A Will
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欲しかったものがそこにあった。
わたしは手を伸ばさずにはいられなかった。 それが、その欲しいものを、いつか壊してしまうことになっても、だ。
好きなものだから、 信じられないほど大切にしたいのに、けれど思うようにいかない。 好きだから、ずっと傍において置きたいのに、 傍に置いておくと、いつのまにかボロボロになって、 なんだかとても可哀想で、うっかり手放したくなる。
良い思い出だけを提供してあげたい。
ピカピカした、綺麗な。
どうかどうか、と祈らずにはいられない。
わたしの傍にいなくても良いから。 せめて笑っていてほしい。
それが最初の、たぶん一番大きな、わたしのお願いで、 お願いだった、はずなのに。
手放したくない、と今は必死。
お礼と謝罪を。
けれど、やっぱり放したくはないから。 どうか離れないで、と。
泣いてしまう。きっと。 そのくらいで離れないでいてくれるなら、わたしはきっと簡単に恐ろしいほど簡単に泣いてしまう。
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