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2003年08月31日(日) |
映画よろず屋週報 Vol63「映画の中の八百屋さん&野菜」 |
本日8月31日は、ベジダブルデー(野菜の日)です。 言うまでもありませんが語呂合わせで、 1983年、全国青果物商業協同組合連合会など 9団体の関係組合が制定したとか。
そこで、映画に登場した野菜や八百屋さんを 集めてみました。
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北京的西瓜(ぺきんのすいか) Beijing Watermelon 1989年日本 大林宣彦監督 千葉県船橋市で青果店「八百春」を営む 堀越春三さん(ベンガル)は ひょんなことから中国人留学生を支援するようになり、 本業をおろそかにしてしまい、金銭的にも追い詰められますが……。 奇しくも撮影中に天安門事件が発生し、 スケジュール変更を迫られたという、ちょっといわくつきの作品。 (ちなみに、実話ベースだそうです)
アメリ Le Fabuleux destin d'Amélie Poulain 2001年フランス ジャン=ピエール・ジュネ監督 アメリが住むアパートの近所の八百屋さんには、 意地悪でムカつく店主コリニョン(ウルバン・カンセリエ)と、 その優しさゆえに入れにいじめられる 従業員リュシアン(ジャメル・ドゥブーズ)がいます。
白い花びら Juha1998年フィンランド アキ・カウリスマキ監督 細々とキャベツづくりをし、それを市場で売って日々の糧を得ていた ユハ(サカリ・クオスマネン)とマルヤ(カティ・オウティネン)。 2人は豊かではないけれど、「子供のように幸せ」だったのですが… ユハニ・アホの小説「Juha」に材をとり、 モノクロ・サイレントで撮られた異色作です。 (ちなみに全く同じ原作で、フィンランドでは 過去に2度ほど映画化されているそうですが、 何がそんなに映画製作者を魅了するのでしょうか)
ラジオ・デイズ Radio Days 1987年アメリカ ウディ・アレン監督 第二次大戦中のニューヨーク・クイーンズを舞台に、 「娯楽の王様」だったラジオに耳を傾ける 善男善女(とも限りませんが)と子供たちの姿を微笑ましく描いた 見ていて口許の弛む作品。 作中、セリフらしいセリフもないというのに、 ある行為により、Teacher with Carrotという“役名”が 振られている、ある意味気の毒な学校の先生が登場します。
恋のためらい フランキーとジョニー Frankie & Johnny 1991年アメリカ ゲイリー・マーシャル監督 刑務所を出所後、コックとしてまじめに働き始めた ジョニー(アル・パチーノ)は、 同じ店で働くウェートレスの フランキー(ミシェル・ファイファー)に恋をしますが、 彼女は、過去に受けた恋人からのひどい仕打ちが忘れられず、 恋に臆病になっていたのでした。 ジョニーがフランキーを喜ばせたくてプレゼントするのは、 厨房にある野菜でつくった「あるもの」でした。
「アタック・オブ・ザ・キラートマト」シリーズ Attack of the Killer Tomatoes! (1978年)ほか このシリーズは、なぜか 4作+ディレクターズカット【完璧版】まであるそうです。 が、私は実は、1作品しか見ておりません。 (91年版ですが、見たことを記憶から抹消したい…) 人食いトマトが暴れまくるというこのシリーズは、 一応「SFホラーコメディー」だそうですが、 SFというにはチャチで、ホラーというのに怖くなく、 コメディーというには笑えません。
2003年08月26日(火) |
踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ! |
1993年8月26日、東日本最大の吊り橋 お台場レインボーブリッジが開通しました。
踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ! Bayside Shakedown 2: Save the Rainbow Bridge
2003年日本 公開中(2003年8月現在) 製作 石原隆(『ラヂオの時間』ほか) 監督 本広克行(『サトラレ』など) 脚本 君塚良一(『踊る大捜査線THE MOVIE』など) 音楽 松本晃彦(『リターナー』など)
先日、邦画実写版としては 興行収入で記録を塗り替えたと話題になりました。 前作の映画は5年前、テレビドラマ版も御無沙汰ですが、 新作を待望していたファンをうまくつかむ格好での 大ヒットのようです。
5年前と違い、湾岸署のあるお台場は 一大エンターティンメント基地の様相を呈し、 にぎやかになりました。 となると、嫌な副産物ではありますが、 犯罪もそれなりにふえてしまうようで、 青島(織田裕二)が所属する強行犯係も、 恩田すみれ(深津絵里)の盗犯係も、 やれかみつき魔だ、観光客を装った親子スリだのの連続犯行に 悩まされていました。
そこへ持ってきて、管内で連続殺人が発生します。 被害者は皆会社経営者などのいわゆるトップで、 しかも死体は、辱める意図がまるわかりの状態で 妙な放置のされ方をされています。 殺人事件となると、湾岸署のような“所轄”の出る幕ではなく、 “本店”こと警視庁本庁が、湾岸署へ大挙してやってきて、 我が物顔に捜査本部を置きます。 今回、捜査の陣頭指揮を握るのは、 青島が慕う室井管理官(柳葉敏郎)ではなくて、 バリバリのやり手で、自ら「警視庁の女性積極登用」の 広告塔を買って出る沖田管理官(真矢みき)でした。 が、この沖田は、びっくりするほど独善的でいちいち命令口調。 ここまでしないと出世ってできないものかなあと 嫌悪感を抱かずにいられないようなタイプなのでした。
今回は、効率的な捜査のために カメラと高性能マイク(はっきり言って盗聴)を駆使し、 湾岸署周辺の人々を監視するのですが、 いつもは雑用ばかり押しつけられる湾岸署から2人、 そのモニターを監視する人材をピックアップされることに。 室井の御指名で、青島・恩田ペアがその任に当たります。 ……かと思ったら、 今度は有力情報を握っている女性(小西真奈美)の 身辺警護を仰せつかり、やれやれと思いつつ張っていると、 その席で、たまたま親子スリの犯行現場を目撃しますが、 沖田の指示に従わねばならず、その場を動けないため みすみす取り逃がしてしまいました。 その上、「(連続殺人に比べたら)所轄の仕事なんてどうだっていい」 とまで言われ、さすがにキレてしまいます。
ところで、今回の事件の容疑者は、 複数の人間のグループによる犯行のにおいをさせつつも、 確固としたリーダーを頂かないという、一種特殊なものでした。 捜査本部に挑戦的にかかってくる電話から、 そういったことが窺われるのですが、 アメリカでネゴシエーターの研修を受けたという 湾岸署にもゆかりのある男が 彼らとの交渉の任務を仰せつかることになります。
派手で、展開にやや無理があって、むだに伏線も多く、 まるで『名探偵コナン』実写版という感もあるのですが、 全体に商魂のたくましさを感じる、いわばイベントムービーなので、 そのくらいでちょうどよいのかもしれません。 変に大上段に構えて、人生だの倫理だのを説かれても、ねえ。 不本意な使われ方をする青島・恩田のために 怒りをあらわにして沖田に食ってかかる“和久さん”(いかりや長介)や、 青島愛用のぼろぼろのマウンテンパーカーのエピソードなど、 ちょっとほろっとさせる要素もあり、 あふれるようなサービス精神には頭が下がります。
ところで、何故に「レインボーブリッジを閉鎖」するに至るのか? まあその辺は、ごらんになってのお楽しみです。 所轄の面目躍如という展開が胸をすくことでしょう。
エレベーター Asansor/The Elevator
1999年トルコ ビデオ&DVD あり(ファインアーツエンタテインメント) 監督・脚本 ムスタファ・アルトゥノクラル
