Experiences in UK
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2004年01月26日(月) 第22-24週 2004.1.5-26 バース、エイヴベリー、ストーンヘンジ

年明け後のロンドンは、小雨(というか霧雨。英語でdrizzleと言います)が一日中降ったりやんだりする日が多く、これがイギリスの典型的な冬の天気なんだろうなあという日が続いています。
ただ、日は徐々に長くなってきています。日没時刻は、いちばん早い時(12月下旬)で午後4時前であり、その半年後のいちばん遅い時で午後10時頃ですから、1か月で1時間ずつ日没が遅くなっている計算になり(途中でサマータイムによる調整がありますが)、日に日に日照時間が延びていることを実感できます。

曇りがちの日が多いなか、先々週末の土・日は2日続けて好天に恵まれました。そして、幸運にもこの爽やかな晴天のタイミングが、我々のこちらに来て初めての国内旅行と重なりました。車を利用した1泊の小旅行で、バース(Bath)、エイヴベリー(Avebury)、ストーンヘンジ(Stonehenge)、ソールズベリー(Salisbury)をまわり、途中バースのB&Bで1泊しました。

(バース)
英国でもっともポピュラーな観光都市のひとつであるバースは、ロンドン市内から高速道路(M4)を西におよそ150キロ走ったところにあります。18世紀に貴族の社交場となったバースの町並みは、さりげなくお洒落な雰囲気が感じられました(バースは世界遺産にも登録されています)。観光の目玉は、風呂(bath)の語源ともなったローマ時代(紀元1世紀)に造られた浴場跡とローマ人たちが残していった彫刻などが展示されているローマン・バス博物館です。寒い時期にもかかわらず、多くの観光客で賑わっていたのには驚きました。
この日のランチは、有名な観光スポットでもある「サリー・ランの家(Sally Lunn's)」でとりました。ユグノー教徒のフランス人、サリー・ランが迫害を逃れて17世紀にこの地にやってきて、ブリオッシュと呼ばれる独特のパンの製法を伝えたとのことです。そして、「サリー・ランの家」はバースでもっとも古い建物(1482年)としても有名です。
我々は、古くからある英国料理であるTrencherというブリオッシュ(パン)を使った料理を食べました。独特の食感のパンとシチューなどを絡ませて食べるもので、(英国料理らしくなく?)非常においしいものでした。

(バースのB&B)
この日は、バース中心部から車で10分程度のB&B(Bed & Breakfast)に宿をとりました。B&Bとは、日本でいう民宿のようなもので、普通の家とかパブなどに観光客を泊めて文字通りベッドと翌日の朝食だけを提供するという形式の簡易宿の総称です。英国内には無数のB&Bがあり、当たりはずれが大きいとのことだったので、事前に慎重に選んだB&Bに予約を入れていました。
我々の宿(Weston Lawn)は、山の手のごく普通の閑静な住宅街の中に埋没している1軒の瀟洒な住宅で、看板なども特に掲げていないため、すでに日が沈んで真っ暗になっているなかでたどり着くのに一苦労でした。ようやくたどり着くと、手入れの行き届いた清潔な部屋に案内され、近隣情報などを親切に教えてくれるオーナーの話に耳を傾けているだけで今回の宿が「当たり」であることがすぐにわかりました。

(エイヴベリー)
翌朝、オーナー手製のフル・イングリッシュ・ブレックファーストに舌鼓を打ってからB&Bを後にし、次の目的地であるエイヴベリーに向かいました。バースから車で1時間程度の村エイヴベリーは、英国最大のストーン・サークル(紀元前3千年くらいに造られたとされる環状に並べられた石の遺跡)があることで有名な典型的なイギリスの田舎です。林立する石塊とともに村全体をナショナル・トラストが管理しており、この村一帯も世界遺産に指定されています。
ここのストーン・サークルは、数ある英国のストーン・サークルのなかで最も神秘的なパワーを秘めているとの評判があるらしく、ニュー・エイジ系の人たちが蝟集して不思議な儀式を行うことが多いとどこかに解説されていました。確かに一風変わった雰囲気の観光客がちらほらとおり、静かななかで独特の雰囲気を漂わせている村でした。

