女の世紀を旅する
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2004年07月19日(月) 《 心に残る名言 4 》

《 心に残る名言 4》  2004/07/19



●人は軽蔑されたと感じたときによく怒る。
それゆえ自信のある者はあまり怒らない。  
(三木清)






●微笑も挨拶も相手を無害化し同時にこちらの緊張を解く。
(中井久夫「記憶の肖像」)

☆笑顔や挨拶は、お互いに友好的な関係であることを確認し、
安心させるものです。良い人間関係のためにも大切にしましょう。





●老いるまで生きれば、老いるまで学ぶ。 
(ことわざ)

☆老いへの恐れは誰にでもある。ですが、生涯勉強と思い、
常に積極的に生きていけば、恐れなどなくなっていくでしょう。





●人間の強い習慣や嗜好を変えるものは、いっそう強い願望のみである。
(マンデヴィル.英の旅行家)

☆悪い習慣を、ただやめようとするのは難しいことです。
何か強い望みを持って、それを励みに頑張ってみましょう。





●自分の尊いことを知らないで何が出来ますか。 (北大路魯山人)

☆自分の素晴らしさを知らないでは、どんな大きな仕事もできません。
自分の価値を知りましょう。自信を持ちましょう。






● 寛大になるには、年をとりさえすればよい。どんなあやまちを見ても、
自分の犯しかねなかったものばかりだ。 
(ゲーテ)

☆今は他人の過ちが許せなくても、年をとれば、多くの経験から
自然と寛大になれるのかもしれません。





●己を主とする以上、他人にも同じ心持ちのあるのに注意しよう。
(有島武郎「己を主とするもの」)

☆誰にとっても、自分が一番大事です。
そして、皆がそう思っていることにも気を配りましょう。




● 身のまわりにある愉快なことを考えるのが幸福の第一歩。
(エバレット『人生修養』)

☆いつも楽しい事を考えるよう習慣づけましょう。
やがてそれが大きな幸福になります。




● 自信ある行動は、一種の磁力を有す。 
(エマーソン『随筆集』)

☆自信のある態度は、何となく頼もしく、魅力的に見えます。
人を引っ張って行く時、説得する時は強気でいきましょう。





●目的こそ活力の源泉です。人間は目的がないとなかなか行動しません。
行動がなければ成功もありません。 
(マーフィー)

☆小さな事でも目標を持ちましょう。やる気を起こして達成しましょう。






● 
人は海のようなものである。

あるときは穏やかで友好的。あるときはしけて、悪意に満ちている。

ここで知っておかなければならないのは、

人間もほとんどが水で構成されているということです。

(アインシュタイン)






●人は前を見ているつもりで、実はバックミラーを見ているのである。
(マクルーハン.カナダの文学者)

 ☆未来には無限の可能性があります。けれど私たちは、それを知っているつもりでも、過去にとらわれ、未来を限定して考えているのではないでしょうか。





● 完璧主義になるな。自ら身動きを取れなくなり、
何をしても自分の期待が満たされなくなる。
(エレン・スー・スターン)






●常識や率直なふるまいほど人を驚かすものはない。
(エマーソン「随筆集」)

☆当たり前の事を、当たり前にする。これだけですが、こういう態度は、
実に爽快で、嬉しいものです。人に好印象を与え、一目置かれます。






● 
悲観主義者が星に関して新発見をしたり、
海図のない国へ船出したり、
精神世界に新しい点を開いたことは一度もない。
(ヘレン・ケラー)





●幸福というのは、最後の目的地のことではなく、旅のしかたのことなのである。(マーガレット・リー・ランベック)

☆長い人生の過程を楽しく過ごしてゆくことに幸せがある。
目標は大切ですが、そこに至るための日々にこそ幸せが存する。





●生きる,ということは徐々に生まれることである。

(サン・テグジュペリ 『戦う操縦士』)





●生命を失うことはなんでもない。私だって必要となれば,
生命を棄てるくらいの勇気はある。だが,この生命の意味
が無くなり,われわれの生存の理由が消滅するのを見る
ことは我慢できない。人間は理由もなく生きてゆくことは
できないのだ。(カミュ 『カリギュラ』)





●ひとは二つの方法によって生きる。すなわち,社会に従うか,
自然に従うかである。神はひとに情熱を与え,社会は行動を
与え,自然は夢想を与える。(ユゴー 『光と影』)





●その女性がもし男であったら,きっと友達に選んだろうと
思われるような女でなければ,妻に選んではならない。
(ジューぺール 『随想録』)





