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2002年06月30日(日) 映画よろず屋週報 Vol12 2002.6.30

*****映画よろず屋週報 Vol12 2002.6.30*********************

皆さん、こんにちは。
1年の折り返し地点までやってまいりました。
毎年毎年、ここから先の時間の流れが早いなーと感じるのは、
私だけでしょうか。

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特集「戦う娘たち」

1980年6月30日、「月に代わっておしおきよ!」の名台詞で
少女たちの圧倒的支持を得た、“セーラームーン”こと
月野うさぎちゃんが生まれたそうです(ま、架空の人物ですが)。
『美少女戦士セーラームーン』の作者、武内直子さんは、
“婦女子の正しいおたくっぷり”を余すところなく見せ、
子供だけでなく、大人たちをも楽しませてくれました。

そこで、戦う女の子が印象に残った映画をどうぞ。

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ガールファイト Girlfight
2000年アメリカ カリン・クサマ監督

イギリス映画『リトル・ダンサー』のビリー・エリオットとは逆に、
ボクシングに見せられてしまった
少女ダイアナ(ミシェル・ロドリゲス)の物語。
正直、とってつけたような恋愛話など白けるところもあるのですが、
女の子同士の馴れ合い的なつき合いを嫌うヒロインの
眼光の鋭さが突き刺さります。


ジャニスのOL日記 Janise Beard: 45 Words Per Minute
1999年イギリス クレア・キルナー監督

愛する伴侶の死がトラウマになり、広場恐怖症で引き籠もった母を
何とか治してやりたい…と頑張るジャニス(アイリーン・ウォルシュ)の
見当違いな張り切り方がいじらしい(ような気がする)好編です。


アメリ Le fabuleux destin d'Amelie Poulain
2001年フランス ジャン・ピエール・ジュネ監督

「見ると幸せになる」映画と言われて大ヒットしましたが、
愛すべき人物には優しいのに、敵に回すとこの上なく恐ろしいのが、
美女アメリ・プーラン(オドレィ・トトゥ)の実態です。
「溜飲を下げる」のも、幸せのうちかも…


アタック・ナンバーハーフ Sa tree lex
2000年タイ ヨンユット・トンコンコーン監督

…………………………。
川原泉のコミック『メイプル戦記』で、
女子だけのプロ野球チーム“メイプルス”の広岡真理子監督は、
「心は女です」と言って入団テストを申し込んできた
剛速球投手神尾瑠璃子(本名:聡史)を、快く受け入れます。
……そういうわけで、タイ最強バレーチーム“サトリーレックス”は、
「鋼鉄の淑女」の名に恥じない、魅力的な戦う“女”たちでした。


リトル・ストライカー There's Only One Jimmy Grimble
2000年イギリス=フランス ジョン・ハイ監督

脇役も脇役、添え物的にすら思えるキャラクターではありますが、
主人公ジミーが心ひかれる少女サラ(サミア・ガディ)は、
ただでさえはみ出しモノの上、拳闘もやっちゃいます。
だからまた余計に浮いちゃったりもするのですが、
本当にいい女は、そういう細かいことには拘らないものです。

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お誕生日1週間(6月30日〜7月6日)
6/30 ヴィンセント・ドノフリオ(1960年)
7/1 ダン・エイクロイド(1952)
7/2 ロン・シルヴァー(1946)
7/3 トム・クルーズ(1961※諸説あり)
7/4 ビクトリア・アブリル(1959)
7/5 ウォーレン・オーツ(1927)
7/6 ジェフリー・ラッシュ(1951)
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2002年06月29日(土) アイ・アム・サム

6月29日は、1966年の初来日を記念した「ビートルズデー」です。
では、ビートルズの曲とエピソードをこれ1本で勉強できそう、というほど
濃く扱っていた、こちらの作品など。

I am Sam(アイ・アム・サム)
2001年アメリカ ジェシー・ネルスン監督


批評系サイトで、
「やたら泣ける」と「偽善もいいところ。駄作」の2つに
ぱっくり意見が分かれていて、驚きました。
多分、駄作だと言った人は、期待が大き過ぎたか、
見る前からコメントが決まっていたかのどちらかではと思います。
素直に名優たちの演技を受け入れられれば、
必ずや、今年最も印象に残る映画の1本になることでしょう。
泣かせることは泣かせますが、
実のところ、泣け!感動しろ!と煽るような映画ではありません。
そういうふうに煽る映画を称して、
非常に(子供に)失礼な表現で「子供だまし」というのでしょうけど。

7歳児並みの知能で、軽い自閉症のサム(ショーン・ペン)は、
スターバックスで毎日まじめに働く好人物です。
ホームレスのレベッカという女性との間に子供ができますが、
娘ルーシー(ダコタ・ファニング)を産むと、
レベッカはどこかに姿をくらましてしまうので、
ひとり押しつけられる格好となり、
部屋に引きこもっている隣人や、
障碍のある仲間の助けをかりて、一生懸命育てます。

「1人の子供をみんなで寄ってたかって育てる」
どうもこの路線は、個人的にツボでして、
それだけでこの映画を好評価してしまうのは、否定できません。

愛らしく賢いルーシーはみんなから愛され、すくすくと成長します。
が、小学校に入学すると、知識を得ることで
父親の知性を凌駕してしまうのではないか…というおそれを抱き、
勉強に熱中することができません。
担任教師からそのことで注意を受け、
何とかルーシーがちゃんと勉強するように促すサムですが、
父親をこよなく愛するルーシーは、それを拒否します。
結果、サムは親として不適格と判断されてしまい……

この監督は『グッドナイト・ムーン』(脚本)
『コリーナ、コリーナ』(脚本・監督)など、
ほかにも親子の絆系映画に関わっているようですが、
オフビートなコメディー演出に徹したものをぜひ見たいと思いました。
1本の映画の中で、さまざまな種類の笑いを醸し出し、
またそこから涙をも引っぱり出してくれます。
(こういう卑怯な泣かせ方、実は嫌いではありません)

サムに授乳時間を説明するとき、TV番組の放送時間に例えたり
ビートルズのすばらしさを指南したりと好サポートを見せる
隣人アニー役にダイアン・ウィースト
奪われそうなルーシーの親権を取り戻すため、
サムが依頼する弁護士役をミシェル・ファイフィー(イライラしています)、
ルーシーの里親となる女性をローラ・ダーンと、
女優陣の充実にも注目したいところですが、
中でも「すげぇ」と目を見張るのは、
ルーシー役のダコタ・ファニングでしょう。
『ペーパームーン』のテータム・オニールにも匹敵する名演でした。
これは実際に知的障碍のある人たちに指導している方法だと
DVDのメーキングで知りました。
私自身、次女が生まれたばかりの頃、
『ビバリーヒルズ青春白書』の集中再放送があったので、
真夜中の授乳タイムがビバヒルタイムだったこともあり、
「そうそう、そうなの」と膝を打ちました。


作中、さまざまな人がカバーしたビートルズナンバーが流れまくり、
さながら「カブトムシの行進」状態です。
実際に知的・精神的障碍患者のための
ワークショップ「L.A.GOAL」でリサーチし、
映画にも、お2人方ほどそこの役者さんが出演しています
ビートルズが最も人気があるということから、音楽に採用したそうです。
全部カバーなので、今までビートルズを意識して聞かなかった方、
それほど興味のなかった方も、
逆に興味をそそられるのではないでしょうか。


2002年06月24日(月) アメリカン・ビューティー

6月24日の花はバーベナ、花言葉は「家族の和合」です。
では、少々の皮肉も込めて、こちらを。

アメリカン・ビューティー American Beauty
1999年アメリカ サム・メンデス


「アメリカン・ビューティー」は、バラの品種名だそうですが、
でも、あの女性の腹部の前に赤いバラ一輪…という
あの印象的なポスターで使われたのは、
アメリカン・ビューティーではないそうな。
だから、一般名詞として
「アメリカの美しいもの・いいもの」と解釈した方が
わかりやすくなると思います。
(映画の中にも、バラはふんだんに使われますが)

