MEMORY OF EVERYTHING
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2003年04月28日(月) |
曇天・ときどき・晴天 |
どうせなら、
「アンタなんかキライ」と
はっきり言ってくれればいいのに
皆幸せになりたくて、あがいてる。
この青い空の下で。
携帯電話のメールボックスを覗くと、いつでもそこにある名前。
最後のメールは3月1日。
一言の文章も送られてこなくなってから、1ヶ月経った。
「エイプリルフールか……」
気付いたのは少し遅かったかもしれない。紛れもなく今日は4月1日だ。
桜前線も足音を経てて駆け寄ってきた。
嘘をつけなかったあの日吹いていた冷たい風も、もうここにはない。
嘘をつく。
そんな簡単で残酷な行為が、許される日だ。4月1日。
鈍い温度の携帯電話を握って、ゆっくりとボタンを押していった。
メールボックス。
3月1日。
見慣れた名前。
返信。
どうせ簡単にバレる嘘だ。
1ヶ月も断絶状態だった後で、突然にこんなものを送って信じられる訳がない。
送信。
胸が躍ってきた。なんと返してくるのだろうか。
『嘘つけ』
それでもいい。
『騙されるかよ』
それもいい。
そうしたら『やっぱりね』と私が返しておしまい。
万が一、もしこの嘘が見破られなければ。
そうしたら、鼻で笑ってやる。
『バカね、今日はエイプリルフールでしょ』
携帯電話が震えた。小刻みな振動が全て終わってから、開いた。
新着。
1ヶ月ぶりの名前がそこにあった。
そして本文を読み、私はそのまま動けなくなった。
『会いたいと思ってた』
・・・バカね。ひっかかるなんて。
今日はエイプリルフールだって・・・知ってるでしょう。
『会いたいと思ってた』。
たったその1文が頭の中を駆け巡って、行き場を無くしているようだ。
出口は私の送った言葉しかない。
しかしそれは、偽りだ。幻の出口は通れない。
『会いたいと思ってた』。
駆け巡る。頭を抜けて、心臓までやってきて、暴れ出す。
そして指が。
真実を打ち出す為に動き始める。今日という日を裏切る、「真実」を・・・
『わ』
『わたしも』
『私も』
『あ』
突然の振動が、ボタンを打つ指から、機体を握る手から全てを揺るがした。
新着。
名前。
『なんて、嘘。騙された? 今日、エイプリルフール。』
だるい指で、言葉を作った。
『私も、嘘だったから』
送信。
送信完了。
メールボックス。
送信済みメール。
名前。
本文。
「好き」
削除。