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2003年05月25日(日) |
映画よろず屋週報 Vol51 パ〜ラダイスな映画 |
1955年5月25日、 落語家桂小枝さんが生まれました。 私はこの方の「過去」は存じないのですが、 その昔は、バカ殿よろしく顔を白塗りにして、 高座に上がったりしていたとか?
でも、この人といえば、 やっぱり『探偵!ナイトスクープ』でしょう。 見づらい時間に放送されている地域の方には、 余りおなじみでないかもしれませんが、 一応、全国で放送されています。 当地・福島では、近畿地区と同様に 金曜日の深夜にリアルタイムでこの番組を 見ることができ、私自身もファンなのですが、 桂小枝さんが不定期に担当しているシリーズが 『爆笑小ネタ集』 (でも、これは他の方が担当することも…) そして『桂小枝のパ〜ラダイス』です。
パ〜ラダイスとは…… 全国に点在するゆるゆるのレジャー施設や テーマパーク(大抵自称)を 小枝さんが訪問し、その魅力に迫るというものですが、 つまんない施設というのは、自分で行くよりも おもしろい語り部に行ってもらい、 その話を聞くのが何より楽しいという、 ある意味至極わかり切ったことを、 改めて知ることができます。
そこで、あくまで個人的見解ながら、 この映画はちょっと“パ〜ラダイス的”だと思われる、 そんな作品を集めてみました。
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スペースボール Spaceballs 1987年アメリカ メル・ブルックス監督 褒め言葉として「くだらない」と表現したいような、 SFコメディーです。 一応、『スターウォーズ』のパロディということですが、 ストーリーの運び自体は、 往年のラブコメの傑作『或る夜の出来事』の要素大。
ムトゥ 踊るマハラジャ Muthu 1995年インド K・S・ラヴィクマール監督 世界一の映画の国からやってきたこの娯楽大作は、 日本人にとっては、まさにパ〜ラダイスでした。 何しろ、某レンタルビデオショップでの紹介文句が 「踊る極楽浄土」でしたし。 南インドのスーパースター・ラジニカーントが、 召使の割に態度のでかい堂々とした男を好演し、 歌い、踊り、笑わせてくれました。
紅の豚 Crimson Pig 1992年日本 宮崎駿監督 第一次大戦と第二次大戦の間のある時代、 アドリア海に跋扈する空賊をつかまえて 賞金を稼ぐ飛行艇乗り、ポルコ・ロッソの物語。 ホテルの美しい女主人、 低音の声が腹に響くトレンチコートの男、 小粋で意味深長な会話…… これこそダンディズム?と思わせるような予告編とは裏腹に、 蓋を開けたら「あらら?」な力の抜け具合。 見ると聞くとじゃ大違いなパ〜ラダイスの醍醐味の1つです。
少林サッカー Shaolin Soccer 2001年香港 チャウ・シンチー監督 ええ、ええ、もちろんすごい映画なのは認めます。 仰天のワイヤーアクション、CGの使い方、大したものです。 チャウ・シンチーの軽妙さにも、 脇を固める個性的な面々にも、 そりゃ笑わせていただきました。 でも、あそこまで大々的に上映され、 しかもあまねく好評を博したということに、 なぜだか違和感を感じてしまうものですから……。 本来ならば、マニア受け映画の最たるものでは? とはいえ、やはり素直に祝・大ヒットを喜びたいものです。 大ヒットは、同時期に開催された 日韓共催ワールドカップの効果とも言われますが、 それでサッカーの映画を見ようというだけなら、 ほかに見るもの(べき)がいっぱいあるような気が…… な〜んて大きな声では言えません。
ケロッグ博士 The Road to Wellville 1994年アメリカ アラン・パーカー監督 大まじめアラン・パーカーが監督し、 知的で上品なアンソニー・ホプキンスが主演。 脇を固めるのも実力派ぞろい……とはいえ、 この映画には、まさに“パ〜ダイス”施設が登場します。
20世紀の初め、コンーフレークの発明で世に知られた ケロッグ博士は、怪しげな健康法を提唱します。 それを信じる人々は、博士の経営する インチキくさい健康施設に集うのですが、 人々の“健康欲”の吹き溜まりが不健康にさえ見えます。 彼らがこの施設で最後につかむものは、一体何でしょう。 マシュー・ブロデリック、ブリジット・フォンダ、 ジョン・キューザック、コーム・ミーニーなどなど、 豪華キャストです。
パルーカヴィル Palookaville 1995年アメリカ アラン・テイラー監督 ビデオタイトルは『パルーカヴィル/華麗なる完全犯罪?』
パルーカヴィルとは Palooka(不器用者の意味)という古いスラングと、 “町”を表すVilleで、 つまりは“パッとしない町”という意味だそうです。 そんな、華やかなNYともLAとも無縁の町で、 何とか一山当てようとする3人の間抜けな男が主人公です。 プロデューサーのウベルト・パゾリーニは 『フル・モンティ』や『クローサー・ユー・ゲット』も 手がけた人…のせいか、 どこか、イギリス映画っぽい雰囲気もあります。
シド(ウィリアム・フォーサイス)、 ラッセル(ヴィンセント・ギャロ)、 ジェリー(アダム・トレーズ)の3人は、 失業中で金がなく、ピーピーしていました。 そこで、一攫千金を狙って宝石店を夜間襲撃するのですが、 計画が甘かったようで、押し入ったところは隣のケーキ店! それでもめげず、コーヒーショップで額をつき合わせ、 反省会&次の獲物を絞る話し合いをするのですが……