「他媒体でボロクソに言われそうな映画救済企画」 第○弾として御紹介いたします。 (○に入る数字は、何だか自分でもわからなくなりました)
トルコが舞台の映画というと、 有名どころでは『ミッドナイト・エクスプレス』などありますが、 もろにトルコ資本による製作で、 ある現代トルコ人の生活が覗ける映画、というだけでも 結構貴重な1本ではないかと思います。 ……とでも思っていないと、怒り出す人が出そうなほど 映画としての破綻がそこここに見られる作品ではありますが、 私はこのバカさが嫌いではありません。
トルコが誇る?高視聴率番組「衝撃の事実」で 過激な発言で人気のキャスター ジャン・シャルダン(ムスタファ・ウーウルル)は、 ある日、インターネットで知り合った女性の住むアパートに、 スケベ心満々で会いにいきます。 そのアパートのエレベーターはクラシックなスタイルのもので、 ジャンは携帯で部下と話しながら、何も考えずにそれに乗り込みますが、 途中で故障してしまうのでした。
悪くしたことに、さっきまで使っていた携帯も「圏外」に。 大きな声で助けを呼ぶ彼の前に、 色っぽい金髪の美女(アルズ・ヤナルダー)があらわれます。 ジャンは彼女に、アパートの管理人を呼ぶように頼みますが、 このビルは取り壊し寸前で、管理人はなく、 今住んでいるのは彼女とその飼い犬だけだと言います。 ならば、エレベーターの修理を呼んでくれと頼みますが、 まるでジャンをからかうかりような態度で、 修理も呼ばず、彼を助けようという様子も見せません。 彼女はさんざんジャンを辱め、苦痛を与える一方、 手作りの食事を差し入れたり、 おもしろい話をしろと彼にせがんだり、 意味ありげな態度で、彼のスケベ心をくすぐるのでした。
さてさて、一体、彼女の正体は? そして、彼女がジャンを監禁状態に置く目的とは?
話の流れはなかなかおもしろいものですが、 種明かしの仕方があまりうまくないので、 途中で興をそがれる可能性も高いと思います。 が、冒頭で述べたように、 「へぇ、トルコって、こういう映画をつくるんだ〜」という そんな観点で見ると、結構温かく見守れると思います。 謎の女性を演じるアルズ・ヤナルダーの、 シャーリーズ・セロン廉価版という趣のルックスもいいし、 パニクって恥ずかしい独り言を言いまくる ムスタファ・ウーウルルの様子を、 「悪い覗き趣味」と割り切って、劣情に身を任せるように覗き見ると、 結構楽しいと思いますよ。
そういえば、冒頭にもそんな感じの一文が出るのですが、 どうやら、ルイ・マルの傑作サスペンス 『死刑台のエレベーター』へのオマージュもこめられた作品のようです。 御冗談を!と、一笑に付したくなるような出来で、残念でした。
2003年08月24日(日) |
映画よろず屋週報 Vol62 |
梅雨明け宣言が撤回された途端、といってはナンですが、 雨続きの冷夏と思っていたら、 最近また妙に蒸してまいりました。 こんなときは、まともなことを考えると 頭にも体にも負担になりますゆえ…と勝手に判断し、 ふざけたタイトルの映画を特集したいと思います。
それも、ふざけたタイトルの定番といえば、 日本未公開のコメディーに多いのですが、 受け狙いしか感じられない見当違いなものは敢えて外し、 原題を直訳してある、 あるいはほぼ原義に近いタイトルのものだけに絞りました。
実は今回取り上げる作品は、 私個人、未見のものが多いのです。 通常は星取り表は苦手なので採用しておりませんが、 今回は、未見のものに限り、 「見たい度」を付させていただきました。 そうでもない(1)★→★★★★★(5)見たい!という 単純な私の気持ちですので、何の参考にもなりません。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 命は安く、トイレット・ペーパーは高い Life Is Cheap... But Toilet Paper Is Expensive 1990年香港(★) コメディーだそうです。 日本公開時、映画誌で紹介されていたのは覚えているのですが、 バカなタイトルだねぇと思ったことしか覚えておりません。
えびビボクサー Crust 2002年イギリス(★★★★) 原題は「甲殻」という意味の地味な単語がぽこっと1つ。 ゲテモノ好きと言われる配給会社アルバトロスによる 「いい買いつけ」の1つといえましょう。 なかなかに泣ける?との噂もありますが、真相はいかに。
俺たちは天使じゃない We're no angels 1955年と89年に同じタイトルで 脱獄囚人が主人公のコメディーがつくられました。 訳し方のさじ加減で 「え?」と思うタイトルになったに過ぎませんが、 70年代の名作テレビドラマ「俺たちは天使だ」の方を 先に知ってしまった世代にとっては、 やっぱりふざけた印象が否定できません。
ゴリラは真昼、入浴す。 Gorila se kupa u podne/Gorilla Bathes at Noon 1993年ドイツ/セルビア(★★★★★) 壁崩壊後、ベルリン(旧東)に取り残された元ソ連兵の物語で、 一応はコメディーの体裁らしいのですが、 どうしても、あの一連の体制崩壊というものを バックに背負っているため、重い映画になっているようで。
301・302 1995年韓国 タイトルはどちらも、アパートの部屋番号をあらわしていますが、 この映画を見た後、例えばコンベンションホールなどで、 「3階 会議室301・302」などと書いてあるのを見ると、 禍々しい想像をしてしまうはめになるでしょう。
少林サッカー Siu lam juk kau/Shaolin Soccer 2001年香港 アルバトロスと並び(並べていいのか) 微妙に「妙な買いつけ」が魅力のクロックワークス配給。 本日取り上げた中では最も有名でしょうし、 唯一のヒット作品でもあるので、 説明は不要かもしれませんが、 タイトルに反し、少林拳もサッカーも まじめに取り上げる気が全く窺われない作品でした。
テハンノで売春していてバラバラ殺人にあった女子高生、 まだテハンノにいる Teenage Hoocker Became Killing Machine in Daehakroh 2000年韓国(★★★) 比較的最近日本公開された作品。 上映館では、「このタイトルを間違えずに3度言えたら割引」という よくわからん試みもあったとか。 正確には「十代の売春婦、テハンノで殺人マシーンになった」 といったところでしょうか。 いずれにしても、あたらずとも遠からずのタイトルです。 エロチックSFホラーだそうですが、 見たいような、そうでもないような。
日曜はダメよ Pote Tin Kyriaki/never on Sunday 1960年アメリカ/ギリシャ 陽気なテーマ曲とタイトルだけがやたら有名な印象のある 艶笑コメディー。 日曜日にナニが「ダメ」なのかは 映画をごらんになってのお楽しみです。 ところで、日曜日のお昼前、 ニッポン放送の「くず哲也の日曜はダメよ」を聞いて あの有名なテーマ曲を知ったという方…… 私と同世代か、それより上の方ですねっ。
美術館の隣の動物園 Art Museum By the Zoo 1998年韓国 変どころか、しゃれたタイトルですらありますが、 英語タイトル、この語順なら、 普通は「動物園の隣の美術館」と訳しませんか? それぞれの施設が一体何をあらわしているのかは、 映画をごらんになればわかりますし、 どちらが主体のタイトルでも、問題はないのですが… (近日中に何らかの形で単独紹介いたします)
ロッキー6 Rocky6 1986年フィンランド(★★★★★) (本当のタイトル表記は「6」がローマ数字ですが、 文字化けのおそれがあるのでアラビア数字にしました) シルベスター・スタローンの例のシリーズとは 全く無関係の作品です。 8分ほどのショートフィルムだそうです。 フィンランドを代表する名匠アキ・カウリスマキの作品で、 日本では、同監督の「マッチ工場の少女」とともに 公開されたとか。 ちなみに、スライの「ロッキー」シリーズで 現在までで最も新しい作品は「5」ですが、 これは1990年に製作されました……あらら?
