Experiences in UK
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2003年10月27日(月) 第11週 2003.10.20-27 地下鉄の事故、バスの故障

この日曜日から英国は冬時間に移行しました。日本との時差は9時間になります。

(地下鉄の事故)
ロンドンの中心部を南北に走っている地下鉄ノーザン・ラインが止まってから1週間以上の時間が経過しています。これは、同路線のカムデン・タウン駅近くで発生した脱線事故による影響です。数人の負傷者が出る事故でした(なんとその前々日にはピカディリー・ラインでも脱線事故が発生しましたが、こちらはいちおう動いています)。ロンドン北部には多くの日本人が住んでおり、皆さん通勤に苦労されているようです。
数年前に死者まで出る大きな脱線事故を起こした日本の地下鉄・日比谷線がすぐに復旧したのと比べると、ロンドンの場合は、復旧まで異様に時間がかかっています。安全を優先して徹底調査しているのか、事故原因がそれほど深刻かつ大規模だったのか、事故後の修復作業が遅々として進まないのか、真相はよくわかりませんが、主要地下鉄路線を数週間に渡って止めてしまうというのは日本の常識では考えにくいことです。
今週のエコノミスト誌に地下鉄事故に関する記事がありました。それによると、2件続いた脱線事故を英国マスメディアが大きく取り上げている背景には、安全面での問題よりも地下鉄民営化をめぐる政治問題があるとのことです。そうかもしれませんが、利用する側としては、安全面でも不安です。

(バスの故障)
ところで、私はバス通勤であり、かつロンドン南部の住人なので、ノーザン・ラインが止まった影響はほとんどありません。ないはずなので偶然なのでしょうが、今週、2度もバスでの帰宅時間が通常の倍近くかかる羽目になってしまいました。1度は、工事か事故か原因は不明ですが、バスの通り道であるフルハム・ロードが途中で通行止めになり、迂回路(diversion)を通らされたケースです。diversionの標識から先は歩行者天国のようになっており、前後の車道は大渋滞でした。
その翌々日、こんどはバスの故障です。途中の道端でいきなり停止したまま動かなくなりました。他の交通手段を求めて乗客がどんどん減っていく中でしばらくじっと待っていると、15分ほど経ってなぜか再び動き始めました。ただ、その後も運転中に異音がし続けていて、終点までもう少しの停留所でついに力尽き、すべての乗客が降ろされてしまいました。私も別のバスに乗り換えて帰ることになりました。
なお、途中でバスを降ろされたのは、これで2回目です。

これら異常事態や緊急事態が発生すると、車掌が大声をはりあげて事情説明と指示をしてくれるのですが、私の拙いヒアリング能力では何を言っているのかさっぱり分からないのがつらいところです。バスの車掌は、黒人のおじさんやおばさんであることが多く、正統な英語を使っているわけではないために余計わかりにくいのだと推測されます。
ちなみに、ブリティッシュ・イングリッシュにおける「Thank you」の俗語「Ta」を聞いたのは、バスで定期を見せた時が最初でその時きりです。知識として知っていた私はちょっとうれしかったのですが、そういう英語を使う人たちだということです。

(ラグビーW杯3 イングランドv.s.サモア)
最後に、この時期、自分自身の備忘の意味もあって、やはりラグビーの話をさせてもらいます。
ジャパンがフィジーに敗れたのは残念でしたけど(TV観戦はできず)、私の中では「織り込み済み」であり、次の米国戦での1勝に期待したいです(と思っていましたが、今朝、米国にも惜敗のニュースが入ってきました・・・)。
日曜日のウェールズv.s.アルゼンチン戦とイングランドv.s.サモア戦は、TVでみることができました。いずれも二転三転の好ゲームでした。
アルゼンチンはつい最近までラグビー後進国でしたが、前回W杯でベスト8まで勝ち進んだことに示されるとおり、最近は世界の強豪チームをおびやかすまでになっています。今回のW杯でも、当地タイムズ紙はダークホースの一つとして扱っていました。ウェールズ戦の結果は1点差でウェールズの辛勝でしたが、試合の中身は完全に互角でした。
イングランドは予想外の大苦戦でした。スタンドオフ(こちらの言い方ではfly half)のウィルキンソンは、これまで公式戦で22回連続ゴール・キックを成功させているキックの名手ですが、この試合では計5本のゴール・キックをはずしました。ただ、キックの成功率こそ低かったものの、試合の流れを読んだドロップ・ゴールを決めるなど、実にクレバーな活躍で、苦しい試合の中で勝利をよびこんだキー・パーソンでした。相手チームのマークが外れていることをめざとく察したウィルキンソンのオープンスペース・キックを、走り込んだ右ウィングがダイレクトにキャッチしてゴールまで駆け抜けたエクセレントなトライが流れをイングランドに引き寄せました(オフサイドぎりぎりだったとは思いますが。オフサイドと言えば、当地のTV中継は「引き」の映像が少ないので、いまいち選手のポジショニングが分かりにくい点が不満です)。
最後に、月曜のフィナンシャルタイムズ紙に、今回W杯におけるジャパンの善戦ぶりに関する論説記事が掲載されましたので、参考までに、当該記事をご紹介します(米国に敗れる前の記事)。