ラストの「そう来たか…」という感じのオチまで、 何となく、ほっこりとした気持ちで見られる “一応”クライムコメディーです。 よくテレビで特集を組まれる 「世界の珍事件特集」で取り上げられそうな、 どこか憎めない、トホホなお話ですが、 役者の魅力で見せてくれます。 個性的な魅力の主演3人に加え、 娼婦役のフランシス・マクドーマンドも いつもながらの姐御ぶりで独特の“華”を添え、 楽しく見られる1本ではないかと思います。
のんきな話の割に、 ネタパレポイントが非常にはっきりしているので、 そこんとこ、多くは語れないのが残念ですが……
2003年05月23日(金) |
バルニーのちょっとした心配事 |
5月23日は、語呂合わせ「5(こい)2(ぶ)3(み)」と 浅田次郎原作の映画『ラブ・レター』の公開日で 1998年/東陽一監督 ラブレターの日だそうです。
そこで、ラブレターが引き起こした、 調子のいい男が巻き込まれる騒動の顛末を描いた コメディーなどいかがでしょうか。
バルニーのちょっとした心配事 Barnie et petites contrarietes 2001年フランス ブリュノ・シッシュ監督
フランス人のビジネスマン バルニー(ファブリス・ルキーニ) は、 毎日、フランス・カレーからドーバーを渡って ロンドンに勤めに出ています。 美しく聡明な妻リュシー(ナタリー・バイ)と、 高校生の娘もいて、 公私ともに恵まれた男……ではあるのですが、 のみならず、愛人が2人もいました。 2人ともロンドン在住で、 1人はハンサムなイギリス人男性マーク(ヒューゴ・スピアー)、 もう1人は若い美人のフランス人マルゴ(マリー・ジラン)です。
5月1日、彼の45歳の誕生日が近づいてきたある日、 彼は2人の愛人から、それぞれすてきな提案をされます。 それは、『オリエント急行の旅』でしたが、 どちらも45という数字にひっかけて同じ車両45、 当然、出発日も彼の誕生日5月1日です。 さあて、どちらと旅行に行ったらいいものか…と困りつつ、 浮気男の常套句?「5月1日は仕事で…」云々と 妻リュシーに言ったところ、彼女も全く同じ列車を リザーブしていたというオチがつきます。
悩んだ末、マークとマルゴの誘いを断り、 リュシーと一緒に旅行しようと決めますが、 その2人への断りの手紙が入れ代わってしまったことから バルニーに「自分以外」の恋人がいると知った2人は、 怒り心頭で、カレーにあるバルニーの自宅に殴り込んできます。 マルゴとマークは夫婦で、バルニーが共通の知人…… というふうを装ったので、リュシーは2人をむしろ歓迎しますが、 バルニーはもちろん気が気ではありません。 ヒステリックに娘の友達を追い返してしまったりして、 娘の機嫌を著しく損ねます。 そんな状況の中、リュシーと、娘が恋する美術教師との “関係”も明らかになって……
もう、勝手にしてくれ!と言いたくなるほどに 人間関係がこじれますが、 そこはそれ、おフランスのエスプリというやつで うまいことまとめ上げてあり、意外とくどさはありません。
終盤、なぜかおさまるところにおさまって、 バルニーとリュシーの夫妻、 そして、それぞれ別の相手を見つけたマーゴ、マークの 3組のカップルが、また凝りもせず、もめ放題にもめ、 「それでいいのか」なラストを迎えます。 フランス人もイギリス人もひっくるめて 「ヨーロッパ人って変だなぁ」としみじみ思います。 無理やりこじつけたようなオチが多い某国の映画に比べると、 しかし日本人は、その国の映画を見る機会が最も多い… 狐につままれた感が強いのですが、 それも1つの味としてとらえれば 結構楽しめるのではないかと思います。
ハモンハモン Jamón, jamón 1992年スペイン ビガス・ルナ監督
今やハリウッドの人気女優の1人となった ペネロペ・クルスがまだ十代の頃に出演し、 体当たりの演技(プッ)と 情熱的な美しさが話題になった作品です。
売春斡旋宿を切り盛りするカルメンの娘 シルビア(ペネロペ・クルス)は、 大手下着メーカーの縫製工場に勤めていますが、 会社の御曹司ホセと恋仲にあり、妊娠します。 ホセの母親であるコンチータは、 自分の夫マヌエルとの過去の関係もあり、 カルメンをよく思っていません。 当然、2人の仲にも反対していて、 仲を引き裂くために、ラウルという男を雇い、 シルビアを誘惑させます。
ところで、ラウルの美しくたくましい肉体は、 コンチータ自身にとっても魅力で、 彼女もまた、ラウルと関係を持つのですが、 最初はラウルに洟もひっかけなかったシルビアが、 だんだん彼の情熱にほだされていき、 ラウルもシルビアを深く愛してしまったことで、 コンチータを拒絶するようになります。
一方、ホセはホセで、シルビアを愛しながら、 母親のカルメンとも肉体関係にありました。 シルビアの愛を失って傷つきながら、 カルメンとの肉欲に溺れるホセと、 ホセとの仲を引き裂くために雇ったラウルに惹かれ、 今度は息子ホセに発奮させてシルビアとよりを戻させ、 ラウルを奪還しようとするコンチータ……
もう、これだけでも訳わからないのですが、 そこにコンチータの夫マヌエルまで参入させ、 エロエロ、ドロドロの愛欲スクランブル状態になった末、 ヤケを起こしたとしか思えない結末を迎えます。
やり過ぎ、エロ過ぎ、ムダ多過ぎ…と、欠点だらけなのですが、 何だか、思い出すと胸が熱くなるような作品でもあります。 ペネロペ自身は、 この映画に出たことを後悔しているという話もありますが、 当時から情熱的な美しさは、息を呑むばかりでした。
