文
- 花
2003年12月17日(水)
暗がりに誘い込む腕をかわしたら ひらり 誠実と鏡に向かって呟いたら また ひらり 曖昧の花がほころびはじめる
要らないものは捨てればいい 不用意に咲いてしまった花を 愛でてしまうには余裕が足りない ただ 困っているのだろうが
さあ散らしてしまうがいいさ 誰に知られることもなく ただ この暗がりのうちでのみ 手の中の花は香るのだから
無責任こそ 無償 無駄だなんてああ 無意味な
私とあなたとこの花だけが知っている
/本歌取り「もろともにあはれと思へ山桜 花よりほかに知る人もなし」
- 案山子
2003年12月16日(火)
もうすぐ冬になります あなたと別れた冬になります
また会おうと手を握ったのは 年明けすぎた焼き火の中で ふりかえった頬が赤く照り
ちらちらと降る火の粉のあいだ 燃え尽きて見失うたくさんの灯(あかし)
今どこに 居ますか まだあの炎を抱いていますか
手紙が無理なら 電話でもいい そんな言葉はのみこみます ただ まだ 里の傍立ち尽くす
姿さえ思えば今度こそ 焼け落ちてしまう 冬
- 雪夜
2003年12月15日(月)
降りしきる雪はメレンゲである もしくは昨日風呂場で 胸のあいだを通り 腹の上をすべり落ちた泡だ
雪ぐもりの空は朱をはらんでいる それをぬくもりと感じては身勝手なのだ 水は冷たく氷も冷たく やわらかいものはごく細い棘で織り上げられる あれはすべてそういうものでできている 抱きしめれば肌を傷つけることを知っているだろう だから僕は伸ばした手を引っ込める あれはメレンゲもしくは泡 そう夢想してはみるけれど
淡い光は自身が発光しているのではない けれどその光を優しさと思いたい僕は やはり身勝手なのだ
君 君はそんな僕を 何と呼んでくれるだろうか
<< 前 目次 次 >>
初日から日付順 最新
|