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2002年09月30日(月) ギリーは首ったけ

本日9月30日は、1980年に日本クレーン協会が制定した
「クレーンの日」だそうです。
そのクレーンの綴りはCrane(鶴の意味)ですが、
日本の映画雑誌等で、時々姓が「クレーン」と表記されている
最近人気の美丈夫若手アクターを思い出しました。
彼の名前はChris Kleinです。
(多分、クリス・クライン
表記されているものの方が多いと思いますが)

ギリーは首ったけ Say It Isn't So

2001年アメリカ 原題直訳「そうじゃないと言って」
ビデオ&DVD あり(FOX ビクターエンタティンメント)
製作
ボビー&ピーター・ファレリー/ブラッドリー・トーマス
監督
ジェームズ・B・ロジャーズ
脚本
ピーター・ゴールク/ジェリー・スワロー


監督は、『アメリカン・サマー・ストーリー』
(『アメリカン・パイ』の続編)なども撮った人ですが、
製作に『メリーは首ったけ』でおなじみの
ファレリー兄弟が名を連ね、
そんな関係もあって、この邦題なのでしょう。
日本未公開映画ながら、ビデオとDVDで
なかなかの人気を博しているようです。
原題直訳で「そうじゃないと言って」みたいな感じでも
意味深長でよかったろうにと、個人的には思いますが。

さて、キアヌ・リーブス似のクリス・クレーン君は、
ギルバート(ギリー)・ノーブルという名の
親に捨てられたトラウマを抱える青年を演じています。
動物保護の仕事をしていますが、
たまに仕事仲間の家に食事に招かれる程度で、
深いつき合いの友人も恋人もなく、孤独に生きていました。
が、ある日、美しいけれど腕は最悪の理容師
ジョー(ヘザー・グレアム)を見初め、
彼女に髪をいじってもらったのがきっかけで接近し、
結婚まで考える仲になるのですが、
ジョーは、以前住んでいた街での
恋人との別れで傷ついていました。
けれども、ギリーのひたむきさに打たれ、
ジョーは彼のプロポーズを受け入れるのですが、
ジョーの母(サリー・フィールド)が、
2人は生き別れの実の姉弟であると言い出して……

大筋を書くと、おっとり始まった微笑ましい恋愛が、
悲恋へとシフトするような作品だと勘違いされそうですが、
何しろあのファレリー兄弟がかんでいるくらいですから、
そんなことはあり得ません。
けれども、そのハチャメチャさをつまびらかにしたところで、
この映画の魅力は、
実際に見ないと判らないと思われますので、
「大体こういう感じのプロットですよー」
というところだけを書いてみました。

大昔の『ノーマ・レイ』はともかくとして、
『マグノリアの花たち』から『フォレスト・ガンプ』まで、
強く優しい母親像にぴったりだったサリー・フィールドが、
この映画では、『あなたのために』に続き、
派手な装いで私利私欲ばかり考えるバカ母を
巧みに演じています。
運命に翻弄されそうになりながら、
愛する人を何とか手に入れようとするクリス君の姿は
非常に清々しいものでしたが、
個人的には、ヘザー嬢の
かわいいH系コメディエンヌとしての持ち味が
遺憾なく発揮された好編として記憶したいところです。
(特に、ラストシーンでの彼女の「手つき」に御注目を!)

それから、
ちょっとネタバレにひっかかる部分もありそうですが、
この映画と『シリアル・ママ』に共通して、
ちょっとだけ出演していた某女優、
そんなにいい女かぁ?といつ見ても思います。
アメリカ人の美意識というやつでしょうが、何とも…
(確かに、56という年齢を考えるとスゴイものがあるし、
妖艶だけれど)
ちなみに、彼女スザンヌ・ソマーズは、
活動がTV中心らしく、
日本では余りなじみのない人のようです。
唯一、「愛情の樹/悲しみを乗り越えて」という
映画の情報もゲットしましたが (原題No Laughing Matter)、
これももともとはテレビ映画だったようで、
日本でも未公開ビデオリリースの格好だったかもしれません。
こう言ってはなんですが……ゆるっ。


2002年09月29日(日) 映画よろず屋週報 Vol25 「映画・甘い誘惑」

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特集「映画・甘い誘惑」

本日9月29日は「洋菓子の日」だそうです。
(由来は不明……無責任で済みません〜)

そこで、映画の中に登場したお菓子に注目して集めてみました。

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■ケーキ■
さよならゲーム Bull Durham

1988年アメリカ ロン・シェルトン監督

マグノリアの花たち Steel Magnolias

1989年アメリカ ハーバート・ロス監督

上記2作品には、
それぞれユニークなウェディングケーキが登場しました。

宋家の三姉妹 The Soong Sisters
1997年 香港・日本合作 メイベル・チャン監督

十五夜を月餅(ムーンケーキ)でお祝いするシーンがあります。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ
Once Upon a Time in America
1984年アメリカ セルジオ・レオーネ監督

「お願いすればやらせてくれる」ぽっちゃり少女の好物は、
クリームたっぷりのシャルロットケーキでしたっけ。

■クレーム・ブリュレ■
アメリ Le fabuleux destin d'Amelie Poulain
2001年フランス ジャン・ピエール・ジュネ監督

あのうわさのクレーム・ブリュレ、
その後、どなたか召し上がりましたか?

ベスト・フレンズ・ウェディング My Best Friend's Wedding
1997年アメリカ P.J.ホーガン監督

料理ライターのジュリア・ロバーツが、
自分のかつての恋人ダーモット・マルロニーがあきらめられず、
彼の婚約者で非の打ちどころのないお嬢様キャメロン・ディアスに、
「高級ブリュレより、安物のゼリーを食べたい人だっている」
という例え話をして、
「彼にふさわしいのは私なのよっ」を
アピールするシーンがありました。
ちょっと見苦しい、かも。

■チョコレート■
ショコラ Chocolat

2000年アメリカ ラッセ・ハルストレム監督

チョコレートにチリパウダー!お汁粉の塩みたいなものでしょうか。

生きてこそ Alive

1993年アメリカ フランク・マーシャル監督

甘美なお菓子も、「あの状況」では命の綱でした。

ハリー・ポッターと賢者の石

Harry Potter and the Sorcerer's Stone

2001年アメリカ/イギリス クリス・コロンバス監督
叔母の家で冷遇されて育ったハリーが、
ホグワーツに向かう車中、
車内販売品を「全部ちょうだい」とお金を差し出すシーンが
ナニゲに涙を誘います。ああいうこと、してみたかったんだね。
カエルチョコレートには逃げられてしまったけれど…
(余談ですが、百味ビーンズって召し上がりました?
私はDVD予約特典のをちょっと食べましたが、
最もキワモノ味は「ニンジン」止まりでした。
ほっとしたような、残念なような…)

■ドーナッツ■
或る夜の出来事 It Happened One Night

1934年アメリカ フランク・キャプラ監督
 
ドーナツ(など)をコーヒーにつけて食べる、
いわゆる「ダンク」と呼ばれる食べ方、
決してお行儀がいいとは言えないけれど、
あの映画を見た後には、まねしたくなります。
できたら、手際の悪さをたしなめ、
指南してくれるクラーク・ゲーブル付で!

