観能雑感
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十牛図
月曜日、DENより返答あり。早い対応。配慮が足りなかったことに対する謝罪と、掲載する謝罪文が添えられていた。それは手紙を無断で掲載したことに対する謝罪であり、実名その他を無断で公表したことには触れていなかった。どうもこちらの意図とは食い違っている感あり。再度メールを送り、個人情報を無断で掲載した点についても言及してくれるよう頼んだ。これに対する返答はなし。 もちろん、私とてプレゼントが無償で行われるものだなどとは思っていない。マーケティングの一環であり、プレゼントはいわばエサである。しかしあくまで目的は顧客(読者)の実相を掴む事であり、それを本人に無断で公表するのはやはり糾弾されるべきであろう。 返信メールにも書いたが、本人がまったく意図しないところで己の個人情報が不特定多数の人間が見る媒体に掲載されるのは恐怖以外の何物でもない。実名その他の掲載を厭わない方々もおられるだろうが、そうではない人も当然いるはずである。問題は、その選択権が読者に与えられていなかった点にある。個人情報の取扱いはそれらが帰属する本人に決定する権利があるのだ。 今後は十分配慮するとのことだが、ぜひそう願いたい。部数は大手出版社の発行物に比べたら僅かであろうが、それはこの件の論点ではない。 こちらからの返信には謝罪文掲載を決断してくれた事に対する感謝を添えた。しかし、DENのプレゼントに応募する事はもう二度とないであろうし、今は雑誌自体を手に取る気にならない。 生きていると、何が起こるかわからない。永遠に見えなくなった牛を探してさ迷うのだろうか。
愚昧三昧
帰宅すると郵便受けの中に雑誌「DEN」のスタンプが押された封筒を見付けた。全く身に覚えがない。とりあえず開封するとDEN最新号が出てきた。定期購読の申込みなどしていない。何かの間違いだろうと問合せてみようかなどと考えながらページをめくると、一片の紙片がこぼれ落ちた。そこには手紙の内容を本誌に掲載する旨述べられていた。慌てて確認すると確かに見覚えのある文章と私の実名、年齢、住所、職業が目に飛び込んできた。しばらくは気恥ずかしさばかりだったが、それはすぐに言い様のない不快感と怒りへと変わった。 私がDEN編集部に感想を書いたハガキを送ったのは映画「能楽師」のチケットプレゼントに応募するためである。条件として挙げられていたのが住所、氏名、年齢、職業、及び感想、意見の記入であり、私はそれに従ったまでである。そこにはこれらの感想および個人情報が誌上に掲載される可能性の有無についてはまったく記載されていなかった。 これは個人情報の二次使用に該当する。 個人情報の二次使用とは、個人情報を収集する際目的としてあげたもの以外にその情報を用いることである。新製品開発のためと称してアンケートを取り、そこで収集した個人情報を既存商品の販促DM発送に使用する等にあたり、これはプライバシーポリシーに抵触する行為である。 現在日本では個人情報保護法案は未成立だが、それに先駆け各企業はプライバシーマーク等民間団体による個人情報取扱い認定を得ている。EUではプライバシーポリシーがない企業とは取引できない事が法律上定められており、他国はその条件を満たすよう努めているのだ。 国内でも個人情報の取扱いについて議論される機会が多いなか、あまりにも無知、無神経な行為である。知らなかったでは済まされないし、承知の上ならば尚更悪質である。 多くの雑誌がプレゼント応募に際して感想を添える事を要求しているが、その際文章が紙面に載る可能性があること、その場合ペンネーム使用を希望するのであれば記入するよう明記している。もし今回のように実名、住所、年齢等が掲載される可能性があることを事前に知ってたならば、私はプレゼントに応募しなかったであろう。なんら恥じるべき行為を行ったわけではないが、不特定多数の人間に己の個人情報を晒すつもりなどない。個人情報は個人の生活を守る上で、慎重に扱われなければならないのだ。 能楽界ではチラシに能楽師の個人情報(自宅の住所、電話番号等)が掲載されている。能楽師は個人営業なので自宅兼事務所であり、本人も承知の上である。そんな関係上個人情報の扱いに無頓着なのかもしれないが、そんな事は何の言い訳にもならない。 DEN編集部には抗議のFAXを送信した。本当はHP上からメールを送信しようと思ったのだが、正常に機能していないようである。内容はほぼこの記述と同様であり(能楽師云々は除く)、謝罪文の掲載を求めた。本来ならば流通を差止めてもらいたいくらいである。 せめて何故、事前に本人の承諾を得ようとしなかったのだろうか。雑誌一冊送りつけて事後承諾を得られると思っていたのならば、失礼極まりない話である。 体調が悪くなんとか仕事を終え帰ってきたらこれである。とりあえず疲れはふっとんだ…というより怒りの陰に隠れた。 編集側として読者の感想を掲載したい気持ちは解かる。同じ読者としても気になるところだ。しかし本人の承諾のないまま実名(姓名とも)等と供に掲載するのは、許し難い行為である。
こぎつね丸
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