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いつものように、 座右の書ならぬ座右のウェブサイト「きょうは何の日」を 覗きましたら、10月24日に次のような項目がありました。
「1931年アメリカ・シカゴのギャング、 アル・カポネに有罪判決」
…そうしたらホレ、あれしかないでしょう。
アンタッチャブル The Untouchables 1987年アメリカ ブライアン・デ・パルマ監督
アメリカ禁酒法時代、財務省捜査官エリオット・ネスが、仲間とともに 悪の帝王アル・カポネを追いつめるという往年のTVシリーズを、 ブライアン・デ・パルマが絢爛豪華に映画化した、 非常に娯楽色の強い、「お腹一杯」アクションです。 (余談ですが、『アパートの鍵貸します』の中で、 電話交換手の女性がデートに誘われ、 『アンタッチャブル』が見たいから×だと断るシーンがありました)
ブレイク前のケビン・コスナーが、 清潔感たっぷりに正義漢のネス役を演じています。 テレビドラマでは独り身という設定だったようですが、 映画では妻子持ちで、 マフィアの抗争に子供が巻き込まれたことに胸を痛める市民感覚を、 「いかにもよき父、よき夫」のムードで醸し出していました。
彼を支えるのがショーン・コネリー(オスカー助演男優賞受賞)に アンディ・ガルシアときたもんです。 カポネを脱税容疑で挙げようというアイディアを出す税理士役は、 チャールズ・マーティン・スミス。 どうしても、リック・モラニスあたりとキャラが被りそうな御面相ですが、 監督作も多く、なかなか多彩な人のようで、 この映画でも、その憎めない個性を発揮していました。
で、アル・カポネになり切ってしまったのは、 元祖カメレオン俳優のロバート・デ・ニーロでした。 どうやらデ・パルマ監督とは旧知の間柄だったようですが、 楽しそうに悪役を演じている姿には貫祿を感じましたが、 当時まだ40代で、具体的にいえば、 今のトム・ハンクスやティム・ロビンスくらいの年齢だったかと……。 人間、30〜40代ともなると、本当に「個体差」が激しいなあと 改めて思います。 (ニコラス・ケージとキアヌー・リーブスとブラッド・ピットって、 おんなじ1964年生まれなんですよね…)
どうしても、それなりに凄惨なシーンは登場するし、 「大きなミスを小さなミスでごまかす」ような デ・パルマタッチも随所に見られるのですが、 そんなに悪い映画ではないと思います。
人間関係にヒューマンな温かさを感じさせるし、 時代背景を彩るアルマーニ提供の衣装あり、 エンリオ・モリコーネの音楽あり、 独特の香気を放つ、快作といっていい1本だと思います。 個人的には、 警察学校生アンディ・ガルシアの瑞々しさが印象に残ります。 射撃練習中のグレーのスウェット姿が本当にキュートでした。
ちなみに、脚本を担当したデビッド・マメットの名前は、 どちらかというと演劇がお好きな方で、 名前を御存じの方もいらっしゃるのでは? 三谷幸喜が尊敬する人の1人だそうです。 映画監督としても、 『スパニッシュ・プリズナー』などを撮っています。
2001年10月18日(木) |
ブロードキャスト・ニュース |
1985年10月18日、テレビ朝日系のワイドショー 「アフタヌーンショー」が、いわゆるやらせ発覚を受けて 打ち切られるという事件がありました。
というわけで、本日はテレビ業界を描いたこちらの映画を。
ブロードキャスト・ニュース Broadcast News 1987年アメリカ ジェームズ・L・ブルックス監督
アカデミー賞の明暗とでも申しましょうか、 公開当時は結構話題になった覚えがあるのですが、 (おっきな劇場でやってくれたし…不入りだったみたいですが) 後々まで話題になるタイプの作品とはなり得ませんでした。 1987年度のアカデミー賞で、主要部門にノミネートされ、 ことごとく振られた作品でした。
全体のトーンは、元気のいい大人のラブコメです。
顔はいいけどおつむが弱い(ことを本人も気にしている)男、 頭はいいけど華がないため、なかなかいい仕事がこない男、 そして、2人から愛される活発で知的な女性を、 それぞれウィリアム・ハート、アルバート・ブルックス、 そしてホリー・ハンターが好演しました。 3人がどのような子供時代を送ったか?というエピソードを見せる 冒頭の場面も愉快です。
3人は、恋に仕事に、 自分の能力を生かしたり生かしきれなかったりしながら、 それぞれの道を歩いてゆくのでした…
と書いたら、何だか書くことがなくなってしまいました。 逆に、本筋とは余り関係なさそうなところで登場する、 脇役級の皆さん方が印象的です。 例えば、人形のようなルックスのジョーン・キューザックは、 ハンターに無理難題を押しつけられ、 「私が賞獲ったからって妬んでるのね」とかみつきながら、 けなげに要求に応えようと、まさに走り回っていましたし、 はっきり言ってチョイ役だったジャック・ニコルソンの、 辺りを払うような貫祿は最高でした。 ハートと関係を持つ女性キャスターを演じたのは、 お懐かし『追憶』(73)で、レッドフォードの女友達の1人を演じた ロイス・チャイルズ。年とってもそれなりにきれいです。 (でも、やっぱり報われません)
「これなら『マーフィ・ブラウン』の方がおもしろいわー」とか、 「ホリー・ハンターって昔からオーバーアクトだったのねー」とか、 正直言って、ツッコミどころは満載なのですが、 テンポのよさ、愛すべき脇役さんたち、印象に残るシーンなど、 好きになれる要素もたくさんある映画なので、 取り上げさせていただきました。
1920年10月17日、俳優のモンゴメリー・クリフトが 生まれました(1966年7月23日没) そこで、彼の出演作から、この映画を取り上げましょう。
陽のあたる場所 A Place in the Sun 1951年アメリカ ジョージ・スティーブンズ監督
原作は、セオドア・ドライサーの『アメリカの悲劇』
貧しい青年ジョージ(M.クリフト)が、 美しい金持ちの娘アンジェラ(エリザベス・テイラー)と 愛し合い、結婚を考えるまでに…と、 途中までは、青春恋愛映画の雰囲気もたっぷりですが、 実はジョージには、アリス(シェリー・ウィンタース)という恋人がいました。 この三角関係から、悲劇が起こります。
アンジェラを愛してしまったので、 アリスとはもうつき合えないと話し合おうにも、 アリスはジョージの子供を既に身籠もっていて、 ジョージは何らかの責任をとるべき状況に追い込まれます。
そうした状況下、ジョージはアリスとボートに乗りますが、 その舟が転覆、アリスは溺れ死んでしまい、 ジョージはアリスの殺人容疑で裁判にかけられます。 ジョージが第一級殺人有罪となったら死刑になります。 さて、裁判の行方は? そして、ジョージとアンジェラの仲は?