あえて書きませんが、いきなりの冒頭のシーンが驚きモノでした。
ちょっとブラックなコメディーだと思いつつ見た人でも、
いきなりこう来るか?と思ったのではないでしょうか。

レスター(ケヴィン・スペイシー)と
キャロリン(アネット・ベニング)は、
それぞれが仕事を持ち、
賢い一人娘ジェーン(トーラ・バーチ)もいて、
郊外の家で落ち着いた暮らしを送っていて、
誰が見ても理想的な一家……に見てもらいたい一家です。
内実は、3人の心はバラバラでした。
レスターは、やたらとアグレッシブなキャロリンについていけないし、
ジェーンからは、ティーンの娘にありがちとはいえ、
貧相なオヤジとして軽んじられています。

そんな生活に嫌気がさしていたとき、レスターは、
ジェーンの親友アンジェラ(ミーナ・スヴァーリ)に一目惚れし、
「もっといい体していたら、彼と寝てもいいわ」と、
アンジェラがジェーンに話しているのを盗み聞きし、
フィットネスに精を出すようになります。

隣家では、厳格な父(クリス・クーパー)の目を盗み、
ヤクの売人をしているような少年リッキィ(ウェス・ベントレー)が
ジェーンに興味を持ち、彼女の部屋を覗くなど、
少々薄気味悪い行動が見られました。
が、レスターはヤクつながりでリッキィと仲良くなり、
ジェーンもまた別口で彼と接近します。

キャロリンは、仕事で知り合ったバディ(ピーター・ギャラガー)と
情事を楽しんでいました。
仕事を首になり、ハンバーガーショップで
なぜか嬉々としてバイトをするレスターは、
その事実をバイト先で知りますが、
アンジェラに懸想する彼にとっては、
キャロリンの浮気はむしろ好都合でした。

エピソード満載で、簡単にまとめるのは容易ではないのですが、
1つ1つを丁寧に見ていくと、ちょっとしたすれ違い、ボタンのかけ違いが
家庭崩壊を招くのだというのが、嫌というほどわかります。

家族は必ずしも、同じ「いいもの」を探求しているわけではなく、
かといって、それが直接不幸につながるわけではありません。
目指すベクトルが違うんだということに、
理解とはいわないまでも、妥協したり納得したりできないことが
問題でして…というあたりは、
どなたさまも覚えがあるのではと思います。

1999年度アカデミー作品賞・主演男優賞等を受賞しましたが、
それは、この映画にとっての不幸だった気がします。
なぜならば、本来はこの種のものを見ないという人が
「そういうつもり」で見て酷評…というパターンが多いので。
アカデミー賞(この際、アメリカ限定)を絶対の物差しとは思いませんが、
やっぱり、基準の1つではありますからね…。


2002年06月23日(日) 映画よろず屋週報 Vol11 2002.6.23

*****映画よろず屋週報 Vol11 2002.6.23*********************

皆さん、こんにちは。
この1週間、日本は負けるわ、イングランドは負けるわで、
ちょっと凹みぎみの方もいらっしゃるのでは?
(後者は、オーウェンファンのうちの長女のことですが…)
御贔屓チームが勝ち残っている皆さんは、まだまだ目が離せませんね。

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   特集「手紙の力」

毎月23日は「ふ(2)み(3)の日」です。
ということで、映画に登場し、名脇役ぶりを発揮した手紙たちに
スポットを当てることにいたしましょう。

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   <手紙が育む絆編>

アイリスへの手紙 Stanley and Iris
1990年アメリカ マーティン・リット監督

腕のいいコックだが、読み書きのできなかったスンタリーは、
ひょんなことから知り合ったアイリスに字を習い、
愛する彼女への思いを、「手紙」で伝えます。
スタンリーがロバート・デ・ニーロ、アイリスはジェーン・フォンダ

愛しのロクサーヌ Roxanne
1987年アメリカ フレッド・スケピシ監督

ロスタン作『シラノ・ド・ベルジュラック』に材をとったコメディー。
デカ鼻以外は完璧な消防士C.D(スティーブ・マーチン)は、
美人天文学者のロクサーヌ(ダリル・ハナー)に思いを寄せながら、
ハンサムでオツムの軽い新任のクリス(リック・ロソビッチ)の代わりに、
ユーモアと知性あふれる手紙を代筆することで、
間接的に自分の思いを伝えるのですが…

   <お別れの手紙・置き手紙編>

カサブランカ Casablanca
1942年アメリカ マイケル・カーティス監督

リック(ハンフリー・ボガート)は、パリの雨の中、
イルザ(イングリット・バークマン)の手紙を受け取ります。

このシーンのパロディーは、この映画でも見られますよ。

ホット・ショットHot Shots!
1991年アメリカ ジム・エイブラハムズ監督

こちらはチャーリー・シーンヴァレリア・ゴリノ

ブラス!Brassed Off
1996年イギリス マーク・ハーマン監督

……ネタバレポイントの1つなので、多くは語りません。
前向きで清々しい置き手紙でした。

マイ・フレンド・メモリー The Mighty
1998年アメリカ ピーター・チェルソム監督

相棒マックス(エルデン・ヘンソン)の危機を救うために、
夜中に家を出たケヴィン(キーラン・カルキン)が、
母(シャロン・ストーン)に残した一言…
“I’ll explain”(後で説明するよ)
明解さがいいですねー。

おかしな二人 The Odd Couple
1968年アメリカ ジーン・サックス監督

性格が正反対のフェリックス(ジャック・レモン)と
オスカー(ウォルター・マッソー)は、ルームメイト同士ですが、
オスカーは、フェリックスが家を空けるときに、
ちまちま置き手紙をするのが、ちょっと気に入りません。

   <その他>

セントラル・ステーション Central Do Brasil
1998フランス=ブラジル バルテル・サレス監督

リオ・デ・ジェネイロの中央駅で代筆業を営む
ドーラ(フェルナンダ・モンテネグロ)と、
1度も会ったこともない父を訪ねていくジョズエ少年との交流。

ハリー・ポッターと賢者の石
Harry Potter and the Sorcerer's Stone

2001年アメリカ=イギリス クリス・コロンバス監督

叔母夫婦の家で虐待されて育った
ハリー・ポッター少年(ダニエル・ラドクリフ)を救ったのは、
ホグワーツ魔法魔術学校からの手紙と……

ディア・アメリカ 戦場からの手紙
Dear America: Letters Home from Vietnam

1987年アメリカ ビル・コーチュリー監督

済みません、実は未見なんですが、参考までに。
ベトナム戦争の戦地からアメリカに送られた手紙を、
「ボランティア声の出演」の大スター33人が朗読する…そうです。
詳しくは、こちらこちらをどうぞ

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お誕生日1週間(6月23日〜29日)★は故人
6/23 フランシス・マクドーマンド(1957)
6/24 ナンシー・アレン(1950)
6/25 シドニー・ルメット(映画監督/1924)
6/26 クリス・オドネル(1970)
6/27 トビー・マッガイア(1975)
6/28 ジョン・キューザック(1966)
6/29 イアン・バネン(1928−1999年11月3日)★
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2002年06月22日(土) 母の眠り

1949年6月22日、メリル・ストリープが生まれました。

母の眠り One True Thing
1998年アメリカ カール・フランクリン監督


ジャーナリストのエレン(レニー・ゼルウィガー)は、
アメリカ文学の権威である父親ジョージ(ウィリアム・ハート)を尊敬し、
家事万能の母ケイト(M..ストリープ)を軽んじているような娘でした。

けれども、ケイトが癌に侵され、しかも末期であるため、
彼女の介護や家事補助に人手が要るようになりますが、
そのために父は、エレンに仕事をやめさせ、その役目を言いつけます。
専業主婦をバカにしているような娘が、その役を負い、
しかも乗ってきた仕事も諦めざるを得ない…

これで事がうまく進むと思う父親の身勝手さに、
(↑というか、そこから生じる軋轢に目をつぶっていられる)
エレンは次第に疑問を感じるようになり、しかも、
父がつまみ食い的に女子大生と関係を持っていることを知り、
心底失望するのですが、
反面、傲慢にも軽蔑していた母の、
ハウスキーパーとしてのセンスのよさ、意外なほどの強靱さを、
次第に見直すようになります。

