観能雑感
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2006年02月12日(日) 宝生会 月並能 

宝生会 月並能 宝生能楽堂 PM1:00〜

 眼精疲労により、いろいろ不調。眼そのものの調子も悪く、左眼を開けているのが辛い。迷ったが、結局出かけた。
 中正面最後列正面席寄りに着席。観づらい席だが、約一ヶ月前に窓口でチケットを購入した際には、既に選択肢がほとんどなかった。
 今回もごく簡単な記述に留める。

能 『高砂』
シテ 當山 孝道
シテツレ 當山 淳司
ワキ 殿田 謙吉
ワキツレ 則久 英志、芳賀 俊嗣
アイ 住吉 講
笛 寺井 久八郎(森) 小鼓 鵜澤 洋太郎(大) 大鼓 柿原 光博(高) 太鼓 小寺 佐七(観)
地頭 今井 泰男

 残念ながら一曲を通して求心力に欠け、ついつい自身の考え事に埋没しがちになってしまった。地謡が精彩を欠くこと著しく、物語が立ち上がってこない。笛は相変らずで、脇能に不可欠な爽快感皆無。曲の雰囲気を決定する笛の役割の重要さを、否が応にも再認識した。

狂言 『二人大名』
シテ 野村 萬
アド 野村 扇丞、小笠原 匡

 二人の大名がたまたま通りがかった男を家来扱いするが反撃され、身ににつけているものをあれこれ取られた挙句、さんざんになぶられる。今回初見。
 本来なら太刀の扱いに遥かに慣れているはずの大名が、男の振り回すそれに怯える姿がなんともなさけない。隙を見逃さずに逆襲し、戦利品をせしめただけでなく、相手をからかってから逃げる男の姿に、庶民の逞しさを感じ、いっそ清々しいくらい。

能 『千手』
シテ 大坪 喜美雄
ツレ 高橋 亘
ワキ 森 常好
笛 一噌 庸二(噌) 小鼓 鵜澤 速雄(大) 大鼓 安福 健雄(高)
地頭 近藤 乾之助

 地謡が三番中最も充実しており、本日最も秀でた一番だったが、眠気に襲われてしまった。無念。ツレの配役は外見上どうかと思ったが、謡は悪くなかった。疑問を感じたのは序之舞。ほとんど中ノ舞と言ってもいいくらい軽い位取り。朝になれば重衡との永久の別れが待っている千手としては、夜が明けないでほしいという想いがあったのではないか。そういう場合、まるで急かされているような舞を舞うだろうか。この笛方の舞台からは、意欲というものを一貫して感じ取れないでいる。

能 『船橋』
シテ 小倉 敏克
シテツレ 小倉 伸二郎
ワキ 高井 松男
ワキツレ 舘田 善博
アイ 山下 浩一郎
笛 内潟 慶三(森) 小鼓 幸 正昭(清) 大鼓 大倉 正之助(大)
地頭 佐野 萌

 仲を裂かれた男女が妄執に苦しみ、救済を望む話。登場人物は市井の人で、『錦木』と同種の曲趣。今回初見。
 この一番もいまひとつ。囃子にはなんだかなぁという感想を抱かざるを得なかった。後シテはカケリを舞うためか、黒頭に半切厚板法被方脱ぎという出立だが、シテは一般庶民なので違和感を感じた。



こぎつね丸