この映画で最も分が悪いのは、 実は同情されてしかるべき立場のアリスではないでしょうか。 ジョージには確かに逆玉狙い的な野心はあるのですが、 アンジェラの華のある美しさや好ましい性格に惹かれるのは 当然に見えてしまうので、 ジョージとアンジェラの恋愛を純粋に見守りたい気持ちになります。 それは、アリスを気の毒と思う気持ちを超越してしまいました。
「僕は世界一の幸せ者だ」とジョージがアンジェラに言えば、 アンジェラは、「私の次にね」と返します。 ジョージが殺人容疑で裁判にかけられたときも、 アンジェラはジョージを支えようと腐心しました。 もちろん、ジョージの身勝手さを腹立たしく思いながら ごらんになる方もいるでしょうが(私もそれはそうでしたが)、 それでも、2人の仲は本物だなあと認めざるを得ないのです。 酷な話ですが、何しろ絵になるカップルである2人に対し、 必要以上に地味に見えるアリス=ウィンタースですから、 かわいそうというか、哀れというか……
裁判でジョージを追い詰める地方検事役は、レイモンド・バー。 まだ若かった彼が、まさに熱演していました。 「弁護士ペリー・メイスン」でもおなじみの方ですね。 法曹界で活躍する人物が似合うようで。
映画に男女がそろって出てくる以上、主軸か添え物かの違いはあれ、 恋愛が描かれるのが「普通」なのだとしたら、 こんなビターな恋愛物語も、たまにはお勧めします。
1927年の10月16日、ドイツの作家ギュンター・グラスが生まれました。 1999年のノーベル文学賞受賞も記憶に新しいところですが、 本日は、この人の代表作ともいえる作品の映画化を御紹介しましょう。
ブリキの太鼓 Die Blechtrommel 1979年ドイツ=フランス フォルカー・シュレンドルフ監督
とにかく…ひたすら「気持ち悪い」映画です。 グラス世界の精神性や、描かれた時代背景も正確に理解せずに こう言い切ってしまうのも葛藤があるのですが、 本当なので仕方ありません。 なので、まず原作を読んでから見るべきという向きもあるようですが、 こういう作品だからこそ、まず映画を見た方が、 原作を読んだときの理解が早いような…とか言っている私は、 原作未読の状態ですし、この先読むかどうかもわかりません。
このMLでも何度か触れたことがありますが、哀しいことに、 ドイツ第三帝国、例のチョビひげの小柄な男、その男の所業…は、 数々の文学・映画の傑作も「産んで」しまいました。 この作品も、そんな1本です。
不思議な出生をしたものの、美しく成長したアグネスは、 親ナチ派ドイツ人のマツェラートと結婚し、 1924年、ダンツィヒ自由市(現在のグダニスク)でオスカルを出産し、 3歳の誕生日にブリキの太鼓をプレゼントしようと考えます。
オスカルは、その誕生日当日、3歳児の目と頭で、 母アグネスが、いとこの男性と浮気をしていることを悟り、 大人社会の嫌らしさ、汚らわしさに嫌気がさして、 みずから成長を拒否してしまいます。
体の成長を3歳児でとめたまま、頭の中身だけ育っていくオスカルは、 世のナチス台頭に代表される数奇な運命に翻弄され、 ブリキの太鼓を演奏しながら奇声を発してガラスを割るなどの超能力もあって、 世間からは決して好意的に見られることなく生きてゆきますが、 徹底的に透徹した目線で世の中を見据え、 最後にはある決断をするのでした…。
作中、オスカル少年はナレーションも担当します。 その中で、何度も「かわいそうなママ」と表現されるアグネスが、 いとことの情事の末、望まぬ妊娠をして、 ひどいつわりの最中、生のニシンをむさぼり食うシーンがありました。 あれなんかもう、「うげーっ」でしたねえ。 (何かを象徴するシーンなのかもしれませんが、 そんなこと考えさせるゆとりもないグロさ) と同時に、ヨーロッパ人ってやっぱりニシン食べるんだなあと 妙に納得もしました。
こうしたシーンとか、妙に有名なオスカル少年の奇声とか、 そういうシーンばかりクローズアップされると、 やはりキワモノぶりが際立つのですが、 それだけの映画でなかったなあということは、 見た後何年かして思い返すと、何となくわかってくるかと思います。
たしか、当時の「日本アカデミー賞」の最優秀外国映画賞も、 この作品が受賞したかと思うのですが、 授賞式をテレビで見ていたら、やっぱりそういうシーンばっかりを ダイジェストで流すものですから、 子供心に「きしょい映画だなー」と思った覚えがあります。 (もちろん、当時は↑こんな言葉はなかったけど) が、成人してから改めて見たら、 気持ち悪いからこそ伝わるものがあるんだと、 そういう方向に考えられるくらいにはなりました。
あんまりありがたくない?日本アカデミー賞はともかく、 '79年カンヌ映画祭グランプリ、'80年アカデミー外国語映画賞と、 いわば映画賞のビッグ2を獲得しました。 どの辺がどのように評価されたのかは、わからないでもないのですが、 それがこの映画にとって、 素直に栄冠といっていいものかどうかはわかりません。 個人的には、「名作」と言う前に、“ある種の”とつけたい作品です。 たまにはこういうのもどうでしょう?
