に引っ張りこみ、どぶねずみ達は濡れねずみになりながら一目散に“これが青春だ!”と弾けます。ここで初めて彼女達から曖昧さが消え、それこそ、何故にブルーハーツだったのか!という答えも同時に提示されているのです。パンクロッカーであった、ブルーハーツは単純なコード進行(誰でも三日で憶えられる(笑))に、ストレートな歌詞を乗っけた直線一気のバンドでした。観始めて暫くは「何故にブルーハーツ?」という考えが頭の片隅に残っていて、単にブルーハーツがユニコーンやジッターリン・ジンよりも有名で、既にオールディーズになりつつあるってコトなんかなぁ・・・と思っていたのですが、ソンさんがブルーハーツを聴きながら感動しているシーン辺りから、曖昧な日常に埋もれていた熱い気持ちが少しずつ蘇って来ました(笑)。((笑)って書いちゃうところが、オイラもなぁ・・・)。ブルーハーツに初めて触れた頃の衝撃なんて、とっくの昔に忘れて来ちゃってたんですよねぇ・・・でも、やるときゃやらなきゃ!熱くなるコトはかっこ悪いコトじゃないし、一つの目標に向かって全力を尽くすコトだって、物凄く素敵なコトなんですよ。そんな当たり前のコトが、最近はだんだんと鬱陶しがられているんですよね。きっと、ソンさんも、初めて聴くブルーハーツに心動かされ、展示室をほったらかしちゃったんでしょう(笑)。
ティム・バートンとジョニー・デップが『スリーピー・ホロウ』以来6年ぶりにタッグを組んだ待望の新作『チャーリーとチョコレート工場』。トップシーンから、上がったり下がったりガチャガチャと揺れが激しいくせに妙にゆるやかなメリーゴーランドのようなコースターに乗っているような・・・(って、わかんねーよ!)まぁ、要するにダニー・エルフマン節(大いに炸裂!)のメロディをバックに、これまた、映像が曰く有りげに行進していくような独特のリズムでスクリーンの上に流れて来ます。やっぱり、ティム・バートンはいいですなぁ・・・ついつい胸が高ってしまいます(笑)。チャーリーを囲む人々を始め、例によって登場人物は一癖もふた癖もあるような連中ばかりで、その描き方もますますパワーアップ!「おお!これは傑作かも・・・」と思ったのですが・・・物語が本題に入って行くと・・・ん?どうにも、今回はお遊びが過ぎてしまったようです。とにかく、まとまりに欠けます。絵本を読んでいるような楽しさに溢れてはいるんですが、パロディやら、動物ネタやら、多彩な娯楽的要素が最後まで凝縮されません。デップ演じるウィリー・ウォンカのキャラも、かなりヘンテコで可笑しいんですけど、ただただヘンテコなだけで、あんまり魅力を感じないんだよなぁ。エンディングも取って付けたような印象で、なんとなく終わってしまいます。たぶん、完成度という意味ではバートン作品では一番出来が悪いかも?です。まぁ、オイラの苦手な演出が多かったというのもありますけどね(苦笑)。結局は、チョコレートだからと言って、食べ散らかしちゃダメ!って、コトですかね。
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