2003年08月18日(月) |
サンキュー、ボーイズ |
1987年、子役女優のミカ・ブーレムが生まれました。 ブロンドでかわいらしい顔立ちで、 多数の映画出演のほか、 “アリー・マクビール”の少女時代も担当していました。
サンキュー、ボーイズ Riding in Cars with Boys
2001年アメリカ ビデオ&DVD あり 製作総指揮 モーガン・アプトン・ウォード/ ブリジット・ジョンソン 製作 ジェームズ・L.ブルックス(『恋愛小説家』など)ほか 監督 ペニー・マーシャル(『レナードの朝』など) 脚本 モーガン・アプトン・ウォード 音楽 ハイター・ペレイラ / ハンス・ジマー
ビバリー・ドノフリオ原作…といっても、 この人がほかに何を書いているのかは存じませんが、 この映画の内容は、彼女の実体験そのままのようです。 かなり序盤で、 「南部に生まれたらブルースを歌ったろうが、 東部生まれの彼女は、小説を書いた」 というナレーションがあるとおり、 文才のある東部っ子の彼女は、 自分の何かと障害の多かった半生を 一遍の小説に仕立てたのでした。
アメリカ・コネティカット州の小さな町。 おませで頭のいい11歳のビバリー(ミカ・ブーレム)は 父親(ジェームズ・ウッズ)に 「クリスマスにブラを買って」とねだり、渋い顔で断られます。 彼女の大好きな男の子が巨乳の少女に夢中なので、 私だって……と思ったのですが、失敗。 もしも彼女がこのときブラを買ってもらっていたら、 先々の人生が変わったかもしれない。 そんな導入部から、この話は始まります。
その後、15歳になったビバリー(ドルー・バリモア)は、 憧れの少年に傷つけられたときに慰めてくれた レイ(スティーブ・ザーン)との子供を妊娠し、 不本意ながらできちゃった結婚します。 それでも、大学で勉強して小説家になるという希望は捨てず、 あらゆる手を尽くしますが、 チャンスを手にするたびに、その足かせとなったのは、 皮肉にも、愛すべき夫や息子など「Boys」の存在でした。
D.バリモアが、ビバリーの15歳から35歳までの20年間を 好演しています。 (35歳パートでの厚化粧はすごかった! ちょっとジュリアン・ムーアが肥ったような雰囲気でした)
確かにビバリーは、ある点ではついていない女性です。 もしも11歳のあのとき、ブラを買ってもらっていたら、 もっと違った人生が彼女にあったかもというのも、 わかるような、わからないような……だし、 降りかかる災難の数々も、 災難というより「自分で播いた種」の部分もあるし (播かれた種もありましたが……って、お下劣ですね) 勝手なことをほざいている愚かな女性、 という言い方もできなくはありません。
が、それも、自分のみっともなさをさらけ出した上での 嘆きや愚痴であって、 都合よく美化しようという意識が余り覗かれないので、 好感の持てるタイプのものでした。 そして、なんだかんだいって、あのポジティブさは 大いに見習いたいところです。 絶対まねできないような、御清潔で高潔な人格者よりも ずっと共感しやすいですしね。
脇に回った役者さんも、いい感じです。 危なっかしい娘を支えようとする両親役が、 前述のとおり、渋いジェームズ・ウッズと “きれいなおばちゃん”ロレイン・ブロッコ。 彼女のロクデナシ亭主を演じたスティーブ・ザーンも 他の何本かの映画でも見せている、 何となく憎めない持ち味を生かしていました。 また、息子ジェイソンの成長後を演じた アダム・ガルシアの素朴なキュートさも必見ものだし、 彼女とほぼ同時期に妊娠し、 ジェイソンと同年齢の女の子を出産する親友フェイを、 お人形のようなブリタニー・マーフィーが、 騒々しくもかわいらしく演じていました。
2003年08月15日(金) |
デュース・ビガロウ 激安ジゴロ!? |
毎月15日は「レンタルビデオの日」ということで、 日本未公開作品をじゃんじゃん紹介しよう!という 私のけなげな努力を御存じでしょうか。
冗談はさておき、本日はこちらをどうぞ。
デュース・ビガロウ 激安ジゴロ!? Deuce Bigalow: Male Gigolo
1999年アメリカ ビデオ あり(ポニーキャニオン) 日本未公開 製作総指揮 アダム・サンドラー/ジャック・ジャラプト 製作 バリー・ベルナルディ(『アニマルマン』など)/シドニー・ゲイニス 監督 マイク・ミッチェル 脚本 ロブ・シュナイダー(兼主演)/ハリス・ゴールドバーグ 撮影 ピーター・ライオンズ・コリスター(『Mr.ディーズ』など) 音楽 テディ・カステルッチ(『Mr.ディーズ』など)
我が贔屓のアダム・サンドラーが絡んでいる映画には 必ずといっていいほど顔を見せている、 くりくり頭でまゆの薄いロブ・シュナイダー主演の、 邦題からして疑いようのないB級コメディーですが、 隠れた名作と表現したい魅力があります。
デュース・ビガロウ(ロブ・シュナイダー)は、 水槽やプールの掃除をして生計を立てている ちょっとダサめの男です。 ある日、高級ジゴロ・アントワン(オデッド・フェール)の 住む豪邸の水槽の掃除と留守番も頼まれますが、 あろうことか、何千ドルもする水槽を壊してしまいます。 もちろん、こういう仕事を好きこのんでしているような彼に 弁償する金などあるわけもなく、 あ〜ど〜しよう〜と周章狼狽します。
そんなとき、 アントワンあてに“仕事”依頼の電話がかかってきました。 とりあえず、それを引き受けた彼は、 ジゴロ業で金を稼ぐことを思いつきます。 しかもかなりリーズナブルな料金で、 持ち前のサービス精神を発揮するのですが、 なぜかお客の女性は、どこか変わった人たちばかりでした。 極端に背が高かったり、肉がつき過ぎていたり、 ごく普通のきれいな女性に見えても、 興奮すると汚い言葉を発する奇癖があったりという感じです。 皆、そのためにごく当たり前の恋愛ができず、 悩んでいる女性ばかりでした。
そんな中で、 清楚で美しい女子大生ケイト(アリナ・バレイキス)が、 彼女の友人たちのお節介により、 デュースと“デート”することになります。 外見だけでなく、性格もよく頭もいい彼女に デュースは“仕事”を離れて夢中になりますが、 劣等感などさらさらなそさうな彼女にも、実は悩みがあり……。
といった大筋に、 実はヤバい裏の顔を持つアントワンを つけねらう刑事(ウィリアム・フォーサイス)や、 ジゴロの元締めのような男も絡み、 にぎやかな物語を展開しますが、 誰でも持っているコンプレックスの扱い方に 例えばファレリー兄弟の映画よりずっとデリカシーを感じます。 (好き嫌いもあるので、優劣はつけられませんが)
