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2007年12月31日(月) 2007年度 内外十大ニュース

2007年度 内外十大ニュース




 共同通信と加盟新聞社、ラジオ・テレビ契約社の報道責任者らが選んだ2007年の10大ニュースが決まった。

国内ニュースは夏の参院選での自民党惨敗と「ねじれ国会」、安倍晋三首相の突然の辞任と、政局の大変動が一、二位を占めた。さらに年金、防衛省疑惑、食品偽装など、国民の不信・不安を示す暗い話題がずらりと並んだ。

 国際ニュースでも、米サブプライムローン焦げ付きに端を発した金融不安、原油、穀物価格高騰など、今後の経済、生活に直結する不安要因が上位を占めた。 ゴア米前副大統領らのノーベル平和賞受賞は、待ったなしの気候温暖化対策への関心を高め、ポスト京都議定書への動きも出始めたが、実行はこれから。 誰もが困難な時代の到来を予感する一年だったといえる。来年は米大統領選。国内政局は解散・総選挙含みで推移する。さあ、どんな年になるか。


●【国内十大ニュース】

 亥(い)年の今年は統一地方選、参院選と選挙続きだったが、参院選で自民党は歴史的惨敗。都市と地方の格差拡大、低所得の若者の増加など「構造改革」のひずみに対する国民の不満が爆発した。参院の与野党勢力逆転に伴う「ねじれ国会」がその象徴となった。

 安倍晋三首相の唐突な退陣で、後継となった福田康夫首相は当初の対話重視、アジア重視の姿勢が好感されたが、指導力不足から支持率はじり貧気味だ。その福田氏と、小沢一郎民主党代表との党首会談では「大連立構想」が突如浮上。構想を持ち帰った小沢代表の辞意表明―一転撤回の騒ぎに発展した。安倍退陣から小沢辞意まで、リーダーらしさを感じさせない振る舞いに国民はあぜんとさせられた。

 社会保険庁の不手際で「宙に浮いた」五千万件もの年金記録。防衛商社から約三百回もゴルフ接待を受けていた「大物前防衛次官」。老舗や有名店で相次いだ食の偽装など情けない話題ばかりだった。
 その中で、ヒトの皮膚から「万能細胞」を世界で初めてつくった山中伸弥京都大教授チームの成果は唯一、将来に希望を抱かせる明るい話題。

(1)参院選で自民党が歴史的惨敗

 参院選の開票速報に厳しい表情の安倍首相。右は汗をぬぐう自民党の中川幹事長=7月29日、東京・永田町の自民党本部
 7月29日投票の参院選で自民党は地方格差や年金の逆風を受けて歴史的惨敗。初めて参院第一党の座を民主党に明け渡した。参院与野党勢力の逆転で「ねじれ国会」が出現。与党は新テロ対策特別措置法案を衆院で再議決、成立させるため臨時国会を再延長。攻防は異例の越年へもつれ込んだ。


(2)安倍晋三首相が突然退陣。後任に福田氏

 党首会談を前に握手する福田首相(右)と民主党の小沢代表=11月22日、首相官邸
 参院選惨敗後も続投、内閣を改造した安倍晋三首相は9月12日、突然辞意を表明。後継は自民党総裁選で麻生太郎前外相を破った福田康夫元官房長官。11月、小沢一郎民主党代表との党首会談で大連立構想が浮上したが、民主党側の拒否で頓挫。小沢代表は一時辞意表明する騒ぎに。


(3)「消えた年金」で社保庁に怒り沸騰

 年金記録不備問題を受け、都内で謝罪のチラシを配る社会保険庁の村瀬清司長官(左)=6月8日
 該当者不明の「宙に浮いた」年金記録が約5千万件に上ることが2月表面化した。入力ミスなどを放置した社会保険庁は解体が決まる。自民党が「公約」とした名寄せは難航、来年3月までの解決は不可能になり、厚労相らの政治責任問題も浮上した。12月に記録確認のため「ねんきん特別便」の発送が始まったが、国民の怒りは収まりそうにない。