というような物語を軸に、
なぜかところどころにサスペンスチックな描写があり、
意外に楽しめるつくりになっています。

エレンには弟ブライアン(トム・エバレット・スコット)がいるのですが、
これが見事にいてもいなくてもどうでもいい役でした。
が、誰にも感情移入できず、映画を第三者的に楽しんだ者としては、
彼のキャラクターを、非常に好ましいと思いました。
傍流の人間だけが持つ、さらっとした魅力(別名、存在感のなさ?)で、
いわば清涼剤的な役割をそれなりに果たしています。


2002年06月20日(木) タッカー

1931年6月20日、俳優のマーティン・ランドーが生まれました。

タッカー Tucker: the Man and His Dream
1988年アメリカ フランシス・フォード・コッポラ監督


公開当時は、「製作総指揮ジョージ・ルーカス!監督コッポラ!」
と、『アメリカン・グラフィティ』とは逆の組み合わせなども話題で
なかなか鳴り物入りの大作だったと記憶していますが、
そうしたバックグラウンドとは無関係に、
古きよき時代のアメリカが粋に描かれた、
ロマンチストのコッポラらしい、温かで魅力的な作品です。
(実話ベース)

1940年代、アメリカ。
エンジニア、プレストン・タッカー(ジェフ・ブリッジズ)の夢は、
「理想の車をつくること」でした。
美しく、走りがよく、安全な、そういう乗り物をです。
愛妻ベラ(ジョアン・アレン)や息子(クリスチャン・スレイター)たちも、
彼のよき理解者であり、協力者でもあります。
また、詐欺行為で前科のあるエイブ(M.ランドー)も、
彼の夢に「感染」し、何くれとなく協力する1人でした。

けれども、出る杭は打たれ、背の高いポピーはむしられるもので、
タッカーの秀逸な技術やアイディアは、
アメリカが誇る大自動車産業界、いわゆるビッグ3からにらまれ、
数々の妨害を受けるところとなるのでした。
とうとう裁判沙汰にまで持ち込まれてしまいますが、
彼は、理想の車を世に出すことができるのでしょうか?

結果として、彼がつくったタッカー・トービードは、
50台生産されたそうです。
運転免許も持たず、自動車については全く知識のない私ですが、
自動車がどうのこうのというよりも、
1人の男のひたむきな生きざまや、
映画そのものが持つ香気のようなものには大いに惹かれました。
裁判で、前科者のエイブが、検察に屈辱的なことを言われつつ、
親友タッカーのために証言台に立つシーンが印象的です。
(正直、饒舌に最終弁論を繰り広げるタッカーの多弁より、
彼が証言台で発した、あるたった一言の方が、
今でも印象深いものがあります)

この映画にまつわる小話で、結構好きなのは、
監督のコッポラが、この映画を撮る際の名義に、
ミドルネームのフォードを入れたことについて、
「自動車の映画だから、フォードも入れた」と言ったことでした。
当然、タッカーに圧力をかけたビッグ3の中に、
フォードも入ってはいるのですが…


2002年06月17日(月) 待ちきれなくて…

1946年6月17日、歌手のバリー・マニロウが生まれました。
彼の曲では、何といっても【コパカバーナ Copacabana】が有名ですが、
この映画でも使われた曲も、なかなかメロディアスでステキです。

待ちきれなくて…Can't Hardly Wait
1998年アメリカ ハリー・エルフォント / デボラ・カプラン監督


高校卒業パーティーの夜の騒動を描いたコメディーです。
(といっても、学校主催のプロムではなく、個人宅のパーティー)
日本公開はされませんでしたが、
ジェニファー・ラブ・ヒューイットの人気を受け、
ビデオ&DVDでリリースされています。

美少女アマンダ(J.L.ヒューイット)が転校してきた初日、
彼女に一目惚れした優等生プレストン(イーサン・エンブリー)は、
結局卒業まで全くアプローチできず、
フットボール部のマッチョ(お約束♪)と彼女がつき合っているのを
指をくわえて見ているのが関の山でした。
が、アマンダが、彼氏と別れたというニュースが!
卒業パーティーにも来ると言います。
今度こそきちんと告白するのだと、プレストンは腹を決めますが…

パーティーには、さまざまな思惑の人間が集います。
ケニー(セス・グリーン)のように、
ナンパ(する&される)目的が主流の中、
マッチョにいじめられ続けた積年の恨みをはらす計画を立てる、
ハーバードへ進学予定の
ウィリアム(チャーリー・コスモウ)などもいました。

「お約束」を極めたような
アメリカ青春映画のある種の決定版でありながら、
非常に生き生きとしていて、新鮮ささえあります。
きっと、キャラクターの描き分けが上手だからでしょう。
はっきり言って、ストーリー的にはスカスカと言いたいほどですが、
不思議と印象に残る1本だと思います。

『サブリナ』のメリッサ・ジョーン・ハート
『ダーマ&グレッグ』のジェナ・エルフマンなど、
海外ドラマファンにはおなじみのキャストも、目を楽しませてくれます。

ところで、この映画中で使われているのは
B.マニロウの【哀しみのマンディ Mandy】でした。
めったにかからないはずの、このナツメロ(1974年)がラジオから流れ、
プレストンは、「マンディはアマンダの愛称だ!運命を感じる!」と、
変なこじつけをして気持ちを盛り立てようとするものですが、
実はそこには「からくり」がありました。

しかし、今さらですが、アメリカの若者が、
古い音楽(映画も)に造詣が深いのには驚きます。


2002年06月16日(日) 映画よろず屋週報 Vol10 2002.6.16

*****映画よろず屋週報 Vol10 2002.6.16*********************

皆さん、こんにちは。
おかげさまで、当メールマガジンも、無事10号発行までこぎつけました。
息切れしないように頑張っていきたいと思いますので、
今後ともよろしくお願いいたします。

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特集「Papa,You are…」
6月16日は、父の日です。
イベント的には母の日より地味な気もしますが、
実はこちらが元祖で、母の日の方が後発でつくられたそうですね。
映画の中にも、さまざまなお父さんが登場しますので、
その辺に注目してみたいと思います。

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アイ・アム・サム I am Sam
2001年アメリカ ジェシー・ネルソン監督

個人的には、現在公開中の映画の中でも一押しの作品です。
7歳児並みの知能しかないサム(ショーン・ペン)は、
ホームレスの女性レベッカが産み捨てるように残していった娘に
ビートルズの曲からとって「ルーシー」と名づけ、
愛情たっぷりに育てます。
知的・精神的な障碍のある人々が運営する
ワークショップでリサーチしたら、
ビートルズのファンが非常に多かったということで、
映画の中でも、各種カバーのビートルズ・バラードや
「ほほぉ」と思うようなエピソードがディープに扱われています。
ショーン・ペンの好演は言うまでもありませんが、
ルーシーを演じたことし7歳のダコタ・ファニング初め、
サムの心優しい隣人アニー(ダイアン・ウィースト)、
カリカリ生きている弁護士のリタ(ミシェル・ファイファー)と、
魅力的な女優さんたちも登場します。

母の眠り One True Thing
1998年アメリカ カール・フランクリン監督

末期癌の状態にある妻ケイト(メリル・ストリープ)の世話をさせるため、
都会で働く娘エレン(レニー・ゼルヴェガー)を呼び戻し、
自分は体裁ばっかり取り繕うバカ父を
何をやっても自然で、とても演技とは思えんウィリアム・ハートが
ある意味「好演」しています。
エレンがもともと母より父を尊敬もしていたという前提があるので、
妻に倒れられてオロオロする役立たずぶりが際立ちました。
(でも、それなりに妻も娘も愛してはいるんですよね)

リトル・ダンサー Billy Elliot
2000年イギリス スティーブン・ダルドリー監督

ボクシング教室に出しているはずのお金を横流しし、
バレエを習っていた息子ビリー(ジェーミー・ベル)に、
「オカマのやることだ!」とマジギレする父(ゲイリー・ルイス)でしたが、
ビリーのバレエへの飽くなき情熱を知って、
ある行動に出るのでした。