1973年8月14日、 女優のロマーヌ・ボーランジェが生まれました。 俳優である父リシャール・ボーランジェと ベトナム人の母親との間に生まれたという 親しみやすいかわいらしさのある美貌の持ち主です。 ところで、“ロマーヌ”という名前は、 御両親が映画監督ロマン・ポランスキーを尊敬していて、 彼のファーストネームにあやかってつけたらしいですね。 (IMDbより)
ミナ Mina Tannenbaum
1993年フランス ビデオ あり(アスミック) 製作 ジョルジュ・ベナヨン(『ガーゴイル』など) 監督・脚本 マルティーヌ・デュゴウソン(『恋人たちのポートレート』)
さて、つくってみようと思い立ったときに、 必ず登場人物が衝突するシーンを 入れなければならない宿命を負っている、 そういう映画のジャンルがあるのを御存じでしょうか。 答えは…「女性の友情もの」です。 一部の例外を除いて、必ずその種のシーンが登場します。 激しいどつき合いもあれば、口論もありますが、 なにがしかの結論を得るために、かならず経なければならない、 いわばイニシエーションのような感じです。
などと、私が偉そうに言うまでもなく、 そういえば、あれもこれもそうだったわい…と 思い当たる作品が、たくさんおありではないでしょうか。 本日御紹介するこれも、その1つでした。
1950年代、フランス・パリ。 同じ日に同じ病院で、2人の女の子が誕生します。 1人はミナ(ロマーヌ・ボーランジェ)と、 もう1人はエテル(エルザ・ジルベルスタイン)と 名づけられました。 住んでいるところも似たような環境で、 同じダンス教室に通い、パーティーで同席することもありましたが、 性格の違いもあり、すぐに仲良くなったわけではありません。 それでいて、何か惹かれ合うものがありました。
70年代に入り、16歳になった彼女たちは、 似合わない流行のファッションを 「わ〜、それかっこいい」などと、 お互いに心にもない言葉で褒め合いますが、 ミナは近視のメガネに、 エテルは太めの体型に劣等感を覚えていました。 ハンサムな青年に誘われると有頂天になったりしますが、 ぽちゃっとしたお腹が気になって土壇場でパスしたり、 実は相手が浮気者だとわかったり、 全くいいところがありません。 「キレイになりたい」「みんなから愛されたい」という 願望の強い年頃、彼女らは傷つきながら、 だんだんと大人になっていきます。
その後、ミナは美術の学校に入り、 「自分」を表現しようと頑張ります。 個性的なファッションの嗜好も我の強さも相変わらず。 エテルは大学でジャーナリズムを専攻し、 見違えるように美しくなって、 周りの男をもステップアップの足場のように考える 野心的なジャーナリストになりました。 徐々に感覚のずれを覚える2人の友情の行方は……?
あんまりジェンダーやセックスに入り込むようなことは 言いたくないのですが、 この映画の魅力も欠点も、本能レベルで理解できるのは どちらかというと女性の方だろうなぁと思います。 男性に生まれつき、男性として育てられた人にとっては、 くだらねぇなあと思う箇所も、多々あるのではないかと。 (映画としてというよりも、若い2人の愚行などを見て) パリという背景と、2人を取り巻く出来事や小物たち、 おしゃれっぽくかつユーモラスに仕上げてはありますが、 オチのつけ方も含め、実態はかな〜りシビアな映画です。 身につまされるという方もあるかもしれませんが、 とりあえずお勧めいたします。
1899年8月13日、 映画監督のアルフレッド・ヒッチコックが生まれました。
そこで、作中で彼の監督作が登場するこちらをどうぞ。 (こんなページをつくっているくせにお恥ずかしい話ですが、 話、ヒッチコックの映画はまだ3本しか見ていないんです…)
鬼ママを殺せ Throw Momma from the Train
1987年アメリカ ビデオ&DVD あり 日本未公開 製作 ラリー・ブレズナー(『グッドモーニング・ベトナム』 など) 監督 ダニー・デビート(『マチルダ』など) 脚本 スチュー・シルバー 撮影 バリー・ゾネンフェルド(『ミザリー』など) 音楽 デビッド・ニューマン(『アイス・エイジ』など)
スランプ状態の作家ラリー(ビリー・クリスタル)は、 別れた妻マーガレット(ケイト・マルグルー)を 殺したいほど憎んでいました。 彼の小説を持ち逃げして出版し、 ベストセラー作家でございとばかりにテレビに出演し、 しかも別れたダンナ(つまり自分)の悪口を言いたい放題では、 その気持ちもわからないではないのですが……。
一方、ラリーが教えている創作クラスの生徒 オーウェン(ダニー・デビート)は、 自分を踏みつけにしている独善的な母(アン・ラムゼイ)に 毎日こき使われ、しばしば生じる彼女への殺意に さいなまれています。 そんな生活から抜け出したい彼の書く推理小説は、 短くて深みもひねりもないものだったので、 ラリーも批評のしようもないという感じでしたが、 「殺人なら殺人を犯す動機をしっかり考えなきゃ」と テキトーなことをアドバイスします。 また、ゆきかがり上とはいえ、 うかつにも、自分が元妻に抱いている殺意まで 話してしまうのでした。
そんな中オーウェンは、 勉強のつもりでヒッチコックの『見知らぬ乗客』を見て、 「交換殺人」について知りました。 そして、「奥さんは自分が始末するから、僕の母を殺してくれ」と、 ラリーにとんでもない提案をするのですが……。
交換殺人とは、断るまでもないとは思いますが、 2人の人間がお互い恨みを抱いている人間を“交換”して殺し、 被害者との関係が全くない者が殺すことで その殺人の容疑者として挙がらないようにし、 完全犯罪を目論むというものです。
とってもよくできた犯罪コメディーです。 上記のプロットだけ見ると、 いかにもブラックな感じがするのですが、 後味は悪くない仕上がりになっていました。 ただ、何分古い映画ということもあり、 本数をこなしてごらんになっている方には、 先が読めてしまう可能性が高いのが残念です。 が、コメディーセンスの光る俳優さんばかりなので、 安心して楽しめるのも事実です。 工夫のない邦題に惑わされず、ぜひお試しください。
猟奇的な彼女 Yeopgijeogin geunyeo My Sassy Girl
2001年韓国 ビデオ&DVD あり 製作 シン・チョル(『KUMIHO/千年愛』) 監督・脚本 クァク・ジェヨン
結論から言いましょう。 終盤に入ったころ、 「韓国人って、こういう話好きだね〜」と言いつつ、 本気で白けるか、その言葉を涙の照れ隠しにするか、 どちらかに分かれそうな作品でした。 (いや、別に実際に泣かなくてもいいのですが)