■アイスクリーム■
ローマの休日 Roman Holiday

1953年アメリカ ウィリアム・ワイラー監督

映画をごらんになった方には、説明不要かと思いますが、
未見の方は、ぜひこの際ごらんくださいませ。

プリティ・プリンセス The Princess Diaries

2001年アメリカ ゲイリー・マーシャル監督

残念ながら、「こらっ、食べ物を粗末にするんじゃないっ」
…と言いたくなるシーンでしたが。

■番外編■
ミッション・インポッシブル Mission: Impossible
1996年アメリカ ブライアン・デ・パルマ監督
 
……「ガム爆弾」が登場!
それにしても「あの人」(某80年代アイドル)の出番があれだけとは。


そのほか、粗筋にさほどかかわらない、
本当に小道具的なお菓子も次々思い出されます。
「あ、『フル・モンティ』『フライド・グリーン・トマト』
に出てくるチョコレートバーって、結構シンボリックだったなぁ」
とかの取りこぼしもありますし…
そんなわけで、また二度、三度組めそうな特集の、第1弾ということで
この辺で失礼いたします。


2002年09月24日(火) プリティ・プリンセス

最近、ビデオショップで、
「プリティ・ピンク」なる勝手な3部作をでっち上げ、
売り出そうとしている商魂たくましいタペストリーをよく見かけますが、
その3作とは(いずれも20世紀フォックス)
近々リリース予定の「キューティー・ブロンド」「愛しのローズマリー」、
そして、旧作ですが「メリーに首ったけ」だそうです。
(『メリー…』に至っては、『…ローズマリー』と抱き合わせで
DVD再発売の予定もあるとか)
『キューティーブロンド』というトンチンカンな邦題をつけておきながら、
(ちなみに原題は“Legally Blonde”、法学生の話ですものね)
今度は「プリティ」で売り出そうというのもよくわかりませんが、
「ピンクの似合うかわいいヒロイン」ならば、
既に16年も前にモリー・リングウォルドがやっているじゃないか!という
(1986年『ブリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』)
ツッコミを差し挟む余地も与えず、やってくれちゃうようです。

プリティといえば、せっかくいい原題があるというのに、
監督が「あの人」だったばかりに、プリティ邦題にされてしまった
こんな映画もあります。

プリティ・プリンセス The Princess Diaries
2001年アメリカ ゲイリー・マーシャル監督


原題直訳すれば、「王女の日記」。
もちろん、映画の中で日記はちょっとしたポイントになっています。
タイトでそれでいてかわいらしく、想像力をかき立てる
いいタイトルではありませんか。
それがなぜか“プリティ”シリーズになってしまったのは、
すべてG.マーシャルの旧作『プリティ・ウーマン』が悪いのです。
Runaway Brideも『プリティ・ブライド』ですしね。
そして、もっと気の毒なのは、妹に当たるペニー・マーシャル監督の
A League of Their Ownまでが『プリティ・リーグ』にされたことです。
(ジュリエット・リュイス主演の『カーラの結婚宣言 The Other Sister』が、
『プリティ・シスター』や『プリティ・ウェディング』じゃなくて本当によかったと思います)


たまたま自分の父親が欧州某国の皇太子だったばかりに、
アメリカ・サンフランシスコの平凡な女子高生ミア(アン・ハサウェイ)が、
その顔も知らぬ父の死後、王位継承権があることを突然突きつけられ、
にわかに王女修行することになる…というさまを
コミカルに見せてくれたこの作品は、
どちらかというと、由緒正しいアメリカ学園映画として見た方が
よりわかりやすいかと思います。よくも悪くも「典型」でした。

ラーメンズの片桐仁もびっくりの、ひっからまったヘアスタイルに、
少なくともおしゃれの意図でかけているとは思えないメガネ、
あどけない、好感の持てる少女ではあるけれど、
プリンセスとしての品格には程遠く、こいつ大丈夫かと思いつつ、
ミアの祖母に当たる女王クラリス(ジュリー・アンドリュース)は、
極秘裏に彼女を磨き上げ、
王女として恥ずかしくないタマに仕立てようとしますが、
意外なところから、彼女の王位継承話が世間にリークされてしまい、
それまで学校でも1,2を争う恥かきっ子だったミアは、
一躍、学園一のアイドルになってしまうのですが……

アン・ハサウェイ自身が、
とってもわかりやすいタイプの「かわいげのある美人顔」なので、
冴えないだのブスだのと言われて、映画を見る側のマナーとして、
「そういうことにしておいてやろう」という気にさえならないのがナンだし、
それ以外にも、ツッコミどころも山ほどある作品ではありますが、
大好きな母親との気楽な生活に満足していたはずのミアが、
王位を継ぐためのお姫様修行を決意するくだりや、
彼女を護衛する保安局長のジョー(ヘクター・エリゾンドー)など、
魅力的な要素もたっぷりありました。
正直言って、初めて見たときは、
「テレビでたくさんだな、こういう話は」と思ったのですが、
今はちょっとニュアンスが違い、
「早くテレビで見たいな。アン・ハサウェイの声、松本梨花とかで」
というふうに思うようになりました。
(実際、ビデオやDVDでは誰だったのでしょうか)
抜群の出来とは言い難いものの、ビデオショップで数カ月ぶりに再会し、
あら、また見てみようかしら?という気にはなりました。

※ヘクター・エリゾンドー
1982年『病院狂時代』の昔から、G.マーシャル映画の常連
……とはいえ、最初はかなり影が薄く、クレジットなしの出演も多いようです。
ジュリア・ロバーツのよきアドバイザーでもあるホテル支配人役の
『プリティ・ウーマン』あたりで辛うじて認知された感じかも。
個人的には、『カーラの結婚宣言』での
ジョバンニ・リビシーの兄貴分(というか父親がわり)みたいな役が
特に印象深かったと思います。


2002年09月22日(日) 映画よろず屋週報 Vol24 「口は災いのもと?」

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特集「口は災いのもと?」

1986年9月22日、時の中曽根首相が、
「アメリカは(黒人とかがいて)知識水準が日本よりも低い」
と発言したことが、非常に物議を醸しました。
その後(27日)心にもない「陳謝」をしたこともまで含め、
日本政治史の恥部と言える出来事でしょう。

そこで、映画スターの舌禍事件に
スポットを当てようかとも思ったのですが、
単なるゴシップだけになってしまいそうなので、
あくまで映画の中の「たった一言」が波紋を広げた例に
注目してみようと思います。

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ブロークダウン・パレス Brokedown Palace
1997年アメリカ ジョナサン・カプラン監督

これは、主演スター自身の舌禍事件にまつわる映画。
主演のクレア・デインズが撮影地のフィリピンについて
「不衛生で悪臭がひどく、人々は何も持っていない。
腕や足のない人も……」などなど、もう言いたい放題で、
随分、国の上層部を怒らせてしまったとか……。
映画自体も、彼女の発言をそのまま受けたような、
タイ(舞台設定)に旅行に来たアメリカ娘の傲慢さが目につく、
余り愉快なものではありませんでした。

パパは、出張中! Otac N'a Sluzbenom Putu
1985年ユーゴスラビア エミール・クストリッツァ監督

50年代、チトー大統領政権下の旧ユーゴスラビア・サラエボで、
主人公マリク少年の父親が、“出張中”なのは、
ほかならぬ父の愛人の不用意な一言のせいでした。
タイトルの持ち味と、子供独特の視点に
ほのぼのしたものを期待すると、いい意味で裏切られる、
苦く重いけれども嫌いになれない1本。

フィッシャーキング The Fisher King
1991年アメリカ テリー・ギリアム監督

ラジオの人気DJジェフ・ブリッジズは、番組中に過激な発言をし、
それが無差別殺人事件の引き金となってしまいました。

あなたが寝てる間に… While You Were Sleeping
1995年アメリカ ジョン・タートルトーブ監督

どんな願望を持とうが、人に迷惑をかけない限り自由ですが、
口に出すのはやはり差し控えた方がよかろう…
というのがよくわかる映画ですが、何しろ映画ですから、
災い転じて……になるのも楽しいところです。

ジーンズ 世界は二人のために Jeans
1998年 インド・アメリカ(英語・タミル語)
シャンカル監督

「ベタベタとはこういうことさ」とキャッチフレーズを打ちたくなる、
御機嫌なインド産ミュージカルラブコメディー。
目的遂行のために口から出まかせを言う無分別な若者は
映画の世界では(現実にも?)よくいますが、
この作品には、孫娘かわいさの余りとんでもない大うそをつく、
愛すべきおばあちゃんが登場します。