●結婚したほうがいいのか,それともしない方がいいのかと
問われるならば,わたしは,どちらにしても後悔するだろうと
答える。 (ソクラテス)





●結婚は鳥籠のようなものだ。外にいる鳥たちはいたずらに
中に入ろうとし,中にいる鳥たちはいたずらに外に出ようと
もがく。(モンテーニュ 『随想録』)





●よい結婚はあるけれども,楽しい結婚はめったにない。
(ラロシュフコー 『箴言』)








2004年07月09日(金) 狂牛病:アメリカの問題点

《 狂牛病:アメリカの問題点 》     
                 2004/07/09 



狂牛病の大騒動で,今年上半期の,吉野屋,松屋など牛肉チェーン店は売上げが激減してしまったが,輸入再開が本格化するのはまだ先のことである(今秋,生後20カ月以内の子牛に限定して輸入が再開される可能性がある)。
代替の豚丼を食べてみるとわかるが,やはり牛井のような満腹の達成感はえられない。学生やサラリーマンらは早く安価な牛丼を食べたいのだが,アメリカの検査態勢のお粗末さを伝えるニュースを読むと,今後も前途が険しいといわざるをえない。
以下は,アメリカの狂牛病対策の裏側を伝えるSAKAI TANAKA氏のリポートからの抜粋であり,アメリカ側の検査態勢の杜撰(ずさん)さがよくわかる。


●ヤコブ病死者の続出に疑念を抱く

 アメリカ東海岸のニュージャージ州に住むフリーランスライターのジャネッ
ト・スカーベック(Janet Skarbek)さんが、その「異常さ」に気づいたのは昨年、地元新聞の訃報欄で同じ町に住むキャロル・オリーブ(Carol Olive)という女性が死んだという記事を読んだときだった。

 記事によると死因はクロイツフェルト・ヤコブ病だったが、スカーベックの友人だった別の女性も3年前の2000年に同じ病気で死んでいた。スカーベックは、ヤコブ病は100万人に1人しかかからない病気だと聞いていたので、そんな奇病にしては自分のまわりで起きる確率が高いのではないかと奇異に感じた。

 死亡記事をさらに読み進むと、もっと奇妙なことに気づいた。ヤコブ病で死んだ2人は、同じ職場に勤めていたことがあるのだった。その職場は「ガーデンステート競技場」という地元の陸上競技場で、そこにはスカーベック自身の母親も勤めていたことがあったので、よく知っている場所だった。(ガーデンステートはニュージャージ州の別名)

 100万人に1人の奇病が、同じ職場から3年間に2人も出るのはおかしい。そう感じたスカーベックは、地元新聞の訃報などを使い、地元におけるヤコブ病での死亡を調べてみた。すると、さらに驚くべきことが分かった。ガーデンステート競技場の約100人の職員のうち2人、競技場の会員パス(一定料金で何回でも入れる常連者用の定期券)の保有者1000人のうち7人がヤコブ病で死亡していたのである。このほか、競技場内のレストランで食事したことがあるという人がヤコブ病で死んだケースも見つかり、合計で13人の競技場に出入りしていた人々がヤコブ病で死んだことが分かった。


 こうした事実を突き止めたスカーベックは、競技場内のレストランで出した牛肉に狂牛病に感染したものが混じっており、それを食べた13人がヤコブ病にかかったのではないか、と推測した。13人はいずれも、1988年から92年の間に競技場のレストランで食事した可能性が高かった。


●狂牛病発生の経緯

 狂牛病(牛海綿状脳症、BSE)は、牛や羊などに発生する脳の病気で、動物の体内にある「プリオン」と呼ばれるタンパク質が突然変異し、異常プリオンが脳や脊髄で増えると発病すると考えられている。(異常プリオンは正常プリオンと合体して2つの異常プリオンに変化する)

 異常プリオンを含む肉や飼料を食べることによって、狂牛病の感染が広がっ
ていくと考えられている。狂牛病にかかった牛の脳や脊髄、それらが混入したひき肉などを人間が食べると、異常プリオンが体内に取り込まれ、数年間以上の潜伏期間を経て、変異性のヤコブ病にかかる可能性がある。

 世界の食肉業界では、屠殺した家畜の体の部位のうち、肉など使い
道がある部分を取り去った残りの部分(臓器や骨、脳など)を高温で溶かして獣脂(食品材料などに使われる)を採取する「レンダリング」と呼ばれる工程を行う。