(4)防衛装備疑惑で守屋前防衛次官を逮捕

 東京地検の取り調べに向かう、前防衛事務次官の守屋武昌容疑者(左)と妻の幸子容疑者とみられる女性=11月28日、東京都新宿区
 防衛装備品調達をめぐる汚職事件で東京地検特捜部は11月28日、防衛専門商社「山田洋行」に便宜を図った見返りに約389万円相当のゴルフ接待などを受けた疑いで、守屋武昌前防衛事務次官と妻を逮捕した。守屋容疑者は今年8月退任するまで約4年間「天皇」といわれるほど権勢を誇った。今年誕生したばかりの防衛省の改革が早くも課題だ。

(5)止まらぬ食品偽装

 産地偽装事件で農林水産省に改善報告書を提出後、記者会見で謝罪する船場吉兆の湯木喜久郎取締役(右)と湯木佐知子取締役=12月10日、京都市内のホテル
 年明け早々、洋菓子チェーン不二家の消費期限切れ原料使用が発覚。その後北海道で豚肉を使った「牛肉コロッケ」、代表的土産「白い恋人」の賞味期限改ざんが表面化した。さらに伊勢名物の「赤福」、秋田の比内地鶏、大阪の「船場吉兆」など各地で賞味期限改ざんや原材料偽装などが続き、「食」の安全・信頼が大きく揺らいだ。


(6)「政治とカネ」問題。松岡農相が自殺

 事務所費などを巡り、「政治とカネ問題」が噴出、参院予算委員会の集中審議で、答弁の挙手をする安倍首相と松岡農相=3月13日
 「政治とカネ」問題の渦中にいた松岡利勝農相が5月28日、首つり自殺した。家賃ゼロの議員会館事務所に多額の事務所費や光熱水費を計上。「『何とか還元水』を付けている」とあいまいな弁明だった。後任の赤城徳彦氏も不明朗な事務所費計上で辞任するなど問題が噴出。共産党を除く与野党が1円以上の領収書を公開する政治資金規正法改正に合意したが、ガラス張りには遠い。


(7)能登、中越沖地震で原発の安全性に疑問

 新潟県中越沖地震による火災で煙が上がる東京電力柏崎刈羽原発=7月16日(第九管区海上保安本部提供)
 能登半島沖で3月25日震度6強の地震。7月16日には新潟県中越沖で震度6強の地震があり15人が死亡、2千人以上が負傷した。東京電力柏崎刈羽原発で火災や放射性物質を含む水漏れがあった。耐震基準を大幅に超す揺れや原発直下に断層の可能性など安全性に不安が広がった。


(8)テロ特措法期限切れ。海自が撤収

 テロ特措法が期限切れ、出港に際し甲板上に整列する海自の補給艦「ときわ」の乗組員。後方は護衛艦「きりさめ」=11月1日、インド洋(共同)
 テロ対策特別措置法が11月2日失効、5年11カ月にわたった海上自衛隊によるインド洋での米艦などへの燃料供給が終了した。燃料の対イラク戦転用疑惑も指摘された。参院選敗北で4度目の延長を断念した政府・与党は、活動を給油・給水に限定した新法案で早期再開をもくろむ。


(9)憲法改正手続きを定めた国民投票法成立

 与党などの賛成多数で国民投票法が可決、成立した参院本会議=5月14日
 憲法改正の手続きを初めて定めた国民投票法が5月14日成立。投票できるのは18歳以上、過半数の賛成で憲法改正案は成立するとした。投票2週間前のマスコミ報道禁止など厳しい規制も。公布後3年間は憲法改正発議を凍結。憲法審査会設置の動きはねじれ国会で遅れている。