ハモンという語自体、“ハム”“生ハム”の意味もありますが、 ハモンハモンとは、 “むしゃぶりつきたいようないい女”の意味だそうです。 作中、ラウルがハム店で働いているという設定もあったので、 ダブルミーニングでもあるのでしょう。 映画の中で、食いでのありそうなハムも登場しました。
余談ですが、 他国で公開されたときのタイトルが笑えます。 Ham Ham、 Salami, Salami そして、アメリカビデオ発売時のタイトルは A Tale of Ham and Passion(ハムと情熱の物語?)だったとか。 香港のB級コメディーかと思いましたぜ。
2003年05月18日(日) |
映画よろず屋週報 Vol50「映画タイトルの中のマザー・グース」 |
5月18日は、こ(5)と(10)ば(8)の語呂合わせで 言葉の日だそうです。 そこで本日は、映画タイトルに見るパロディーやもじりなどを、 マザーグースからの引用に絞って集めてみました。 …といってもそこはそれ、知識不足につき、 相当に偏った狭い範囲で、 何とか知り売る限りという感じですので、 目からウロコの意外な発見は期待できないと思いますが、 読んでやってくださいませ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− レディバード・レディバード Ladybird,Ladybird 1994年イギリス ケン・ローチ監督 実話をベースです。 原題ともなっている歌は、まさにこの映画のストーリーを 端的にあらわしているとさえ言えそうなものでした。
子供を失うなど辛い過去を持つマギーと、 彼女に一目惚れし、献身的に尽くそうとする パラグアイからの亡命者ホルヘとの恋愛を軸に、 リアルに酷く描かれた「家族愛」の物語。 マギー、はっきり言ってただのバカ母に見えなくもありませんが、 一応、杓子定規な官僚主義を批判する意図ももってつくったようです。 個人的には、余りお勧めではありませんが、 一応、参考までに。
また、“Ladybird,Ladybird”の中のフレーズ Fly Away Home(おうちへ飛んでお帰り)をタイトルにしたのが 1996年『グース(邦題)』です。 グース(カナダガン)の孵化から巣立ちまで面倒を見る 少女(アナ・パキン)の物語だけに、 文字通り“マザーグース”ですね。 (アメリカ/キャロル・バラード監督)
Ladybird, Ladybird, Fly away home, Your house is on fire And your children all gone ; All except one And that's little Ann And she has crept under The warming pan.
オール・ザ・キングズ・メン All the King's Men 1949年アメリカ ロバート・ロッセン監督 善良で慈悲深かった男が、 政治家として成り上がっていく中で、 どんどん悪に染まっていく過程と、 それを追う新聞記者、そしてその恋人の物語。 タイトルは、 ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』に登場する 卵男としておなじみのHumpty Dumptyの一節をとったもので、 「王様の兵隊全部」といったところでしょうか。 塀から落ちて壊れてしまったハンプティ・ダンプティの姿を、 失墜した政治家の信用に重ね合わせたようです。
なお、このKing'sをもじってPresident'sとした All the President's Men 『大統領の陰謀』という映画もありました。 ニクソン大統領のウォーターゲート事件を題材にしたものです。 (1976年/アメリカ/アラン・J・パクラ監督)
Humpty Dumpty sat on a wall, Humpty Dumpty had a great fall, All the king's horses, All the king's men Couldn't put Humpty together again.
カッコーの巣の上で One Flew Over the Cuckoo's Nest 1976年アメリカ ミロス・フォアマン監督 ケン・ケーシーの同名の小説が原作の、 精神病院を舞台にした作品ですが、 この原題は、マザーグースの数え歌 “One,two,three,four,five,six,seven”の一節なのだとか。 強制労働を逃れるために、精神病のふりをして まんまと精神病院に入る主人公(ジャック・ニコルソン)の 自由を求める姿を描いています。 ニコルソンの怪演は、「見なくてもわかる」って気もしますが、 彼とことごとく対立するナースを演じた ルイーズ・フレッチャーも、凄まじさではひけをとりません。 2人仲よく、その年のアカデミー賞主演部門を受賞しました。
営巣をしないことで知られているカッコーなのに、 なんで「巣」なの?という疑問も、 例えば日本のわらべ歌「かごめかごめ」にしばしば登場する 間尺に合わない箇所を思い浮かべると、 何となく納得がいくかもしれませんね。 (「夜明けの晩に」とか「後ろの正面」とか) ちょっと強引ですけど。
One, two, three, four, five, six, seven, All good children go to heaven, Some fly east, Some fly west, Some fly over the cuckoo's nest.