(パブ Malet Arms)
エイヴベリー観光を終えてから、ランチをとるために近くのパブに向かいました。近くとは言っても、再び車を1時間程度走らせるのですが、個人的にはこのパブ・ランチが今回の旅の最大の楽しみのひとつでした。田舎のパブもB&B同様に当たりはずれが大きいと考えられたため、ネットを使った事前調査で「隠れた名店」とされていたパブ(Malet Arms)の所在を調べていたからです。結果的には、これも大正解でした。幹線道路を大きくそれた村のはずれにあるそのパブは、人家から離れた場所にぽつんと建っていました。ただ店構えは立派で、なかを覗くと地元の人たちと目される老若男女でたいそう賑わっていました。
ゆったりとした店内に入ると、客も店員もいたってフレンドリーな雰囲気で、子供連れであることを伝えるとファミリー専用の部屋に通してくれました。ロンドンだと子供連れは出入り禁止という大人のパブが主流ですが、田舎のパブというのは近隣住民が集うファミレスみたいなものなのでしょう。
そして、出された料理はこれまた所謂イギリス料理のイメージをくつがえすもので、噂に違わぬグルメ・パブでした。

(ストーンヘンジ)
ビールを2、3杯飲んでパブの前に広がる原っぱで昼寝でもしたい気分をぐっと抑えて1杯でがまんし、傾きだした太陽に追われるように次の目的地であるストーンヘンジへと向かいました。車を30分ほど走らせると、見渡す限り広がる草原のなかに突如としてあの巨石群が出現します。
ストーンヘンジ(紀元前3〜5千年くらいに形成されたらしい)は、それ自体もまさに人類の世界遺産といった風格満点ですが、私は周囲の風景とセットで遺産なのだなという印象をもちました。なだらかにうねる何もない大草原とその中で黙々と草をはむ羊たち、ゆっくりと沈んでいく夕日、そして何千年もそこにすっくとたたずんでいる巨石群、これらがワンセットで形成している言葉のない世界こそが我々が受け継いでいる「遺産」なのだと感じた次第です。

この後、ソールズベリーまで急いだもののタイムアウトで、英国でいちばん高い尖塔をもつ巨大なゴシック建築のソールズベリー大聖堂は、ライトアップされた外観しか見ることができませんでした。
我々の初の国内旅行はちょっと欲張りの駆け足旅行でしたが、ロンドンとは全く違ったイギリスに触れることのできた2日間でありました。


2004年01月05日(月) 第21週 2003.12.29-2004.1.5 購買力平価、トゥイッケナム・スタジアム

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

(ウォークマンで測った購買力平価)
25日のクリスマスと翌26日のBoxing Day(かつて使用人などにクリスマスの贈り物をしたとされる日で休日)が明けたロンドンの街は、クリスマス期間の静けさが嘘のように再び喧噪を取り戻します。年末年始の数週間、ロンドンのすべての店で大バーゲン・セールが行われるのです。
買い物に興味がない私は他人事ですが、この時期、国籍を問わずロンドン在住の多くの人々がバーゲン情報の入手に奔走し、買い物三昧の日々を送るようです。そういう私も家族の買い物に付き合いがてら、かねてから欲しかったソニーのCDウォークマンを購入しました。
ソニーという企業が国際色豊かな企業であることは、もちろん日本にいた時から知っていましたが、Sony Centreと銘うたれたソニー専門店がロンドンの市内各地にあるのを見るにつけ、そのことが実感されます。Sony Centreはパットニーのハイストリートにもあるのですが、今回は買い物に出かけた隣町のキングストンで最大のデパート、Bentallsの中にあるSony Centreへ行きました。

私が購入したCDウォークマンはごくシンプルな機能のもので、ウォークマン・ラインナップの中のロウアー・ミドル・クラスに位置づけられる機種でした。購入目的が英語のCDを聞くことだったので、何でもよかったのです。定価£79の商品が£69で売られていました(あまり安くなっていなかったですね)。
さて、私にとっての興味は、同じ商品を日本で買うといくらになるのかという点でした。帰宅後、同クラスの商品の秋葉原での店頭販売価格をインターネットで調べたところ、どうやら7千円程度のようでした(私が購入したものと同じ型番の商品は日本では販売されていないため、スペックが似た機種で比較)。ということは、ソニーのCDウォークマンで測った購買力平価は、1ポンド=約100円ということになります(¥7,000/£70)。
現在の市場レートが1ポンド=190円台ですから、極論して言うとロンドンのウォークマンが日本の1.9倍程度の割高であるか、あるいは市場の為替レートが1.9倍程度の円安ポンド高に振れ過ぎているかのどちらかということになります。以前のメールでも書いたように、大方の商品で測った購買力平価が1ポンド=80〜150円程度となっていますので、やはりまずは為替レートが円安ポンド高に振れすぎていて、かつウォークマンの場合は若干ロンドンの方が割高という仮説が妥当でしょう。
いずれにしろ、円貨で給与を支給されている我々にとって、ロンドンでの生活はなかなか大変なのです。