(10)伊藤一長長崎市長が射殺される

 長崎市の伊藤一長市長が銃撃され死亡、現場を調べる長崎県警の捜査員=4月17日、長崎市
 統一地方選で4期目を目指し運動中の伊藤一長長崎市長が4月17日、暴力団組員に銃撃され死亡した。市とのトラブルが原因だったが、長崎市では前任の本島等市長銃撃事件も起きており、市民だけでなく全国に衝撃を与えた。




●【世界十大ニュース】

 世界経済に衝撃が広がった。サブプライムローン焦げ付きの深刻さが表面化し、米株価は暴落、世界の金融・証券市場に波及した。余波はまだ続いている。十年前に一バレル二十ドル前後だった原油は十一月には百ドル近くまで高騰、穀物価格の高騰とダブルパンチで世界の庶民の生活を圧迫した。中国も食品、玩具など輸出品の安全性が問われ、欧米で市場から排除する動きも出た。

 アジアでは、六カ国協議で北朝鮮の核施設の無能力化に合意し、米朝が急接近。拉致解決を最優先に掲げる日本との間で溝が生まれた。ミャンマーでは民主化を求める市民デモが武力で鎮圧された。取材中の長井健司(ながい・けんじ)さんを襲った悲劇は、軍事独裁政権の暴虐ぶりをあらためて知らしめた。

 地球全体の問題として、気候温暖化への関心が急速に高まったのも今年だ。平和で公正な社会を築き、環境を守りつつ持続的成長を続けることを人類はなし得るのか―。ゴア前米副大統領らがノーベル平和賞を受賞した背後には、そんな未来への問いも隠されている。京都議定書から離脱していた米国もようやく「バリ行程表」合意で協議に戻ってきた。


(1)米サブプライム問題で世界の経済・金融に混乱

 米サブプライム住宅ローン問題で、対策を発表するブッシュ大統領(左上)と、売りに出された米国内の住宅のコラージュ(素材写真はAP)
 信用力の低い人の住宅購入に対する米国のサブプライムローンの焦げ付きが急増し、8月に米株式市場は暴落、世界同時株安に。ローン債権を組み込んだ金融商品の価格も暴落した。米国は利下げ、返済利率の凍結などの対策を打ち出したが、市場を覆う先行きへの不安感は依然強い。


(2)原油が1バレル=100ドルに迫る。バイオ燃料で穀物価格も高騰

 マニラで燃料高騰に抗議し、対策を求めてストライキをする運転手らの団体=12月13日(AP=共同)
 11月にニューヨークの原油先物相場は、一時1バレル=99ドルを突破した。中東情勢の混迷、投機的資金が原油先物市場に流れ込んだことなどが原因で、サブプライム問題とともに世界経済の成長阻害要因になると懸念されている。バイオ燃料需要でトウモロコシなど穀物価格も上昇、食品価格の高騰を招いた。


(3)6カ国協議で北朝鮮の核無能力化などに合意。米朝が接近

 6カ国協議で、手を取り合う(左から)ロシアのロシュコフ外務次官、韓国の千英宇・外交通商省平和交渉本部長、北朝鮮の金桂冠外務次官、中国の武大偉外務次官、ヒル米国務次官補、佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長=9月30日、北京の釣魚台迎賓館(共同)
 9月の6カ国協議で北朝鮮が核の無能力化に合意し、米朝は関係改善に向けて急接近、テロ支援国指定の解除が焦点になった。ブッシュ大統領は12月に送った親書で金正日(キムジョンイル)総書記を「親愛なる(国防)委員長殿」と呼ぶなど敵視政策の変更をうかがわせ、拉致問題解決を最優先とする日本との溝が広がった。


(4)ミャンマーで反政府デモ。ジャーナリスト長井健司さんが射殺される

 ミャンマーのヤンゴンで、軍と警察に追われて逃げる市民を取材中に撃たれて倒れた長井健司さん=9月27日(ロイター=共同)
 僧侶、市民らによるミャンマーの民主化要求のデモは9月に10万人規模に達したが、軍が武力行使、多くの死傷者を出して鎮圧された。同27日、取材中の日本人ジャーナリスト、長井健司さんが兵士に撃たれて死亡した。