すみれは、ブルー Violets are Blue 1986年アメリカ ジャック・フィスク監督 すみません…じつはこれ、見ていないのです。 シシー・スペイセクとケヴィン・クラインが共演の メロドラマとのこと。 原題は、“Roses are red”の一節です。 バレンタインカードに添える言葉としておなじみで、 高校の英語の教科書などにも載っていましたっけ。 短いので、全文引用しますと、 Roses are red, Violets are blue, Sugar is sweet, So are you. となります。 赤いバラが情熱、青いスミレが誠実さ、 甘い砂糖が(恋の)甘美さをあらわしているとか。 この歌自体は、多くの映画の中に 少々のもじりを加えつつ、さりげなく登場しているようです。
2003年05月17日(土) |
I love ペッカー |
I love ペッカー Pecker 1998年アメリカ ジョン・ウォーターズ監督
ここのところ、 やれクスリだ、ヒルトン姉妹との御乱行だのと どうもいい噂を聞かないエドワード・ファーロングですが、 この映画では、とっても愛すべきカメラ小僧を演じていました。
食べ物をつっつく癖があるため、 “ペッカー”と呼ばれている少年(ファーロング)は、 母親にもらったカメラで、身の回りの人々を撮るのが好きです。 一癖も二癖もある家族を初め、 万引き癖のある親友マット(ブレンダン・セクストン三世)や コインランドリーで熱心に働く 恋人シェリー(クリスティーナ・リッチー)、 その他いろいろ、被写体には事欠きません。
撮りたいから撮る、というだけの、 特に技巧的にどうの、 思想的にどうのという写真ではないわけですが、 その「虚心さ」がよかったのか、 バイト先のアイスクリームショップに面白半分に飾ったところ、 ニューヨークの業界人(リリー・テイラー)の目にとまります。 以後、その稚拙ささえも、 常に新しいものを求めるかの大都会で大受けし、 一躍、時代の寵児になりかけるのですが、 だんだんにいろいろなバランスが崩れ始め、 恋人シェリーからも見限られそうになります。 そこでペッカーが出した結論は?
いきなり何かで有名になっちゃって、 生活環境が変わり、いろいろなものが狂ってしまうというのは 映画や小説のモチーフとして、結構よくあるものでしょう。 が、この映画を撮ったのは、 あのグレート変態監督のJ.ウォーターズですからして、 当然、極端から極端に走るような、 見ていて飽きない展開になります。 多彩な登場人物を見ているだけでも飽きません。
ウォーターズは自分の故郷ボルティモアを舞台にして 名作・珍作・怪作の数々を手がけてきましたが、 これもその、ボルティモア・ノスタルジーを感じさせる1本です。 一服盛られていい気持ち〜、みたいな状態を味わいたいときに ぜひともお勧め。
2003年05月14日(水) |
ベイビー・イッツ・ユー |
ベイビー・イッツ・ユー Baby, It's You 1983年アメリカ ジョン・セイルズ監督
1980年代、日本では「レトロブーム」がありました。 いわば懐古趣味というやつで、 絶対に「その当時」を知らないような若者が、 大昔のファッションや音楽をもてはやしていました。 だから、50〜60年代のヒット曲群である いわゆるオールディーズと呼ばれる音楽も ワンクッション置いて、「80年代によく聞いた」という方が 多いのではないでしょうか。 (1968年生まれの私もその1人ではありますが)
そんな頃の、アメリカでのムーブメントは 正確には知りませんが、 「オールディーズがモチーフになった映画」 というのがなぜか多くつくられていたことはよく覚えています。 ※『スタンド・バイ・ミー』『ペギー・スーの結婚』 『グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー』『モナリザ』などなど
本日御紹介する『ベイビー…』もその1つで、 1961年、女性4人組シレルズ(シュレルズ)が 不実な恋人への思いを切なく歌った同名の曲をヒットさせました。 …なのですが、実はビートルズのカヴァーの方が ずっと有名かもしれません。 でも、女性ヴォーカルで聞いた方がぐっと迫るものがあると 個人的には思います。
言っちゃナンですが、なんてことない話です。 舞台は1960年代のアメリカ・ニュージャージー。 イタリア系労働者階級の少年シーク(ヴィンセント・スパーノ)は 同じ学校に通うユダヤ系のお嬢様ジル(ロザンナ・アークェット)に 一目惚れし、イタリア男の押しの強さでアプローチします。 「イエス・キリストとフランク・シナトラを崇拝する」という彼は、 歌手を夢見ていました。