女の子が欲しかった両親に娘のように育てられた、 人は好いけれど頼りない大学生キョヌ(チャ・テヒョン)は、 親戚から勧められた見合いをすっぽかし、 街で一目惚れした“彼女” (チョン・ジヒョン)に声をかけようとしますが、 地下鉄のフォームで危なっかしくフラフラしている“彼女”は、 よくよく見ると、キョヌの大嫌いな酔っ払い女でした。 ああ、幾らかわいくてもこれはダメだと見切りをつけたのに、 行き掛かり上、車中で吐いて倒れてしまった“彼女”を 介抱することになってしまいます。 そこから、“彼女”の奴隷のような、キョヌの生活が始まりました。
電車で年配者に席を譲らない若者を罵倒し、 援助交際カップルに難癖つけ、 大学の講義中に(よその学生のくせに)のこのこ入ってきて キョヌに授業をサボらせ、 下手くそで支離滅裂な映画のシナリオを読ませる。 カフェでは強引にコーヒーを注文させる。 そして、気にそまないことがあると手が出、 「ぶっ殺されたいのか!」とすごむ……。 見た目は完璧な美少女なのに、 “彼女”のやることなすこと、強烈過ぎます。 キョヌは、もともとの気の弱さもあるものの、 困った困ったと思いつつ、“彼女”の言いなりになるのでした。
“彼女”の誕生日、 何か特別な演出をしなきゃぶっ殺されると思ったキョヌは、 知人のコネで夜中の遊園地を使うことを思いつきますが、 そこで、思わぬトラブルに巻き込まれます。 が、肝の据わった“彼女”のおかげで難を逃れ、 さらに、彼女の意外なほど繊細な面と、 内に秘めた悩みを知ることになります。
物語の構成としては、 ひたすらキョヌが“彼女”に翻弄される「前半戦」、 そして、“彼女”の苦悩を知った後の、 キョヌの“彼女”への思いが泣かせる「後半戦」、 そして、気になる2人の行方、「延長戦」に分かれています。 そんなこの映画の原作が、 もともとインターネットの書き込みだったというのは よく知られていると思います。 キョヌが“彼女”と過ごした、痛みを伴う退屈知らずの日々は、 同情と羨望の両方を誘うのではないでしょうか。
チョン・ジヒョンが演じる「黙ってればかわいい子」は、 最後まで“彼女”であって、役名が出てきません。 だから、映画の中の登場人物というよりも、 もし自分がこんな子に関わったらどうする?と よくも悪くも感情移入しやすいのではないでしょうか。 私も最初は第三者の女目線で、 「思慮が足りなくてがさつでむかつく」と思っていたのに、 終盤はキョヌの気持ちになって “彼女”を思うことができました。
あのドリームワークスが リメイク権をとったことも話題になりましたが、 正直「意味ないことはおよしなさい」と思わないでもありません。 強烈キャラの美女なら、アメリカ映画には昔から大勢出てきたはず。 今さらどうしようというのでしょう。 と思いつつ……年齢設定をもう少し高めにすれば、 キョヌの役はベン・スティラーかなぁ、などと 少し考えてもしまいました。
2003年08月10日(日) |
映画よろず屋週報 Vol60「小さなスター→大スター」 |
特集「小さなスター→大スター」
洋画、特にアメリカ映画を見ていると、 確実に売れっ子の子役が存在することに気づきます。 堂々と主役や準主役を張る場合が多いのですが、 時々、「○○の子供時代」という役を 振られることもあります。 その○○も当然、それなりの格の人が演じたりするので、 豪華二大スターキャストの趣もあるものの、 それはちょっと無茶じゃないの? と思わせる組み合わせのことも 残念ながらあります。
しっくり来ているか、残念賞か、無茶か、 その辺は各人の判断におまかせするとして、 本日は、「子役も成人後も有名スター」という 組み合わせがあしらわれた映画を御紹介します。
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ジョゼフ・マッゼロ ↓ ジム・キャリー 『サイモン・バーチ Simon Birch』 1998年アメリカ・カナダ マーク・スティーブン・ジョンソン監督 J.アーヴィングの『オウエンのために祈りを』の映画化。 50年代のアメリカ、メーン州が舞台(う〜ん、アーヴィングだ)。 生まれつき小さく、12歳になっても100?にも満たない身長の サイモン・バーチ(イアン・マイケル・スミス)。 彼と一番の親友ジョンを演じたのがジョゼフ・マッゼロ、 そして、少年時代、特にサイモンのことを振り返る成人後を ジム・キャリーが抑えた演技で見せました……というより、 「ほんの少し顔を見せていました」という感じです。
イライジャー・ウッド ↓ トム・ハンクス 『ラジオ・フライヤー Radio Flyer』 1992年アメリカ リチャード・ドナー監督 母親の再婚相手に虐待される弟(ジョゼフ・マッゼロ)を けなげに守り支えようとする兄を、 イライジャー・ウッドが演じました。 成人後を演じたトム・ハンクスは、 これまた「ちょい役」です。
ブラッド・レンフロ ↓ ブラッド・ピット 『スリーパーズ Sleepers』 1996年アメリカ バリー・レビンソン監督 “スリーパーズ”とは、少年院の収監経験を持つ人を指す言葉。 ほんの出来心からしたいたずらで、他人に大怪我をさせ、 少年院に入れられてしまう悪ガキ4人組は、 そこで看守たちから酷い性的虐待を受けてしまいます。 成人後、特にひどかった看守(ケビン・ベーコン)に 偶然出会ったことで、 4人のうち、チンピラ稼業で生きているトミーとジョン (ビリー・クラダップ&ロン・エルダード)が復讐を誓い、 残る2人、新聞社に勤めるシェイクス (ジェイソン・パトリック)と 判事補になったマイケル(ブラッド・ピット)も 手をかすように頼まれますが……。 少年時代、リーダー格だったマイケルを ブラッド・レンフロが好演していますが、 成人後のマイケルをファーストネームが同じピットが…というのも、 いいような、悪いような。 この映画に関しては、(長いせいもありましょうが) 少年時代も成人後も、同じくらい見せ場があります。
ジェナ・マローン ↓ ジョディー・フォスター 『コンタクト Contact』 1997年アメリカ ロバート・ゼメキス監督 恐れ入りますが、この映画、実は私はまだ見ておりません。 が、主演フォスターの少女時代を、 『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』『海辺の家』 『イノセント・ボーイズ』など 売れっ子美少女ジェナ・マローンが演じたと聞き、 子役時代から大スターだったジョディーの 少女時代とのルックスの乖離に、 「う〜ん、いいんだろうか…」と思ってしまいました。