(5)地球温暖化への危機感が高まり、ゴア氏らにノーベル平和賞

 ノルウェーの首都オスロで行われたノーベル平和賞授賞式で、メダルを胸に掲げるアル・ゴア前米副大統領(左)と「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」のパチャウリ議長=12月10日(AP=共同)
 地球温暖化に警鐘を鳴らす映画「不都合な真実」を製作するなど温暖化問題に取り組んできたゴア前米副大統領と「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)がノーベル平和賞を受賞。世界の市民の関心が高まる中で、12月の国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)は「バリ行程表」に合意。ポスト京都議定書に向け一歩、歩み出した。

(6)英国首相、フランス大統領と欧州で指導者交代

 パリで顔を合わせたフランスのサルコジ大統領(左)と英国のブラウン首相=7月20日(ロイター=共同)
 英国労働党はイラク戦争をめぐる姿勢などが批判されたブレア氏に代わり、6月にブラウン新首相が就任。イラク戦争に反対したフランスのシラク大統領の後任には、保守系与党、国民運動連合党首のサルコジ前内相が社会党候補を大差で破って5月に当選。内相時代に移民政策などで強硬姿勢を示したサルコジ氏には極右の票も流れた。

(7)食品、玩具など中国製品の安全性への疑惑が噴出

 2004年に中国安徽省阜陽市で起きた「偽粉ミルク事件」の被害を受け、頭部が肥大した子供=06年1月(共同)
 米国で中国製のペットフードを食べた犬や猫が大量死したことをきっかけに、中国製の練り歯磨きや海産物、玩具などから相次いで毒性物質が検出され、「世界の工場」といわれる中国産品への信頼が大きく揺らいだ。

(8)米、イラクに部隊増派。一部で治安回復するも混迷続く

 イラクの首都バグダッド中心部で、爆弾テロの現場を調べる駐留米軍とイラク軍の兵士ら=12月2日(ロイター=共同)
 米国はイラクに3万人を増派。一部地域で治安は最悪時より改善したが、宗派対立や反米感情に根差したテロや武装闘争は続いた。トルコに越境攻撃を繰り返すクルド労働者党(PKK)掃討を理由にトルコが12月に空爆。新たな波乱要因に。


(9)金正日総書記と盧武鉉大統領が7年ぶりの南北首脳会談

 北朝鮮の金正日総書記(左)と歓迎式典に臨む、韓国の盧武鉉大統領=10月2日、平壌(韓国取材団・共同)
 韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領は10月2日、韓国元首として初めて軍事境界線を歩いて越え、平壌で金正日総書記と2000年以来の南北首脳会談。朝鮮戦争終結宣言のため当事国の首脳会談を開催することなどをうたった南北首脳宣言に署名した。しかし12月の韓国大統領選では野党ハンナラ党の李明博(イミョンバク)氏が当選、10年ぶりの保守政権へ。

(10)イランの核開発で国連安保理が制裁決議

 国連安全保障理事会で、イラン追加制裁決議を採択=3月24日、ニューヨークの国連本部(AP=共同)
 イランの核関連活動に対し、国連安保理は昨年末に続き、3月に追加制裁を発動。独自の経済制裁を行っていた米国も10月に制裁を強化。安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国を中心に核開発を中止させるよう圧力をかけていたが、米情報機関は12月、イランは03年に核兵器開発を中断していたとの分析結果を公表した。


2007年12月03日(月) 妻はなぜ離婚をしたがるのか


『妻はなぜ離婚をしたがるのか』<富田たかし>(日本文芸社刊)