 獣脂を採った残りは粉末(肉骨粉)にして、家畜の飼料や、子牛が飲む人工乳に混ぜること多かったが、1970年代の石油危機を受けてレンダリング工程の効率化が進んだ結果、狂牛病にかかった牛の脳などの異常プリオンがそれまでのようにレンダリングで分解(不活性化)されず、そのまま飼料や人工乳の中にまぎれ込んで他の牛に狂牛病が感染する事態になり、1980年代にイギリスで狂牛病の大量発生を招いた。

 イギリスでは狂牛病で100人以上の死者が出たが、感染したが発症していない人はもっと多いかもしれない。最近、手術で取り出されて保管されているイギリス人の盲腸や扁桃腺の細胞の中に異常プリオンがないか検査したところ、1万2千人分のうち3人分が以上プリオン感染していることが明らかになった。この確率をイギリスの人口に乗じると、イギリスではすでに4000人ほどの感染者がいる計算になる。


●当局は狂牛病原因ではないというが・・・

 ヤコブ病には、狂牛病が原因で起きる「変異性」のほかに「散発性」というのがあり、こちらは遺伝などいくつかの原因によって起きるとされるものの、まだ解明されていない。変異性と散発性では患者の脳波に違いがあり、発病する年齢も散発性は40歳以下ではほとんど発症しないのに対し、変異性は10〜30歳代に多いという違いがあるが、両者は症状が似ているので誤診されがちだということが、最近の研究から分かっている。

 スカーベックが突き止めた13人の死因は、いずれも散発性のヤコブ病と診断されていた。散発性ヤコブ病は100万人に1人しか発症しないが、競技場の従業員や会員の発症率は、その何千倍という大きさだった。スカーベックは、13人は散発性ヤコブ病ではなく、レストランの牛肉から感染した狂牛病原因の変異性ヤコブ病で死んだのが散発性と誤診されたに違いないと考え、昨年夏ごろ、疾病対策予防センター(CDC)と農務省に自分の調査結果を伝えた。

 当局からは何の返答もなかったが、昨年12月、アメリカ北西部ワシントン州の屠場で狂牛病の牛が見つかり、全米が大騒ぎになった後、スカーベックの調査は一気に米内外のマスコミの注目を集めるようになった。その後、CDCから依頼を受けた地元ニュージャージ州の保健局がスカーベックの調査について再度検証したが、その結果は「13人は全員が散発性ヤコブ病の症状であり、変異性ではない。アメリカでは狂牛病は発生しておらず、変異性のヤコブ病が起きることはない」というものだった。

 その間にも、スカーベックのもとにはマスコミでの報道を見て「ヤコブ病で死んだ私の家族も、あの競技場の通っていました」と遺族が報告してくるケースが3つあった。その1人はニューヨークの球団ジャイアンツの支配人だったジョージ・ヤングの妻で、ニューヨークタイムスの記事を見て「私たち夫婦も、あの競技場のレストランで食事をしました」と電話してきた

 スカーベックは、牛肉の流通範囲はかなり広いだろうから、自分が見つけたケースは狂牛病被害全体の氷山の一角にすぎないのではないかと考えている。問題の競技場は、経営不振のため昨年閉鎖され取り壊されており、レストランの過去の肉の仕入れ状況などを今から調べることは難しくなっている。


●日本人も食べていたカナダ産の狂牛病

 スカーベックは医学や獣医学の専門家ではないので、この件だけを見ると、
CDCや農務省の方が正しい可能性もある。だが、アメリカで起きている一連の狂牛病関連の出来事を見ると、米政府、特に農務省は、消費者の安全よりも牧畜業者など生産者の利益を重視していることが感じられ、米国内で狂牛病に感染した製品が流通していたのに、米当局はそれを看過していた可能性がある。

 たとえば昨年まで、狂牛病が発見されているカナダからアメリカに大量の生きた牛が輸入され、狂牛病検査がおこなわれることなく屠殺され、流通していた。(米当局は昨年5月からは、カナダ産の牛と牛肉の輸入を止めている)。
 今年2月、この状況を調べた国際専門家委員会は、カナダで狂牛病の発生が確認された1993年から、日本で狂牛病対策が採られた2001年まで、カナダ産の狂牛病の異常プリオンを含んだ食品が、アメリカを経由して日本にも輸入され続けていた可能性があると指摘した。2001年に日本で狂牛病騒ぎが起きたとき日本の外食産業の中には「うちはアメリカンビーフだから安全」と宣言していたところがあったが、実は正反対だった可能性がある。

