Deckard's Movie Diary index|past|will
この2月から思うように映画が観られない生活に入ってます。このタイム・スケジュールは今年一杯続くと思いますので、観る映画は厳選しないといけません!だから、友人の評価を聞いてから観る映画を選んでいるのですが、この映画の情報を聞いた時は、そんな評価を待つまでも無く観たいと思いました。主演はソン・ガンホ!例えば『殺人の追憶』・・・元○○が、その後○○○に転身って役柄なんですが、ふと元○○の瞬間に戻るトコなんて存在感ありますよぉ。『反則王』とかでもそうなんですが、庶民をやらせたらこの人の右に出る人は居ないでしょ!実に味のある役者です。そのガンホが『大統領の理髪師』ですよ。これは必見です!映画は、ちょっともたつくような部分もありましたが(だって、監督のイム・チャンサンはこれが長編デビューなんですから、大目に見ましょうよ!)、期待していた通りの作品でした。まさに小市民のオバカさ、小賢しさ、愚直さ、楽観主義、切なさが一杯で身につまされましたし、これが人生なんだよなぁ・・・な〜んて、いつになくウンウンと頷いておりました。“親父”ってのはこういうモンなんでしょう。映画は決して甘いだけでなく、時折垣間見せる当時の韓国の時代背景がツ〜ンとくる山葵のように効いており、映画にリアルな広がりを与えています。説教臭くない山田洋次とでも言うのでしょうか、こういう映画は大好きです!やっぱり生きていく事が大事なんですよ・・・その内、きっといい事あります!ってば(願)。『オアシス』で絶賛されたムン・ソリの受けの演技も達者でしたし、『殺人の追憶』の子役のイ・ジェウンの素朴な味わいも魅力的でした。全ての脇役(大統領から練炭屋まで、その息子まで)が全く違和感が無くストーリーに溶け込んでいるのにも驚かされます。個人的にはこの家族と知り合いになりたいです(笑)。
昨年の夏にスタジオセット見学をした『北の零年』をようやく観てきました。監督は今や邦画界のエースにのし上った行定勲。個人的には行定勲がどうしてここまで評価されるのか、サッパリ分かりません。言い方を変えると、オイラには邦画界のプロデューサーってのは全く見る目が無いとしか思えないワケです(オイオイ…( ;・_・)ッ( ゚ー゚)ウキ…)。で、今回の大作で、彼の評価が決まるんじゃないかな?と思っていたのですが・・・彼もまた、あまりに日本人らしい器用貧乏タイプの人だったんですねぇ。個人的には3時間近い長尺の映画をなんとなくまとめてしまう小賢しさが大いに不満です。大して飽きもせずにツルっと観られてしまいます。それなりのストーリーを、それなりの脚本に沿って撮影していくだけが演出ではないと思うのですが・・・。前半、北の大地で再会した小松原と志乃。志乃は初めて心の内を語ってくれた小松原に嬉しいとこぼす。武士として振舞ってきた小松原が志乃に初めて見せる人間臭いシーン・・・この導入部までは良かったんですけどねぇ。その後、主君の言葉に驚愕した小松原(渡辺謙)へのライティングがガラっと変わるシーン(あの『GO』でのラブシーンを思わせる手法ですが)で、彼の心が崩壊してしまいます。小松原は、自身も挫けそうになるのを必至に隠して(←まぁ、こういったシーンはありませんが)あくまでも主君の為に、主君を立てて、皆を元気づけていたワケで、その信じていた部分が完全に覆ってしまったのですから、当然、前と後では彼の表情や立ち振る舞いにもっと差があってしかるべきなのに、その辺りの演出があまりにないがしろです。結局はラストに繋がっていく大事なシークエンスなんですけどねぇ・・・。また、ひょっとしたら重要な役どころになったんじゃないか?と思える豊川悦司演じるアイヌ?は存在感こそあれ、存在自体は悲しいくらい曖昧でした。で、曖昧と言えば香川照之の薬売りもまたどっちつかずのキャラクターです。香川照之の演技は過剰以外のナニモノでもないのですが(香川だけでなく、吉永の演技にも似たような印象を持ちました)、そういう演出の支持を受けたような気もします。いつまでたっても吉永演じる志乃がキレイなのもどうなんでしょ!『コールド・マウンテン』のキッドマン程度には汚して欲しいですけどねぇ・・・。農民を代表している平田満にしても、彼がどれだけ苦労してきたかが一切描かれず(ワンカットもありません!)、吉永の言葉だけでは、彼の行動には感情移入出来ません。また、唯一反発していた寺島進は何処へ消えてしまったんでしょう?というワケで、ほとんどの登場人物の描写が希薄なので、ダイジェスト版を観ているような錯覚に陥ります。ただ、ダイジェスト版というのは、実際にはその数倍の時間を費やしているわけですから、自然と表情や仕草に時間の流れが感じられるモノなんですが、そのような裏づけが全く無い「まるでダイジェスト版のような内容だ!」と言われるような映画は、とても辛い仕上がりになってしまいます。