ダコタ・ファニング ↓ リーズ・ウィザースプーン 『メラニーは行く!Sweet Home Alabama』 2002年アメリカ アンディ・テナント監督 自らの才覚1つでファッション界で大成功を遂げ、 大金持ちのフィアンセもいるメラニー (リーズ・ウィザースプーン)。 そんな彼女を悩ませる秘密とは……。 冒頭のほんの短いシークエンスでしたが、 メラニーの少女時代を、 『アイ・アム・サム』で見る者を驚かせた 美しき小さな演技派、 ダコタ・ファニングが演じていました。 が……、ウィザースプーンの特徴として、 「映画に登場間もなくは大した美人にも見えないが、 全部見ると、たまらなく魅力的な女性に思える」 というのがあるので、 どうしてあの美少女が、この女の人になっちゃうの? という疑問を差し挟ませる余地も、 残念ながら十分にあります。
ジェニファー・コネリー ↓ エリザベス・マッガバン 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ Once Upon a Time in America』 1984年アメリカ セルジオ・レオーネ監督 ユダヤ系ギャングの青年ヌードルス (ロバート・デ・ニーロ)が 少年時代憧れていた友人の妹デボラ (ジェニファー・コネリー)。 その成長後を演じたのが、 黒髪の美女エリザベス・マッガバンでした。 『ゴッドファザーPart2』と『スリーパーズ』を合わせたような ニュアンスを持つ長尺ものです。
セス・グリーン ↓ ウディ・アレン 『ラジオ・デイズ Radio Days』 1987年アメリカ ウディ・アレン監督 すべてそのまま、とはいかないまでも、 かなりアレンの少年時代が投影されていると思われる 非常にノスタルジックで微笑ましい好編。 アレンはナレーションで「出演」していますが、 主人公の少年ジョー(セス・グリーン)に ナレーションがかぶさり、生き生きと動く様子は、 そのまま、鮮明過ぎる「思い出のアルパム」という風情です。
8月9日は、語呂合わせで「野球の日」です。 夏の甲子園高校野球は、序盤から台風にたたられていますが、 甲子園がドーム化される日は来るのでしょうか。 選手はもちろん、応援の人々の滞在日数の延びを考えると、 天候に左右されない状況がつくられた方が…とも思うのですが、 その延びも含め、地元では野球特需にもなっているのでしょうか、 よくわかりません。
ところで、我が福島県代表・日大東北高校は、 話題の強豪校の1つでもある今治西高に惜敗しました。 失礼ながら、私にとっては、地元代表がどこということよりも、 地区予選でベスト8まで勝ち進んだ我が母校にぴっくりしました。 まだ共学化されて6年目だというのに、 あの小狭いグラウンドで、よく頑張ったものです。
それはさておき、今日は野球映画をどうぞ。
ザ・ファン The Fan
1996年アメリカ ビデオ&DVD あり(発売・日本ヘラルド 販売ポニー・キャニオン) 製作総指揮 ビル・アンガー / ジェームズ・W・スコッチドポール / バリー・M・オズボーン 製作 ウェンディ・ファイナーマン(『グッドナイト・ムーン』) 監督 トニー・スコット(『スパイ・ゲーム』) 脚本 フォフ・サットン(『くちづけはタンゴの後で』)
はっきり言って、かなり不愉快感をかきたてる作品ですが、 ロバート・デ・ニーロの怪演が非常に生きていました。
ナイフセールスマンのギル(ロバート・デ・ニーロ)は 大の野球好きです。 特に、最近地元チームに移籍したボビー・レイバーン (ウェズリー・スナイプス)の活躍を期待していました。 忙しい仕事の合間を縫い、別れた妻のもとで暮らすひとり息子を 連れてスタジアムに試合に見にいくことで 自分は息子にとってヒーローになれると信じて疑いませんが、 実は息子には、これがありがた迷惑でした。 また、仕事を抜け出して試合に駆けつけたことで、 平静さを失っていたギルは、 息子をスタジアムに置き去りにしてしまった上に、 パパはしつこいと嫌がる息子の訴えでストーカー扱いされ、 裁判所命令で、息子に近づくことすらできなくなります。
と、乗っけから「こいつあぶねー」と思わせるつかみも十分。 次に彼は、移籍後どうも調子が出ないボビーの活躍を願い、 彼が欲しがっている背番号「11」の持ち主である ホアン・プリモ(ベニチオ・デル・トロ)に接触し、 それをボビーに譲ってくれるように説得しようとしますが、 ホアンの「11」への思いも、並々ならぬものがありました。 それを知ったギルは、ホアンに手をかけてしまいます。
一方ボビーは、 自分の子供と同じ名前の重病の子供を励ますために面会したり、 高い移籍金の割に芳しくない活躍や 私生活についてあることないこと書き立てられたこと、 背番号問題でもめていたホアンの死などが重圧になり、 すっかりマスコミやファンへの不信感を強めていました。 そんな折、「憧れのボビーのため」とホアンを殺ったことで 悦にいっていたギルが、 たまたまボビーと接触する機会を得て、有頂天になります。 が、ボビーの口から出てきたのは、 「ファンはアホだ」という、正直な実感とはいえ いかにも思いやりのない一言でした。 かわいさ余って憎さ100倍、 ギルはボビーへの怒りから、異常性を爆発させ……。
こうしてストーリーをなぞったら、名前が挙がらなかったのですが、 スポーツ記者ジュエル・スターン役を エレン・バーキンが好演していました。 以前にデ・ニーロと共演した『ボーイズ・ライフ』での、 再婚相手の虐待に怯える女性とは打って変わり、 舌鋒鋭くスランプのボビーに迫る憎ったらしさと、 自立した女性の「さばけた色気」がなかなかです。
ギル役には、もっと「薄い人」を起用した方が きっともっと終盤に向けての恐怖感を盛り上げたでしょう。 デ・ニーロの濃密さは、その意味でマイナスでもありましたが、 あれだけの怪演を真顔でできるというのも、また彼ならではです。 胸騒ぎのするような恐怖感、いらつき感をお楽しみください。
本日8月8日は、「ハハ」という笑い声の語呂合わせで、 「笑いの日」だそうです。 そこで、コメディーという割にはさっぱり笑えない(かもしれない)、 それでいて、妙に心のどこかにひっかかる好編をどうぞ。
天才マックスの世界 Rushmore
1998年アメリカ ビデオ&DVD あり 製作総指揮 ウェス・アンダーソン / オーウェン・ウィルソン 製作 バリー・メンデル / ポール・シッフ 監督 ウェス・アンダーソン 脚本 ウェス・アンダーソン / オーウェン・ウィルソン 音楽 マーク・マザーズバー / ピート・タウンゼンド (ザ・フー)
昨年のオスカーレースで話題になった 『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のチームが 同作の3年前に製作した学園コメディーです。