***ココカラ、FT記事***
Cherry Blossoms(ジャパンのシンボル・マーク)に独自の輝きをもたらしたジャパン
(Financial Times, October 26 2003)
「ジャパン、ジャパン、ジャパン」。これは、先週、これまでのW杯に関するニュースについてオーストラリア人のラグビー・コメンテーターに尋ねた際の答えである。
トーナメントにおけるラグビー強国と弱小国との間の歴然たる力の差を多くの人が笑いものにしているなかで、勇敢なジャパンの戦いぶりはトーナメントに新鮮な風を吹き込んだ。
実際のところ、ジャパンは勝利を収めることができなかったかもしれないし、フィジー、フランス、スコットランドとの試合で平均して23点以上の点差をつけられもしたが、ジャパンのことを今回のトーナメントで最弱チームの一つと考え、大敗を喫するだろうとした多くの人たちの予想は覆された。
しかし、ジャパンは単にそのような(トーナメント参加チーム内の力の不均衡を示す)不健全な大敗を免れただけではなくて、これまでの3試合において相手チームと互角に渡り合った。
ジャパンは、そのパワーと組織力と今年のこれまでのW杯でもっとも印象的なトライのいくつかをゲットしたバックスのスピードにおいて、相手チームを驚かせた。不幸にもこれまでの3試合では、パワーと体力の面で相手チームの後塵を拝する結果となったが。
W杯が始まる前は、ジャパンが目立った活躍をするだろうという観測は全くなかったし、コーチのマーク・エラ氏もジャパンというチームがきちんと仕上がるまでまだ時間がかかると思っていたことを認めている。
同コーチは、「彼らは、あまりにも遅すぎると思われるほどに、ゆっくりと成長していた。彼らは今回のW杯で見せたような活躍ぶりを、これまでほとんど見せてこなかった。彼らはつねに潜在能力は持っていたが、それをフィールドで発揮する必要があった」と言っている。
エラ氏は、現役時代に攻撃において才能を発揮したプレーヤーだったが、彼が教えたのは攻撃スタイルというよりもむしろ、ゲームの組み立て方であった。
エラ氏曰く、「彼らはいつも私がやってきたようにプレーするので、私が攻撃スタイルなどについて再び考え出したりするようなことはしなくてよかったのだが、彼らに必要なことはより組み立てられたやり方でプレーすることだった。ディフェンスは以前からしっかりしていたし、フランスやスコットランドのような強豪チームと対戦する際にも物怖じしなかった」とのことだ。
今回のトーナメントにおいて、ジャパンの日本人プレーヤーたちの能力は、チーム内の3人のニュージーランド人によって強化された。この中には、冷静な試合運びをするスタンドオフ(fly half)のアンドリュー・ミラーも含まれる。ミラーは、W杯終了後にラグビーを引退し、地元の農場で働く意向である。
すべての日本人やほとんどのオーストラリア人は、エラ氏が確信する米国戦での勝利を手土産にミラー氏が引退できることを望んでいるだろう。米国戦での勝利は、日本でラグビー熱を盛んにするためにも重要なことである。
***FT記事、ココマデ***