大災難P.T.A. Planes, Trains and Automobiles 1987年アメリカ ジョン・ヒューズ監督
アメリカ映画お得意の、「こんなはずじゃなかった」型 コミカルロードムービーですが、なかなか拾い物だと思います。
感謝祭を家族で過ごすために、ニューヨークからシカゴの自宅に 向かおうとする広告マンのニール(スティーブ・マーチン)は、 まずは空港までのタクシー争奪戦で苦戦し、 (このシーンで、意外な人物がカメオ出演しています。 イニシャルK.B.で、最近は性格俳優として急進著しいけれど、 この頃はまだ少しアイドル入っていた人です) 飛行機に乗ったら乗ったで、 デブのセールスマン、デル(今は亡きジョン・キャンディ)が 隣で騒がしくして落ち着かないし、 折からの雪のせいで、 飛行機は途中の空港で着陸せざるを得なくなり、 以後、原題のような「飛行機、電車、そして自動車」の何を使っても、 なかなか家にたどりつくことができません。
最初はエリート意識が高く、無教養で騒々しいデルと どうもウマが合わないと感じるニールでしたが、 それでも、この状況下でデルと行動をともにするうちに、 友情のようなものを感じ始めます。 そして、家に帰れば愛する妻子のいる自分に比べ、 デルには何のあてもないことに気づいて…
笑わせて笑わせて笑わせぬいて、最後にホロリという、 いかにもジョン・ヒューズらしい?あざとさがナンですが、 2人の達者なコメディアンの演技対決も見物ですし、 気楽なコメディーを楽しみたいとき、お勧めします。 ただ、ビデオタイトルは、ただの『大災難』らしいので、 “タイトル類似品”に御注意くださいませ。
ところで、日本公開時のこのタイトル“P.T.A.”は、 解説するのもヤボですが、Planes, Trains and Automobilesの それぞれの頭文字を組み合わせたものですね。 で、何で今日この映画かといえば、 本日10月15日から21日までP.T.A.週間なんだそうです。 お粗末さまでした……。
2001年10月14日(日) |
ショーシャンクの空に |
ショーシャンクの空に The Shawshank Redemption 1994年アメリカ フランク・ダラボン監督
今月は、「〜に因み」で、この映画を紹介するに足る日が、 実はほかに2日あります。 16日のティム・ロビンスの誕生日と、 17日のリタ・ヘイワースの誕生日。
今日10月14日は、1922年、「監獄」が「刑務所」と改称された日とか。 以前、刑務所の教誨師さんの会議の仕事を反訳したことがあり、 大昔の「監獄」について書かれた本を資料として読んだのですが、 何とも…寒そうな場所でした。 罪人を閉じ込めてお仕置きをするための場所か、 悔い改め、更生するための機会を与える施設か、 字を見ただけでも、その違いがよくあらわれているなあと思いました。
閑話休題。この映画はファンが非常に多く、 今や日本国首相の小泉純一郎さんもお好きと聞いたことがあります。 なので、今さら粗筋をだらだら言うのも野暮なのですが、 (ネタバレ厳禁系の物語だし) ざっと御紹介させていただきます。
原作は、『スタンド・バイ・ミー』『ゴールデンボーイ』などの 原作者としても知られる、スティーブン・キングです。 タイトル(邦題)だけ聞くと、「刑務所のリタ・ヘイワース」と、 何となく、マニュエル・プイグの『蜘蛛女のキス』(やはり映画化)を 想像させる響きがありますが、 どこか怪しげな魅力のあるあの世界観に比べると、 こちらは、ある男のとてつもない行動力が、 非常に痛快な感動につながりました。
妻殺しの冤罪で刑務所に服役するアンディ(ティム・ロビンス)は、 それまではエリート銀行マンでした。 所内でいろいろな物品を調達している“ベテラン服役囚”の レッドという男(モーガン・フリーマン)は、 「新入りの中で一番先に泣き出す奴は誰か」という仲間内の賭けで、 背ばかり高くて妙に小ぎれいなアンディに賭けますが、 彼は非常に寡黙で、服役仲間に打ち解けることすらありません。 アンディが、石細工でチェスの駒をつくるためのハンマーを レッドに頼んだことから、お互い妙にうまが合うことがわかります。 アンディはこのほかにも、人気女優リタ・ヘイワースのポスターを 頼んだりしますが、 知的で意志が強く、また茶目っ気もあるこの男は、 自分なりの方法で刑務所の改革に乗り出したりして、 服役囚のみならず刑務官たちの間でも、信頼される存在になります。
とはいえ、服役生活にピリオドを打ちたいと思っていたアンディは、 20年近くたってから入ってきた新入りトミー(ギル・ペロウズ)が、 自分の釈放に有利な証言をしてくれることを知り、希望を得ますが、 それも刑務所上部に握りつぶされてしまいます。 精気を失ったようになるアンディを、レッド初め仲間たちは、 自殺でも図るのでは?と心配しますが、 アンディのその後の行動は、そうした懸念を全く超越したものでした… ある意味、人智を超えちゃってます。
繰り返しになりますが、本当に痛快な作品です。 しかも、刑務所内での人間模様をしっかり描いているという 下敷きがあってこその感動だと思うので、その辺も堪能してくださいませ。 原作と照らし合わせると、 アイルランド系のレッドを黒人のM.フリーマンが演じたのは、 いかにもハリウッド(というかアメリカ)的演出という気がしますが、 (でも、フリーマンは本当にイカしたじいちゃんなので、文句なし) 小男として登場するアンディ・デュフーレンを、 ハリウッドメジャーどころでは最ものっぽな1人である ロビンスが演じたのは、非常に効果的だったと思います。 いつも一緒のフリーマンも大柄だということもありますが、 ロビンスって、座っていると大男に見えないんですよね。 きっと、すごーく脚が長いのでしょう。 人ごとながら、腰痛に悩んでいないかなあといつも心配です。
2001年10月13日(土) |
ハーバート・ロス監督のコメディー |
さて本日は、 ハーバート・ロスが監督を務めたコメディーを 3本御紹介しましょう。 「すごいファンでもなかった」と言う割に、 3日続けて取り上げてしまったので、 さすがに追悼企画はこれでおしまいにします。
ボギー、俺も男だ! Play It Again, Sam 1972年アメリカ 脚本はウディ・アレン。 原題は、実際には言われていないことで有名な、 往年の佳作『カサブランカ』でのハンフリー・ボガードの台詞です。 ボギーに心酔する気弱な男(アレン)の自己実現の物語ですが、 ところどころで、ボギーの幻のような男が現れて、 アレンを奮い立たせるのが笑えます。 比較的近作では、シンガポール映画 『フォエバー、フィーバー』の中で、 ジョン・トラヴォルタに魅せられた青年が、 同じようにトラちゃんの幻に元気づけられていましたが、 このパロディーだったのかな?
摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に The secret of my sucsess 1987年アメリカ 今は、何かというと「パーキンソン病に侵された」ことで 話題になりがちのマイケル・J・フォックスが、 生き生きと動き回る、ビジネス大成功コメディーです。 共演のヘレン“スーパーガール”スレイターは、 今は亡きダイアナ・スペンサー系の美女でした。 すごい当て字(熟字訓?)になっているので、 映画のデータベースみたいな本だと、カテゴライズが 「な行」になっているものと、「ま行」になっているものがありますし、 テレビ放映時、「まてんろうはばらいろに」と思い切り言っていました。 この映画が公開になる少し前、『愛と栄光の日々』というタイトルの、 マイケル主演のシリアスドラマがあり、ファンに不評だったせいか、 『摩天楼…』のポスターには、 「マイケルにはやっぱりコメディーが似合う」 みたいなキャッチコピーが書かれていて、何だか笑えました。
マイ・ブルー・ヘブン My Blue Heaven 1991年アメリカ ギャングで重要参考人の男(スティーブ・マーチン)と、 FBI捜査官(リック・モラニス)の奇妙な友情を描いた、 なかなか気持ちのいいアクション・コメディーです。 この2人の共演というと、 フランク・オズ監督の80年代版『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』も 笑わせてくれましたが、 もしもあれをハーバート・ロスが撮っていたらどうだったかな?などと、 ふと思いました。
ほかに、ニール・サイモンの脚本を映画化した 『キャッシュマン』『グッバイガール』もありますが、 どちらも好きなので、既に(3月・4月)取り上げ済みでした。 もう少ししたら、また引っ張りでしてくるかも、ということで。 (もちろん、追悼は抜きで)
マグノリアの花たち Steel Magnolias 1989年アメリカ ハーバート・ロス監督
昨日、『ボーイズ・オン・ザ・サイド』と どちらにしようかと迷った作品です。 こちらは、新旧の実力派女優がにぎやかに繰り広げる、 涙と笑いの群像劇でした。
舞台はルイジアナ州の小さな田舎町です。 ジュリア・ロバーツが、先天性の糖尿病で苦しみながらも、 結婚を控え、輝く美しさ…のシェルビー役を好演していました。 実は個人的に、彼女を余り“いい”と思ったことがないのですが、 この映画の彼女は好ましく見ることができました。 シェルビーの母役がサリー・フィールド。 いわゆる「ガンプの母」を演じた人ですが、 好感度の高いオバチャン役ならおまかせです。 (最近、そうでもない役も多いけれど)
ほか、その1年前のアカデミー賞の授賞式で、 「マイケル(民主党の大統領候補…惜敗(涙))頑張って!」と いとこへエールを送ったオリンピア・デュカキス、 ちょい意地悪ばあさん入ったシャーリー・マクレーン、 冗談のようなメガネをかけ、色気を消し去った(つもりの) ダリル・ハナーなどなど、 次々と登場する個性豊かな女優たちが元気よく立ち回り、 結構豪華な男優陣の影をすっかり薄くしていました。
例えば、ジュリアのフィアンセを演じたのは、 ちょっとデヴィッド・カッパーフィールド(イリュージョニストの方)似の 濃い男、ディラン・マクダーモットだったのですが、 言われても思い出せないありさまです。
原題を訳せば、「鋼鉄の木蓮」といったところでしょうか。 どうでもいい話ですが、当時、『熱き愛に時は流れて』という、 やはり南部が舞台の映画がありましたが、 そこに登場するジェシカ・ラングが、「ミス・マグノリア」でした。 私の実家のすぐそばに1本だけ木蓮の木があって、 いつも「地味な花だなあ」と思って見上げていたので、 美しい女性の代名詞のように使われるのが解せなかったのですが、 日本人が思い描く木蓮とは、ちょっと違うのもしれませんね。※
おばちゃん女優の映画マニア以外の方には、 「かわいくて健気なジュリアが見られる作品」としてお勧めします。
※この日記のモトネタになっているML上で、 「木蓮は、アメリカの南部女性を象徴する花」 という御教示をいただきました。 Kさん、情報ありがとうございます。
2001年10月11日(木) |
ボーイズ・オン・ザ・サイド |
今日はちょっと悲しいニュースから。 10月9日、映画監督のハーバート・ロスが74歳で亡くなりました。 もともとはダンスの振付師だったというキャリアもあり、 『愛と喝采の日々』から 『フットルース』『ダンサー』といった作品まで、 ダンス映画の演出で冴えを見せた方ですが、 一方、「女性映画の名匠」としても知られました。 そういえば、『愛と喝采の日々』も、ある意味女性映画でしたけど。
ということで、追悼の意味をこめ、彼の監督作から次の映画を。
ボーイズ・オン・ザ・サイド Boys on the Side 1995年アメリカ ハーバート・ロス監督
「男は脇に置いといて」のタイトルどおり、 タイプの違う3女優が繰り広げる、非常に魅力的なロードムービー。 といっても、後半では1カ所にとどまりますが…。
売れない歌手でレズビアンのジェーン(ウーピー・ゴールドバーグ)、 ヤク中の上に誰とでも寝てしまうホリー(ドルー・バリモア)、 そして、この映画で最ももうけ役はこの人では?と思われる 好演を見せた生真面目なOLロビン(メーリー・ルイーズ・パーカー)は、 ひょんなことから知り合い、ホリーの不始末から逃げるように L.A目指して旅に出ます。
実はホリーは妊娠中、ロビンは初体験でHIVに感染してしまい、 長い旅は続行できなくなってしまいます。 そうしてとどまった土地で、3人は地元に徐々に溶け込み、 ホリーは、少々トロいけれど誠実な警官(マシュー・マコノヒー)と 恋仲になります。 (が、ホリーは「不始末」のオトシマエをつけずに逃げてきたので、 警官との恋は、実は危険と隣り合わせのものでした)