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2002年09月20日(金) カルラの歌

9月20日は、
1903年の日本初の路線バス営業(京都)に因み、
1987年に日本バス協会が制定したバスの日だそうです。
じゃ、もうこれしかありません(独断)。

カルラの歌 Carla's Song
1996年イギリス ケン・ローチ監督


ロバート・カーライルという役者は、
イギリス人ではありますが、
およそ“ノーブル”というのが演じられそうもない人です。
(コスプレものであっても
泥棒役だったりするし……紳士怪盗だけど)
スコットランドはグラスゴーの
バリバリの労働者階級の出身で、
映画でもそういう役がほとんどですが、
似たような役であっても、存在感はいつもと同じでも、
いつもどこかしら違った魅力を見せてくれる人でもあります。
……というか、ファンなので、つい評価が大甘になりますが。

舞台は1987年のスコットランド。
この映画で、彼はバスの運転手ジョージを演じていました。
気のいい男ですが、勤務ぶりは満点とはいえず、
時にはかなり乱暴な運転もしました。

ある日、無賃乗車でつかまりそうになった
外国人女性・カルラ(オヤンカ・カベサス)をかばいます。
そのことに感謝した彼女は、停職処分になったジョージを
プレゼントを持って訪ねてきました。
それ以来、婚約している女性がいながら、彼女が気になって、
時には運転中のバスを私物化し、
カルラを湖まで連れていったりしました。

カルラはニカラグア出身でした。
ニカラグアという国について、ほとんど知識のないジョージは、
まだ学生である妹に、かの国がどんなに政治的に複雑か
軽いレクチャーを受けたりしているうちに、
国に帰ることになった彼女と行動をともにする決意をしますが…

とにかく、
「おんもに出たカーライル」という風情が新鮮でした。
それまでは、失業者だったり、失業者予備軍だったりで、
(あ、ちなみに、バス私物化等が問題になり、
この映画でもやっぱり仕事をクビになります…)
自分の国、自分の問題で
いっぱいいっぱいという役が多かったけれど、
女性を愛したことがきっかけで、
世界の構成要素の一片に触れ、
驚いたり、おののいたりしている普通の男を
好演していました。

また、環境劣悪なところで暮らしているカルラを見かね、
友人サミー(ゲイリー・ルイス)に、
彼女に部屋を貸すように頼みますが、
気のいいサミーは、
婚約者そっちのけでカルラの世話を焼くジョージを
心配しながらも、
時にはエプロン姿で2人に料理を振る舞ったりもします。
『リトル・ダンサー』では、
「バレエなんて、オカマのすることだ!」と
偏見ギンギンのガンコ親父を演じたルイスですが、
この映画では、エプロン姿を笑われても、
「本物の男はエプロンをするものだ」などと
胸を張ったりします。こういうの、いいなぁ…。
 


2002年09月19日(木) さよならゲーム

9月19日は、俳人/歌人の正岡子規の命日「子規忌」です。
※ほかにも糸瓜忌、獺祭忌などの言い方もあります
正岡子規といえば、野球好きでつとに有名……ということで、
本日は、こちらを御紹介しましょう。

さよならゲーム Bull Durham
1988年アメリカ ロン・シェルトン監督


主演はケビン・コスナーで、
彼と“野球教”信者の女性スーザン・サランドンとの
ロマンスも楽しめる作品ですが、
この頃はまだ、「僕のワイフは白雪姫だったんだ」と
実にシマリなく惚気ていたコスナーは、
サランドンと私生活で騒がれることはなく(多分)、
彼女は結局、
「100万ドルの腕と5セントの脳味噌を持つ投手」
演じたティム・ロビンスの方とくっつきました…とさ。

原題でもあるマイナーリーグのチーム、ブル・ダラム。
ベテランのキャッチャーであるクラッシュ(K.コスナー)は、
新人剛速球投手ヌーク(T.ロビンス)の“お守り”を頼まれました。
ロッカールームで試合前にチームオーナーの娘と一発、みたいな
困ったちゃんではあるものの、腕の方は確かなヌークを、
クラッシュは公私ひっくるめ、渋々面倒を見ます。

そこに、とにかく野球命!で、毎年目をつけた選手の世話をする
アニー(S.サランドン)という女性まで乱入し、
クラッシュがまた、ちょっといい女のアニーを気にするものだから、
奇妙な三角関係になっていきます。

「アメリカで野球を見るのは楽しそうだなー」
と思える1本でもあります。
大スタジアムでなくても、お客さんがそれほど入っていなくても、
アメリカでは、
ベースボールは確実にエンターティンメントなのですね。
改めて書くと、かなりマヌケな感想ですけど。
チームのお抱えのぬいぐるみ氏(あれ、道化だったかな)が、
“ロック・アラウンド・ザ・クロック”に合わせて
おどけて踊るシーンなど、なかなかかわいらしいものでした。

監督ロン・シェルトンといえば、
実話に基づいたストリッパーと老政治家の恋愛を描いた
『ブレイズ』などの作品もあり、
ちょっと枯れた人生を描くのがお得意なようです。
登場人物への愛を感じる優しい描写で、
野球映画の感想としては似つかわしくない
「まったり」「ほっこり」という表現をしたくなるような作品でした。


2002年09月16日(月) 百万長者と結婚する方法

1924年9月16日、女優で著述家でもある
ローレン・バコールが生まれました。
若い頃は、「ザ・ルック」と呼ばれる独特の眼差しの、
クールな美人女優でしたが、
先日、インタビュー番組で見た彼女は(数年前のでしたが)、
お年こそ召していたけれど、変わらず美しく、知性にあふれ、
おまけに非常にお茶目な女性でした。
(最愛の夫ハンフリー・ボガートの物真似なんかしちゃって)

百万長者と結婚する方法
How To Marry A Millionaire
1953年アメリカ ジーン・ネグレスコ監督

原題に「Millionaire」とあるからには、
「百万長者」と訳すしかないのでしょうが、
日本人の感覚だと、「百万=大金持ち」というのは、
大分昔の話ですね。
(もっとも、今やハリウッドスターのギャラも、
テン・ミリオンが当たり前の時代ですが)

ニューヨークを舞台に、
ローレン・バコールマリリン・モンロー
そしてベティ・ベレーブルの無敵美女3人が、
大金持ちとの結婚を夢見るモデルを演じた物語です。

50年代につくられたということを忘れると、
先が読める、よくある話にも感じられますが、
(仲良し3人組という設定からして、
日本の2時間サスペンスドラマの
コミカルバージョンにありそうだし)
いかにも肩の凝らないコメディーで、
3人のキャラクター設定の差異が巧みで、
非常におもしろいと思いました。
奮闘・努力の末、彼女たちがつかまえた
それぞれのMr.Wonderfulは一体どんな輩だったのか、
最後の最後までお楽しみ満載です。
(バコールのプライベートを反映した楽屋落ち的なギャグも、
ほんの1シーンだけですが登場します)

ところで、IMDbで細かいデータを確認いたしましたらば、
キャストの順番で、B.グレーブルが一番先頭でした。
単に映画の役柄の重要性に準拠しているのだと思いますが、
(でも、3人ともそれぞれ魅力的で、重要は重要でしたが)
日本では、3人の中で最もなじみのない女優
なのではないかという気がします。
自分を基準に考えるのは邪道かもしれませんが、
私自身、彼女を映画で見たのは今のところこれ1本です。
あとは、B.グレーブルの「存在」が確認できる映画というと、
1951年という舞台設定のイギリス映画
『あなたがいたら/少女リンダ』の中で、
主人公のリンダ(エミリー・ロイド)が、
男の子に「グレーブルの映画に連れてって」
と逆ナンパするシーンがあったのと、
1953年のビリー・ワイルダー作品『第十七捕虜収容所』で、
収監されている捕虜の1人が、彼女をアイドル視し、
明るいとはいえない収容所生活の“光”として
女神のようにあがめているシークエンスがありました。
……といったところでしょうか。