2003年10月20日(月) 第10週 2003.10.13-20 夜のパブ、スリに遭遇

(夜のパブ)
英国といえばパブです。パブの昼の顔についてはすでにご紹介したことがありましたが、パブが本来の顔を見せるのは夜の時間帯です。
パブは、人の集まる地域に行けばそこここに沢山あります。各店が独自の雰囲気を持っているのですが、どの店にも共通していることがあります。飲むのは主にビール(ただし、その他ウィスキー、スピリッツの類もおいている)、座席は窓際や壁際に少しあるけど多くの人が立って飲む、店の外で立って飲んでいる人も多数、メニューに一応食べ物もあるけど何かを口にしている人はほとんどいない、という点がほとんどのパブの共通項です。つまり、パブという場には共通の決まった「形」があり、形とは文化のことなので、パブは英国文化を象徴する一例ということになるのだと思います。
「のり」としては、日本の居酒屋や一杯飲み屋と同じです。サラリーマンや学生が連れ立ってビールや酒を飲みに行く、あの「のり」です。英国人ビジネスマンがパブの外でたむろして飲んでいる様子は、有楽町のガード下あたりの飲み屋の店外テラス(?)席で飲んでいるサラリーマンの風景と同じですし、店内で立ち飲みしている光景は、梅田地下街の一杯飲み屋か串揚屋でコップ酒片手におだをあげているサラリーマンを彷彿とさせます。

(スリに遭遇)
オフィス近くのパブに週に1回くらい立ち寄ってから帰るのですが、先日、そのパブで穏やかでない事件に遭遇しました。
その日は金曜の晩で、店内はまさに立錐の余地がないというくらいに混み合っていました。我々は立って飲んでいたのですが、少し動くと周囲の人にぶつかるという感じです。
1時間ほど飲んだ頃、私の隣の同僚が足下に置いていた自分のバッグがないと言い始めました。我々は直ちに周囲を探し回りましたが、時すでに遅しで、どうやらスリにやられたようでした。中身にたいしたものが入っていなかったのは不幸中の幸いでした。
たまたま私はバッグを肩にかけていたのですが、私の場合、ノートPC、手帳、携帯電話など失うと致命的なダメージを受けるものが入っていたので、肝を冷やしました。なにしろすられた人は私の隣に立っていて、彼のバッグは私の足下にあったのですが、スリの気配にすら気づきませんでしたので。
確かに、立って飲むパブでは荷物がすられやすい状況にあるといえます。とくに混雑していると肩にかけるのが億劫になってバッグを床に置きがちですので、スリにとっていい狙い目になるのでしょう。
こちらに来て2か月あまりが過ぎ、犯罪に対する警戒モードが緩みつつあった時期なので、すられたご当人には申し訳ないのですが、いい勉強になりました。

(ラグビーW杯2 イングランドv.s.南アフリカ共和国)
先週に続きラグビーの話題になりますが、オフィスの現地スタッフの女性でラグビーの大ファンがいます。彼女は普段はおとなしく仕事をしているタイプなのですが、ひとたびラグビーの話になると力強い身振りと熱い表情でイングランドに対するオマージュを語り始めます。
先週末の試合(スコットランドv.s.ジャパンとイングランドv.s.グルジア)後の週明け、不用意にも「ジャパンは残念だったけどおめでとう」と言うと、「(ジャパンに勝った)スコットランドはイングランドの敵よ。私はジャパンを応援していた」と強く抗議されてしまいました。私はイングランドが勝ったことに対しておめでとうを言ったつもりでしたが、それがうまく伝わらなかった結果の大失態です。
ラグビーに限らない話ですが、一般的に英国における「英国人」はインド系英国人など出自が外国の人であり、それ以外の人々の意識は「イングランド人」であったり、「スコットランド人」であったり、「ウェールズ人」であったりするということは、他の場面でも経験しました(スコットランド出身者に対して「あなた方英国人は〜」と話しかけて訂正された)。これは、たとえば日本の県民意識などとは比較にならないほどに強くかつ根深いもののようです(民族や歴史から現在の国の体制までが大きく異なる)。

なお、先週に行われたジャパンとスコットランドの試合に関する当地メディアの報道ぶりですが、ジャパン(世界ランキング15位)なんぞにスコットランド(同7位)が敗れるという歴史的事件が起こりそうだったという取り上げ方がほとんどでした。私が見た一般紙における報道に限った話ですが、「事件」を回避できたのはラッキーだったとしたうえで、スコッツの不甲斐なさとジャパン善戦に対するパニックぶりを指摘している記事が多かった印象です(Times,FT等)。
ジャパンの善戦は、今年のWカップ序盤における最大の話題の一つになっている様子です。今週末のフランス戦での大健闘もそのような見方に拍車をかけています(もっとも、この試合は私はTV観戦できませんでしたが)。
今週末に行われた予選リーグ大一番の一つであるイングランドv.s.南アフリカ共和国戦は、もちろんTV観戦しました。ランキング1位と5位の好ゲームというだけではなくて、4年前のW杯同カードでイングランドが惨敗しており、それを糧としてその後のイングランドが飛躍的な強化に成功したという背景があるのです。この4年間のこのカードは、必要以上にヒートアップすることが多かったこともあり、当地メディアでは4年前の借りを返す因縁の一戦という位置づけをして大いに盛り上がっておりました。
結果は、ご案内の通りイングランドの快勝ということで、筋書き通りにひとまず英国人は溜飲を下げたという訳です。今回の試合も負傷者続出の熱い好ゲームだったと思います。前半をよくしのいだイングランドが、後半のラッキーなトライ以降は主導権を握りましたが。キッカーの違いが明暗を分ける一因となりましたね。
これで、順当に行けば、決勝リーグ・決勝戦は、イングランドとニュージーランドのランキング1位と2位の対決になりそうです。