●検査結果が出る前に7州で販売されてしまった

 1980年代にイギリスで狂牛病が大発生して以来、米農務省は「アメリカでは狂牛病は発生していない」と主張し続けてきた。だが、農務省は牛肉業界の圧力を受け、米国の狂牛病検査はごく限られた量しか行われてこなかった。狂牛病の確率が比較的高いと考えられる自力で歩けなくなった牛(へたり牛、ダウナー牛)の屠殺数の約1割にあたる年間2万頭前後に対してのみ検査が行われていた。全米で年間にとさつされる3500万頭の牛のうち0・05%しか検査していなかったことになる。

 毎年1000万頭が検査されるEUや、毎年120万頭の全頭が検査される日本に比べ、アメリカは検査に消極的だった。特に、大手の屠場の中には全く検査をしていないところもあり、昨年末に狂牛病の牛が確認された西海岸のワシントン州では、州内700カ所の屠場のうち、検査をしているのは100カ所以下しかなかった。米当局がアメリカで狂牛病が発生していないと主張していたのは、検査対象が非常に少なかったことに起因していた可能性がある。

 昨年12月、ワシントン州で屠殺時の検査の結果、狂牛病の牛が見つかっ
た。これはアメリカで見つかった初めてのケースだったが、農務省は、問題の牛は2003年5月に狂牛病発生が確認されたカナダのアルバータ州で育ち、その後アメリカに輸入されているため、米国内で狂牛病が発生したことを意味しないと弁明した。

 ところがその一方で、ワシントン州で見つかった狂牛病の牛の肉は、そのまま市場に流れ、米国内の7つの州とグアム島(米領)で販売されてしまった。本来なら、検査結果が出るまでとさつした牛を出荷すべきではないのだが、検査体制がそうなっておらず、狂牛病だと分かったときには、すでに出荷された後だった。

 自由化政策によって市場原理を重んじるアメリカでは、不良品を回収する判断は業界に任される傾向が強く、肉が狂牛病感染していると分かっても、当局は業界に強制的に回収廃棄させる権限を持っていない。回収が業界の自主的な判断に任された結果、狂牛病の牛の肉やその他の部位が広く流通してしまった

●アメリカの検査態勢は世界最低レベル

 英ガーディアン紙によると、アメリカの獣医や食品検査官など関係者自身の間で、アメリカの狂牛病検査態勢は世界最低の水準であると考えられている。そして、昨年末の狂牛病発生について「発生自体は驚きではないが、当局がその事実を発表したことは驚きだ(当局は発生を隠すだろうと関係者の間では思われていた)」というジョークが流れたと報じている。

 この記事によると、米農務省のある幹部は「(イギリスで狂牛病が発生した)1980年代以来(異常プリオン混入の可能性が強い食品の一つであるひき肉を使っている)ハンバーガーには触らないようにしている。小さな子供がハンバーガーを食べているのを見て、非常に危険だと憤りを感じた」と発言し、物議を醸したという。

 異常プリオンは、牛の脳や脊髄、目、腸の一部(回腸遠位部)に多く蓄積する半面、それ以外の肉や内臓には蓄積されない。牛肉の切り身やステーキなどを食べている分には感染しないが、ひき肉の場合、屠場などでの管理が不十分だと、異常プリオンを多く含む部位が混じる恐れがある。アメリカの新聞には「ひき肉を食べたいときは店で買わず、肉の塊を買ってきて自宅でひき肉を作れば安全だ」と勧める記事も出ていた。(記事によると、アメリカのひき肉は最大400頭の牛の肉の寄せ集めである)


●「検査するより日本が折れるのを待て」

 昨年末以来、日本への輸出ができなくなったアメリカの牛肉生産者の中には、日本が求める全頭検査を行っても良いから日本への輸出を再開したいと思うところが何社も出てきた。米国内市場だと1ポンド(450グラム)あたり1ドルでしか売れない牛肉が、日本では6ドルで売れるため、日本向けの肉は検査コストをかけても十分に儲かる。そのため2つの牧場が米農務省に対し、自費で検査を行いたいと申請したが、却下されてしまった。

 農務省は、自分たちが行っている狂牛病検査は、一頭ずつの牛が狂牛病ではないことを証明するための検査ではなく、狂牛病が米国内で流行していないかどうかという全体的、統計的なことを調べるための検査であることを、却下の理由として挙げている。農務省に頼らず、民間で検査を行う方法もありえるが、アメリカでは役所が行った検査だけが正当なものであるとする法律があり、民間が勝手に検査を行うことが許されていない。