周囲の好意的とは言い難い目も気にせず、 それなりに幼い愛を育んでいきますが、 やがて高校を卒業し、ジルが女子大へ進学すると、 2人の仲はギクシャクし始めます。 ジルは大学の仲間に、 シークのことを「マヌケな昔の男」として 強がって露悪的にしゃべるようになりますが、 でも、それは果たしてまことの本心なのか、 それとも、「つくられた本心」なのか……? シークは歌手への夢を捨てず、 ジルへの思いもまだ強く持ったままでした。
ロザンナ・アークェットが、 イカニモなJAP(ユダヤ系アメリカ人のお嬢様)を好演していますが、 未だに実年齢10歳も年下の人と「元同級生」や「夫婦」を演じる彼女は、 『微笑みをもう一度』でサンドラ・プロックの元同級生、 『隣のヒットマン』でマシュー・ペリーの妻、など この当時から、3つ年下君と恋人同志を演じていたのですね。 ちなみに、彼女自身は1959年生まれ、 スパーノは1962年生まれ めちゃくちゃ若く見えるというわけでもないのですが、 あどけなさと色気が同居したコケティッシュな雰囲気に、 ああ、これは一目惚れするわ……と思わせるだけの 説得力はありました。
対するスパーノは、この映画の後、 『グッドモーニング・バビロン』(1987年)で注目されますが、 情熱的な黒髪・黒い瞳が印象に残る どっから見てもラテンのオトコという感じの男前で、 こんな彼の口から出る「フランク・シナトラ」の名前には、 独特の雰囲気さえありました。 実際、映画のタイトルが『ベイビー…』でありながら、 見終わった後に最も心に残っている曲はというと、 シナトラの『夜のストレンジャー』であることを否定できません。 いい役者だと思うのですが、 最近、その活躍を日本では見ることができないのが 非常に残念です(はっきり言ってファンでした)。
5年後、10年後の状況を想像したとき、 幸せな家庭を築いて、 よき小市民としてうまくやっているということが 何とも想像しにくいカップルではあります。 それでも、確実に愛し合っていた時代があって、 また、それを2人とも一生忘れないんだろうな、と思わせる、 古い傷跡にも似た幼い恋愛が、 甘く切なく描かれた好編でした。 それにしても、20歳過ぎた2人が高校生を演じている映画で 「幼い」という言葉を使うのは抵抗ありますな…
あ、それでもって、何故本日の映画がコレかといいますと、 1998年5月14日、フランク・シナトラの命日なのでした。
2003年05月10日(土) |
カントリー・ベアーズ |
カントリー・ベアーズ The Country Bears 2002年アメリカ ピーター・ヘイスティングス監督
現在公開中…と言いたいところですが、 実は、当地では昨日までの上映だったものを 駆け込みで見てきた次第です。 ディズニー映画とは思えないほど冷たく扱われていて、 多分、全国的にも不入りなんだろうなぁと思われますが、 これがどうしてどうして、なかなかの映画なのです。
子熊のベアリー(声・H.J.オスメント)は、 森の中で保護され、バリントン家の一員になりましたが、 自分が家族の誰にも似ていないことに疑問を持ちます。 (まあ、バリントン一家は人間の一家なので、 当然といえば当然なのですが…) 兄デクスター(デックス)が、ちょっとした意地悪心から 「お前は養子だ」と、事細かに証拠を挙げて説明したため、 それにショックを受けたベアリーは、 本当の家族を見つけるために、家を飛び出してしまいました。
おろおろする両親は、警察に届け出ますが、 事情を聞くためにやってきた保安官ハム&チーツは、 いかにもマヌケそうで、どうもあてになりません。 デックスは、両親の心配ぶりを見て鼻白んでいましたが、 本当は自分なりにベアリーのことを心配していました。
その頃ベアリーは、 大好きな往年のバンド「カントリー・ベアーズ」の ホームグラウンドともいえるホールが 借金が返せず、取り壊しの憂き目に遭っていると知り、 かつてのメンバーを集めてコンサートを開き、 その収益で借金を返そうと奔走していました。 確かに、借金が返せないことは事実でしたが、 銀行家のリード(クリストファー・ウォーケン)が 執拗に取り壊しを実行しようとするのには、 それだけではない事情があるのでした。
さて、何とか駆けずり回って集めたメンバーは、 自分は老いぼれだと卑下したり、 ハチミツジャンキーになって、酒場の床で寝ころんでいたり、 かつての恋人が忘れられずに泣き暮らしていたり、 何かと問題アリでしたが、 旅をする中で、今でも自分たちの音楽を 楽しんでくれる人々の存在を知り、 ベアリーの一途な姿にも感化されて、 だんだんと、自信を戻していきます。 (映画ですからして、当然のようにさまざまな障害は起きますが) 彼らはコンサートを成功させられるでしょうか。 そしてベアリーは、「本当の家族」を見つけられるのか?