原題を“Rushmore”だと聞くと、 あの『北北西に進路をとれ』でも有名な 4人の大統領の頭が彫られたラッシュモア山を思い出しますが、 それとは全く関係なく、 映画の舞台の1つとなる名門私立校の名が “ラッシュモア”といいます。
マックス・フィッシャー(ジェイソン・シュワルツマン)は、 黒縁メガネのぱっとしない15歳の少年です。 (余談ですが、吉田照美さんそっくりです) 理髪師の父親(すごくいい人!)のことを 「外科医」だと周囲の人間には話していますが、 それが、見栄か何かでそう言っているのか、 何か含みがあって敢えてそう言っているのか、 全くつかめない得体の知れなさがあります。 そもそも、決して裕福とはいえない育ちながら 私立校に通っているのも、 まだ幼少の頃に書いた芝居の脚本がきっかけで、 奨学金をもらえるようになったためでした。
じゃ、さだめし優秀だろうというと……これがそうでもなく、 “いっちょかみ”とでもいうのか、文科系から体育会系まで、 ありとあらゆる課外活動に顔を出し、 そのために、すっかり勉強の成績がお粗末になっています。 学校で一番仲がいいのは、 大分お子ちゃまのダーク(メイソン・ギャンブル)ですが、 これも、ダークのママが若くてきれいなので、 どうせ母親目当てだろうと周囲からは目されていますが、 実のところどうなのか、これもよくわかりません。
ある日、図書館で海洋生物の本を読んでいたマックスは、 本の中にクストーの書き込みがされているのを見つけ、 その「犯人」を突き止めますが、 それは、若く美しい新任教師で未亡人の ローズマリー(オリビア・ウィリアムズ)でした。 彼女の亡き夫はラッシュモアのOBで、 その夫からもらった本を図書館に寄贈したのでした。 マックスはローズマリーにすっかり夢中になり、 とんちんかんなあの手、この手で彼女の歓心を買おうとします。
そんな中マックスは、問題行動が原因で退学になり、 公立高校に転学しますが、 その間、尊敬するラッシュモアOBで友人でもあった ブルーム(ビル・マーレィ)がローズマリーに恋をし、 マックスの思いを知りながら、彼女とデキてしまいます。 それを知ったマックスは、 ブルームの妻に告げ口して離婚沙汰に追い込み、 嫌がらせを続けますが、 ブルームもブルームで、 マックスに大人げない嫌がらせを返します。
ジェイソン・シュワルツマンという役者を、 私はこの映画で初めて見ました……が、 1980年生まれといいますから、この映画の当時でせいぜい17か18。 でも、「エッ、マジ?」と言いたくなるほど老けています。 顔がどうのというより、雰囲気が。 やることや言うことは、時々やたらと子供っぽいのですが、 老成した、とでも言いたい雰囲気があって、 あのつかみどころのなさには、何か惹かれるものを感じます。 もう少したったとき、どんな役者になるのか楽しみですね。 とりあえず若いうちは、「ダスティン・ホフマンの若い頃」役を 一手に引き受けるだけでも、結構イケそうな気がします。
ところで、そのシュワルツマンですが、 女優タリア・シャイアの息子さんだそうです。 彼女はフランシス・コッポラの妹ですから、 当然、コッポラから見たら甥っこということです。 そして、同じく「コッポラの甥」として世に出てきたけれど、 今や押しも押されもせぬ大スターになったニコラス・ケイジとは いとこの関係にあることになります。 ちなみに、弟ロバート・シュワツルマンも俳優で、 近いところでは、『プリティ・プリンセス』に出演しています。 主演アン・ハサウェイの親友の兄という役どころでした。 ちなみに2、彼は『ヴァージン・スーサイド』にも出演していますが、 この監督をしたのは、コッポラの愛娘ソフィア…… くどい芸能一家ですなぁ。
2003年08月03日(日) |
映画よろず屋週報Vol59 |
8月3日は、語呂合わせで「ハサミの日」です。 もともと美容家の山野愛子さんが提唱したもので、 針供養ならぬハサミ供養をするのだとか。
そこで、映画に登場する理美容師さんに スポットを当ててみました。
ただし、『髪結いの亭主』『バーバー』 『シャンプー台のむこうに』などの タイトルからしてそうとわかるものは 別の機会に譲り、 あくまで、作品の中の1つキャラだったり、 見てみないとわからない、という映画だけを 何本か集めてみました。
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私は貝になりたい I Want to Be a Shellfish 1959年日本 橋本忍監督 平凡な理容師、清水豊松(フランキー堺)は、 戦時下、上部の命令で捕虜を殺したことが 戦争終結後に罪に問われてしまいます。 8月にならないと戦争について考えない、 日本の風潮に疑問を覚えつつも (最近はそうでもない気もしますが) やはり、「8月15日」を目前に控えた今こそ見たい 不朽の一編でしょう。
愛されちゃって、マフィア Married to the Mob 1988年アメリカ ジョナサン・デミー監督 マフィアの下っぱの夫フランク (アレック・ボールドウィン)との間に一男を持つ 主婦アンジェラ(ミシェル・ファイファー)は ヤクザな生活にうんざりしていました。 フランクがドジを踏んで“消されて”しまったことから、 息子との生活のため、まっとうな仕事を探すアンジェラは、 「Hello,Gorgeous(こんにちは、美人さん)」という名の 気のいい女性が切り盛りする美容院に職を得ます。 事件絡みで、フランク亡き後アンジェラを監視する FBI捜査官(マシュー・モディン)とアンジェラとの恋が 彩りを添える、結構いけるコメディー。
浮き雲 Kauas pilvet karkaavat (Drafting Clouds) 1996年フィンランド アキ・カウリスマキ監督 妻はレストラン給仕長、夫は市電の運転士 ……の職を失った後、必死で仕事を探す。 妻イロナは、嘘かまことか、 昔美容師をしていたという経験をもとに、 ある美容院で働くようになったら、 そこで、思わぬ人生の転機と出会います。
ギリーは首ったけ Say It Isn't So 2001年アメリカ ジェームズ・B・ロジャーズ監督 「そうじゃないと言って」という なかなか意味深長な原題を持ちながら、 ファレリー兄弟(製作)が絡む作品だというだけで 「メリーに首ったけ」のパロディーのような 邦題をつけられてしまった 日本未公開コメディー。 動物保護協会に勤めるギリー(クリス・クレーン)は、 親に捨てられたことがトラウマになり、 人を愛することに臆病でしたが、 町で評判の美人理髪師ジョー (ヘザー・グレアム)に一目惚れし、 彼女に髪をカットしてもらったばっかりに えらい目に遭います。 「メリー…」や「愛しのローズマリー」以上に際どいギャグが満載ですが、 主演の2人の美形度は、この映画が一番でしょう。