ナチュラル The Natural
1984年アメリカ バリー・レビンスン監督

このテーマでこの映画を出すのは、
実は非常にヤバいネタばらしなのですが、
「男性は、自分のあずかり知らぬところで親になっていたりするから、
産みの苦しみがなくていいなー」という、
素朴にして乱暴な観点で考えたとき、この映画が頭に浮かびました。
1930年代のアメリカを舞台にした、ノスタルジックな野球映画。
ロバート・レッドフォードが、35歳で天性の才能(ナチュラル)を開花させる
伝説の野球選手を演じています。 

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お誕生日1週間(6月16日〜22日)
6/16 ※ごめんなさい、みつかりません。
6/17 イザベル・アジャーニー(1955)
6/18 イザベラ・ロッセリーニ(1952)
6/19 キャスリーン・ターナー(1954)
6/20 ジョン・グッドマン(1953)
6/21 ジュリエット・リュイス(1973)
6/22 メリル・ストリープ(1949)
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2002年06月15日(土) リトル・ストライカー

毎月15日は、レンタルビデオの日です。
そんなわけで、日本未公開作品を取り上げることが多いのですが、
今日は、「祝!日本代表Hグループ1位」を意識して、
ちょっとラブリーなフットボールの映画を御紹介します。

リトル・ストライカー
There's Only One Jimmy Grimble

2000年イギリス=フランス ジョン・ハイ監督


ティーンの少年のお部屋拝見〜
アメリカの少年は、しばしばロックスターのポスター等を飾っていますが、
イギリスの少年の場合は、大抵フットボール選手ですね。
(もちろん、それぞれに例外はあるものの)
映画的演出も多分にありましょうが、
以前、『ハリー・ポッター』シリーズの特集番組を見ていたら、
ホグワーツのモデルになったという私立学校の寮生も、
やはりフットボール選手のポスターを部屋に貼っていました。
やっぱりフットボールは、大英帝国の国技なんでしょう。

この映画の主人公ジミー(ルイス・マッケンジー)も、
マンチェスターに住む、フットボール命の少年です。
といっても、かのベッカムも所属しているマンチェスターUではなく、
マンチェスターシティーのファンということで、
ただでさえ気が弱いいじめられっこなのに、
マイノリティーとして、肩身の狭い思いをしていました。
彼がシティーのサポーターになったのは、
ママ(ジーナ・マッキー)の過去の恋人たちの中でも人格者で、
ジミーをかいわがってくれたハリー(レイ・ウィンストン)の影響でした。

1人で練習している分には、本当は結構才能があるのに、
みんなの前だとどうしても萎縮してうまくできないし、
ママはママで、男に騙されやすくて、
今日も今日とて、ちゃらちゃらした男(ベン・ミラー)連れてくるし、
ジミーの日常は、何かとぱっとしません。
変わり者だけどかわいいサラという少女をいいなと思っても、
声すらかけられないし…(でも、向こうからかけてきますが)

学校の新しいフットボールチームのコーチは、
はっきり言ってやる気のなさそうなエリック(ロバート・カーライル)ですが、
金髪とテクニックが御自慢で傲慢な“ハンサム”ゴードン”のことを
冷静に判断している(評価していない?)感じのところに好感が持てるし、
ジミーはエリックに敬意を払っていました。

ある日、いつものようにゴードンたちにいじめられ、
追いつめられたジミーは、ある老婆に匿われます。
彼女はボロボロの靴を、「魔法の靴だ」と言ってジミーにくれました。
シティーの選手だったロバート・ブルーワーのものだと言いますが、
選手名鑑にも載っていないし、詳しい人に聞いてもわかりません。
けれども、彼がその靴を手に入れてからというもの、
フットボールに関しては、快進撃が始まるのでした……。

あとはラストまで、「実は○○は△△だった」という、
話してしまったら即ネタバレのエピソードが多いので、
この辺にとどめたいと思いますが、
1つだけ、エリックが「元シティーの選手だった」というのは、
ありがちだけれど、お話のポイントになっているかと思います。

あの丸坊主……もとい、笑顔のまぶしい小野伸二も見て感動したとか。
(ビデオジャケットに写真入りステッカーが貼ってありました)
オランダで見たのでしょうかね。

そういえば、関係ない話ですが、
「これこれが好きだから、この関係の映画は全部見ている」
というパターンは、よくあります。
フットボール、格闘技、バレエ、音楽、何でもいいんですが、
かといって、
「映画が大好きなので、映画マニアが出てくる映画は何でも…」
というのは、非常に難しいと思います。
大抵、添え物的な要素だし、
役どころも脇役でオタクであることが多いし。
映画が(ディープに)好きというだけで、映画の中では分が悪いなんて。
……でも、それで1本特集が組めそうな気がしてきました。


2002年06月14日(金) ゴーストワールド

今日6月14日は「日記の日」です。
(一部サイトでは、12日となっているかもしれません)
1942年6月12日、13歳の誕生祝いとして日記をもらったアンネ・フランクが、
その2日後の14日から日記をつけ始めたことに由来します。

「……日記」と名のつく映画は幾つもありますし、
そもそも『アンネの日記』も映画化はされています。
が、罰当たりなことに、それを見ていない私は、
最近見たばかりで、日常生活用日記にも取り上げたものを
改めて御紹介することにしました。

ゴーストワールド Ghost World
2001年アメリカ テリー・ズウィコフ監督


アメリカではティーンの女の子のバイブル的なコミックを
映画化したものだとか。(ダニエル・クロウズ作)

奇抜なファッション(でもないんですが、本当は)にぶすっとした表情、
言うことも一々憎たらしいイーニド(トーラ・バーチ)と
発言は過激だけれど、オシャレは意外とコンサバティブで、
金髪の普通にかわいいレベッカ(スカーレット・ヨハンソン)は、
高校を卒業したら、一緒に暮らそうと約束するような
仲良し同士でした。

が、イーニドは、美術の単位が足りず、補習を受けなければ
卒業が認められません。

くさくさして、なんかおもしろいことないかー……と、
2人が目をつけたのは、新聞の恋人募集欄でした。
それを出したうちの1人、中年男シーモア(スティーブ・ブシェミ)を、
偶然見つけた、コンセプトの甘いダイナーに呼び出し、
待ちぼうけを食わせて、それを遠巻きから眺めるという
実に悪趣味なものでした。
(それも、コンビニのなじみの従業員ジョシュ(ブラッド・レンフロー)を
巻き込んだりして、迷惑この上ない!)

「女性」が来ないとわかり、キレ気味の状態で店を出たシーモアを
2人は興味本位でつけ、アパートをつきとめます。
数日後、アパートのガレージセールでマニアックなレコードを
売っているシーモアに話しかけ、
ただキモイおっさんだと思うレベッカとは対照的に、
イーニドは、「あのイケてないところがいい」と、
シーモアに興味を持つようになります。

ところで、美術と補習では、もともとマンガを描くのが得意な
イーニドの才能に講師が気づき、奨学金の口を紹介されたりもします。

レベッカは、勤め始めたお店の仲間と遊ぶようになり、
何となくイーニドとはそりが合わなくなってきました。

そんな毎日の中、ひょんなことからシーモアとイーニドはベッドをともにし、
それまで、自分の恋人には若過ぎると思っていたイーニドを、
シーモアがたまらなくいとおしいと思うようになりますが……。

イーニドたちが感じるような、正体不明のいらつきを、
若い頃には、誰もが覚えるかもしれません。
が、「その気持ち、よくわかるわー」などと言おうものなら、
たちまちイーニドに「わかったような顔しないでよね…」と
鼻で笑われてしまいそうな気がします。
だぁれも理解はしてくれないけれど、
理解されないことよりも、
本当は理解していないくせに判ったような顔する奴の方が、
彼女には「ムカつく」存在なのではないかと思います。

だからこそ、大人なのに自信なさげにおどおどしているシーモアを、
イーニドは好ましいと思ったのではないでしょうか。
「イケてないオタク中年」の一言で片づけるには、
ブシェミ演じるシーモアは、魅力的過ぎる「ダメ大人」でした。