3人は衝突しながらも絆を固め、 徐々に病状が悪化していくロビンをジェーンとホリーが支え、 その一方、ホリーも産気づいて…
妙なテンポというか、独特のにぎやかさがある作品でした。 女性の友情を描いた作品も結構ありますが、 俳優の達者さやお話のテンポのよさで、 かなりお勧めしたい映画になっています。
こちらの日記では、H.ロス作品として、 『キャッシュマン』『グッバイガール』を過去に御紹介しました。 監督として、「一番星」というのとはまた違うのですが、 人間の心優しさやひたむきさを素直にいいなあと思える映画が多く、 ほかにも御紹介したい好きな作品があります。 とりあえず、今日のところは御冥福をお祈りします。
今日10月10日は、98年に制定された島の日だとか。 ということで、美しい島で育った純な青年が 都会に出てくるシーンが妙に印象的で、 さらに、10・10の2つ並んだ数字を双子になぞらえて、こんな映画を。
ツインズ Twins 1988年アメリカ アイヴァン・ライトマン監督
“アーノルド・シュワルツェネガー” この、スターにあるまじき長い名前を持った肉体派俳優が、 日本では“シュワちゃん”と呼ばれるきっかけとなったのは、 この辺の映画ではないでしょうか。 彼の朴訥ながら独特なコメディセンスが見られました。
知性と美貌に恵まれた女性が、 優れた遺伝子を持った5人の男性の精子を ミックスしたもの(!)によって妊娠し、 1人の非常にすぐれた男の子を産み出します。 母親は後に死亡し、ジュリアスと名付けられたその男の子は、 美しい離島で知性の高い純粋培養の人格者として成長しますが、 実は自分には双子の兄がいるのだと聞かされて、 とるものとりあえず、まだ見ぬ愛しい兄を探しに都会へと赴くのでした。
一方、やはり双子の弟がいることを知らない兄ヴィンセントは、 小さい頃から出来損ない呼ばわりされ、 何かと問題の多い人間に成長し、 ジュリアスが捜し当てたときも、警察の御厄介になっているありさま。 突然あらわれた「弟」を自称する大男に面食らいながらも、 保釈のために一役買ってくれるならと調子を合わせ、 あとは、人を疑うことを知らないジュリアスをまいてしまいます…
ジュリアス役がシュワちゃん、 ヴィンセントを、芸達者のダニー・デビートが演じましたが、 この映画をごらんになったことのない方でも、 あの、大きなシュワちゃんと小さなデビートの2ショットには 見覚えがあるでしょう。 当時、やはり生き別れになっていた兄弟の物語『レインマン』が アカデミー賞受賞効果も受けてヒットしましたが、 この『ツインズ』では、『レインマン』のパロディー的なシーンが 話題になりました。
亡くなったと聞かされていた母親の真実を初め、 隠されていた事実を兄弟が力を合わせて次々と暴いていく筋立て、 加えて、しっかり美人姉妹とのロマンスもあり……で、 エンタティンメントの王道をゆくお気楽コメディーです。
ガタカ Gattaca 1997年アメリカ アンドリュー・ニコル監督
まず、「ガタカ」とは、宇宙開発企業の名前です。 遺伝子操作でいかようにも理想の人間を産み出せるという、 非常にうそ寒い近未来を舞台にしていて、 映像もひんやりとした美しさをたたえたものでしたが、 単なるスタイリッシュでクールな映画ではなく、 独特の温かみさえ感じる、非常に感じのいい作品でした。
両親の「愛の交歓」の結果生まれたヴィンセント(イーサン・ホーク)は、 生まれつきの心臓疾患もあり、宇宙飛行士に憧れながら、 その第一歩としての「ガタカ」入社もままならない、 社会的に蔑まれた存在でした。
が、人間が遺伝子の乗り物と化しているそんな世の中では、 逆に言えば、他人に成り済ますことも可能です。 彼は、事故のせいで夢を絶たれたジェローム(ジュード・ロウ)から 遺伝子を買い取り、ジェロームになりきることで、 憧れの「ガタカ」の社員となり、 成績の優秀さもさることながら、非常な几帳面さで信頼され、 火星への乗組員として有望視されることとなります。
そんな彼の完璧さに、疑いと興味を抱いて近づいてきた 美女アイリーン(ウーマ・サーマン)とも恋仲になりますが、 社内で起こった怨恨によると思われる殺人事件のせいで、 歯車が徐々に狂い出していくのでした…
というストーリーなので、スリリングなおもしろさも十分です。
実は私がこれを見たのは、劇場のチケットを入手し、 何を見ようと迷ったとき、時間と日程が一番ちょうどよかったから。 そんな全くの偶然だったのですが、選んで正解でした。
ジュード・ロウには、『リプリー』といい、 「彼になりたい」と思われる役が本当に似合います。 (『ガタカ』は少々ニュアンスが違いますけど、 やっぱり美青年であることは重要だったとも思います)
3人の麗人の共演も魅力ですが、 ヴィンセントの弟で遺伝子操作で生まれたアントンを演じた ローレン・ディーンにも注目です。 (というか、個人的に非常に好みです♪)
ところで、どうしてきょうの映画がこれなのかといえば、 1940年10月9日生まれのジョン・レノン(1980年12月死去)の、 愛息ジュリアンのことを歌ったと言われる「ヘイ・ジュード」、 名曲ですね。 そこで、※ジュードという名前に着目したのでした。 なら主人公が「日陰者ジュード」である『日蔭のふたり』もありますが、 ビデオをレンタル中で、まだ全部見ていないというお粗末さでして… 見終えたら、また感想などアップしたいと思います。
※後からわかったことですが、 実際ジュード・ロウのジュードという名前は、 ディラン・トマスの「日陰者ジュード」と「ヘイ・ジュード」の 両方に因んでつけられた名前だという説があります。
今日10月8日は、ハッピーマンデーの適用により、体育の日でした。 もともとは、1964年の東京オリンピック開会式が挙行された 10月10日に由来する祝日でしたね。
中学時代、数学の先生が、 「開会式が10月10日に決められたのは、晴れの特異日だからだ」 とおっしゃっていたように記憶しているのですが… 本日、当地は夕方から霧雨になりました。 お休みだった皆さんは、どんなふうに過ごされましたか?
