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2003年04月28日(月) |
映画よろず屋週報 Vol48 2003.4.28「映画は「乗り換え駅」(1)」 |
まずは1本、映画を見ます。 テレビでもいいし、ビデオやDVDでもいい。 もちろん劇場ならなおいいのですが、 その劇場行きだって、「たまたま誘われた」だの 「タダ券が手に入った」だの、 そういうきっかけでも一向に構いません。
さて、その映画ですが、 オオアリクイの一生を追ったドキュメントなどでもない限り、 人間の俳優さんが出てくることと思います。 ひょっとして、Mr.(あるいはMs)wonderfulが その映画には出ていませんでしたか? すなわち、あなただけの「ステキさん」です。 (こう書いていて、柄じゃないなぁとは思うのですが… 臀部がもぞもぞしてまいりました)
その人は、決して美男美女ではないかもしれないし、 デブデブだったり、ガリガリだったりするかもしれません。 あるいは、頭部のたそがれた方かもしれませんね。 それでも、存在感とか演技力とか、 とにかく訴求力を持っているからこそ、 この世界で生き残ってこられた人でしょう。 逆に、演技などは特に見るべきところもなく、 ひたすら容姿が美しいだけの人かもしれません。 しかし、その美がもはや才能の域に達しているかも。
で、その人が気になるようになったあなたは、 ほかには何に出ているのかとリサーチします。 ファンへの第一歩というわけです。 (1本の作品だけでファンと言い切っても、 映画ではなくグラビアの写真に惹かれたとしても、 その人の「ファン」であることには変わりないと思いますが)
ところが、あなたのすてきさんは、 余りにも多彩な映画に出演しているため、 どちら方面のものを見るかで、 その後の好みのジャンルも変わってしまう可能性がありましょう。 つまり、乗る電車で全く行き先が変わってしまう、 乗り換え駅のようなものです。
例えば……
ブレンダン・フレイザー
青春の輝き School Ties 1992年アメリカ ロバート・マンデル監督 50年代、アメリカの名門校を舞台にした ユダヤ人差別にまつわる青春ドラマです。 この映画の存在自体は地味ですが、 ブレンダンの さわやかでバランスのいい少年という感じの魅力は捨て難いし、 (既に20歳を超えてはいましたが、「少年」役なので) 脇を固めていたのが、 今を時めくマット・デイモン、ベン・アフレックなど、 かなり豪華な面々でした。 ↓ (1)アクション路線 やっぱり、『ハムナプトラ』の2作でしょう。 この手の映画で最初から注目されていたら、 ブルース・ウィリス系の扱いを受けていたような気がします。 (深い意味はありません) 個人的には、実はこの路線には1度乗ったきりです。
(2)ロマンチック路線 『きっと忘れない』『くちづけはタンゴの後で』 『グローリーデイズ 夢見る頃はいつでも』など。 『タイムトラベラー きのうからきた恋人』という 隠れた名作もありますが、 これは↓ここに属する要素もあります。
(3)おバカコメディー路線 『ジャングル・ジョージ』『ハードロック・ハイジャック』 『スカウト』『悪いことしましョ!』など。 二枚目が余興でバカをやっているのではなく、 本当にバカっぽく見えてしまうのが、 この人の強みであり、マイナスポイントでもあるかも。
(4)脇役路線 こちらは、「ブレンダンが脇」という意味ではなく、 『青春の輝き』で脇を固めていた面々に目を転じた場合に 乗ることができる路線です。 ○マット・デイモン&ベン・アフレック 実生活での親交も有名なこの2人は 『グッド・ウィル・ハンティング』の名コンビでもありますが、 『青春…』と『グッド…』を見て、 その後ベンが歩む大スター路線を想像できた人は、 どのくらいいらっしゃったことでしょう。 マットは、「あんたが何でジュード・ロウに成り済ます!」と ファンには不評だった『リプリー』や、 近作『ボーン・アイデンティティー』など。 『青春…』では、マットが完璧な憎まれ役でいい味を出し、 ベンは、台詞があったかどうかさえ思い出せない役でした。 ○クリス・オドネル 『青春…』では、ブレンダンのルームメイト役。 『青春…』とキャラかぶる『セント・オブ・ウーマン』や、 まじめな好青年なのにつっこみがいのある役を演じた 『サークル・オブ・フレンズ』 元気いっぱいダルタニアン!の『三銃士(93年版)』など、 見ていて安心するけれど、ちょっとおもしろみがないような…