いわゆるオシャレな映画としてとらえられ、
受け入れられる面もありますが、
それだけでなく、デリケートな部分を大切にして撮られている、
なかなかどうしての傑作だと思います。


2002年06月13日(木) ペイ・フォワード 可能の王国

6月13日は、「小さな親切の日」だそうです。
あらまあ。この日のためにあるような映画があるではないですか。

ペイ・フォワード 可能の王国
Pay It Foward

2000年アメリカ ミミ・レダー監督


ケヴィン・スペイシー、ヘレン・ハントと、2人のオスカーホルダーに、
当代きっての名子役スター、ヘイリー・ジョエル・オスメントが共演で、
成功が約束された映画…のはずでした。
ところが、ふたをあけると悪評ふんぷんで、
オスカーノミネートも完全無視と来たもんです。
私も、1週間レンタルになるまでDVDを借りなかったのですが、
漏れ聞こえてきた悪評のおかげで、過剰な期待をせずに済み、
逆に、非常に堪能することができました。
言われるほど悪い映画ではないというのが偽らざる感想です。

親に虐待されて負った顔の火傷が、
まるでトラウマがそのまま表出されているみたいに見える
中学校教師シモネット(K.スペイシー)は、
頭がよく礼儀正しいものの、人と 深く関わることを怖がっています。

彼が生徒たちに課題として出したのは、
「世の中をよくする方法を考えよ」というものですが、
それに対して、生徒の1人トレバー(H.J.オスメント)は、
自分が誰か3人の人間に対して無償の親切を施す→
親切にされた人間が、またほかの3人に親切にする→
という方法で、善意の輪を広げていくという、
いわば親切のねずみ講作戦でした。
(原題は、「(親切の)先送り」)

が、何となくできそうな気がする親切運動は、
後々の結果を見ると、成功しているとは言えませんでした。
ヤク中のホームレスの青年(ジム・カヴィーセル)を助けたり、
生活に疲れ切った母アーリーン(H.ハント)に
ボーイフレンドをつくろうと頑張ってみても、
結局は余計なお世話だったかも……になってしまうのです。
殊に、アーリーンとシモネットを引き合わせ、
うまくいったかに見えたカップリングが、
出ていったきりだった父(ジョン・ボンジョヴィ)のせいで
引き裂かれたときは、関係者全員の心を傷つけてしまいます。

けれども、トレバーが考えた方法は、
実は彼のわからないところで意外なほどの広がりを見せていました。
その恩恵にあずかった1人、
記者クリス(ジェイ・モー)が発端を探っていき、
ついにトレバーを捜し当てます。
照れながらも、テレビカメラの前で
一生懸命に自分の思いを語るトレバーでしたが、
まさにその日、予想だにしなかった悲劇が訪れます。

シモネットとの初めての本格的なデートに遅れそうなアーリーンに、
「先生が、遅刻するのは相手を尊敬していないからだって言ってた」
とトレバーが吹き込んだために、
やっと約束の場所に着いて開口一番、シモネットに対して
「尊敬してるのよ!」と言い訳するシーンが、
たまらなく好きです。
厚化粧で、がさつで、深酒もするアーリーンですが、
確実に「愛すべき女性である」ということが、
この1シーンで語られている気がしました。

親切とは、善意とは…というテーマそのものから
あえて目線を外して見た方が、
人の心の強靱さと脆さについて考えさせられ、
より輪郭がはっきりする気がします。


2002年06月12日(水) シー・デビル

シー・デビル She-Devil
1989年アメリカ スーザン・シーデルマン監督

わざわざレンタル店で借りてくるよりは、
偶然深夜TVで放映されたものを見たら、意外とおもしろかった、
そんな感じの出会い方をしたい映画です。
(私はわざわざビデオを借りましたが)

リッチでハンサムな会計士ボブの妻は、
肥って冴えない、しかも家事能力もゼロのルース(ロズアン・バー)です。
……まあ、こんな妻なら浮気されてもしゃーないと思っていると、
ボブは、美人で売れっ子の
ロマンス小説家メアリー(メリル・ストリープ)と当然のように浮気をしま
す。
パーティの席で粗相をしてしまったルースの後始末で、
ボブがワインの染み抜きについての知識を披瀝し、
「あら、よく御存じですのね」とか何とか近づいてきたのが
メアリーでした。

メアリーとの浮気が発覚しても、「女としての自覚ゼロ」だの
「このシーデビルめ!(メスの悪魔)」だのと、
きつい言葉で責めたてる夫に、ルースは復讐を誓うのでした。
(あ、もちろん愛人に対しても)

夫のののしりはあんまりだと思いつつ、
愛される努力もせずに、のうのうと暮らしているルースに
反感を覚える人もいるかもしれません。
けれど、嬉しくなっちゃうことに、メリル演じるメアリーが、
一見美しくエレガントな女性ですが、とんだ食わせ者だったりします。
最初はルースにいらいらついたり、腹を立てたりしても、
しまいには、彼女の逆襲の数々に拍手を送りたくなります。

笑える復讐劇であると同時に、
女性の社会的自立もさらっと扱っていました。
外に働きに出たルースは、
勤務先で知り合った
フーパー(リンダ・ハント)という女性とともに、
会社を興すまでにたくましくなります。
ことさらそこを強調した表現はしていなかったものの、
御存じのとおり、リンダ・ハントはあのルックスですし、
(美人とはいえないし、染色体の異常による短身で)
中年で、いいように安く使われ、踏みつけにされている女性でした。
最初はおどおどしていたフーパーも、
アグレッシブなルースに引っぱられるように強くなっていきます。
そして、同じような境遇の女性と手を結ぶのですが……。

男性には、いささか不愉快な作品かもしれませんが、
一緒に見た相方は、結構素直におもしろがっていました。
(といっても、10年以上前なので、多分忘れているでしょうが)
身につまされて、思いっきり感情移入するのも悪くないけれど、
ただ単におもしろがるというのは、映画ならではだと思います。


2002年06月11日(火) 勇気あるもの

勇気あるもの Renaissance Man
1994年アメリカ ペニー・マーシャル監督


原題がいいなあと思います。「ルネッサンスマン」。
映画の内容を考えると、ちょっと大げさな気もしますが、
悪くありません。
(少なくとも、意味不明の邦題よりずっといいはず)

広告マンのビル(ダニー・デビート)は、
仕事の失敗から、失業してしまい、
別れた妻と暮らす最愛の娘に、
メキシコに天体観測に行きたいので、協力(金銭的にね)してくれと
言われても、ついつい失業のことが言えず、
「星なんか見て何になる」と突っぱねてしまいます。

とりあえず、次の職!と思っても、なかなかうまくいかず、
職安の窓口の女性とはなじみになってしまうほどですが、
大卒で学のある人と思われたのが幸か不幸か、
斡旋された職は教師、それも陸軍の落ちこぼればかりのクラスを
受け持つというものでした。

クラスの面々は、いかにも生意気そうなのから、
自分を正しく評価できないため、状況に不満たらたらの者、
劣悪な環境から逃れるように軍隊入りした者など、
ちょっと手ごわいものでしたが、
ビルは、ちょっと見には関係なさそうな
シェークスピアの『ハムレット』を
授業で講読させ、そこから酌み取れるさまざまなメッセージを
生徒たち自身に置き換えて考えさせることで、
柄にもない「人間教育」を指南するのでした……。

生徒の1人に、まだ若々しいマーク・ウォルバーグがいましたが、
彼の持ち味は、あのイモっぽさなので、
「当時から光っていた」という印象は、そう強くありません。
(と思っているのは、私だけでしょうか)

何をやってもうまいD.デビートが、
お約束の自己啓発系アメリカ映画の薄っぺらさを救っています……
などと、素直でない言い方はよしましょう。
素直に「いい映画を見たなあ」と思いたい作品です。