2003年10月13日(月) 第8-9週 2003.9.29-10.13 メディア・パワー、ラグビーW杯開幕

ロンドンは週ごとに寒さが増し、日も短くなってきています。こちらに来た頃は9時台でも明るかったのですが、最近は6時台で暗くなってきました。

(メディア・パワー)
10月の終わりから11月にかけて英国労働党など各政党の党大会が各地で開かれました。労働党の党大会では、落ち目のブレア首相とナンバー・ツーのブラウン財相の対立が鮮明になった一方、ブレア演説が意外に好評を博したなどの話題がありました。
そのような本筋からは離れますが、実際に党大会に参加してきた人から聞いた話のなかに非常に面白い指摘がありました。党大会の会場で肩で風を切って歩いているのは誰かというと、政治家やその秘書たちではなくて、メディアの人間だというのです。英国の政治家はすらりとした体型で紳士然とした人が多いのに対して、メディア関係者は体格がよくて傲岸な態度の人が多いということでした。その方はさらに続けて、これは日本での人間類型とは逆のパターンだと指摘されていました。

この話で興味深かったのは、メディア人の類型に関する日英の違いです。私のこれまでの個人的な印象では、日本のメディア・パワーは匿名性の高い得体の知れないものであることが多いのに対して、米国の場合はメディア・パワーを特定の個人が体現しているケースがよくあるように感じていました。
英国も同様のことが言えるのでしょうか。
第四の権力のありように関する日本と英国の違いは、これからの観察課題としたいと思いました。

(ラグビーW杯開幕)
ところで、週末にラグビーW杯が開幕しました。現在のイングランドは世界ランク1位であり、しかも今年に入ってからチームの仕上がり具合が非常に良いということで、当地での期待もたいへん高まっているようです。北半球に初めてエリス杯をもたらすか否かも注目されているところです。
ラグビー発祥の地である英国でも、普段のスポーツニュースにおけるラグビーの扱いは意外と小さいのですが、さすがにW杯となると違います。街を歩いていても、そこここのパブで「ラグビー中継しています」の掲示が出ています。
12日は、ウェールズ、スコットランド、イングランドの試合がありました。すべて生中継されており、私も全試合をTV観戦することができました。なお、この日はF1最終戦の鈴鹿GPもあって、早朝からTV三昧でした。TV中継の様子をみていると、スポーツとしてのF1のステータスは日本以上に高いように思います。F1は欧州が本場のスポーツなので当然かもしれませんが、ドライバーにしても車体、エンジンにしても英国にろくなチーム、会社はないのですが・・・。

さて、12日、英国の3チームはすべて快勝という結構な結果となりました。
スコットランド戦の相手はジャパンでしたので、幸運なことに週末にジャパンの初戦を見ることができました。ジャパンは、善戦むなしく、という感じでしたね。相手にミスが多かったこともあってスコア以上に互角の戦いをしたと思うのですが、個人的には一部スター選手(ウイングとスタンドオフ)がいい流れを断ち切った場面があったのが残念でした。もっとも、両選手ともその他の場面では非常にいい活躍をしていましたが。行くべき人が行くところと試合の流れのなかで抑えるところの判断というのは難しいものだと思いました。あとは、ディフェンスの際にエアーポケットに入り込んだように簡単にトライされる時間帯があるのも歯がゆいものでした(サッカーのドーハの悲劇のように)。
まあ、それらもその後の試合での、より早くてかつ速いパスを確実に決めるイングランドの戦いぶりをみていると、段違いの力の差というものを思い知らされましたが。
今年は、ジャパンの1勝(対米国?)とイングランド悲願の優勝に期待してW杯を楽しみたいと思っています。我が家の近くにも普段からラグビー専門のスポーツ・パブとして営業している店があるので、W杯期間中に是非1度冷やかしてみたいと思っているのですが、ちょっと怖い気もして逡巡しているところです・・・。


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