なんつうかまあ、『スチュアート・リトル』のノリで始まり、 『スティル・クレイジー』や『あの頃ペニー・レインと』張りの 展開を見せつつ、 ゴキゲンな音楽の数々に乗って、 適度な緩急のついたお話が展開していきます。 多数の有名ミュージシャンの出演も目に楽しいし、 見た後あんまり不愉快な感じが残らないのは、 きょうびの映画としては、かなり貴重ではないかと思うのです。 IMDbの星取りで平均3.3、 などというデータもなくはないのですが、 人の評価が何だというのです! ただの駄作とは言い切れない魅力があります。 ディズニー映画のくせに、作中登場するアニメが ハンナ・バーベラっぽかったりして、 小ネタでも笑わせてくれます。
5月9日はアイスクリームの日です。 1869年、横浜・馬車道通りで 「あいすくりん」が売り出されたことに因むとか。
夏のように気温がじりじりと上がったかと思ったら、 雨がちらついて、気温も低く、なんて日もちらほらあって、 アイスクリームが本当においしく感じる季節は もう少し先かもしれませんが、 この映画の中のアイスクリームが 格別おいしそうだと思ったのは 私だけではありますまい。
至福のとき Happy Times 2000年中国 チャン・イーモウ監督
盲目の少女と、失業中でうらぶれている中年男というと、 チャップリンの『街の灯』あたりも思い起こされますが、 もう少しシビアで、 それでいてもっとあったかい(と個人的には思う) そんな作品でした。
仕事も×、女性にももてない中年男チャオは、 本当はスリムな女性が好きなのに、 見合いで知り合った太った中年女に 「太った女性は温かそうで好きだ」 とおべっかを使い、結婚話をまとめかけます。 しかし、結婚には5万元は必要だと言われ、 とにかく、友人・知人をあてにして金策しますが、 ふだんから寸借の多いチャオは、 その返済すらままならない状態でした。
廃車になったマイクロバスをラブホテルに改装して 貸すという商売も、 その地区の緑化事業にひっかかって撤去され、 ただでさえ御難続きだというのに、 結婚相手の女性には盲目の継子ウー・インがいて、 彼女の就職の世話をしてほしいと言われてしまいます。
自分のことをまず何とかしろよ!と突っ込む間もなく、 マッサージが得意だというウー・インのため、 閉鎖された工場を、 さもホテルのマッサージ室であるかのように装い、 知人たちに「客」に成り済ましてもらって ウー・インに仕事をさせ、チップを稼がせるチャオでしたが、 そもそもがカラッケツですから、すぐにお金は底を尽きます。
ウー・インには、自分を捨てた実父がいますが、 目を治し、その父を探すのが夢でした。 彼女がヤケを起こして去ってしまわないようにと チャオたちは、お金がなくなった後も、 紙幣大に切った紙をウー・インに渡すことで取り繕い、 彼女をそばに置いて見守ろうとするのですが……。
こんなにベタな展開も珍しいというほどにベタな、 何とも泥臭い人情喜劇ではあるのですが、 しゃらくさく先を読みながらも、泣かされてしまいました。 人間の真の善意というものを、特に意識しなくても ふかぁくふかぁく考えさせられてしまうと思います。
『初恋のきた道』でチャン・ツィーイーを 掟破りなほどに魅力的に撮ったチャン・イーモウは、 この映画では、ドン・ジエという美少女を 見せつけてくれました。 彼女の「小生意気な薄幸の美少女」ぶりは最高です。
ドン・ジエ扮するウー・インは、 ハーゲンダッツのアイスクリームを食べようとしたとき、 継母に取り上げられてしまいますが、 チップがたくさんもらえた日(まだ本物のお金) 嬉しそうに「私がごちそうするわ」と チャオにもアイスクリームを振る舞おうとします。 アイスクリーム、本当は好物だったんですね。 好物と言えるほど、食べたことがあるかどうかわかりませんが…。
ちなみに、作中登場するハーゲンダッツのショップでは、 一番小さいサイズ(85グラム)が25元で、 日本円に換算すると、約350円見当とのこと。 チャオがバラ1本が2元と聞いて「高い」と言うシーンがありましたが、 日本人の感覚だと、 ハーゲンダッツの最小サイズとバラ1本がほぼ一緒か、 あるいはバラが少し高いくらいでしょうか。 所得水準の違いを考えると なおさら高価であることがわかります。
2003年05月08日(木) |
フランダースの犬(アニメ) |
5月8日は、長野県岡谷市が制定した 童画の日です。 岡谷市ゆかりの画家で、 イルフ童画館※でも知られる武井武雄氏の展覧会が、 1925年の今日、東京・銀座で開催されたことに因むとか。 ※この何語かな?と思わせる不思議な響きのある「イルフ」は、「古い (フルイ)」をひっくり返したものだとか。
そこで、こんな映画はどうでしょうか。
フランダースの犬 A Dog of Flanders 1997年日本 黒田昌郎監督
1999年、アメリカで実写映画化もされていますが、 そちらは見ていないということと、 比べるまでもなく、このアニメの方が ずっと日本人の心をくすぐるだろうと思われます。 (しかしっ、IMDbで検索して、興味深いデータを得ました。 なんと、主人公ネロと仲良しさんだったアロアの母アンナ・コゼツを あの往年の『チャーリーズ・エンジェル』でもある シェリル・ラッドが演じたそうです)