ところで、本日のキーワードである
ローレン・バコール自身の「名前いじられネタ」というと、
1979年の『リトル・ロマンス』の中で、
ダイアン・レイン扮する少女の名前が“ローレン”だったので、
映画マニアの少年ダニエル(テロニアス・ベルナール)が、
彼女をナンパしようとして、
「僕はハンフリー」と名乗る……というのがありました。
ただし、白状しますと、私はこの映画をまだ見ておりません。
原作だかノベライズ版だかを読んでいて、
そんなシーンがあったのが強く印象にあるので。


2002年09月15日(日) 映画よろず屋週報 Vol23「回想が重要な映画」

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特集「回想が重要な映画」

9月15日は「敬老の日」です。
もともとは「年寄りの日」だったものが改称されたといいますが、
年寄りって、そんなに酷い言葉かなあと思わないでもありません。

それは、ともかく。
映画では、老人が若い頃を回想するシーンが登場するものは
たくさんあります。
老人、とも限らないのですが、
あんまり5歳の子供が3歳の頃を回想するシーンというのは
見たことがありませんし、
やはり、長い人生経験の中で、
意識しなくても脳内タイムトリップできてしまうというのが
映画的には絵になっていいのだと思いますし、
どんな人のどんな人生にも、ドラマがあるのだということが
よくわかります。

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グリーンマイル The Green Mile
1999年アメリカ フランク・ダラボン監督

実は、本日のキーワードを「回想」にしようと思ったのは、
昨晩、この映画をテレビ放映していたことが影響しています。
世界大恐慌の頃、刑務所の看守を務めていた男が、
アステア&ロジャースの古い古い映画『トップハット』を見て、
「何か」を思い出し…というようなシーンがありました。

トト・ザ・ヒーロー Toto Le Heros
1991年ドイツ=フランス=ベルギー 
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督

愛する父の死、ちょっとアブない感情を抱いていた姉のこと、
主人公トマの人生の負の部分すべてにかかわっているような
隣家のアルフレッドへの復讐心は、
老人ホームに入ってからも持続していました…
J.V.ドルマル監督作品なら、
絶対『八日目』よりこっちを推します!

ラストエンペラー The Last Emperor
1987年イタリア=イギリス=中国
ベルナルド・ベルトルッチ監督

中国・清王朝最後の皇帝で、愛新覚羅溥儀の、
利用されるだけ利用されたような、華麗にして空しい人生を
映像美と、意外なほど親しみの持てる視点で描いた、
いろいろ批判はあれど、やはり「傑作」と言いたい1本でした。
溥儀を演じたのはジョン・ローン
当時はある種のアイドルとなりました。

タイタニック Titanic
1997年アメリカ ジェームズ・キャメロン監督

もしもトレジャーハンターが、
タイタニックのお宝を引き揚げようとしていなかったら、
そして、それがテレビで報じられなかったら、
また、それを超高齢のローズ(グロリア・スチュワート)が
見ていなかったら、この映画はありませんでした。
創作とはいえ、導入部からしてドラマチックでした。

フライド・グリーン・トマト Fried Green Tomatoes
1991年アメリカ ジョン・アブネット監督

中年女性エブリン(キャシー・ベイツ)は、
親戚の見舞いのため訪れた老人ホームで、
親戚のニニー(ジェシカ・タンディ)という老婦人と知り合い、
彼女が話す大昔の2人の女性の友情物語に引き込まれました。

チャーリング・クロス街84番地
84 Charing Cross Road

1986年イギリス=アメリカ デビッド・ジョーンズ監督
ニューヨーク在住の初老の作家
ヘレン・ハンフ(アン・バンクロフト)は、
憧れのロンドンへ向かう飛行機の中で隣り合った男性に、
「お仕事で行かれるのですか?」と尋ねられ、
「未完のね」と答えます。
さて、彼女が20年かかって完遂したかった「仕事」とは…?

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ビデオ&DVDリリース情報

9/20                                  
モンスターズ・インク       
2001年アメリカ 
ピーター・ドクター/リー・アンクリッチ/デビッド・シルバーマン監督

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2002年09月14日(土) ラッキーナンバー

私の最近の趣味は、「宝くじのハズレ収集」です。
数字選択式くじが導入されて以来、この日本では、
ウイークデーには必ず何らかの抽選があるという状況ですが、
な〜んの抽選もない土曜日、
宝くじにまつわるブラックコメディーを
御紹介したいと思います。

ラッキーナンバー Lucky Numbers
2000年アメリカ ノーラ・エフロン監督


メグ・ライアンとは「名コンビ」と言いたいほどに縁のある
N.エフロンの監督作品!ということで、
その種の映画としての期待をしてしまうのですが、
実話がベースになっているというこの作品は、
人間としての寛容さを試されるような、
相当ブラックな内容でした。
(そんなわけで?今回はメグの出番はありません)

人気お天気キャスターのラス(ジョン・トラボルタ)は、
ジャグァーで「行きつけのレストラン(ファミレスだけど)」
に乗りつけ、
行った先では、サインを求められれば気さくに応じる、
典型的な愛すべきお調子者です。

しかし、彼は実は、金銭的に大分追い詰められていました。
キャスターの仕事はともかく、
副業でやっているスノーモービルの販売店が、
暖冬の影響を受けて、さっぱり……になってしまい、
差し押さえ勧告を受けていたのです。

何とか金をつくらなきゃ、と考えた彼は、
酒場を経営するギグ(ティム・ロス)という男に、
宝くじでイカサマをやる方法を入れ知恵されますが、
根が小心者なので、ちょっと踏み切れません。
が、そのイカサマの協力者になってくれそうな、
ロット・ガールのクリスタル(リサ・クドロー)に
持ちかけたところ、大乗り気ではありませんか。

そのいかさま自体が褒められた行為ではありませんが、
計画上のちょっとした綻びがどんどん広がり、
悪事が悪事を呼ぶという感じで、
どんどん悪い方に転がっていくさまは、
どこか『ファーゴ』なんかをほうふつとさせます。
本当なら、イカサマの方法とか、どう悪く転がるかも
つまびらかに書きたいところですが、
それはネタバレ以外の何物でもないので、
ぐっとこらえましょう。

一言だけ言えば、
イカサマのやり方には何だか感心してしまって、
ナンバーズやロト6なんかで外れるたびに、
あの方法は本当に有効なんだろうか……とか、
日本にも、
ラスやクリスタルみたいな奴はいるんだろうか…とか、
余計なことを山ほど考えてしまいます。
ただ、こちらのサイトで見る限り、
日本での抽選時には、
クリスタルみたいにけばけばしいロットガールは
存在しないようですが。


2002年09月11日(水) 愛され作戦

2001年9月11日、「すべてここから始まった」みたいな
米国中枢部同時多発テロは、
非常にショッキングなものでした。
世界中の人がそれぞれの思いを抱えながら、
1年過ごしてしまったわけです。

映画産業に関連したことでは、
ことし4月に日本でも公開になった、
ケビン・スペイシー主演の『光の旅人/K−PAX』が、
テロを想起させるようなアクション映画の製作や公開が
中止される中、
傷ついたアメリカ市民の心を癒して気持ちよくヒット、
というエピソードに惹かれました。

が、この映画、実は既に紹介済みです。
最近見たもので、後半だけとはいえ、
びっくりするくらい細部の似た映画があり、
非常にツボにはまったので、
本日はそれを御紹介したいと思います。