2002年06月10日(月) 誓いの休暇

誓いの休暇 Ballad of a Soldier
1960年旧ソ連 グレゴリー・チェフライ監督


第二次大戦下、若い通信兵アリョーシャは、
「偶然」に手柄を立て、何か褒美を与えようと言われて、
「屋根修理に手が要るようなので、家に帰りたい」と申し出ます。
戦時下の混乱で、往復だけでも時間がかかるだろうと予想されたので、
行きに2日、屋根修理に2日、帰りに2日、計6日の休暇をもらいます。
最初はそれで十分に思えたのですが、人の好いアリョーシャは、
道中、困っている人に手を貸したりしているうちに、
どんどん休みを消化してしまいます。
彼は、帰りを待ちわびる母親に会えるのでしょうか……。

短い時間に淡々とおさめられ、
シビアでいながら心優しい、優れた人間ドラマでした。
アリョーシャは確かに好人物です。
いい人というよりは、ちょっとお節介かもと思うような場面もありました。
が、人間誰しも、あの状況ではああかもなあと思わせるような、
本当に「ごく普通のあんちゃん」ぶりが暑苦しくなく、
超人的な感じではないので、感情移入しやすいかと思います。
干し草を積んだ貨物列車の中で知り合った、
若い女性シューラとのやりとりも、映画にいい味付けをしています。


2002年06月09日(日) 映画よろず屋週報 Vol9 2002.6.9

*****映画よろず屋週報 Vol9 2002.6.9**********************

皆さん、この1週間、いかがお過ごしでしたか?
私は、気温30℃超の炎天下を調子に乗って出歩いていて、
脱水症状・熱中症一歩手前になりました(アホです)。
時節柄、麦茶入り水筒はお出かけのマストアイテムです。

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特集「Johnny,be good!」

6月9日は、ジョニー・デップの誕生日です。
あの、中性的と言いたいほど整った、贅肉のない顔と、
独特の存在感にはファンが多い……ので、
これを読んでいらっしゃる方の中には、
私よりも熱心て、彼についてよく御存じのファンも多いことでしょう。
そこで、ひょっとしてファンでも見落としがちかもしれない作品を
御紹介いたしたいと思います。

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クライ・ベイビー Cry-Baby
1990年アメリカ ジョン・ウォーターズ監督

アメリカが誇るベテラン変態監督ジョン・ウォーターズによる
50年代を舞台にしたミュージカル・コメディー。
肉親にまつわるトラウマを抱えて成長した設定のデップは、
「愛を求めて泣く赤ん坊」になぞらえ、
“クライ・ベイビー”と呼ばれる
孤独で心優しい青年を好演しました。

ドンファン Don Juan DeMarco
1995年アメリカ ジェレミー・レビン監督

最近話題になった『光の旅人 K-PAX』に通ずるところのある
虚言癖か否かの判断が難しい風変わりな青年が、
デップの役どころです。
タイトルから想像がつくとおり、
デップは女性を愛しまくる役どころですが、
失恋のショックで自殺を図ろうとします……。
あんな美青年の色情狂患者?がいてもいいけれど、
余りにも線が細く、表情もあんななので、何だか彼って淡白そう…
彼の話を聞いて「好影響」を受ける精神分析医をマーロン・ブランドー、
夫からその「恩恵」を受ける妻をフェイ・ダナウェイが演じています。
ブライアン・アダムスが歌った
“Have You Ever Really Loved a Woman”の、
ギターの音色も美しく耳に残ります。

エド・ウッド Ed Wood
1994年アメリカ ティム・バートン監督

デップの友人であり、相性もいいと見受けるティム・バートンの監督作。
「アメリカ映画史上最低の映画監督」とまで言われる
エド・ウッドのトンチンカンでおかしくも切ない生きざまを描いた、
ちょっといい話です(もちろんデップがエド・ウッド役)。

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お誕生日1週間(6月9日〜15日)
6/9 ジョニー・デップ(1963)
6/10 リーリー・ソビエスキー(1982)
6/11 ジーン・ワイルダー(1935)
6/12 トニー・レオン(1962)
6/13 ステラン・スカルシュゲール(1951)
6/14 トレイラー・ハワード(1966)
6/15 ヘレン・ハント(1965)
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2002年06月08日(土) 幸福(しあわせ)

6月8日の花はクチナシ、花言葉は私は幸せです。
かなり以前にテレビで見た、こんな映画を思い出しました。

幸福(しあわせ) le bonheure
1965年フランス アニエス・ヴァルダ監督


映画・小説・歌、何でもいいのですが、
内容がタイトルとは全く逆で、どんな意図でつけられたのかを
ついつい深く考えてしまうということが、しばしばあります。
これも、そんな1本でした。

どこにでもありそうな、ある幸福な一家、
すなわち、「庶民で、地に足がついていて、
特に美男美女ってわけでもない夫婦、かわいい子供」
そんな、ある種どっしりしたものを描きつつ、
なんとも映画全体に儚げな雰囲気が漂っていました。

それが意味を持つのは終盤です。
夫は妻を愛していながら、ほんの出来心から浮気をしてしまい、
妻は、その告白を、一家でのピクニックのときに打ち明けられます。
冷静に受け止めた妻でしたが、
その次の日曜日、同様にピクニックに出かけた先で、
妻が姿を消してしまいました。池に落ちて亡くなっていたのですが、
目撃者もなく、事故か自殺か全く判断がつきません。

強い後悔の念にさいなまれる夫でしたが、
その後、彼は……(ネタバレエリア突入〜)

「しあわせ」という言葉が、
一体誰にとって最も重要な単語だったのか、

見る者に判断を迫るわけでもなく、淡々と語られ、淡々と終わります。
だからこそ、考え込んでもしまいます。

50〜60年代のフランス映画で、
こうした漢字2文字のタイトルのものが結構ありますが、
(『ビバヒル』のエピソードタイトルみたい)
そもそもの原題がle bonheure(幸せ)の意味ですので、ほぼ直訳です。
最近は、特にアメリカ映画の
ムードのない邦題への批判がかまびすしいけれど、
そもそも原題の方にも問題がありそうだし…
そこいくと、思えばフランスを初めヨーロッパの映画は、
直訳タイトルで納得の作品が結構あります。
単に言葉のセンスの問題でしょうか、ね。


2002年06月07日(金) ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
Knockin' on Heaven's Door

1997年ドイツ トーマス・ヤーン監督


普通、主要登場人物の誰かが「死ぬ」と書くと、
それだけでネタバレのおそれがあるものですが、
この映画は、対照的な人生を歩んできた2人の男の、
「死を前提とした」アクションコメディーなので、
その点だけは、安心して書いてしまえます。
(ただし、どちらが先に死ぬかは伏せておきましょう)

ともに難病で余命幾許もないマーティン(ティル・シュバイガー)と
ルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)が出会ったのは、
病院の病室でした。
「天国では誰もが海の話をするんだぜ」とマーティンが言うと、
ルディは海を見たことがないと答えます。
それは大変だ!天国で話題についていけない!
2人は病院の駐車場で車を盗み、海を見にいくことにしますが、
その車がちょっといわくつきのものだったので、
思わぬ騒動に巻き込まれてしまいます。
(メルセデスって、本国でもコワモテの人が乗る車なのかな?)