最愛の祖父との貧しい生活の中でも、 絵を描くことが好きで、優しい心を忘れないネロ少年は、 ある日、金物の行商人に虐げられて捨てられた犬を保護し、 「パトラッシュ」と名づけます。 が、犬が元気を取り戻したことを知った金物屋が、 犬の「代金」として大金をふっかけてきたので、 祖父はその支払いのために、老体に鞭打って働くようになり、 とうとう命を落としてしまいました。 ネロは祖父亡き後、1人で生きていかざるを得なくなり、 もともと才能のあった絵に望みを託して、 奨学金のもらえる画学生になるために あるコンクールに出品するのですが……
ネロは、村の大地主コゼツの娘アロアと大の仲よしです。 コゼツの妻アンナもネロの理解者でしたが、 コゼツ本人は、目上であるネロの祖父に敬意を表しつつも、 アロアがネロと仲よくすることには、いい顔をしません。 自分の息子がアロアと仲よくなれば(逆玉狙い?)いいなあという下心もあり、 平生からコゼツにおべっかを使っていた ハンス(ネロの家の大家)の告げ口を信用し、 ネロを窮地へと追いやってしまうという、 「娘好き好きの愚かで軽率な父親」でもありました。
賢くてかわいそうな犬と健気な少年の絡みというだけでも、 ツボだという方はいらっしゃいましょう。 ちょっとしたボタンのかけ違いで生まれた悲劇が 胸を刺すようでした。 オールドファン※としては、冒頭のシーンから泣くなど、 (見れば理由がわかると思います) かなり「飛ばして」しまったせいか、 途中は結構冷静に見ることができましたが、 それでも、ポイントポイントで「来ました」。 一番印象に残っていたのは、 劇場で斜め前に座っていた 明るい茶髪&キーヤンの装いのカップルが 肩を寄せ、震えているのが涙でにじんで見えたことです。
※アニメ番組『世界名作劇場』の枠で 1975年の1年間、CX系で日曜日の夜7時半から放送されていました。 実は「オールドファン」と言いつつ、本放送時には、 その翌年の『母をたずねて三千里』や 翌々年の『あらいぐまラスカル』の方が ずっと感情移入して見ていたのですが……
2003年05月04日(日) |
映画よろず屋週報 Vol49 第二のオードリー・ヘップバーン(いろんな意味で) |
*****映画よろず屋週報 Vol49 2003.5.4*******************
1929年5月4日、 ベルギーはブリュッセルにて オードリー・ヘップバーンが生まれました。 1993年1月20日、惜しまれつつ世を去ったことが 記憶に新しい…と言いたいところですが、 もうざっと10年も前なのですね。
そこで、本日は、 「第二のオードリー」と言われた女優、 オードリーっぽい役を演じた女優、 (リメイク等も) まあ、そのあたりを いろいろひっくるめて御紹介したいと思います。
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ジュリア・ロバーツ Julia Roberts 1967年10月28日生まれ 『マイ・フェア・レディ』的な映画 『プリティ・ウーマン』での大ブレイクもあり、 この人に「第二のオードリー」を期待した(している)人は 結構多かったようですね。 日本人の美意識の規格からすると、大胆過ぎるというか、 もうちょっとその……という気もしますが、 いい女優さんではあると思います。 ゴージャスだし、かわいらしい面もあるし。 また、社会活動に熱心なところも オードリーを彷彿とさせるゆえんではないでしょうか。 『ミスティック・ピザ』『マグノリアの花たち』 『グッドナイト・ムーン』などを、 個人的にはお勧めします。
<>ナタリー・ポートマン Natalie Portman 1981年6月9日生まれ まだまだ「過ぎる」がつくほど若いものの、 キャリアの積み方がなかなか渋いし、 年齢には似つかわしくないほどの気品があり、 顔のタイプがオードリーに似ている気がします。 また、イスラエル国籍でヘブライ語も話せるという 自分のルーツを生かした 『アンネの日記』の舞台出演などは、 その昔、アンネの父オットー・フランクをして アンネ役での映画出演を請われたものの、 レジスタンス活動をしていた頃の辛い記憶ゆえに断ったという オードリーのエピソードを思い起こさせます。 (しかし、オードリーの当時の年齢を考えると、 O.フランクも、よく頼んだなあという気もしますが、 年齢よりも、人間としての経験や資質を重視したのでしょう) 『世界中がアイ・ラヴ・ユー』『あなたのために』などでの彼女が 特にかわいいと思います。
ジュリア・オーモンド Julia Ormond 1965年1月5日生まれ この人の場合、「なるはずだった」が正解かもしれません。 というか、名前だけで「ああ、あの人」と思い当たった人は、 世間的に見ると、いわゆる映画オタクよばわりされるかも。 (それの何が悪い!とも思いますが) アンソニー・ホプキンス、ブラッド・ピットの出演で話題となった 『レジェンド・オブ・フォール』(1994年)出演の後、 オードリーが54年に出演した『麗しのサブリナ』のリメーク版 『サブリナ』(1996年)の主演で話題に…なり損ないました。 アレンジの仕方など、決して悪い映画ではないのですが…。 醜いわけではないけれど、いまひとつ女優として華がないというか、 決め手に欠けるところが気の毒です。