愛され作戦 Keiner liebt mich
1994年ドイツ ドリス・ドーリエ監督


ちなみに英語タイトルは“Nobody Loves Me”
フランス映画で、「だれも私を愛さない!」というのがありましたが、
御丁寧にこちらの英語タイトルも、
当然のように全く同じ“Nobody Loves Me”でした

ともあれ、この邦題をつけた人はすばらしいと思います。
インパクトがある上に、全く見当はずれでもありませんでした。
的確かどうかは各人の判断によると思います。

主人公ファニー(マリア・シュレイダー)は、
空港事務員という安定職に就いていますが、
精神的な意味での“自立”を目指し、
「死」に関するサークルに入り、時には棺桶で寝るような
30歳目前の女性です。
彼女の母親は、ハーレクインっぽい小説のライターで、
自身の男性関係も、結構な年齢にもかかわらず、
相当奔放なのが窺えます。

ファニーと同じアパートに、占いなどで生計を立てている
(といっても、家賃を相当滞納しているから、
“立てている”とは言えないかも)
ゲイの黒人男性オルフェオ
ピエール・サヌーシ・ブリス)がおり、
ファニーに、
「運命の恋人はこんな男で、こうすればゲットできる」
とアドバイスしました。
その条件に合致した男は、
たまたまアパートの新しい支配人になった
ローター(ミハイル・フォン・アウ)でした。

そこで、彼女はローターに積極的にアタックするのですが、
彼は結構もてる上に、「独り寝が寂しい」という理由で、
夜毎違う女性をベッドに引っ張り込んでいるような男です。
見ている方としては、彼の人となりに接するうち、
「こいつは違う!」と思うのに時間はかからないのですが、
ついでに「大人のおもちゃみたいな名前…」と思ったのは、
私だけではない!と思いたい

ファニーは、オルフェオの忠言を真っ正直に受け、
健気な努力で彼の心をつかもうとします。
そして、恥ずかしい行為に走ってしまい、結果傷つきますが、
そんな彼女を癒したのは、
ほかならぬオルフェオの優しさでした。
しかし、オルフェオにはある秘密があり……

私が『光の旅人』と似ているな〜感じたのは、
オルフェオと、スペイシーが演じたプロートという男の
キャラ設定でした。
前半は、全くといっていいほど共通項が見出せないのですが、
後半(終盤)、デジャヴに陥ったかと錯覚するほど
似たところが随所に見られました。
かといって、
どちらかを見たからネタバレになるというようなタイプでは
ありませんので、安心して両方ともおすすめできます。

シングルトン(自立した独身者)の女性を描いた映画の常として、
小道具の使い方がおしゃれです。
それでいて<洗練されているというよりも、
ダサかわいい雰囲気もあり、
そんな面だけでも惹かれてしまうかもしれません。
ちなみに、主演のM.シュレイダーが
誰かに似ているなーとずっと思っていたのですが、
80年代を席巻したアイドル、モリー・リングウォルドでした。
ファッションは年相応なのに、
ふとした表情が妙にあどけなくて、
そんなところも、「30歳のいい大人」という設定に
不安定な説得力を持たせていたと思います。
……なんてね。

そうそう、冒頭から使われ、
随所に挿入されていたエディット・ピアフの歌声も、
大変感じがよかったと思います。


2002年09月10日(火) 羅生門

ベネチア国際映画祭のシーズンです。
今回、注目の北野武監督の再度受賞はなかったようですが、
この世界最古の映画祭(1932年開始)と言われるイベントは、
日本人の映画ファンにとっても昔からなじみの深いものでした。
黒澤明監督の「羅生門」、稲垣浩監督の「無法松の一生」、
そして記憶に新しい北野武監督の「HANA-BI」と、
日本勢は、3度のグランプリ(金獅子賞)をゲットしています。

その中で、1951年9月10日、『羅生門』が、
ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したそうです。
では、やっぱり……

羅生門(Rasho-Mon) In the Woods
1950年日本 黒澤明監督


芥川龍之介の『藪の中』を原作として、
“真実なるもの”を見極める困難さや、人間のエゴイズムを
独特の映像美を持って表現した傑作ですが、
芥川といえば、御存じのように、
そのものずばり『羅生門』という作品もあります。
私自身は、『藪の中』は、
なぜか高校の英語の教科書に載っていたものを読みましたが、
『羅生門』は読んでおりません。
映画の中に、“羅生門”なるものは登場しますが、
正直、なぜ『羅生門』っぽさを加味する必要があったのか、
ちょっと理解しかねます。
『藪の中』の、全く同じ事件について違う人間に証言を求めただけで
生じるスリリングさだけで、十分ドラマを感じたものですから。

舞台は平安時代。
大雨の降る羅生門の下で、
杣売りの男(志村喬)、旅法師、下人が、
3日前の不可解な事件について話をしています。

とある藪の中、検非違使(森雅之)が殺され、
盗賊・多襄丸(三船敏郎)が
殺人の容疑者としてとらえられます。
その後の取り調べで、
多襄丸、
亡くなった検非違使の妻・真砂(京マチ子)、
そして、霊媒師の口をかりた検非違使の霊の証言が、
それぞれ全く異なっていたのでした。
1つだけわかることは(非常に乱暴な言い方になりますが)
証言者それぞれの「我が身かわいさ」だけでした。
一体、真実は那辺にあるのでしょう?


ある事件が起こったとしましょう。
容疑者Aを目撃した人が2人いて、仮にB,Cとしますが、
Aについての証言は、それぞれこんな感じでした。

B「帽子をかぶった若い男でした」
C「背が高く、やせ型の若い男で、
 黒い帽子をかぶり、赤い服を着ていました


あなただったら、どちらを信用しますか?

人は、あることについての情報が多いと、
それが真実かどうかの見極めをする前に、
それを信じてしまうきらいがあるといいます。
もちろん、芥川の、あるいは黒澤の言うところは
(注:この場合の“敬称略”は、ある種の敬意です)
もっと深遠なのだとは思いますが、
毎日毎日ひしめき合う情報の中に
身を置いて生きている現代人に対し、
警鐘を鳴らしているようにも思えます。
杣売りの志村喬でなくても、
「わからねぇ、俺にはわからねぇ」
と言いたくなるような状況になったとき、
真実を察知できる鋭敏さがほしいものですが……。


ところで、『藪の中』は、
『MISTY』というタイトルで、日本・香港合作で、
1997年に再び映画化されました。
真砂が天海祐希、検非違使に当たる役を金城武、
多襄丸を豊川悦司という濃ゆい顔合わせですが、
私は見ておりません。
また、こちらは今回あれこれ検索していて初めて知ったのですが、
ポール・ニューマン主演、マーティン・リット監督の
『暴行』なる映画も、
『藪の中』に材をとっているそうで。


2002年09月09日(月) リトル・ニッキー

1966年9月9日、俳優……というより
コメディアンのアダム・サンドラーが生まれました。

リトル・ニッキー Little Nicky
2001年アメリカ スティーブン・ブリル監督


2000年度第20回ゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)の
各部門にノミネートされ、
ことごとく
『バトルフィールド・アース』に負けてしまったという、
「グレートな無冠の駄作」というのが、この作品です。

地獄を統べる偉大な魔王サタン
ハーベイ・カイテル)には、
3人の息子がいました。
狡猾で冷酷な長男エイドリアン
リス・エヴァンス)、
マッチョな切り込み隊長タイプの次男カシアス
トム・リスター・ジュニア)、
そして、ヘヴィメタルが大好きで、
地獄の住人としては余りにも心優しい
ニッキー(アダム・サンドラー)でした。
父親は、この息子たちの誰に王位を譲るべきか考えあぐね、
いつまでも退位することができません。
そんなとき、兄弟のうちの上2人が、
人間界に飛び出し、
ニューヨークの街を地獄にしようと画策します。
残されたパパっ子のニッキーは、
2人の悪さをやめさせようと
人間界へと飛び出していくのですが、
世間知らずもいいところの彼は、何かと失敗しては、
そのたびに“絶命”し、
地獄に逆戻り…を繰り返していました。

それでも、地獄と人間界を行き来する中で、
外見はパッとしないものの優しいバレリー
パトリシア・アークェット)と
いいムードになったり、
地獄界の住人らしい“アブないパフォーマンス”が
ヘヴィメタ好きの青年たちに気に入られ、
尊敬の眼差しを集めたり、
何だか楽しそうな彼でしたが、
肝心の兄たちの暴走は、全く制御できません。
こんなんで、人間界を、そして地獄を救えるのでしょうか?