2003年04月23日(水) |
映画よろず屋週報 Vol47「何だか文学の薫り漂う映画たち」 |
特集「何だか文学の薫り漂う映画たち」
4月23日は、サン・ジョルディの日です。 もともとスペインの風習だったという 花と本を贈り合うというこの日は、 そもそも、『ドン・キホーテ』でおなじみの文学者 セルバンテスの命日だとか。 その後、日本では「世界本の日」が制定され、 書店等で、地味にイベントを打ったりしている場合があります。
そこで、文学作品の隠し味がどこかにあるような、 そんな映画を御紹介いたします。 (原作があるものは、原作者名も付記しています)
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ノッティングヒルの恋人 Notting Hill 1999年アメリカ ロジャー・ミッチェル監督 とっても重要なあるシーンで、 ヒュー・グラントが読んでいた本は、 2001年に日本でも公開された映画 『コレリ大尉のマンドリン』の原作だったそうです。 (ルイ・ド・ベルニエール作)
ガープの世界 The World According to Garp 1982年アメリカ ジョージ・ロイ・ヒル監督 (ジョン・アーヴィング原作) T.S.ガープ(ロビン・ウィリアムズ)が アマチュアレスリング部のトレーニングの最中 ヘレン・ホーム(メーリー・ベス・ハート)に一目惚れし、 声をかけたのはは、 彼女が競技場の観覧席で、1人本を読んでいたときでした。 しかし、いきなり「体重何キロ?」って聞くなよっ。 が、その後、『結婚するなら作家がいい。レスラーは嫌』 と言い放ったヘレンの意向もあり、 もともと文学青年だったガープは、見事作家になるのでした。
◎メルヴィル作『白鯨』が絡む映画
カメレオンマン Zelig 1983年アメリカ ウディ・アレン監督 主人公レナード・ゼリグが、自分を取り繕おうとして 読んでもいないのに読んだ振りをした本こそ 『白鯨』でした。
メジャー・リーグ Major League 1989年アメリカ デビッド・S・ウォード監督 自分自身の浮気がもとでダメになったものの、 別れた恋人(レネ・ルッソ)に未練たらたらの 野球選手(トム・ベレンジャー)は、 知的な彼女に合わせ名作『白鯨』を読もうとしますが…
メッセージ・イン・ア・ボトル Message in a Bottle 1998年アメリカ ルイス・マンドーキ監督 (ニコラス・スパークス原作) 海岸に流れ着いたボトル入りの手紙の送り主が気になる 新聞社勤めの女性(ロビン・ライト・ペン)。 彼女に気がある上司は、手紙の送り主をやっかんで、 「ヒースクリフ(『嵐が丘』)かエイハブ船長(『白鯨』)か、とか 考えてんだろう?」なとと交ぜっ返します。
◎アレクサンドル・デュマ 『モンテ・クリスト伯(岩窟王)』
スリーパーズ Sleepers 1996年アメリカ バリー・レビンソン監督 (ロレンゾ・カルカテラ原作) いたずらが度を越して鑑別所送りになったものの、 基本的には読書好きで物静かな シェイクス(ジョー・ペリノー)は、 作文を褒めてくれた教官に好きな本を聞かれ、 意味ありげに『モンテ・クリスト伯』の名を挙げます。
ショーシャンクの空に The Shawshank Redemption 1994年アメリカ フランク・ダラボン監督 (スティーヴン・キング原作『刑務所のリタ・ヘイワース』) 無実の罪で収監されたアンディ(ティム・ロビンス)は、 刑務所内に図書館をつくろうと骨を折りました。 それが実現し、寄贈された本の分類を 仲のいいレッド(モーガン・フリーマン)に 手伝ってもらいますが、 『モンテ・クリスト伯』の内容をアンディに説明されたレッドは、 文学ではなく別なあるジャンルにこの本を置くべきだと一言。
サイダーハウス・ルール The Cider House Rules 2000年アメリカ ラッセ・ハルストレム監督 (ジョン・アーヴィング原則。脚色も担当) この映画の原作自体が大傑作ですが、 作中、重要な小道具ともなった文学作品は ディケンズの『デヴィッド・コパーフィールド』でした。 なお、映画では触れられなかったと思いますが、 原作の中で、女子の寝室で読まれていた作品は、 C.ブロンテの『ジェーン・エア』だったかと記憶しています。