「体育の日記念・スポーツ映画特集」 (既に取り上げ済みのものは、とりあえず割愛しました)
炎のランナー Chariots of Fire 1981年イギリス ヒュー・ハドソン監督 テーマ曲が余りにも有名ですね。
メジャーリーグ Major League 1989年アメリカ デビッド・S・ウォード監督 レネ・ルッソのデビュー作でもあります。
スカウト
ナチュラル The Natural 1984年アメリカ キーバリー・レビンスン監督 映画としてはいいのですが、R.レッドフォードの役が無理あり過ぎ
がんばれ!ベアーズ The Bad News Bears 1976年アメリカ マイケル・リッチー監督 今見ると陳腐なのですが、傑作の1つです。
さよならゲーム Bull Durham 1988年アメリカ ロン・シェルトン監督 このときのティム・ロビンスは、本当にヘンな顔でした。
エイトメン・アウト Eight Men Out ション・セイルズ監督 若手スター勢ぞろいの骨太映画ですが…後味最悪でした。
ザ・ファンThe Fan 1996年アメリカ トニー・スコット監督 野球を素材にしたサスペンスですが…
この中で、『スカウトThe Scout(1994年アメリカ)を 敢えて詳しく御紹介しますと、 マイケル・リッチー(『がんばれ!ベアーズ』など)監督作で、 アルバート・ブルックスが、逸材を追い求めるスカウトマン、 ブレンダン・フレイザーが、ものすごい素質を持ちながら、 メキシコの田舎でのんきに野球を楽しむ青年役で、 「私を野球に連れてって」スペイン語バージョンなども聞かれ、 なかなか楽しい野球コメディーでした。 ブレンダンが入団するのがヤンキースのせいか、 どうも彼のキャラクターと、我らが新庄君がダブるのですが、 まあ、新庄君より美形度は上ということで(ファンの方、ごめんなさい)。
能天気に見えて、実は幼時体験によるトラウマを抱えるブレンの 相談に乗る精神科医を、ダイアン・ウィーストが好演していました。 ウディ・アレン映画や『シザー・ハンズ』のウィノーナの母役などで おなじみの、黒目がちの優しげな女性です。
後半、特に野球の試合の処理がかなりいいかげんなのですが、 作為的に見えなくもないし、許せる範囲だと個人的には思います。 『ハムナプトラ』シリーズや、 最近のロマンチックコメディで彼のファンになった方、 ちょっと若くてカワイイ彼の姿もいかがですか? 日本未公開ですが、その種の「ビデオのみ発売作品」の中では なかなか評判がいいようですよ。
本日10月7日は「ミステリー記念日」だそうです。 1849年のエドガー・アラン・ポーの命日にちなんでの制定とか。 では、ミステリーの傑作ということで。
情婦 Witness for the Prosecution 1957年アメリカ ビリー・ワイルダー監督
一言で言えば、「これ言ったら罰金100万円」のネタバレポイントが 非常にはっきりした、実にミステリーらしい映画です。 アガサ・クリスティの『検察側の証人』の映画化。 もうごらんになった方はもちろん、 映画はまだでも、原作をお読みになった方は、 「はいはいはい」と、すぐに納得なさることでしょう。
『愛情物語』などでも有名なタイロン・パワーが、 (色男らしく)未亡人殺人の容疑者として登場します。 彼の弁護を引き受けるのが、チャールズ・ロートン。 とぼけたおじいさんという風情の人ではありますが、敏腕です。 パワーの内縁の妻役であるマルレーネ・ディートリッヒが、 彼のアリバイを証明できる唯一の人間なのですが、 彼女は、なぜかパワーに不利になるような証言をします。 彼女の真意は那辺にあるのでしょうか? そして、判決の行方は?
というようなお話ですが、緊張感の中にもユーモアがあって、 最後の最後まで、飽きさせるということを知らない映画です。 パワー、ロートン、ディートリッヒの共演もすばらしいのですが、 ロートンの世話を焼く看護婦役のエルザ・ランチェスターが、 おばさま女優マニアとしてはたまりません(ちょっと下世話?)。 ちなみに、私生活ではロートンの奥様だったそうです。
長く語ると、一番言ってはいけないことを言ってしまいそうなので、 今日は短めに抑えておきたいと思います。 絶対お勧めしますので、少しでも興味のわいた未見の方、 ぜひとも「レンタルビデオリスト」にアップしてくださいませ。
今日10月6日は、「役所改革の日」だそうです。 あのドラッグストア「マツモトキヨシ」の創設者でもあるアイデアマン、 松本清氏が、千葉県松戸市長だった1969年当時、 市民の要望に迅速に応える「すぐやる課」を創設しました。 「すぐやる課」は、70年代にテレビドラマのモチーフにもなったので、 全く縁のないところに住んでいた人にもおなじみの名前になりました。 私も見ていた覚えがあります。
ならば、この映画でしょう。
生きるTo Live 1952年日本 黒澤明監督
この間ビデオで観た『ハイ・フィディリティ』の中で、 2人組の悪ガキが、ジョン・キューザックが経営するレコード店で、 レコードやCDを大量に万引きするシーンが出てきましたが、 中にはしっかり「リュウイチ サカモト」のものもありました。 日本人としては、さすが「世界のサカモト」だと感心するシーンですが、 (ここでカタカナの「サカモト」を見て笑った方は、「まんくら」読者?) 本日御紹介する映画の監督は、「世界のクロサワ」です。 その名前は、気難しげなウディ・アレンの『セプテンバー』の中で、 ミア・ファローの台詞に織り込まれたほどです。