上に記したキャストだけでも相当豪華ですが、
アメリカではおなじみのコメディアン、
ジョン・ロビッツ、ロドニー・デンジャーフィールド、
ダナ・カービー
といった人たちの出演や、
意外(でもないか)な役で登場する
クエンティン・タランティーノなど、
脇もかなり充実しています。
また、兄弟の中で何故ニッキーだけが
優しい青年になってしまったのか、
その秘密も、おもしろい形で明かされますのでお楽しみに。
(サタンお父様ってば、怖い顔して意外とやりますね〜)

キリスト教が一般的とはいえない日本人にとっては、
悪魔なるものがいまひとつ理解できないので、
悪魔系のホラーは(一応、ホラーコメディー…かな)
根本から理解できないとよく言われますが、
表面をかするだけでも、結構楽しめるものです。
(逆にいえば、それでは笑えないという方は、
たとえ“悪魔なるもの”を理解していたとしても、笑えません)

技術的な面でもかなり金がかかっていますが、
私はそうしたことに余り興味がないので、
「ふ〜ん」と見流してしまいました。
特殊効果等、そちら方面がお好きな方は、
感嘆したり突っ込んだりしながらどうぞ。


2002年09月08日(日) 映画よろず屋週報 Vol22「ニューヨークな映画」

*****映画よろず屋週報 Vol22 2002.9.8*****************

特集「ニューヨークな映画」

本日9月8日は「ニューヨークの日」だそうです。
1626年、オランダの西インド会社がニューアムステルダムを開港し、
1664年にイギリスの支配下に移った時に、
※ヨーク公に因んで名前を「ニューヨーク」に改称したとか。
             ※当時の英国王チャールズ二世の弟

そのニューヨークが舞台となった作品は数多くありますが、
特に印象に残ったもの、舞台としての必然性を感じるものを
ピックアップしたいと思います。

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恋人たちの予感  When Harry Met Sally...
1989年アメリカ ロブ・ライナー監督

「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」「ニューヨークの恋人」と、
メグ・ライアンは本当にNYづいた女優ですが(しかも全部ラブコメ)
特にこの映画は、ニューヨーカーの生活を、四季の移ろいの中で
しっかり見せてくれました……
と偉そうに言い切ろうとしたら、私、「ニューヨークの恋人」未見でした。

ラジオ・デイズ Radio Days
1987年アメリカ ウデイ・アレン監督

NYといえばこの人、という監督の1人がウディ・アレンです。
彼の幼少期の想い出が反映されたこの作品では、
古きよき40年代のNYが、温かに描かれていました。

ラヴソング 甜蜜蜜
Comrades: Almost a Love Story
1997年香港 ピーター・チャン監督

主な舞台は香港ですが、NYも重要な街として登場します。
腐れ縁もまた縁なのだなあということが実感できるラブロマンス。
英語タイトルの「Almost a Love Story」って、なんかいいですね。
今書いていて初めて気づいたのですが……

摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に
The Secret of My Success
1987年アメリカ ハーバート・ロス

父「くだらん街だ」/母「行ったことないくせに…」
田舎の大学を卒業した青年(マイケル・J.フォックス)が
ニューヨークに出てビジネスマンとして成功したい!と言ったとき、
彼の両親の反応は、こんなでした。
まだ若々しく元気だったマイケル・Jが繰り広げる、
かなり正攻法のビジネスコメディーでした。
(恋のお相手ヘレン・スレイターのドレス姿は、
びっくりするほど野暮ったく描かれていたりしますが)

光の旅人/K−PAX
2001年アメリカ イアン・ソフトリー監督

実はこの映画、非常に感動した覚えはあるのですが、
舞台がNYであることは全く意識していませんでした。
けれども、9.11テロの後のアメリカ人の心を癒した映画として、
こういう作品が、NYを舞台に撮られたことについては、
深い意義を感じます。

この「特集」は、再度組む意義が十分ありそうです。

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ビデオ&DVDリリース情報

9/13                                  
ビューティフル・マインド
A Beautiful Mind
2001年アメリカ ロン・ハワード監督


シャンプー台のむこうに Blow Dry
2001年 アメリカ・ドイツ・イギリス        
パディ・プレスナック監督


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2002年09月07日(土) 特集・この映画とこの映画はすごーく似ている

映画を見るとき、皆さんは何を参考にして選びますか?
ひとえに直感という場合もあると思いますが、
雑誌や新聞の専門家評、テレビCM、
あるいはビデオやDVDだったらジャケットの解説を読む等々、
さまざまだと思います。
(このDailymovieもその1つだと
言っていただけたら嬉しいけれど、
欲は張りますまい)

で、そういったものを参考にして、
実際に見てみてがっかりしたという逆効果や、
全く期待しないで(あるいは予備知識なしに)見てみたら、
本当におもしろくてびっくりしたとか、
いろいろなケースがありましょう。

そこで本日は、予備知識だけではわからない、
「見たからこその実感」にこだわって、
「この映画を見ていると、ある別の映画を思い出す」
という作品にスポットを当ててみたいと思います。

そんなわけで、それぞれ2作品以上並べることになりますが、
原則として、製作年度が早い方が上になっています。
(製作年が同じ場合は、日本語題の五十音順)
なお、明らかなリメイクや、
「○○版○○」などのうたい文句が
定着しているものは除外しています。

愛され作戦 Keiner liebt mich
1994年ドイツ ドリス・ドーリエ監督
この森で、天使はバスをおりた The Spitfire Grill
1996年アメリカ リー・デビット・ズロートフ監督
光の旅人 K−PAX
2001年アメリカ・ドイツ イアン・ソフトリー監督

これはちょっと複雑です。
便宜上、上から順番にA,B,Cといたしますが、
AとBには、さして共通項は見出せません。
が、Aは後半の部分でCに近い描写がやたらと見られ、
BとCは、全体のトーンが何となく似ています。
かといって、どれを一番先に見ても、
ネタバレのおそれはほとんどありません。
(そして、それぞれにおすすめ作品です)

ジャニスのOL日記
Janise Beard: 45 Words Per Minute
(ビデオタイトルは「ジャニス・ベアードのOL日記)
1999年イギリス クレア・キルナー監督
アメリ Le fabuleux destin d'Amelie Poulain
2001年フランス ジャン・ピエール・ジュネ監督

ワケありの親、恋に臆病な主人公、しゃれたオブジェの数々、
主人公の思い人はちょっと変人?
(前者はリス・エバンス
後者はマシュー・カソヴィッツ
主人公名がタイトルに含まれているのも共通点ですね。

ジャイアント・ピーチ
James and the Giant Peach
1996年アメリカ ヘンリー・セリック 監督
マチルダ Matilda
1996年アメリカ ダニー・デビート監督
ハリー・ポッターと賢者の石
Harry Potter and the Sorcerer's Stone
2001年アメリカ/イギリス クリス・コロンバス監督

この3編の最大の共通点は、
有名な児童文学作品に材をとっているところですが、
不幸な子供が知恵と勇気で自己実現を果たすというところでも
一致しています。
ちなみに、『ジャイアント・ピーチ』と『マチルダ』は
同じロアルド・ダール原作でした。