 熟年離婚が相次いでいる。圧倒的に多いのは、妻が離婚を申し出て、夫は晴天の霹靂(へきれき)にたじろぐパターンだ。妻が離婚したくなる原因は、日本特有の夫婦関係にあると、心理学者の富田たかしさんは言う。『妻はなぜ離婚をしたがるのか』(日本文芸社刊)を書いた富田さんは豊かな夫婦関係を築く秘訣(ひけつ)を次のように語った。

   ◇   ◇   ◇

 明治以降、日本の家庭は、家父長制の下に築かれてきました。しかし、あくまでそれは表面上のことで、実権を握っているのは女性、つまりお母さんでした。家父長制が崩れてきた現代でも、実情は同じ。昔も今も、男はお母さんにものすごく依存しています。日本は伝統的に母親がとても強い社会なのです。それは健康的でいいことですが、一方で困った事態ももたらしました。 


 日本のお母さんたちは、子供が出世競争、受験競争に勝ち抜けるよう、身の回りの世話をせっせと焼きます。「あなたは勉強だけやってればいいのよ」という風に、生活面での面倒なケアをすべてしてあげるわけです。すると子供は、永遠にお母さんを必要とする人間になってしまいます。その子が結婚すると、結婚生活の中でも母親を求めます。


 新婚のうちこそ男と女、夫と妻の関係ですが、子供が生まれると関係性が変化します。奥さんはいよいよお母さんになるわけです。パワーアップし、家庭での実権を握り始めます。そのとき夫は居場所を失い、家庭の長男の座に逃げ込むのです。そこは独身時代と同じ環境で、とても居心地のいい場所です。夫と妻から、擬似母と擬似長男の関係へ。「擬似母子関係」の始まりです。


「擬似母子関係」がスタートすると、大きな問題が現れます。セックスレスです。なぜなら、親子間でのセックスはタブーです。だから、意識の上で親子関係に陥った夫婦は、セックスレスになるわけです。


 妻が出産するとき、夫は禁欲を余儀なくされますが、それをきっかけにセックスレスに突入するケースが多いようです。まじめな夫なら我慢しますが、ちょいワル夫たちは、浮気をしたり風俗に行ったり、外部で性欲を処理し始めます。そうして、ときどき外で浮気ともつかないことをする程度で落ち着き、妻と性交渉がなくても平気になってしまう。


 男らしく、女らしく振る舞うという広い意味でのセックスがあってこそ、男女の関係が成り立ちます。そんなの照れくさいですか?だとしたら、「擬似母子関係」にどっぷり浸っている証拠です。


 外で恋愛をするならまだしも、風俗産業を利用する人が多いのが現状です。風俗は、こちらが気を使う必要はなく、気を使われる一方です。つまり、システム全体が「擬似お母さん」なんですよ。お金で買うお母さんなんです。コミュニケーション能力はまったく磨かれません。家でも外でもお母さんに面倒を見てもらっている男は、どうでしょう? 男としてちっとも魅力的ではない。それが女性の本音だと思うんですね。



●妻のアイデンティティー・クライシス

 子供がいる間は、「擬似母子関係」によって夫婦間も安定しますが、子供が巣立つとそうもいかなくなります。妻は母親であることに変わりはないものの、実際の母親の役割からは解放されます。母親であるからこそ、自分を保てていたのに、それがなくなる。自分のアイデンティティーを失ったような気分になるのです。それが、妻たちの危機、「アイデンティティークライシス」です。彼女たちは、これからの自分の生き方を真剣に考えなければいけない時期に差しかかるわけです。


 そんなときにふと周囲を見渡すと、今一緒に住んでる「長男もどき」が夫だったことに気付く。ところが「長男もどき」は夫としての役割をちっとも果たしてない。しかも、これからは自分の好きなことをするとか勝手なことばかり言っている。妻に経済的な保障があれば、何んでこの人と一緒にいなきゃいけないのだろう、別れたいという気持ちになって当然です。