 米国内で唯一検査の権限を持っている農務省に「一頭ごとの持ち込み検査は受け付けない」と断られた業者は、検査を行える道を完全にふさがれてしまった。一頭ごとの牛が安全かどうかを調べる検査を行わないというのは、消費者のための検査は行わないということである。日本は輸入禁止にしたからまだ良いが、国産牛肉を食べないわけにはいかない米国民は、悲惨な状況に置かれている。

 アメリカの牛肉業界団体と大手4社の生産者は、日本向けだけに狂牛病検査を認めると、米国内の消費者も検査を求めるようになり、やがてすべての牛を検査しなければならなくなり、膨大な費用がかかるとして検査に反対している。農務省は彼らを意を受けて、できるだけ検査を行わない戦略を採り、検査をやりたいという一部の生産者に対しては「今年秋には日本政府と政治的な折り合いをつけ、検査を実施せずに対日輸出が再開できると思われる。もう少し辛抱すれば、検査費用なしで日本に輸出できるようになる」と説得している。

 実は狂牛病の検査費用は高くない。日米とも、最初に行う検査は一度に数十頭を検査できる「エライザ法」で、この検査だけでほとんどの牛は狂牛病ではないと判断されるが、この検査の一頭あたりの費用は3000円前後(15〜30ドル)で、牛肉100グラムあたりの検査費用は1円ほどになる(1頭で300キロの肉と計算)。

 検査をやりたがらない農務省に反発し、消費者運動の強いカリフォルニア州の議会上院では、州内の牛肉生産者が狂牛病の検査を行えるような新法が民主党から提案されている。この法律が実現すれば、農務省の方針と真っ向から対立することになる。逆に牛肉生産者が多いワシントン州の議会上院では、民間の狂牛病検査を許すなと提案する共和党議員がおり、政治的な利権臭に満ちた話になっている。


●信用できない米牛肉業界の自主規制

 昨年末以来、日米政府が続けている交渉の状況を見ると、農務省の予測通り今秋には、生後20カ月以下の牛に限定して、再び日本が狂牛病検査をしていない米国産牛肉の輸入を解禁する可能性が出ているが、これは安全性が確保されたからではなく、政治的な決着であり、米国内における狂牛病の危険性は何も変わらないままである。米国産牛肉の輸入が再開されれば、日本の外食産業の中には「アメリカ牛は安全です」とまた言い出すところが出てくるだろうが、それを信じない方が良い。安全性は向上していない。

 牛肉の貿易問題は以前から政治色が強い。2001年に日本で狂牛病が確認された際、アメリカは日本からの牛肉の輸入を禁止し、その措置は日本が全頭検査を実施しても変わっていない。日本の牛肉はアメリカの何倍も高いので、日本にとっての経済上の悪影響は少ないが、アメリカでは今も日本からの牛肉の輸入は禁止されている。

 アメリカでは狂牛病検査の対象を年間2万頭から20万頭に増やすと発表されている。このアメリカのやり方は、狂牛病が発生していないことを前提にしたモニタリング検査を拡大したもので、日本やEUのような一頭ごとの狂牛病の有無を確認する検査体制とは違う。日本では年齢を問わず、EUでは生後24〜30カ月以上の牛を対象に、全頭検査が行われている。アメリカ(やカナダ)では、へたり牛など症状が出ている牛に対してのみ検査が行われており、感染しても発症していない牛に対しては、対策が採られていない。

●危険なのはアメリカだけではない

 とはいうものの、狂牛病が危険なのはアメリカだけではない。たとえばフランスではこれまで、過去13年間に900頭の狂牛病が発見されたとされていたが、最近の調査では、実は同期間に30万頭の狂牛病がフランスにいた可能性が指摘されている。それらはすでに仏国民の口に入ってしまった。

 アメリカ産は危険だがオーストラリア産は安全だというのも、まだ発症が確認されていないだけかもしれないと考えれば、確信できるものではない。オーストラリア政府は、自国には狂牛病は存在しないと宣言し、モニタリング型の検査だけをやっている。これは、アメリカやカナダの政府がとっていたのと同じ態度である。

 狂牛病の異常プリオンは、脳や脊髄、目、腸の一部(回腸遠位部)に多く蓄積されるだけで、切り身の肉や牛乳には混じることはない。ひき肉やソーセージ、サラミなどは、牛のどの部分が混じっているか消費者が見ても判断できないので、これらの製品を食べないようにすれば、異常プリオンの摂取は、ある程度は防げるかもしれない。





カルメンチャキ |MAIL

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