オドレィ・トートゥー(オードリー・トートゥー) Audrey Tautou 1978年8月9日生まれ 名前からして「オードリー」ですが、 表情や声のニュアンスが似ています。 日本では、エステティックサロンが舞台の 『ビーナス・ビューティー』で初お目見え(多分)の後、 マニアックな配給会社の バイヤーさんの勘違い※で買いつけられたという いわくつきの作品『アメリ』で俄然注目されました。 近作は『愛してる…愛してない…』 ※結構有名な話のようですが、 マニアックなキワモノ映画の配給で知られる アルバトロス・フィルムのバイヤー氏が、 『アメリ』の監督ジャン・ピエール・ジュネの前作品 『デリカテッセン』『ロストワールド』などの傾向から、 『アメリ』をホラー映画か何かと勘違いして買いつけたことと、 アルバトロスの目にとまったため、他の配給会社が引いたことで、 あのひとり勝ちの大ヒットにつながったとか。 何が幸いするか、わかりませんね〜。
ジェニファー・ラブ・ヒューイット Jennifer Love Hewitt 1979年2月21日生まれ かわい子ちゃん、という言葉がぴったりな 愛嬌のある美人タイプですが、 オードリーの伝記ドラマ 『オードリー・ヘップバーン物語』に主演しました。 何分、ファンというより信奉者の多い オードリー役を演じたということで、 どうしてもバッシングには遭ったようですが、 スチールなどを見ると、なかなかルックスは いいところに迫っている気がします。 (残念ながら、私自身は本編は見ておりません) 一時、ホラーチックな青春ドラマが ちょっとしたブームに見えていた時期、 『ラストサマー』(1997)に出演し、人気を博しました。 また、その後の青春映画に影響を与えたとも言われている 隠れた傑作(日本未公開なので)『待ちきれなくて…』や、 シガーニー・ウィーバーとセクシーな親子詐欺師を演じた 『ハートブレイカー』などに出演しています。 近作は、ジャッキー・チェンと共演の『タキシード』
シカゴ Chicago 2002年アメリカ ロブ・マーシャル監督
お恥ずかしい話ですが、 私が住む福島県郡山市は、 「東北のシカゴ」の異名をとることがございます。 というのも、マル暴関係の方が 町の規模の割に多くお住まい(らしい)であることと、 結構物騒な事件が多く起こることに 起因しているそうですが、 最近は余り耳にしません(異名の方をね)。
私自身は、特に映画をいっぱい見るようになってからは、 ジョン・ヒューズの息がかかった青春映画とか、 チャーミングなラブコメディ『あなたが寝てる間に…』の 舞台になったこととか、 あるいはコラムニストのボブ・グリーンの ルーツがある町であることとか、 シカゴといえば、そこそこプラスのイメージで見てきました。 (そりゃ、アル・カポネの『アンタッチャブル』とかもありますが)
……といったこととは全く無関係に、 2002年度のアカデミー賞レースで 作品賞、助演女優賞などを受賞したのは、 犯罪も娯楽も何でもありの1920年代のシカゴを舞台にした、 そのものずばりのタイトル『シカゴ』でした。
美しく高慢ちきなショーガールの ヴェルマ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、 仕事のパートナーでもある妹のヴェロニカが マネージャーでもある自分の夫と情を通じたのに逆上し、 どすんと殺っちまいました。
一方、ショーガールに憧れる 人妻ロキシー(レニー・ゼルウィガー)は、 家具セールスの男と不倫関係にありましたが、 この男が、ショービズの世界にコネがあると だましていたことに腹を立て、 カッとなって射殺してしまいました。 最初はロキシーの夫エイモス(ジョン・C.ライリー)が 罪をかぶろうと画策しますが、 何しろ、どちらもあんまりオツムがよろしくないので、 すぐにうそがばれてしまいました。
ヴェルマとロキシーは、 後に同じ刑務所で顔を合わせます。 2人とも、女性被告人を無罪にすることにかけては定評のある 悪徳弁護士ビリー(リチャード・ギア)に依頼し、 何とか自由の身になって、 ついでに「人殺し」の自分という境遇を ショービズに生かして返り咲くことを考えます。 つまり、2人とも、人を殺してしまったことについて 微塵も反省や後悔を感じていない点で 共通していました。 そういう2人なので、当然嫌い合っています。 そして、ビリーはビリーで、 (この2人を含め)いい金づるたる女たちをダシに、 金儲けと売名に精を出しているようにさえ見えます。 醜い足の引っ張り合いの末、 最後に笑ったのは誰でしょうか?
ゼタ=ジョーンズのすごみは芸術的だし、 ゼルウィガーは、まんまマリリン・モンローみたいな コケティッシュな感じが全くイヤミがないし、 リチャード・ギアの、下手になった ナット“キング”コールみたいな歌声も悪くなく、 ジョン・C.ライリーの情けない男ぶりも、 いつもながらお見事でした。 また、出番こそ少ないものの、 『チャーリーズ・エンジェル』や 『アリー・マクビール』でもおなじみの 東洋系美女ルーシー・リューも、 インパクトある演技を見せています。
舞台ミュージカルの映画化とのことで、 生きのいい音楽とダンスの雨あられなので、 ミュージカル方面はどうも苦手という方には勧められないものの、 理屈抜きに楽しめる、非常にカラフルな作品ではあります。 というか、理屈で考え出すと、 人を殺めるということを余りにも軽く扱っているため、 道義的にどうなんだろうと考え込んでしまう可能性もあるので、 「何も考えないで楽しむ」のが一番かと思います。
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