(トゥイッケナム・スタジアム)
週末にイギリスにおけるラグピーの「聖地」であるトゥイッケナムのラグビー・スタジアムに出かけました。イングランドでのラグビーの大きな試合はすべてここで行われ、収容人員7万5千人の大スタジアムです。先日、地図を見ていて意外と自宅から近いことに気づきました(車で20分)。
我々が訪れた日、試合はなかったのですが、目当てはラグビー・ショップと併設されているラグビー・ミュージアムでした。
ショップは、ラグビー関連グッズの品揃えが豊富で、見ているだけでも楽しめました。イングランドのみならず、宿敵オールブラックス(ニュージーランド代表)など他の国のラグビー・チームの関連グッズもあり、ジャパンのジャージを模したシャツまで置いていました。なかでもオールブラックス関連商品の量は圧倒的に多くて、その人気の高さをうかがわせました。我々の最大の目的であった、こども向けの小さくて柔らかいラ
グビー・ボール(まがいのおもちゃ)を見つけることもできました。
ミュージアムも、ラグビー発祥の地にふさわしい充実した内容でした。ゲートを通っていきなり現れるのが、ラインアウトのボールを取り合いしている等身大のラガーマンの蝋人形です。それに特に意味はないのですが、こういうものを精巧に再現して客を迎えようという発想と熱意から、ラグビー好きによるラグビー好きのためのミュージアムであることがうかがえます。
ラグビーの歴史・背景を丹念に解説する展示と、そこここで過去の名勝負のビデオ映像が流されている様子は、ウィンブルドンのテニス・ミュージアムにも共通したものがありました。テニス・ミュージアムと異なる点は、さらに「栄光の90年代イングランドチームの軌跡」といったようなコーナーが加わる点でしょうか。テニスはイギリス人だめですからね。今後は「頂点をきわめた00年代イングランドチーム」というコーナーが付け加わることでしょう。
先日のW杯の優勝杯であるウェッブ・エリス杯が早速展示されていて、格好の写真撮影スポットになっていました。

(トゥイッケナム・スタジアムのツアー)
さて、このミュージアム見学には「ツアー」というオプションが付いています。これは、解説のおじさんといっしょにスタジアム内を見て回るというものです。普段は関係者以外立ち入り禁止の場所なども見せてくれるということで、申し込んでみました。
「ツアー」には人数制限があり、我々のパーティは大人と子供を含めて約15人の集団でした。ガイドの役目を果たしてくれたのは、かつてラガーマンだったであろうと思わせる長身でがっちりした体躯の60才くらいの元気なおじいさんでした。彼に先導されながら、1時間半ほどの時間をかけてスタジアム内をほぼくまなく回るのですが、これは申し込んで大正解でした。
最上階(6階)にあるスタンド最上段からスタートして、途中、ロイヤルボックスの中や選手などメンバー限定のバーなどを回りながら下りていきます。地上階ではイングランドの選手のドレッシングルーム(ロッカールーム)の中まで案内してもらえました。最後は、選手が入場する通路からグラウンド内に入り、ピッチサイドを半周して終わりです。
英語のリスニング力不足により解説を十分に理解することはできませんでしたが、同じパーティのおじさん・おばさん・こどもたち(すべて白人のイギリス人)のわくわくしている様子を見ているだけでも楽しいものがありました。
「ツアー」オプション付きのミュージアム入場料は、ひとり£7.5でした(息子も同じ料金を徴収されましたが、彼は「ツアー」中はバギーの中でずっと寝ていました・・・)。
結局この日は、ランチを挟んでほぼ1日トゥイッケナム・スタジアムにいました。


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