観能雑感
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2009年05月30日(土) 第23回 二人の会 

第23回 二人の会 宝生能楽堂 PM2:00〜

 笛の練習に行ってから開場へ。ほぼ満席。中正面前列ほぼ中央へ着席。笛方が完全に隠れた。

舞囃子 『猩々乱』  香川 靖嗣
笛 松田 弘之(森) 小鼓 大倉 源次郎(大) 大鼓 柿原 崇志(高) 太鼓 観世 元伯(観)

 喜多流の乱は筋力とバランス感覚が必要とされ、身体技量として高度である。装束を付けていないためその点がより強調され、流儀の魅力を印象づけた。

狂言 『夷毘沙門』
シテ(夷) 山本 則重
アド(有徳人) 山本 則孝、(毘沙門) 山本 則秀
笛 松田 弘之(森) 小鼓 大倉 源次郎(大) 大鼓 柿原 光博(高) 太鼓 林 雄一郎(観)

 神はどちらも面をかけていた。どちらが名付け親になるのか争うという内容だったような気がするが、うろ覚え。

能 『道成寺』
シテ 塩津 哲生
ワキ 宝生 閑
ワキツレ 高井 松男、大日方 寛
間 山本 東次郎、山本 則秀
笛 松田弘之(森) 小鼓 飯田 清一(幸) 大鼓 柿原 崇志(高) 太鼓 観世 元伯(観)
地頭 粟谷 能夫
鐘後見 狩野 了一

 下掛りなので能が始まってからワキが間を呼び出し鐘を釣る。山本家なので安心して見ていられる。この鐘の模様にびっくり。青銅色で、実際の鐘の模様を模しており、物凄い存在感を放っていた。演能後伺ったところ、60余年振りの再現とのこと。喜多実師追善の意味を込めてのことか。
 シテの唐織は退色した紅が他にない風情を醸した見事なもの。面は若曲見とのことで、こちらも逸品。乱拍子の間、刻々と変わる表情に見とれてしまった。シテは己の内面をじっと見つめると同時に、冷静に周囲の様子を窺っているようだった。乱拍子終了直後、白拍子としての素の姿に戻ったように見えた瞬間があり、その姿が匂い立つように艶やかで、これでは周囲の人々は魅入られてしまうのも止む無しと思った。烏帽子を落とすのは上掛リより遅く、鐘入り直前。斜めから入った。鐘後見は通常年長者か同等の人に頼むが、今回は経験を積ませるためあえて若手を指名したのだろうか。タイミングが完全に合っていたとは言いがたかった。
 後シテは、最後まで戦う意志を捨てず、果敢にワキに挑む姿が印象的だった。しかし、それはますますシテが救われないことを意味するわけで、哀しい。
 披きとは違う、熟成された道成寺だった。


こぎつね丸