マグノリアの花たち Steel Magnolias
1989年アメリカ ハーバート・ロス監督
ブロークン・ハーツ・クラブ
The Broken Hearts Club
2000年アメリカ グレッグ・バランティ監督

これはちょっと番外というか、反則です。
というのも、『ブロークン…』の中で、登場人物の1人の、
自分たちを称して「『マグノリアの花たち』ゲイ版が成り立つ」
という趣旨の台詞がずばり出てくるので。
どちらにせよ、世代を超えた同性たちの愛すべき群像劇です。



2002年09月06日(金) 死への逃避行

ここのところ、テーマがどうも語呂合わせ記念日ばかりなのですが、
今日9月6日も、「ク(9)ロ(6)スワードの日」に因み、
クロスワードパズルが登場する映画を御紹介します。

死への逃避行 Mortelle Randonnee
1983年フランス クロード・ミレール監督

泣きべそ顔の美女イザベル・アジャーニー
七変化が楽しい作品でした。

ミシェル・セロー演じる私立探偵“タカの目”は、
仕事に没頭し、家族に見限られてしまいました。
そんな彼は、ある女性(I..アジャーニー)の身辺調査を依頼されますが、
彼女ことカトリーヌは、その美貌で男性を(時には女性)を魅了し、
さして、それらの人々を、おもしろ半分のように殺していきます。
彼女はターゲットを変えるたびに、
ヘアスタイルをかえ、ファッションをかえ、名前をかえ、
全く違ったタイプの美女として、“タカの目”の前に登場します。

“タカの目”には実は娘がいましたが、
別れた妻が連れていってしまい、
成長ぶりを知らないまま亡くなったことを知ったため、
カトリーヌを「娘が生きていれば、このくらいではないか」
と、縁のなかった愛娘のイメージとダブらせるようになり、
そのうち、仕事というよりは
娘を見守る父親の気持ちになっていました。
一方、カトリーヌがシリアル・キラーになってしまったのも、
不幸な少女時代が反映されていたりします。

作中“タカの目”が、クロスワードパズルをするシーンがあります。
名前は切れ者っぽいけれど、
何となく風采の上がらない探偵だということが、
そのシーンでうまいこと表現されていた気がします。

ところで、イザベルの七変化ですが、
ウェーブのかかった金髪で“ジタン”を吸ういい女風、
黒髪をショートにしたキュートタイプ、
ちょっぴり野暮ったい感じのブラウンヘア、と、
本当に多彩で、見ていて飽きません。
ああ、美人は何やっても絵になるなあと、
ひたすら彼女の魅力に酔うのも一興です。

フランス映画独特のムード(言葉だけでも芝居がかっている!)と、
不思議にヒューマンな温かさが同居した、
ちょっといい感じのサスペンス映画です。


2002年09月05日(木) 幸福の黄色いハンカチ

9月5日はクリーンコールデー……というわけで、
本日は、日本の炭坑町がちょっぴりですが登場するこの映画を。

幸福の黄色いハンカチ
The Yellow Handkerchief of Happiness
1977年日本 山田洋次監督


日本を舞台にした短編集『東京スケッチブック』などでも知られる
アメリカ人作家ピート・ハミルのコラムに材を得た、
心温まるロードムービーです。

退職金をはたいて買った車で北海道一人旅としゃれこんだ
若くて調子のいい欽也(武田鉄矢)は、旅の途中、
失恋して傷心旅行中の朱美(桃井かおり)、
それから、どこかワケアリ風の島勇作(高倉健)と知り合い、
旅は道連れの言葉どおり、3人で北海道を見て歩くことになります。

それぞれ個性の違う3人は、いがみ合うこともありましたが、
だんだんに打ち解け、そのうち勇作の秘密を知ることになります。
彼は実は、もとは夕張の炭鉱夫で、
光枝(倍賞千恵子)という愛妻もいましたが、
人をあやめた罪で刑務所に入り、
そのお務めから解放されたばかりでした。
彼が刑務所から光枝に送った手紙には、
もし自分を待っていてくれるのならば、
物干し竿に黄色いハンカチを干してくれと書いていましたが、
それを確かめにいく勇気を出せずにいたのでした。
何とか勇作に家に戻ってほしいと、勇作を奮い立たせようとする
欽也と朱美でしたが……

何というか、奇跡のような一編だったと思います。
ベタベタだのウェットだののそしりもありましょうが、
この日本で、全く構えず正攻法で、
こんなにステキな映画をつくり得たのですから。
実際に見ていなくても、
ストーリーや設定は知っているという方が
かなり多いでしょうが、
やはり、まずは自分の目で見てみなくては。
(特にあのシーンは)

それから、ずーっと昔から疑問に思っていたのですが、
「黄色いハンカチ」って、実際には余り売っていませんよね?
特に全く無地のやつって。
(多分、原案自体が、西部劇でおなじみの「黄色いリボン」に
ちなんでいる部分があるのでしょうが)
ちなみにうちには、黄色いハンカチというと、
黄色い生地を「顔」に見立て、ポケモンのピカチュウの目鼻が
プリントされたものしかありません。
アレをソレとして干すことを考えると、物すごい違和感を覚えます。
カワイイですけどね。

監督が、「男はつらいよ」シリーズでおなじみの山田洋次氏らしく、
故・渥美“寅さん”清さんや、太宰“タコ社長”久雄さんの出演も
ちょっとした見どころといえましょう。

ところで、余りにも有名なあのシーンは、
実は厳密にはラストシーンではありません。
本当のラストシーンのオトボケ処理からも、目を離しませんように。
(早送りしたり、途中で巻き戻ししたりしちゃやーよ)


2002年09月04日(水) クラシック音楽のある映画

9月4日は、語呂合わせで
ク(9)ラシ(4)ックの日だそうです。
そこで、今思いついた限り、
クラシックの名曲が印象的に使われているものを集めてみました。
(既に独立して紹介済みのものも含みます)

ショーシャンクの空に The Shawshank Redemption 
1994年アメリカ フランク・ダラボン監督
 
囚人仲間のために図書館の設置・充実に尽力した
アンディ(ティム・ロビンス)は、
看守たちに無断で『フィガロの結婚』より
『二重奏 そよ風に寄す』を全所内放送し、
懲罰房行きとなってしまいました(涙)。

ペギー・スーの結婚 Peggy Sue Got Married
1986年アメリカ フランシス・コッポラ監督

80年代の疲れた主婦からタイムトリップして、
60年代の女子高生になった
ペギー・スー(キャスリーン・ターナー)は、
タイムラグを利用して金儲けせんと、
あるものを部屋でちまちまつくりながら、
なぜかボロディン『イゴール公』より
『だったん人の踊り』を聞いていました。
(大したシーンではないのですが、好きな曲なので妙に覚えています)

青春デンデケデケデケ The Rocking Horsemen
1992年日本 大林宣彦監督

ライフ・イズ・ビューティフル La Vita e bella
1997年イタリア ロベルト・ベニーニ監督

この2作に共通して、
オッフェンバック『ホフマン物語』より
『ホフマンの舟唄』が使われています。
といっても、前者は主人公“ちっくん”が、
「ヴァイオリンで練習していて眠くなる曲」であり、
後者のシンボリックでさえある使われ方とは全く違うのですが…
(この曲は、当方のHPの
こちら
にも張り付けてあります。
このMIDIを作られた方は、非常に音のセンスがいいと思います)

クレイマー、クレイマー Kramer vs. Kramer
1979年アメリカ ロバート・ベントン監督

この映画といえばこの曲というほど「抱き合わせ」で思い出す、
ヴィヴァルディの『マンドリン協奏曲』 
ストリートミュージシャンが演奏しているシーンもありました。
川本三郎さんのシネエッセイタイトルが、
『ダスティン・ホフマンは「タンタン」を読んでいた』だったり、
(D.ホフマンが息子役のジャスティン・ヘイリーに
エルジェのコミック「タンタン」を読み聞かせるシーンから)
フレンチトーストというものを作ろう!という衝動を催したり、
何かと記号がちりばめられた映画でもありました。