新しい環境で成長していくシーンや、時の流れ等をきちんと描いていればもっと奥行きのある仕上がりになったんじゃないでしょうか?例えば先住民に学ばなければ!と言っておきながら、そういうシーンは全く描かれていませんし、この冬は越せそうも無い!と言っておきながら、何も無かったように平気で春が訪れてしまう・・・逆に香川と石田の濡れ場とか、“ええじゃないか”とかのシーンが特に必要だとは思えません。また、友人も指摘していたのですが、北海道の自然が全く捉えられていないのも致命的です。大自然に囲まれている雰囲気がほとんど感じられません。だから、九死に一生を得る志乃のシーンも有り難味があんまり無いんですよねぇ。それは演出に余裕が無いからだとも言えます(予算が無い!というコトかもしれませんが・・・)。つまり、自然の風景は待っていてくれませんから「これから風景撮りま〜す!風景さん、スタンバイして下さ〜い!」っつーワケにはいきません。絵になる自然の風景なんて、いつでも撮れるワケではなく、時には役者の演技を中断したり、撮影順を急遽変更しなくてはならなかったり、過酷な条件に役者を放置しなければいけなかったりするワケです。エンディングのダラダラ加減も “大作の為の大作風な映画作り”のように感じられて仕方ありません。どうせなら北村ゴジラのように“大いなる失敗作”(なるのかなぁ・・・( ̄。 ̄ )ボソ…)にでもなれば良かったのに!ただ、そうなった場合、今の邦画界の裁量の狭さでは、行定監督への依頼を相当数減らすようなコトになるでしょう。逆に言えば、今回のように大勢では可もなく不可もない仕上げにしておけば、彼の評価はますます上がり、さらに良い企画が発注されるワケです。う〜ん、なんだかなぁ・・・こうなったら、行定監督には今回のキャリアを今後の映画作りに十分に生かして、素晴らしい映画を作ってくれることを切に願います。その為にも激辛コメントにさせていただきました。
予告編でかなりベタベタな印象だった『きみに読む物語』。監督は云わずと知れたジョンとジーナの息子ニック・カサヴェテス。前作『ジョンQ』では、あまり輝いたところが無かったのですが、今回は良いですなぁ・・・ストーリーは予告編を観て想像出来る範囲のものでしかありませんが、そういう内容でも十分楽しめる出来になっています。恋愛映画に欠かせない全ての要素が美しいジグソウパズルの一片として作品を構築しており、何も言う事はありません。一部の人達には不満らしいのですが・・・ストーリーの進む方向が全部分かってしまっているからと言って、誰がどういう役回りなのか全部分かってしまっているからと言って、一体何が問題なのでしょう?っつーか、元々そういう作りじゃないですよ(苦笑)。冒頭、絵葉書的と言ってしまえばそれまでですが、溜め息が出るような美しいシーンの中で描かれる、ゆったりとした時の流れは、この映画のレベルを十分感じさせてくれます。また、売り出し中のライアン・ゴズリングの飄々とした中に垣間見える激しい気性や、ヒロインを演じるレイチェル・マクアダムスの、そこら辺に居る“パッっとみ、美人!でも良く見ると美人なのか鶏がら(でひ〜)なのか分からない!”っつー感じも好感触でした(なんじゃそりゃ!)。決して“傑作!”という映画ではありませんが、丁寧な作りが心に響く一品でした。
『オールド・ボーイ』でカンヌを席巻したパク・ヌチャクが、それ以前に撮った『復讐者に憐れみを』。映画好きな友人が「『オールド・ボーイ』の300倍いいです。」と言っていたので、期待して行ったのですが・・・f(^-^; ポリポリ 全編を通してぶっきらぼうな作りとでも言うのでしょうか、観客にはおもねるような部分は全く無く思い通りに作っている印象です。前半はテンポが温く眠気に襲われてしまいましたが、復讐劇が始まる後半は素朴なテンションが持続します。登場人物の誰にも肩入れすることなく淡々と描いていくのですが、この監督特有の残酷描写というか、濃過ぎる演出が不必要に感じてしまって、いまいちピンと来ませんでした。それぞれの気持ちの部分には理解が及ぶとしても、その復讐の仕方があまりに過激で、それを受け入れられるかどうかで評価は分かれるでしょう。オイラには理解出来ませんでした。例え、復讐するコトになっとしても、ここまで残酷になれるとは思えないんですよ。そういう意味では危ない連中の復讐残酷劇になっているワケで、勝手にやってれば!という感じです。まぁ、人間の狂気の部分と言っちゃあ、それまでなんですが・・・。ただ、監督のパク・ヌチャクはこの映画の後に『オールド・ボーイ』をモノにするのですが、そういう意味で、監督論を語る場合は重要な1本と言えるかもしれません。個人的には、あまり興味がそそられませんが・・・・( ̄。 ̄ )ボソ…現在製作中の“復讐3部作”の最終篇ではどうなっちゃうんでしょうか(笑)。
デッカード
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