ところで、 『夢見る小犬ウィッシュボーン』という 海外ドラマシリーズを御存じでしょうか。 白黒ぶちのかわいい小犬ウィッシュボーンが、 飼い主の少年や周囲の人々に起こる 生活の中での大小の出来事から、 古今東西の文学作品を想起させられ、 さらに、その主人公になる想像をするという かわいらしくて夢のある、ほほえましいシリーズです。 残念ながら、今のところVHSしか出ておらず、 某アマゾンでは軒並み在庫切れの様子ですが、 レンタルショップの「ファミリー/動物」 あるいは「海外ドラマ」などのコーナーに 並んでいることもあるので、 もし興味がおありでしたら、探してみてくださいませ。
2003年04月06日(日) |
映画よろず屋週報 Vol46「ぼのぼの クモモの木のこと」 |
*****映画よろず屋週報 Vol46 2003.4.6*********************
皆さん、こんにちは。大変ごぶさたをいたしました。 まだ本調子とは言えないので、 ぽつぽつと休刊することも考えられますが、 とりあえず、よろしくお願いいたします。
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本日は「○○特集」ではなく、 映画を1本だけ御紹介いたします。 60分そこそこのアニメーションなのですが、 絵柄の美しさと繊細なストーリー運びがすばらしいので、 ミヤザキだけがジャパニメーションじゃない!ということで、 おすすめいたします。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ぼのぼの クモモの木のこと 2002年日本 クマガイコウキ監督
どちらかというと、いわゆる不条理マンガで鳴らした いがらしみきお氏が、 1986年、ラッコを主人公にした“哲学マンガ” 『ぼのぼの』を発表し、18年目に突入しました。 絵柄はもちろん、キャラクターの設定にも 少しずつ変化を見せながらも、熱く支持され、 コミック(竹書房)は現在、22巻まで刊行されています。
1993年、初めて劇場映画化された後、 95年から96年にかけて放送されたテレビアニメも 大好評を博しました。 そして昨年2002年、満を持してという感じで、 オリジナルストーリーによる、フルCGアニメになって ぼのくんたちが帰ってまいりました。
ぼのぼのたちが住む森には、 クモモの木と呼ばれる大木があります。 森の動物たちはみんな、辛いことや悲しいことがあると、 この木の下にやってきて、その心を癒すのでした。 大切な宝物をなくしてしまったぼのぼのは、 同じように、無くし物をしてうろたえるシマリスくんと、 たまたま一緒に遊んでいたアライグマくんとともに、 クモモの木のもとに足を向けますが、 その下には、 大きな青い目をしたフェレットがたたずんでいました。 前にも木の下で見かけたことのあるその子が ぼのぼのは気になっていましたが、 話しかけると、逃げてしまいます。
アライグマくんの幼なじみらしく、 ポポという名前であること、父親が乱暴者で悪評が高く、 そのせいでホポくんも 森の中で除け者にされてしまったことなどを 教えてくれました。
ぼのぼのはその後、 ポポくんがなぜその木の下にいつもいるのかを知り、 それを心から理解することができたため、 ポポくんと大の仲良しになるのですが、 ある日、クモモの木に関する事件が発生し……
一緒に見ていた相方が、キャラクターの絵柄を見て、 「ぬいぐるみだなあ」と表現しました。 確かに、あの動物たちの毛の質感は感動的です。 いかにも、抱っこしたらふわふわで気持ちよさそうで、 あんな感じのぬいぐるみを売り出したら、 ヒーリンググッズとして当たるかもしれません。 (動物の毛にアレルギーのある方にはおすすめできませんが)
以前から、「ぼのぼの」の登場キャラクターについては、 寒い地方の生き物と、 東南アジアやアフリカあたりの生き物とが混在していて、 一体どこが舞台なんだ〜?という指摘はありましたが、 なるほど、『くまのプーさん』と同じように、 ぬいぐるみの世界の話だと考えたら、 「もう1つの100エーカーの森」くらいに思えることでしょう。 そして、「ま、どこでもいいか」となるはずです。
心がささくれ立っているとき、悲鳴を上げそうなときに ぜひとも触れてみたい世界です。 キャッチコピーともなった 「思い出はみんな美しい」という言葉を手元に置いて、 味わい尽くしてくださいませ。
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