余談ですが、
この映画の原題“Kramer vs. Kramer”をもじったAV
“Cramer vs. Cramer”(変態vs. 変態)というビデオを
ビデオ店主のマーセデス・ルールが客に勧めるシーンが
『フィッシャー・キング』の中に出てきました。
ああ、ぶち壊しな小ネタ……

いまを生きる Dead Poets Society
1989年アメリカ ピーター・ウィアー監督

この映画を見て初めて、
アメリカ人でも、その気になれば
制服というのはかっちり着こなせるのだなあと認識しました。
(物すごい偏見ですが、アメリカ人と制服はしっくり来ない気がして…)
50年代の名門進学校を舞台にした、
優秀だけれど型破りな国語教師
キーティング(ロビン・ウィリアムズ)と、
彼を慕う(あるいはちょっと計算高く取り入ろうとする)
少年たちとの心の交流を描いた作品。
ベートーヴェン 交響曲第9番などが使われていました。

この映画で気弱な少年トッドを演じたイーサン・ホーク
その後大スターになりましたが、
私が最もグッときたゲイル・ハンセンは、
今何をしているのでしょう。
(顔に妙なペイントを施し、“ヌワンダ”を自称していた
チャーリー少年役)


2002年09月03日(火) ポケット一杯の幸福

1991年9月3日、
ロマンティック・コメディなどでおなじみの名匠、
映画監督のフランク・キャプラが亡くなりました(享年94歳)。
そこで、氏の実質的な遺作となった作品をどうぞ。

ポケット一杯の幸福 Pocketful of Miracles
1961年アメリカ フランク・キャプラ監督

1933年に自身が撮った人情喜劇
『一日だけの淑女 Lady for a Day』
かなり忠実なセルフ・リメイクのようです。
(私はオリジナルの方をまだ見ていないので、
きっぱりは言えませんが)

このプロットがよほど気に入っていたのか、
例えば市川崑監督が『ビルマの竪琴』でそうしたように、
カラーで撮り直してみたかったのか、
なぜリメイクしたのかはわかりませんが、
どちらを先に見たとしても、
もう1本の方を見てみようというつくりではあると思います。
少なくとも私は、
オリジナルの方も見たいという気だけはあります。

暗黒街の顔役デュード(グレン・フォード)には、
こだわりのラッキーアイテムがありました。
“アップル・アニー”と呼ばれる
アニー婆さん(ベティ・デイビス)から
毎日買っているリンゴです。

そのアニーには、離れて暮らしている自慢の娘がいました。
ルーシーという名のその娘(アン=マーグレット)は、
ヨーロッパの尼僧院で育ち、美しいレディに成長しましたが、
良縁に恵まれて、フィアンセとその父親を同伴して
母親に会いに戻りたいと手紙をよこしました。
こりゃえらいこっちゃ、です。

離れて暮らしているのをいいことに、アニーは自分のことを
さも上流夫人であるかのように話して聞かせていたのでした。
実際には、粗末な家でボロをまとう、
正直お上品とは言えないばあさまです。
でも、ルーシーには会いたいし、
さて、どうしましょうとなったとき、
デュードが義侠心を出し、
アニーに助けの手を差し伸べます。
さてさて、うまくいくでしょうか?

実は私、子供の頃、この手の話が大嫌いでした。
いつバレるかと、むだにドキドキさせられるし、
そういう形で見栄を張る気持ちが、
いまいち理解できなかったからです。
(今でも理解はできませんが)
少し年をくって、
こういうモチーフも1つの様式美か何かみたいに
割り切って見られるようになったので、
この映画は、大いに楽しみました。
アン=マーグレットの初々しい美しさはまばゆいほどだし、
迫力美人のベティ・デイビスが、
品のない貧しい物売りのおばばを演じる必然性にも
きちんと納得できたし、
映画として非常に魅力を感じたからです。

参考までに、1989年の香港映画『奇跡/ミラクル』もまた、
『一日だけの淑女』の流れを酌む映画だそうです。
(主演・監督はジャッキー・チェン)
私はこれも未見ですが、
どうやらこちらのラッキーアイテムはバラのようです。
見たい気もしますが、
今さらビデオを探すのもパッとしないので、
できたら深夜映画でやってくれないかと、
密かに期待しております。
もちろん、ジャッキー兄貴を
石丸博也さんが吹き替えたバージョンで!


2002年09月01日(日) 映画よろず屋週報 Vol21 「なんとな〜く、アジア映画」

*****映画よろず屋週報 Vol21 2002.9.1*********************

皆さん、こんにちは。
9月になりましたが、「残暑はこれからが本番か?」と
言いたくなるような暑さですね。
でも、季節は確実に秋に向かっております。
公開映画も、夏休み大作とは違った味わいのものが続々ですし、
ニューリリースのビデオ・DVDにも期待大です。

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特集「なんとな〜く、アジア映画」

本日は防災の日ですが、
それにふさわしい特集を組めないのは、
ひとえに私の「映画偏食」ゆえです。ひらにお許しを…
そんなわけで、全くの思いつきですが、
ひとつ、アジア地域の名作・珍作をどうぞ。

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フォーエバー・フィーバー Forever Fever
1998年シンガポール グレン・ゴーイ監督

映画的にはなじみの薄い国シンガポールからやってきた、
お茶目な青春コメディーです。
1977年、ブルース・リーに憧れていた青年のもう1人のヒーローは、
今や「ハリウッドきっての遊ばれキャラ」である大御所です。
ダンス映画好きにもおすすめ。
(近いうちに、拙作HPのDailymovieでも取り上げたいと思います)


アタック・ナンバーハーフ Sa tree lex/The Iron Ladies

2000年タイ ヨンユット・トンコントーン監督

実話に基づいた、生きのいいスポーツコメディー。
プレイヤーとしてのセンスはピカイチなのに、
オカマであるだけで差別された青年たちの捲土重来が痛快です。

太陽は、ぼくの瞳 The Color of Paradise
1999年イラン マジッド・マジデイ監督

全盲の少年モハメドの幸せは?
光あふれる美しい作品でありながら、
人間の弱さや世知辛いしがらみもきっちりと描かれていました。
(近いうちに取り上げたいと思います)

推手 Pushing Hands
1991年台湾 アン・リー監督

今や世界的市場で活躍するアン・リーによる、
「父三部作」の1作目。舞台はアメリカです。
ラン・シャン演じる太極拳の使い手とその息子、
息子のアメリカ人の嫁、そして息子夫婦の孫。
世代とお国柄の違いによるすれ違いが繊細に描かれ、
苦みと温かみが同居した作品ですが、
「推手」と呼ばれる太極拳の組手のシーンがちょっとキワモノ的。
でもまあ、それも御愛嬌ということで…
(近いうちに取り上げたいと思います)

喜劇王 The King of Comedy
1999年香港 チャウ・シンチー監督

はっきり申し上げて、チャウ・シンチー作品なら、
絶対『少林サッカー』の方がおもしろいのですが、
『少林サッカー』のギャグの原点がうかがえ、
興味深い作品ではあります。
(近いうちに取り上げたいと思います)

おお、映画を比較的量産する国としては、
インドとベトナムが抜けていました(韓国も)。
これらはまた次の機会ということで…

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お誕生日1週間(9月1日〜9月7日)
9/1 リリー・トムリン(1939)
9/2 キアヌー・リーブス(1964)
9/3 チャーリー・シーン(1965)
9/4 アニタ・ユン(1970)
9/5 マイケル・キートン(1951)
9/6 サミュエル・ホイ(1948)
9/7 トム・エヴァレット・スコット(1970)
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