無力感を知らない相手に、届く言葉なんてあるはずがない。

僕は困ったことに、その事実を知ったときには真剣に目眩がした。

もう思い出せないくらい久しぶりのその感覚。

それでも、そんな動揺の度合いに関わらず、比較的冷静に対処できたと思う。

変に顔が引き攣ったり、チックも出なかったし。

それなりに自分を誤魔化す術は身に着いたのかな。


君が選んだことに、僕は何も言う権利はない。

例えそれが間違いであることが分かっていたとしても。

事実と真実は違うし、結果はいつも正しいものだ。

そう思っていなければ、生きてはいけないよね。


君は間違っていないよ。


僕は、決して君が正しいとは言いたくなかった。

そうして言葉を濁して、いかに君が大切だったか、

君を失うことがどれほどの損失かを、

婉曲的に語るしか愛情を示す術を知らなかった。


いつしか話題は逸れて、

君の幸せは手の届かない現実として、

やがて必ず来る事実として、

僕等の間に横たわって身動ぎを止めた。

みんなと一緒に歩いていけばいい。
どこかで見たような笑顔を貼り付けて。

叶わぬ未来を夢と名付けて、
誰かが言ってた言葉を繰り返して。

探せば見つかるものでもない。

だからといって、誰もが持っているわけでもない。

気付くことなのか、

作ることなのか、

いずれにしても何か鍵はあるはずだ。

足掛かりや、道標と呼ばれる何かが。

闇雲に旅に出たって、地図もなく目的地には着けない。

しん ｜MAIL

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