 日本人の結婚は「運転免許型」なんです。いったん結婚したら、事故を起こさない限り自動更新できるという感覚です。ところが、欧米では結婚は「自転車型」で、こぎ続けなければひっくり返ると思っている。だから一生懸命、夫婦関係を維持する工夫をするわけです。日本の多くの男性はその努力もせず、長男の座に入ったことすら、コロッと忘れている。だから、離婚を突き付けられると「俺は何も悪いことしてないじゃないか」という反応になります。確かに悪いことはしてないかもしれないけど、いいこともしていないんです。



●夫婦のシナリオを変えてみる

離婚という現実を突き付けられたら、どうしますか? 僕は、離婚するのも一つの手だと思うんです。お互いに新しい可能性を広げていけるなら、悪いことではないと思います。しかし、一方で、たとえ「擬似母子関係」であろうと、過去を共有しているパートナーは貴重な存在なんだってことに気付いたほうがいい。


 人間は同じ相手に何度でもほれ直すことができるんです。結婚、出産などの際に経験したんじゃないかと思いますが、生活の舞台と役割が変わると、相手の新しい面が見えて、ほれ直すものなんです。そこで、「擬似母子関係」が定着してしまった夫婦に、僕が提案するのは、これまでのシナリオを捨てて、新しいシナリオを作り上げていくことです。


 舞台設定や配役を変えて、意識的にポジティブに関係を楽しむのです。例えば、こんなシナリオが考えられます。家庭を一緒にマネジメントしていく「共同経営型」、同じ趣味を一緒に楽しむ「同士型」、お殿様と家来のように支配・被支配の擬似体験を楽しむ「SM型」……。新しい関係を、遊び感覚で楽しむことによって、新たな魅力も見えてきますし、今までやらなかったこともするようになる。ここが大事なんです。



●相手を受け止めることが大切

 これからの10年、20年を、夫婦でどう過ごしていくか。それを考えることが、新たなシナリオへの第一歩です。もちろん、生活を共にしてきた大切なパートナーに自発的に愛情を注ぐことが前提です。そして、もう一つ大事なことは、相手をちゃんと受け止めること。相手の行動や気持ちを受け止めて、感謝し、褒めてあげることです。


 「夫が話を聞いてくれない」と嘆く奥さんがいますが、相手に話を聞いてもらうためには、まずこちらが聞かなきゃいけないんですよ。一生懸命聞いてあげると、相手はうれしいからますます話すようになります。そして、聞いてくれた人の話を聞くようになるんです。してほしいことは、まずは自分から、の姿勢が大切なのです。


 有限の中でものを考えることも大切です。中年期を迎えると、自分に残された時間は有限だと気付きます。そして、今という時間は、二度と戻らないのです。時間だけじゃない、自分にできることにも限りがある。我々の人生はそういうものだらけなんです。


 夫婦関係なんていつかよくなるだろうと思っていないでしょうか。でも、明日もあさっても元気で過ごせる保障なんてどこにもないのです。だとすれば、いつかではなく、今の生き方を変えたほうがいい。それが豊かな未来を作っていくんです。


★以上の著者紹介
富田たかし(とみた・たかし)
心理学者。駒沢女子大学人文学部教授

略歴
1949年生まれ。上智大学大学院文学研究科博士課程修了。専門分野は「認知心理学」。犯罪事件から恋愛まで、人間の深層心理を、独自の視点で分析する手法には定評があり、様々なメディアで活躍中。おもな著書に、『「ハナシ上手」になる心理術』(角川書店刊)、『詐欺の心理学』(ベストセラーズ刊)など。




★【夫が妻に感じる不満トップは整理整頓下手】 明治安田生命保険の調査

パートナーは互いに相手を「片づけ下手」だと思い込んでいる節がある

 長く連れ添った夫婦でも、意外に相手の本音に気付いていないものだ。夫が妻に感じる不満のトップが「整理整頓ができない」だと聞いて、驚く女性は多いはず。2位は「料理の手抜き」、3位は「体型が変わってきたところ」だそうで、このあたりはなかなか直接自分の口からは言いにくそうで、無記名のアンケート調査だからこそ言えた告白かも知れない。