主人公は、某市役所の市民課長である渡辺(志村喬)。 毎日毎日、いかにもお役所仕事的な仕事を、 死んだように退屈にこなす毎日を送っていて、 家庭でも、息子の嫁に疎んじられていたりする男です。 が、実は彼は胃がんにおかされていて、余命いくばくもない体でした。
病院での待合の他愛もないやりとりから、 自分の病気が重篤であることを悟った渡辺は、 生に執着するかのように、 元部下で、退職しておもちゃ工場で働くとよ(小田切みき)を誘って 遊び回り、周囲から非難されたりするのですが、 工場のノルマに閉口しつつも頑張るとよに諭され、 自分のなすべきことを見出し、「それ」に全力投球してから この世を去っていきます。
彼の最後の頑張りは何ゆえだったのか? 彼が残したものは、どんな重い意味を持っているか? 彼の葬儀に集まった人たちは、考えずにいれらませんでした…
「それ」を明かしても、いわゆるネタバレにはならないと思いますが、 彼が最後に全力投球したのは、公園の建設でした。
でも、市民課といえば、あの市民課ですね。 各種届を受け付けたり、 住民票やら戸籍謄抄本やらの書類を出したりする、あそこです。 本来ならば、公園の建設というのは「管轄」の違う仕事のはず… 役所の縦割り行政批判もあったのでしょうか?(よくわからないけど)
この映画を初めて観たとき、実は私は市役所に勤めていました。 それも、めちゃくちゃ専門性の強い部署でした。 そのせいか、ほんの少し「おためごかし」だと感じたことも、 残念ながら否定できません。 それでいて、感涙もまた禁じ得ませんでした。 「命短し 恋せよ乙女」で有名な「ゴンドラの唄」のシーンも、 鮮明に思い出されます。
突然ですが、 ゆうべの「トップランナー」(NHK総合23:00〜)を ごらんになった方いらっしゃいませんか? 私が大好きなラーメンズがゲストだったのですが、 彼らのコントで、1冊の本を交互に朗読し、 次第に相手に負けまいとして、とんでもない脚色を加えてしまう… というのがありますが、 「お地蔵さんは、赤い前掛けをはずし、 ジャージに着替えてゴロゴロし始めました」 という片桐仁の朗読がツボにはまり、まだ思い出し笑いしています。
今日御紹介する映画は、とりあえず本の朗読のシーンが出てきて、 かつ、脚色が重要だった作品です。 (苦しいマクラで申し訳ありませんが)
1975年10月5日、 女優ケート・ウィンスレットがイギリスで生まれました。 (なんと!彼女はレオ君よりも年下だったのですね。 『タイタニック』では、彼のお姉ちゃんぽかったけれど) 体型を気にするハリウッドの女優たちに比べ、 いかにも「自然体」な彼女のふくよかさは、 時には口さがない人々にでぶ呼ばわりされるし、 実際、一時期しゃれにならない激太りをしたようですが、 旬の女優を見出すのがうまいLUXのCMに起用された経験もあり、 美貌と演技力を兼ね備えた女優であることは間違いありません。
いつか晴れた日に Sense and Sensibility 1995年アメリカ アン・リー監督
原作は、先日御紹介した『エマ』と同じくジェーン・オースティン、 (『分別と多感』という邦題が一般的なようです) 舞台はもちろんイギリスで、俳優はイギリス人だらけですが… この映画、アメリカ資本なんですね。 ついでながら、監督のアン・リー(男性)は台湾出身です。
何事も分別をもって当たる長女(エマ・トンプソン)と、 ロマンチックな人間関係に憧れる次女(ケート・ウィンスレット)の 恋の行方を追った部分が物語の軸になっています。 つまり、『分別と多感』というタイトルそのままだったら、 長女と次女をタイトルロールといってもいいかもしれません。 (ちなみにこの下におしゃまな三女もいますが、余りにも幼過ぎて、 エマ・トンプソンの娘みたいに見えるのがアンマリでした)
英国の田園風景、カントリーハウスと呼びたい大邸宅の描写など、 目の保養になる美しい映画ではありますが、 恋というやつは、慎重過ぎても情熱的過ぎてもうまくいかないものだと、 改めて思い知らされる、ちょっと苦い作品でもあります。 その苦さは、ハッピーエンドといってもいい(かもしれない)ラストまで、 ずーっと余韻を残すものでした。 ヒュー・グラントが、 「恋のお相手としては退屈な人」の烙印をケートに押されてしまう役を 好演していました。 あれだけキレイな顔をしていると、現代人の感覚だと、 変に「おもしろい人」でも逆に引いてしまう気はしますが、 「美男子で、しかも本をドラマチックに朗読できるような紳士」が 素直に受け入れられていたのでしょうね。
「吐き気がするほど演技がうまい上に、脚色までやらかした」 才媛エマ・トンプソンにひけをとらない演技を見せたケートは、 この作品で、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。 エマ自身は、主演女優賞と脚色賞にノミネートされて、 結局は脚色賞の方を受賞しました。
今日10月4日は、 「てん(ten/10)し(4)」の語呂合わせで 「天使の日」だそうです。 女性下着の「トリンプ」が、 「天使のブラ」販売1000万枚到達を 記念して、制定したとか。 そこで、天使が出てくるこんな映画はどうでしょう?