のど自慢 Amateur Singing Contest 1998年日本 井筒和幸監督 群馬県桐生市を舞台に、 NHK「のど自慢」出場にかける人々の こもごもを描いた人間群像喜劇。 売れない演歌歌手・赤城麗子(室井滋)も プロであることを隠して出場しますが、 勝手ばかりしている娘を見限りきれない 理容師の父親(小林稔侍)は、 仕事をしながら、彼女がテレビで歌っているのを ついつい目で追ってしまいます(危ねーよ)。
1929年8月2日、豊田商事事件など 社会的に大きな影響を与えた事件を多く手がけたことで有名な 「闘う弁護士」中坊公平さんが生まれました。
そこで、中坊さんとは大分趣を異にしますが、 なかなか味な弁護士が登場したこちらの作品を。
ライアーライアー Liar Liar
1997年 アメリカ ビデオ&DVD あり 製作総指揮 マイケル・ボスティック/ジェームズ・D・ブルベイカー 製作 ブライアン・グレイザー(『ビューティフル・マインド』) 監督 トム・シャドヤック(『パッチ・アダムス』) 脚本 ポール・グアイ/スティーブン・メイザー(『ハートブレイカー』) 音楽 ジョン・デブニー(『スコーピオン・キング』)
弁護士フレッチャー・リード(ジム・キャリー)は、 まさに天職に就いていると言えるほどの嘘つきで、 数々の裁判を勝ち抜いてきた凄腕です。 が、その調子のよさが災いし、 妻オードリー(モーラ・ティアニー)とは離婚。 彼女のもとで暮らすひとり息子のマックス (ジャスティン・クーパー)は、 ノリのいいパパが大好きでしたが、 しょっちゅう破られる約束に心を痛め、 6歳の誕生日、ケーキのろうそくを吹き消すときに、 「1日でいいから、パパが嘘をつきませんように」と お祈りをします。 そしてその祈りは、神様に聞き届けられました。
そうとは知らぬフレッチャーは、 いつものようにオフィスに出勤し、同僚たちに、 「服のセンス、サイテー」だの、 「そんなもん食うから太るんだ」だの、 自分の意に反して本音丸だしのことを言ってしまうので、 困り切ってしまいました。 大富豪夫人サマンサ(ジェニファー・テイリー)の 離婚訴訟を控えていたのです。 浮気しほうだいのくせに、多額の養育費を分捕るために 子供たちの親権を欲しがっているという とんでもない女でした。 嘘でも並べなきゃどうしようもないような弁護に立ち会い、 嘘のつけない苦しさにのたうち回りながら、 何とか裁判を翌日以降に延期しようとするフレッチャーでしたが、 彼女とのささいな会話から、勝利への糸口をつかみます……。
私はこれを見る前に、えらい偏見を持っていました。 多分、ドタバタばかりが強調された予告編のせいでしょう。 おまけに、ジム・キャリーという癖の強い役者が主演です。 そこそこ楽しめればいいや、くらいに思って見ました。 ところが、きちんと向き合ってみると、 これがなかなかどうして、よくできたドラマなのです。 立場を違えて物を見ることができた幸運な男の話、 ともいえるかもしれません。 M.ティアニー扮するオードリーには、 誠実で優しい恋人ジェリー(ケーリー・エルヴィス)がいますが、 彼もまた息子マックスと仲良くやっていて、 よくある単純な憎まれ役に仕立てられていないところも 高感度大です。 (それだけに、「いい人なのに報われないなー」というシーンも多々ありますが)
まず最初に、「間違えてここに来てしまった人」に、心からおわびいたします。 ここで話題にするのは、1998年のアメリカ映画『ウォーターボーイ』であり、 2001年の劇場映画にして現在テレビドラマ版放映中の『ウォーターボーイズ』とは 全く無関係です。毛の先ほども関係ございません。 映画日記へアクセスしてくださった方の検索キーワードを見ると、 たまぁに「あ、この人が読みたかったのは、こういうのじゃないだろうな」 と、もろわかりなことがあるので、念のため。
このまま梅雨が明けないのでは…と心配していたら、 最近ようやく、夏らしい蒸し暑さを感じるようになりました。 美容と健康のため、水分補給は十分行いましょう。
ウォーターボーイ The Waterboy
1998年アメリカ ビデオ&DVD あり 製作総指揮 アダム・サンドラー(『Mr.ディーズ』 ) 製作 ロバート・シモンズ /ジャック・ジャラプート 監督 フランク・コラチ(『ウェディング・シンガー』) 脚本 アダム・サンドラー/ティム・ハーリヒー 音楽 アラン・パスカ
アメリカ南部ルイジアナ州の田舎町。 31歳のボビー(アダム・サンドラー)は、 過保護な母親ヘレン(キャシー・ベイツ)の庇護下に置かれ、 「他人と接触して、変な影響を受けたらたまらない」と、 まともに高校も行かせてもらえなかったのに、 なぜか大学のアメフトチームで ウォーターボーイ(給水係)をやっています。 が、ボビーが調製する水は、そりゃもう絶品で、 彼自身、その仕事を天職だと心得ているくらいでした。
が、気が優しく怒ることを知らないボビーは、 アメフトチームの選手たちの格好のいじめの的となります。 そんなこんなで、仕事も首になってしまうのですが、 その後、やはりアメフトチームの給水係の仕事を得ますが、 そこでもやはり、いじめられます。 そんな彼を心配するチームの監督 (ヘンリー・ウィンクラー)は、 「やられたらやり返せ」と発破をかけますが、 心優しいボビーの精いっぱいの反撃に、 監督は、アメフト選手としての素養を見出し、 彼をなんと選手として起用しようとするのですが……。
アダム・サンドラーがつくった映画は、 当“Dailymovie”でも何度も取り上げてまいりました。 スタッフ(場合によってはキャストも)はいつも同じ顔ぶれで、 似たような筋立ての、 コテコテB級コメディーと言ってしまえばそれまでなのですが、 今回はとりあえず、 「憧れのカノジョ(ファルーザ・バーグ)がブロンドじゃない」 というあたりに、ほかの作品との差異がほんの少し見出せます。 また、息子がかわいくてかわいくて仕方がない変わり者の母親に、 何を演ってもうまいキャシー・ベイツが扮し、 実にお茶目に楽しげに演じていました。
ボビーの「元チーム」と「今チーム」の それぞれの監督の過去の因縁による確執なども、 なかなか笑わせてくれます。 コメディー映画そのものが体質に合わないという人には、 安っぽいつくりが、ただただ鼻につくことになりそうですが、 金のかかったコントを見ていると思えば、 かなり楽しめるのではないかと思います。 (といっても、侮辱しているわけではなく、 この映画にふさわしい賛辞を送っているつもりなのですが…)
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