確かに、この2人は早晩(下手すると映画が終わる前に)
死んでしまうんだよな〜という前提で見ていると、
自動車泥棒のみならず、資金調達のため強盗にまで手を染め、
その金で豪遊する姿すら涙を誘ってしまうような、
ちょっと卑怯なつくりかもしれないのですが、
決して湿っぽくはなりません。
そしてまた、「それだけに…」という言い方もできます。
(やっぱり卑怯だ…)
ここまで書いておいてナンですが、
ぜひとも構えずごらんになってくださいませ。

ルディを演じたJ.J.リーファースのお坊ちゃん顔も捨てがたいけれど、
ここはやっぱり、マーティン役のT.シュバイガーがお勧めです。
最近は、アメリカ映画でも見られる顔になってきましたが、
日本でいえば遠藤憲一さん風の、ちょっと荒削りな男くささで、
作品にさえ恵まれれば、もっと人気が出そうな気がします。

本日この映画を選んだ理由は…
一昨日(6月5日)の「ヤングガン」とほぼ一緒で、
「な行のindexが寂しかったので、映画をふやしたかった」からです。
まことに失礼いたしました。


2002年06月06日(木) アダム・サンドラーは ビリー・マジソン/一日一善

6月6日は、「兄」の日です。
このDailymovie(旧・ML「日刊きょうの1本」)を始めて以来、
3の倍数月の6日は「兄弟姉妹の日」にやたらこだわっていますが、
去年は「兄にしたいスターNo.1」の
ジョン・キューザック氏に登場いただいたので、
きょうは、「あ、これまだ取り上げてなかったっけ」ということもあり、
「兄にしたいスターNo.2か3」の、この人の主演作を。

アダム・サンドラーは ビリー・マジソン/一日一善
Billy Madison

1995年アメリカ タムラ・ディビス監督


27歳のビリー・マジソン(アダム・サンドラー)は、
ホテル王の息子でありながら、崩れた生活を望み、
よれっとした服装で、余り柄のよくない(でも人はいい)連中と
気ままに毎日を過ごしていました。
まあ、ありていに言ってバカ息子です。

一応、高校は卒業していますが、
実は、父親が金に物を言わせて卒業させていたことがわかり、
ショックを受けます。
一方、大嫌いなエリック(ブラッドリー・ウィットフォード)が
会社の乗っ取りを企んでいると知り、
自力で小学校1年生から高校卒業まで全うしたら
跡を継がせることを考える…という父の条件を呑み、
1学年につき2週間という短期間で、学業修了に挑みます。
修了後は、エリックとの直接対決も待っていました。

極めてアホな設定なのですが、アホに徹しているのが清々しく、
例えば、1学年修了するごとに、
ホームパーティーを派手にぶち上げたりします。
(ロックバンドに自分を讃える歌を歌わせたり…バカだねー)

小・中学校では、友達ができたり、校長に気に入られたり、
3年時の担任ヴェロニカ(ブリジット・ウィルソン)が恋人になったり、
そこそこ楽しく過ごしていたのですが、
高校ともなると、いじめっ子だった「現役時代」から一変、
今度はただのバカとして蔑まれる存在になります。
ヴェロニカからは、励まされると同時に、
これでいじめられっ子の気持ちがわかったのでは?と言われ、
高校時代に自分がいじめていたダニー(スティーブ・ブシェミ)に
謝罪の電話を入れたりします。

ビリーが半年ほどのスピード学校教育履修で得たものは、
思ったよりも大きかったようで、
彼は、打倒エリックに燃える一方、ある大切な決断をしていました。

(当然のように)日本未公開作品ですが、
ビデオやテレビでごらんになれるチャンスも多いかと思います。
スティーブ・ブシェミは、少ない出番で強いインパクトを与える役ですが、
残念ながら、アンクレジットです。
でも、見れば「あ…」と思ってしまうような登場シーンではないかと。
拾い物的な1本として、強くお勧めします。


2002年06月05日(水) ヤングガン

ヤングガン Young Guns
1988年アメリカ クリストファー・ケイン監督


当時のアメリカ青春映画系イケメン軍団が勢ぞろいの、
婦女子にとっては眼福モノの痛快娯楽ウェスタンでした。
(私は当時、チャーリー・シーンのファンだったという理由で
見にいきました)

血の気の多いボニー(エミリオ・エステベス)、
冷静沈着なリチャード(C.シーン)、
インテリでロマンチストのドク(キーファー・サザーランド)、
ネイティブの血を引くチャベス(ルー・ダイアモンド・フィリップス)ら6人は、
英国人牧場主(テレンス・スタンプ)のもとで働く仲間です。

ある日、恩ある牧場主を殺されてしまい、
復讐を誓ったヤングガンズ(若きガンマンたち)
旅に出るのでした。

「21年の生涯で21人の人間を殺した」という伝説のある、
かの有名な西部のならず者ビリー・ザ・キッドの初期の「活躍」ぶりを
この映画のメンツの中では、それまで最も優等生タイプだった
エミリオ・エステベスが熱演しました。
正式な役名はWilliam H. Bonney…ビリーはウィリアムの愛称ですね。
無節操に無邪気にガンをぶっ放している姿には、
どこかかわいらしささえ漂います。

もちろん、過去につくられた数々の西部劇の傑作とは
並べて論じるのも無理な話なのですが、
忠誠心、友情、恋、そして西部の独特のロケーションの美しさや
民族問題まで包含し、
若々しいスターとベテラン勢をバランスよく組み合わせた、
愛すべき映画に仕上がっています。
……と、西部劇というものをほとんど見たことがなく、
この映画も「たまたま」見てしまった私が言っても、
全くもって説得力を欠くのですが、まずはお試しくださいませ。

ところで、どうして本日この映画を唐突に持ち出したかといえば、
「Dailymovie」のindexに「や行で始まる映画が少ないなあ」というのが
一番の動機でした。

なお、この2年後、『ヤングガン2』も製作されました。
私はこちらはまだ見ていないのですが、
音楽担当に「みんなで歌えるハードロック」で人気の
「ボン・ジョヴィ」のフロントマン、ジョン・ボン・ジョヴィの名が
あることもあり、意外と2作目の方が話題になったのではと思います。


2002年06月04日(火) 隣のヒットマン

きょう6月4日から10日まで、歯の衛生週間です。
そこで、主人公の職業(歯科医)が、
実は何気なくしっかり生かされた設定になっていた、
こんな作品はどうでしょうか。

隣のヒットマン The Whole Nine Yards
2000年アメリカ ジョナサン・リン監督


愛し合って結婚した……はずなのに、
今や、お互いに死んでくれたら清々するとまで思い合っている
歯科医オズ(マシュー・ペリー)と
その妻ソフィー(ロザンナ・アークェット)の朝は、
きょうも元気にイヤミの飛ばし合いから始まります。

歯科医の娘のところに婿入りし、義父の残した負債を返すために
ひいひい言いながら働くオズに、助手のジル(アマンダ・ピート)は
「あんな悪妻、殺っちゃえば?」などと物騒なことをけしかけるし、
隣の家に越してきた男(ブルース・ウィリス)の腕には、
よくよく見るとチューリップのタトゥーが…
それは、ハンガリー・マフィアの大ボスを裏切って有名になったヒットマン、
ジミー・ザ・チューリップと呼ばれる男の目印でした。
人の好いオズは、ジミーがつき合ってみると結構いい奴だと知りますが、
金の亡者ソフィーは、ジミーが賞金首になっているのに目をつけ、
彼を使って金儲けしようと画策します。

考えてみれば、賞金目当てでマフィアと渡り合おうという発想自体、
もはやカタギではないという気もするのですが、
余りにも次から次へと非日常的な(しかも物騒な)ことが起こるので、
誰がおかしくて誰がまともか、だんだんわからなくなってくるのも、
この映画のおもしろいところです。
カタギの商売の人間が、マフィアのいざこざに巻き込まれる話では、
ほかに『アナライズ・ミー』というのもありましたが、
個人的には、この『隣のヒットマン』の方がおもしろかったと思います。
歯科医という職業がどう生かされていたかは、
ごらんになってみてください。

私はDVDで見たのですが、これからDVDでごらんになる方、
努々特典映像の方からごらんになりませんようお気をつけください。
メーキングどころでなく、逐一「このシーンは○○だった」と
監督みずからの解説によるネタバレがたっぷり用意されています。
途中で嫌になってやめましたが、多分、徹頭徹尾だったと思います。
それも、ここは予算が少なくてドウノコウノと、
これって香港映画だったっけ?と勘違いしそうな言い訳多し。
音楽に対するひとかたならぬこだわりはわかりましたが…

しかし、ロザンナ・アークェットという女優は、実は1959年生まれで、
マシュー・ペリーより実年齢で10歳も上なのですが、
何となく同年代の夫婦として違和感がないのには驚きます。
彼女の崩れた感じの色香にだまされているのか、
マシュー・ペリーがオヤジくさいのがいけないのか……
『微笑みをもう1度』でも、
8つも年下のサンドラ・ブロックの同級生でしたし、
とりわけ若く見えるわけでもないのに、このパターン多いですね。


