Deckard's Movie Diary
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2005年06月15日(水)  リチャード・ニクソン暗殺を企てた男

『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』は製作にレオナルド・デュカプリオ、アルフォンソ・キャアロン、アレクサンダー・ペインと名を連ね、主演がショーン・ペン。新人監督とは言え、かなり気になっていたので早々と観て来てしまいました。前編に渡ってほとんどショーン・ペンの一人芝居が続くのですが、素晴らしい!の一言に尽きます。立ち振る舞いはもちろんのこと、表情を構築する皺のひとつひとつの動きまで完璧です。おそらく、ショーン・ペンが居なかったら、この映画の完成度は格段に低くなったような気がします。

簡単に言ってしまえば、金持ちの次男坊で何の不自由も無く育ったボンボンが社会に出たところ、その純粋培養から生まれる正義感や理想論が全く通用しなかったので「こんな世界は間違っている!!!」と自爆してしまう話です。また、くだらねぇ〜プライドが高すぎて現状が全く見えないアホな男の話という見方も出来るでしょう。確かに間違ってはいないし、否定もしません。ただ、オイラにはあまりに悲しく、切なすぎる映画でした。誰も信じないでしょうけど、個人的には“企てた男”と被る性格を持っている自分としてはかなり重たかったです。観終わって後からもジワ〜っと泣けて来てしまいました。特に子供を抱きしめるシーンが忘れられません。

現実の世の中には、嘘八百ほどではないにしろ人の迷惑を顧みず、上手くやっていい思いをしている輩はたくさん居るし(っつーか、資本主義ではそういう輩の方が成功し易かったりするし、言葉は悪いけど、ある程度“相手を騙す”という手法も容認されているワケです。)逆に、真正直に生きながら、辛い生活をしている人もたくさん居ます。もう少し上手くやれればなぁ・・・と、分かっていながら、それでも正直にしか生きられない人間も居ます。金持ちの次男坊で甘ちゃんのオイラは地道に正直に生きている人が幸せになって欲しいと思うし、そういう世の中であって欲しいと願っています。まぁ、オイラは「モノより思い出」とか言いながらモノを売る為の広告とか大嫌いな人間ですからね(苦笑)。正直者は馬鹿を見る(嫌な言葉だなぁ・・・)というより、この映画の場合は、正直“過ぎる”者なんですけど、もし、彼のような人間が自分の周りにいたら・・・やはり、鬱陶しく感じると思います。つまりは、そういう風に感じてしまう自分も、ただの(嘘八百ではないにしろ)嘘吐き資本主義野郎!と自己嫌悪にも陥ってしまうような、あっちこっちから辛い気持ちにさせられる映画でした。でも、映画を観て、そう感じた気持ちは忘れたくありません。

因みに、オイラの祖父は一代で財を築いた人だったのですが、父に聞く限り・・・その商売の仕方は相当えげつなかったそうです。逆に父は生真面目過ぎて祖父の逆鱗に触れてましたわ・・・オイラにはどちらの血が流れているのかなぁ・・・・・( ̄。 ̄ )ボソ…。


2005年06月11日(土)  ミリオンダラー・ベイビー フォー・ガットン

昨年の、まだ浅い春だったと思います。いつものように時間潰しで書店を散策していた時にふと目に付いた単行本・・・10年前に書店に並んでいたとしても、はたまた10年後に出版されたとしても、特に違和感があるとは思えない表紙。シンプルで普遍的なデザインと言えば聞こえはいいのですが、要は何所か垢抜けない装いでもあり、いかにも泥臭いボクシング小説にはピッタリの井出達で、まるで勝ち負けを繰り返しながら、リングをさ迷い続けているボクサーのガウンのようでした。『テン・カウント』と印されたハードカバーは6本の短編から成り立っており、著者はF・X・トゥール。ふ〜ん・・・FX?とは、また不思議な名前だわ!と思いながら、パラパラとページをめくり、結局は2310円という値札に恐れをなしてその場から立ち去ったのでした。

アレから1年・・・まさか本年度アカデミー賞4部門受賞の『ミリオンダラー・ベイビー』が、あのハードカバーの中の1篇だとは・・・・全く気がつきませんでした。悪い映画ではありませんでしたが、評判ほどの魅力は感じませんでした。出来が良いとはとても言えない仕上がりが大いに不満が残ります。中途半端な描き方(例えばモーガン・フリーマンの役柄)としか思えない、いまいちピンと来ない部分(チャンピオンの勝ちってのが理解出来ないです)というか謎(何故にゲ―ル語なの?)というか、そんな部分が多くてなんだかなぁ・・・だったのですが、テーマは好きだったので、観終わった印象は悪くありませんでした。個人的にはヒラリー・スワンクが全てのような気もします。

というワケで、忘れもしない1年前!2310円の高い壁に敗れ去ったこの映画の原作である『テン・カウント』が文庫本(文庫本の題はもちろん『ミリオンダラー・ベイビー』)として発売されたのです。まぁ、当たり前ですな。で、早速780円を払って手に入れ、通勤時に貪り読んだボクシング小説は、まさに珠玉の六品!70ページほどの『ミリオンダラー・ベイビー』は、映画よりもシンプルで、切れ味鋭い右ストレート!という印象でした。映画はこの短編集のいくつかのエピソードを一緒くたにしてるんですね。そのせいで、いまいち消化しきれていない部分を感じてしまうのかもしれません。個人的には『ブラック・ジュー』が好きかな(苦笑)。場末の宇宙を覗きたい方にはお薦めです。もちろん、映画じゃなくて小説の方ですよ。



あ〜忘れたい!観たことを忘れたい!積極的に忘れたい!もちろん、映画は『フォー・ガットン』!なんだよこれ!最近のハリウッドはこんな脚本でもOK!なんですかねぇ?これじゃ、何でもありじゃん!観始めて15分でヤバい!と感じ、30分でネタバレして、その後は退屈の極みでした。しかしまぁ・・・開いた口がふさがらないっす。本年度ワースト1かも(苦笑)。


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