ミラグロ 奇跡の地 The Milagro Beanfield War 1988年アメリカ ロバート・レッドフォード監督
レッドフォードは監督としての評価も高い人ですが、 その彼の作品の中でも1,2を争うマイナーな作品だと思います。 だからといって、B級というわけでもないんですよ。 舞台はニューメキシコの田舎、 題材になっているのは地元農民と、 そこにテーマパークをつくろうとするディベロッパーの争い、 …地味です。めちゃ地味です。 だからといって、退屈な映画ではありません。 「この映画は、レッドフォードに似ている ハンサムで、目を細めて キラキラ笑う」 というような宣伝文句を、当時の予告編で見ました。同感です。
この映画に登場する天使は、妙に「実体」があるじいさんで、 ルピタという豚(名脇役!)を飼うアマランテじいさんの いい話し相手のようにしか見えないので、 言われなければ、「天使」だとは気づかないかもしれません。
男…というよりは頑張るオッサンの映画ですが、 魅力的な女性も登場します。 姐御肌で、皆を奮い立たせて土地を守ろうとする ソニア・ブラガ(あるいはそちら側の女性たち)、 そして、ディベロッパー社長の愛人を演じた、 ちょっとおバカそうな若い女性は、あのメラニー・グリフィスでした。 そう大きな役ではないのですが、「好演」という言葉がぴったりの、 なかなか印象に残る演技を見せています。
素朴で温かで、折節にしみじみ思い出すような作品です。 多分、ビデオは廃盤になっていると思われますが、 運がよければレンタルショップで見つかると思います。
ところでこの年、同じく天使モノの傑作の誉れ高い W.ヴェンダースの『ベルリン/天使の詩』が ロングランを果たしましたが、 こちらの『ミラグロ』は、都内での上映だけを見ても、 たったの2週間とか4週間とか言われていて、 幻の1本のノリがあります。 いい映画だったのに惜しいなとあと思い、 取り上げさせていただいた次第です。 (見つからなかったら、ごめんなさい)
2001年10月02日(火) |
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ |
1951年10月2日、 ミュージシャンで俳優でもあるスティングが生まれました。 私の大好きなアーチストの1人ですが、 この人、結構な本数の映画に出ている割に、 どうも作品に恵まれていない印象を受けます。 そこで、彼がなかなか重要な役で出演していて、評判がよく、 私も大好き!という唯一の作品を取り上げることにしました。
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ Lock, Stock and Two Smoking Barrels 1998年イギリス ガイ・リッチー監督
ちょっとゴシップネタから始めますと、 あのマドンナがガイ・リッチー監督と結婚したのは、 彼の若き才能に惚れ込み、 自分の出演を条件に出資したスティングが、 彼にマドンナを紹介したことがきっかけ…だそうですね。 いろいろな意味で罪なことしてくれたものです。
この長いタイトル、「一切合切煙の中」とでも訳すのでしょうか。 映画のプロットを実によくあらわしています。 どう略していいのかもわからず、 生真面目に『ロック、ストック(以下略)』おもしろかったよーと タイトルをフルに言うはめになりますが、 それでいて、ここまで支持された作品も珍しいと思います。
ニック・モラン扮する主人公エディは、 ヤクザ相手にカードで儲けようとしてあべこべに借金をつくってしまい、 3人の友達も巻き込んで、 借金返済のための金策(悪いコト)をするはめになります。 中途半端にワルの若造たちですから、計算違いや認識の甘さもあり、 (大体、だから借金つくっちゃったのですが) 結果的に弾丸が飛び交い、死体の山が築かれていくという、 聞いただけだと実に後味の悪そうな映画ではあります。
ギャングの面々、子連れの借金取り(しつけにうるさい)、 マリファナをつくる学生グループ(嫌なグループですね)などの、 個性豊か過ぎる面々が総勢20名見当出てきて、 必ずどこかでつながってまいりますので、 いわゆる「ガイジンの顔ってみんな同じに見える…」方には ちょっときつい作品かもしれませんし、 やたらと人が簡単に死ぬことへの批判もありましょうが、 大人の分別で、ブラックコメディーとして楽しむのが一番かと思います。
スティングの役は、この映画では唯一の堅気といってもいい 「飲み屋のオヤジ(で、エディの父親役)」でしたが、 暗黒街の強面も一目置くという、泰然自若とした男なので、 はっきり言って、どんなワルよりずっと怖かったです。 あの眼光鋭い面構えとしゃがれ声にぴったりはまった好演でした。
2001年10月01日(月) |
アパートの鍵貸します |
新聞の広告で見ましたが、 今日は「コーヒーの日」だそうですね。 例えば、コーヒーショップが重要な舞台になる映画は多いのですが、 (『スモーク』『ジョー・ブラックをよろしく』 『めぐり逢えたら』『逢引き』…) 一番最初に頭に浮かんでしまったのは、この映画でした。
アパートの鍵貸します The Apartment 1960年アメリカ ビリー・ワイルダー監督
この映画を取り上げていなかったのは自分でも意外だったのですが、 大好きで何度も見ている映画ということもあり、 紹介以外で何度も名前を挙げていたような気がします。
たまたま友人の着替えのために部屋を貸したことがきっかけで、 自分の部屋を会社の重役連に、 浮気相手との密会場所として提供して、 出世の足掛かりにしようとしている 保険会社勤めのバクスター(ジャック・レモン)が主人公です。
彼は、エレベーターガールのフラン(シャーリー・マクレーン)に 思いを寄せていましたが、 彼女もまた、そうした重役連の1人と不倫の関係にあり、 一方では、エレベーターの中で唯一帽子を取る男・バクスターの 礼儀正しい態度に、好感を持ってもいました。
バクスターがフランと親密になるきっかけは、 皮肉にも、彼女が不倫相手とバクスターの部屋を利用したことでした。 不倫相手の秘書の悪意ある「忠言」から、 彼との仲をはかなんだ彼女が、 失意のままバクスターの部屋で「眠って」いたためでした。
さて、ここでコーヒーが登場するのですが、 そう感じのいい使い方ではない、まさにほろ苦さの漂うシーンでした。 それは…「ごらんになった方だけがわかるのでございます」。
ところで、バクスターのアパートの隣家には、 ドイツ人の医者が住んでいますが、 連日連夜、彼の部屋から男女の睦言が漏れ聞こえるのと、 部屋の利用者が飲んだ酒の空きビンのおびただしい数とで誤解し、 バクスターをとんでもない遊び人だと思っていました。 そして、「もっと人間らしくなれ」という趣旨の助言をします。 そこのところのタンゴにドイツ語が入っているのですが、 語学にもとんと疎いので、正確にはわかりません… ただ、意義深いシーンでした。
ラストは、ハッピーエンドには違いないのですが、 バクスターとフランの表情が余りにも違うのが印象的です。 余韻の残し方がうまいなあと、感心しきりでした。
軽妙でいながら1つ1つに意味のこもったせりふ、 小道具の使い方(“大道具”であるオフィスビルもグッドですが)も 見ていて飽きさせません。 マクレーンとレモンの名コンビは、 この映画の後、『あなただけ今晩は』でも名共演を果たします。 余談ですが、作家の清水義範さんが、 「テレビ(この場合は地上波民放ですね)で映画を放映するとき、 カットされることが多いが、B.ワイルダーの映画だけは、 むだなシーンなど1つもないので、カットはいかん」 という趣旨のことをエッセーの中でおっしゃっていました。 どんな映画だって、作り手にとってはむだなシーンなんかない、 という意見はこの際抜きにして、 この意見に諸手を挙げて賛成したいと思います。
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