2002年06月03日(月) ビューティフル・マインド

本日6月3日の花はかすみ草、花言葉は清らかな心です。
そこで、ちょっとニュアンスが違う上に、
そもそも何でこのタイトルなのかはわからないものの、
まあ秀作っちゃ秀作だわなあと思ったこの作品をどうぞ。
(素直でない前振りで申しわけありません)

ビューティフル・マインド A Beautiful Mind
2001年アメリカ ロン・ハワード監督


実話をもとにしている…と言いつつ、
かなりひどい映画的演出(都合の悪いことにはノータッチ)だと
後々批判の対象にもなったようですが、
映画への評価としてそれを持ち出すのは、フェアでないように思えます。
関係者とのもめ事は、映画製作サイドにお任せして、
この映画の持つエンターティンメントとしての魅力を
堪能すべきではないかと思います。

1947年、プリンストン大学に、
優秀な奨学生ジョン・ナッシュ(ラッセル・クロウ)が入学しました。
彼は、「頭は2つ、ハートは半分」などと揶揄されたことがあるほど
その優秀な頭脳とは裏腹に、とっつきにくい男でしたが、
ひょんなことから見出した「理論」が、
その後の経済学・経営学等に大いに影響を与えるところとなり、
無理だと言われていた志望の研究所への入所を果たしました。

講師として教壇に立ったことがきっかけで、
美しく聡明なアリシア(ジェニファー・コネリー)と出会い、結婚しますが、
その一方で、謎の男(エド・ハリス)に暗号解読能力を買われ、
ソ連(当時)の軍事的暗号解読を依頼されます。
しかし、その男の正体は……。

現在は統合失調症の名称を使うよう奨励されているようですが、
「精神分裂症」と言われた症状に悩む男を
ラッセル・クロウが熱演!ということがやたら流布されていて、
おいおい、これってネタバレじゃないのか?とも思ったのですが、
この映画自体が壮大なるネタバレのかたまりですので、
残念ながら、多くを語れません。
端々に見えるユーモラスな描写、謎の男の不気味さ、
ナッシュ博士とその妻の統合失調症との長い闘いなどなど、
飽きさせないつくりになっておりますので、
第一級の娯楽作品としてお勧めできます。

参考までに……
2001年度米国アカデミー賞において、
作品賞、監督賞、助演女優賞(ジェニファー・コネリー)、脚色賞を、
BAFTA(英国アカデミー賞)においては
主演のラッセル・クロウとジェニファーがカップル受賞しました。


2002年06月02日(日) 映画よろず屋週報 Vol.8 2002.6.2

*****映画よろず屋週報 Vol.8 2002.6.2**********************

皆さん、この1週間、いかがお過ごしでしたか?
またまた日曜日がやってまいりました。
ユリノキマリがお届けする「映画よろず屋週報」に、しばしおつき合いを。

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             特集「映画の中の花嫁たち」

6月の第一日曜日は「プロポーズの日」だそうです。
恋愛の次は必ず結婚とは言いませんが、
(人生の墓場とまで言う人もいるし…)
ゴールの1つであることは確かです。
ジューンブライド(6月の花嫁)という言葉もありますし、
映画の中で見られた婚礼のシーンや、ウェディングドレス姿、
あるいはプロポーズのシーンをちょっと集めてみました。

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シャレード Charade
1963年 スタンリー・ドーネン

よくできたロマンチックサスペンスだけに、
今までネタバレをおそれて取り上げられなかった本作ですが、
この映画で、ヘプバーンが「すてきさん」から求婚されたときの
反応がかわいらしくて好きです。

ウェディング・バンケット
The Wedding Banquet

1993年アメリカ=台湾 アン・リー監督

日本語に訳せば、要するに「結婚披露宴」。
それだけに、披露宴のシーンはかなり重要なウエートを占めています。
NYを舞台に、台湾人ウェイトンと米国人サイモンのゲイのカップルと、
ウェイトンとひょんなことから偽装結婚する台湾人女性の
何とも不思議なバランスを見事に表現した秀作でした。
ゲイとヘテロ、お国柄など、さまざまな違いの中に、
「共通の、とってもいいもの」が見られます。

ゴッドファーザー The Godfather
1972年アメリカ フランシス・F.コッポラ監督
ディア・ハンター The Deer Hunter
1978年アメリカ マイケル・チミノ監督

モチーフも何も全く違う映画ですが、
こと結婚パーティーの描写に関しては、
ほぼ同じような、何ともいえない荘厳さを感じました。

プロポーズ The Bachelor
1999年アメリカ ゲイリー・シニョール監督

バスター・キートンの『キートンのセブンチャンス』のリメーク
…らしいのですが、
いかんせん私、オリジナルを見ておりません。
クリス・オドネルが、大富豪の遺産を相続するために、
期限までに花嫁を迎えなければならないものの、
最愛の恋人レニー・ゼルヴェガーへのプロポーズは全くうまくいかず…
マライア・キャリー、ブルック・シールズなど、
変に豪華な脇が笑わせます。
ウェディングドレス姿の女性が大挙してやってくるシーンは、
鬼気迫るものがありました。

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お誕生日1週間(6月2日〜8日)★は故人
6/2 ジョニー・ワイズミュラー(1904−1984)★
6/3 アラン・レネ(映画監督・1922)
6/4 アンジェリーナ・ジョリー(1975)
6/5 マーク・ウォルバーグ(1971)
6/6 ジョン・リスゴウ(1945)
6/7 リーアム・ニースン(1952)
6/8 ロベルト・ロッセリーニ(映画監督1906−1977)★
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2002年06月01日(土) ワンダー・ボーイズ

今日6月1日は、マリリン・モンローの誕生日(1926)に因む
マリリン・モンローの日です。
最近見たこの映画でも、
「モンロー」がちょっとしたキーワードになっていました。

ワンダー・ボーイズ Wonder Boys
2000年アメリカ カーティス・ハンソン監督


デビュー作が高い評価を得た後が続かない、
小説家で大学教授のグラディ(マイケル・ダグラス)は、
妻に逃げられ、女子学生ハンナ(ケイティ・ホームズ)と同居し、
学部長サラ(フランシス・マクドーマンド)と不倫関係にある、
そういうよくわからん男です。
その上、いい年をしてドラッグに頼って自己逃避する姿は、
「巻き込まれる男」にぴったりです。

そんなグラディの周囲にいる人間もまた、
何となく「浮いた」人が多く、
特に、彼が担当する創作クラスのジェイムズ(トビー・マッガイア)は、
才能はあるものの、とにかく気が滅入るような話を書く天才で、
しかも、映画人の「自殺の歴史」には誰より詳しいという青年です。
(しかも、必ず頭文字のアルファベット順に言ってしまう習慣があるのが、
何となく笑いを誘います)
彼が、映画の趣味が合うハンナと親しくなったことで、
ハンナと近しいグラディにも接近し、
しかも、グラディの担当編集者で同性愛傾向ありそな
テリー(ロバート・ダウニーJr.)にも気に入られます。
が、ちょっと陰気なおとなしい青年かと思っていたジェイムズは、
とんでもない嘘つきの上に、何をしでかすかわからない
食わせ者でした。

その「何をしでかすか…」には、サラがオークションで競り落とした
モンローがディマジオとの結婚当時に着ていた丈の短いジャケットを
盗んでしまうというのもありました。
「彼女は小さい人だった。知っている人は少ないけれども…」
そう言いながら、そのジャケットに触れて涙するジェイムズは、
その後、さらにとんでもないことをやらかし、
グラディを災難に次ぐ災難の世界へと誘うのでした……。

役者としてのトビー・マッガイアも、位置づけのよくわからない人です。
抜群に勘のいい人ではありますが、
時に知的に見えたり、トロそうに見えたり、
イモっぽかったり、結構ハンサムだと思えたり、
その正体が全くつかめません。
そんなところがジェイムズの役柄に合っていたと思います。

乾いたタッチのコメディーで、相当皮肉な話ではありますが、
「人生、捨てたもんじゃないかも」と思える展開にも、
捨てがたいものがあります。
ボブ・ディランの枯れた感じの主題歌もいい雰囲気でした。


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