 明治安田生命保険が夫婦を対象に実施した、夫婦をテーマにしたアンケート調査の結果だ。対象は20〜59歳の既婚男女。回答者の世代はほぼ均等だ。


 夫婦それぞれに「やめてもらいたいこと」を挙げてもらったところ、夫が妻に望むのは、「整理整頓ができない」(25.6%)、「料理の手抜き」(14.8%)、「体型が変わってきたところ」(13.4%)の順だった。以下、「朝寝坊」(11.2%)、「気が利かない」(9.7%)と続く。一般には女性にきれい好き・片づけ上手のイメージがあるが、意外に夫は妻の整理整頓を評価していないようだ。もしかすると、妻の整理ロジックが、夫の論理とうまくかみ合わず、「片付いていない」と映ってしまうのかも知れず、一度夫婦で話題にしてみてもよさそうだ。


 男はいい加減に物を積み上げているように見えて、実は自分なりのルールで置き場所・並び順を管理しているところがある。そういう男の目から見ると、妻の片づけ術は一見、きれいに見えて論理が破たんしているように見える場合がある。実は「整理整頓」への不満は妻からの声でも第2位(22%)に入っていて、夫婦は互いに整理法に不満を抱き合っている様子がうかがえる。


 妻が「やめてもらいたい」と思う第1位は「たばこ」(22.9%)だが、「整理整頓」とほぼ同数。3位以下は「お酒の飲み過ぎ」(18.2%)、4位「浪費癖」(16.9%)、「気が利かない」(16.7%)の順だった。夫は挙げていない「浪費癖」が食い込んでいる点は興味深い。


 夫婦の会話時間はかなり少ない印象だ。男性40代は平日1日当たり30分以下が50%に達した。1日に30分すら妻と話していないという夫が自覚ベースでは半分もいるわけだ。女性40代はもっとすごい。56.8%と、過半数が30分以下と答えた。30分以下の比率は男女とも40代が突出して高い。次は男女とも50代。男性は42.1%、女性は43.8%が30分以下と答えている。30分〜1時間も50代男性の37.2%、同女性は22.5%を占めた。ほぼ3分の2が1時間以下しか夫婦の語らいの時間を持っていないという結果は、「あうんの呼吸」「以心伝心」と見るべきか、夫婦仲の冷え込み、相互無関心と見るべきか。


 この疑問に明治安田生命保険の調査は一歩踏み込んで見せた。平日の会話時間30分以下の夫婦が「配偶者に愛情を感じているか」を尋ねた。その結果、「愛情を感じていない」の割合がほぼ3分の1の33.4%に達した。とりわけ、30分以下の妻は「愛情を感じていない」の率が41.1%にのぼる。会話が少ないと、夫婦の愛情も薄れてしまいがちになるようだ。


 しかし、言葉は夫婦仲を支えもする。夫婦が最も愛情を感じる言葉として挙げたのは、夫は「ご苦労さま・お疲れさま」がトップ。次いで「ありがとう」、ぐっと離れて「愛してる」だった。ただ、一般的には「ご苦労さま」は目上には使わないとされ、夫婦に明確な立場の上下はなくても、言われた夫が逆にカチンと来る可能性がなくはない。「お疲れさま」の方が無難だろう。


 妻は「ありがとう」がダントツのトップで、「愛してる」「ご苦労さま・お疲れさま」と続く。言われたい言葉がこんなに違うというのも、普段の暮らしではなかなか気付きにくいだろう。せっかく分かったパートナーの「内なる声」。きょうからでもお互いに声を掛け合ってみよう。「お疲れさま」「ありがとう」と。


カルメンチャキ |MAIL

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